ようこそエロMODが導入された教室へ 作:さんかく
『あー、気持ちぃー』
グポ、グポ、ジュル、ジュル。
俺のスマホから濁音と男の喘ぎ声が響く。
モニターに映っているのは、ひとつの小さなカラオケの個室だ。部屋の照明は暗く、男女一組が部屋の中央にいるのが見える。
男が女の正面に立ち、女はその男の股間の前に頭が来るようにしゃがんでいた。そして、水音を立てながら頭を前後に動かしている。
男は学生服を着ており、女もまた同様に学生服を着込んでいた。その長髪は目元までかかり、その下には目隠しが付けられている。その下にはマスクが装着されているが、口だけが出るように上へズラされていた。そしてマスクの下には、男のペニスを咥え込む唇が見えている。
『…さん……!出るっ……!』
『ん"っ……』
男は女の名前をーーいや、正確にはその首からケースに入れてぶら下げられた学生証の名前をーー呼びながら身体を震わせる。
女は口の中に注ぎ込まれる異物に嗚咽を漏らし、しかし吐き出すことはなく耐えていた。ゆっくり吸い取るように肉棒から口を離し、赤いベロで先端から垂れていた液体を舐めとる。そして最後に口を大きく開いて中身を見せた。
数秒口を開いて中に溜まった白濁液を見せた後、口をクチャクチャと咀嚼してみせる。口が閉じる度に口内で掻き混ぜられる濁音が響き、女はゴクリと一息に飲み込んだ。
それを間近で見た男もまた、その艶かしい仕草に思わず生唾をごくりと飲み込んだ。
その後、男は服を整えて荷物を持ち、カラオケルームを退室した。
俺はそこまで見てスマホの映像を止める。
そしてメールアプリを開き、先ほど映像に映っていた女のメールアドレスにメッセージを送信する。仕事終了の確認と、ポイントを報酬として支払った旨を伝える内容だ。
これで大凡の仕事はひと段落。後は女が身に付けていた衣装や学生証などのアイテムを、カラオケルームから回収するだけだ。
「……ふー」
座っていた椅子の背もたれに背中を深く預け、一息ついた。そして再び俺の設置した監視カメラの映像をぼんやり眺める。そこに映っているのは、先ほど男に奉仕していた女ーー最初にスカウトした先輩だ。
この先輩からスタートした、匿名で安く女を提供する風俗サービス。これを始めて早くも1ヶ月が経とうとしていた。
経過は順調。元々ゲームの試走で目をつけていた者に声を掛け、ついに従業員も四人となった。今は平均して一日二件程度だが、徐々に客からの申し込みは増えてきている。そして一週間ほど前からは、オプション制度の導入も始めていた。
それこそさっきの客は、衣装で三つ、プレイで一つのオプションを追加して注文していた。衣装としては、学校制服、顔を隠すものをウィッグと目隠し、マスクへ変更、そして特定の名前と顔写真が印刷された偽造学生証を身に付けるというオプション。次に、プレイとしてごっくんだ。
衣装はそれぞれプラス1000ポイント、プレイはプラス2000ポイントとなる。つまり先程の男は、合計で15000ポイント支払ってサービスを受けた訳だ。
このオプション制度によってかなり単価は高くなった。意外と大体の奴が何かしらオプションを付けるのだ。衣装だったり、プレイだったりと。
その中で特に人気なのを挙げるなら「学生証」だろうか。これは、学生証の模造品の各文字部分と顔写真に、上から別の文字や写真を印刷した紙を貼り付けただけのものだ。近くから見ると明らかに本来の学生証とは異なることが分かるが、パッと見では誤魔化せる。顔写真が無いと作れない為レパートリーは制限されるが、その中から指定されたものを作成し、それをケースに入れて首からかけるだけのオプションだ。
だがそれだけで、割と簡単に興奮出来るようだ。学生証が首からかけられて、頭を隠したりそれっぽいウィッグを装着するだけで、本当にその人にシてもらっているように錯覚出来るらしい。
