シエルとアルクェイド、二人と入れ替わりで志貴も風呂に入る。
時間的にはまだまだ朝風呂。一人でゆっくり湯舟につかると、なんとも言えない心地よさがある。最近は体調も良いのでなおさらだ。
「ふぅ……。それにしても、なんていうか……」
湯舟につかりながら、風呂場を見渡す。裸眼で見る視界には不愉快なヒビが入っているが、それはこの際無視する。
さっきまで、この空間にシエルとアルクェイドが居たのだと考えると、なんだか妙な気分になる。
それに漏れ聞こえてきた色っぽいシエルの声。もしかすると、辛抱溜まらずに先に始めていたのだろうか。
「いや、まさかな……」
まさかと思いつつも、アルクェイドならやりかねない。
彼女は志貴が一番、二番がシエルと言ってはばからない。今の関係も、なかばアルクェイドに振り回される形ではじまったものだ。
とはいえ、シエルもそういう気持