まあ、それで1000ポイント追加してくれるなら俺から言う事は何もない。有難いことだ。
細かい事は兎も角として、金策はゆるゆるとだが実りつつある。立ち上げ時期だから出費は多く、入って来たポイントの半分程度は費用として消える。それでも最終的な俺の収入は、平均して週に4万ポイント程度になる。今の総資産は20万ポイント弱となっていた。
今日は4月最後の日。
つまり、明日が阿鼻叫喚の5月1日である。
これから更にポイントは要り用になるし、そろそろ作中キャラへの介入タイミングとなる。
楽しみだ。
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「お前たちは本当に愚かな生徒たちだな」
その声が教室に響いた瞬間、空気が凍りついた。
聞き覚えのあるセリフ。原作でも印象的だった、5月1日のあの一言だ。
前に立つ茶柱佐枝が、冷たく、どこか嘲笑うような目で俺たちDクラスを見下ろしていた。
今日――この日を境に、本当の意味での“実力至上主義”が始まることになる。
クラスポイント、それによる毎月の支払額の決定。そして各種減点行為によるクラスポイントの変動。
俺達がなぜ今日ポイントを得られなかったのかの説明が始まり、生徒たちのざわめきが一気に爆発する。
「は?なんで!?約束が違うじゃん!」
「10万ポイント毎月もらえるんじゃなかったのかよ!?」
この期に及んでーーと言うのはまだ高校生の彼らに厳しい話か。とは言え教室のあちこちから見苦しい怒号が飛び交い、そうでない者達の顔には焦燥が浮かぶ。
そして畳みかけるように告げられる、小テストの結果。
さらに退学の可能性――その言葉が加わったことで、動揺は頂点に達した。
望んだ進学先に行けないのみならず、退学の危険性もある。そりゃ厳しい基準であるとは言え、言葉にすれば"ちゃんと勉強してください"というだけの至極当然のルールなのだが、彼らはこの一月でそれすら忘れてしまったらしい。七名の退学ラインの存在に、クラスの空気は致命的なものとなった。
因みに俺の小テストの成績は首位タイ。最強である。
まあ、裏技込みなんだけど。
このキャラ、知力にガッツリ振ってるおかげで、実際の俺より頭の回転も記憶力も上だ。
しかも、この小テストの内容は過去問と一緒で固定だ。こうした得点上昇のフラグが存在する試験は、どの周回でも問題内容が固定となる。こうした固定問題はゲーム内で問題文が公開されており、ゲームの攻略サイトで有志が作った模範解答も存在していた。
残念ながらそれらをはっきりと覚えているわけではないが、何となくの記憶でそれらを思い出し、図書室で似た系統の問題を探して片っ端から解いて備えていた。ヤマを張っていた、というやつだ。
とは言え、これは裏技であって再現性のある勉強法ではない。
その為他の首位のキャラ同様の90点となるように解答を調節し、現在の順位となっていた。
(まー、この順位も次からキープできないだろうけど)
仕方ない。
高学力勢には勝てません。
俺がテストの点数に思いを馳せている内に、気がつくと茶柱先生のお話は終了していた。
だが茶柱先生が教室を後にしても、クラスのざわめきは収まらない。
「ポイントが入らないって、これからどうするんだよ」
「私昨日、残りのポイント全部使っちゃったよぉ……」
困惑と憤懣。様々な感情が入り乱れているが、どれも決してプラスとは言えない。昨日までとは打って変わって絶望へと転換した未来予想図に途方に暮れる者、そして幸村のようにDクラスへ配属された事へ憤る者。
俺は既に何度も見た光景だが、こうして生の眼で見るとなかなかだな。地獄絵図だ。
「混乱する気持ちは分かるけど、いったん落ち着こう」
そんな中で立ち上がるのが平田。
いつだってクラスの事を考えて行動する男だ。頼りになるぜ。
幸村が平田に噛み付くが、そこで更に立ち上がるのが櫛田。櫛田もまた常にクラスの為に身を粉にして動いてくれる聖人である。憧れるぜ。その類稀な美貌とコミュニケーション能力で場を納めていた。
これから暫く、このクラスの基本は平田と櫛田が握る。堀北と綾小路主導と比べるとあまり力はないが、求心力は抜群だ。
現にこうして平田が教壇に立って団結を呼び掛けると、須藤を除いてある程度は皆も落ち着き始めた。
須藤は場を乱しながら教室を出て行ったが、それでも平田への敵愾心などがある様子は無い。人徳だなあ。
話し終えた平田は、教壇から下りて堀北、そして綾小路に話しかけていた。
(……放課後の対策会議の誘いか)
だが原作通り、堀北はまだ乗らない。
彼女はまだ“個”にこだわっていて、クラスのために動く意志はない。不参加だ。
そして綾小路。
彼もまた、一人参加しない事での堀北の孤立を懸念し、会議へは参加しない。そもそも自分でどうこうする気も全く無い。今はまだ。
茶柱に焚き付けられて、堀北の裏で動く彼の役割が始まるのは――もう少し先の話だ。
授業をいくつか終え、昼休憩に入る。
いつものように立ち上がった俺に、声をかけてきたのは者がいた。
「斉藤くん……ちょっといいかな?」
平田だ。
「放課後に、みんなで話し合いをするつもりなんだ。斉藤くんにも参加してもらいたいんだけど、どうかな……」
真摯な目。まっすぐな言葉。
だが、俺は「うーん」と声を漏らして、わざと考え込むような素振りを見せる。
「そういうの……ちょっと苦手なんだよな」
それでも食い下がる平田。
どうしても皆で立て直すために力を借りたいらしい。
俺に助力を求めても意味無いと思うが。
俺は平田に、ふいと視線で教室の後ろの方を示す。平田がそちらへ向くと、そこには俺を見てひそひそと話す女子生徒たちの姿があった。
「そもそもあれだ。俺が会議に出たら、余計に雰囲気悪くなるんじゃない?」
「それは……」
平田の顔が曇る。
俺の言葉を否定しようとするが、実際にその可能性が高い為に言葉に詰まっていた。
ここで俺はわざとらしく一息つき、平田の目を見て口を開いた。
「しかも、それで出来るのはただの傷の舐め合いだよ。ま、それも大事かもしれないけど、先にやる事やった方がよくない?」
「やる事……やる事って、なにかな」
「そりゃ情報集めでしょ。ポイントを増やす方法を知らない事には、結束も何も無い。未来予測もつかないのに可能性に賭けて学校生活真面目に頑張りましょうって、そりゃ求め過ぎ」
俺の呆れたような口振りにーーなんなら小馬鹿にしたような言葉に、平田は真剣に考え込み始める。
「……確かに、そうかもしれないね。でも、情報はどうやって得ればいいのかな。先生は答えてくれなかった」
「先んじてる奴に聞けよ。ポイントをあれだけ保持してたAクラスやBクラスは、ただ真面目ちゃんだったってだけじゃないだろ。先にこのポイント制度を知ってた可能性は高いんじゃない?あとはまあ、少なくとも上の学年の先輩は普通に一年分のポイント獲得の流れを知ってるからな。知らない訳ない」
平田からの問い掛けに、俺は引き続き吐き捨てるように返答する。だが、その内容は明確な平田への助言だ。それを理解した平田の顔が明るくなった。
「……ありがとう!斉藤くん。助かるよ。少しだけ希望が持てた」
礼を言い、平田は去っていった。
うん、これでいい。
これで俺は、あまりクラスに関わらないが助言はくれるものというポジションを得た。
クラスにはあまり縛られていられない。
だが、平田のような“意見を通す窓口”を押さえておけば、いざという時に主導権を握ることもできる。
ゲーム的にも、この立ち回りは基本ルートの中核だ。普通にプレイするには外せない選択肢となる。
(ま、そんな事言ってる俺が、今からこのクラスを更に窮地に追いやるんだけど)
俺の学校生活はここからが本当のスタートだ。
俺の次の目標――それは、龍園翔に情報をリークし、この段階で“暴行事件”を誘発させること。
どんどん学校を荒らしていこう。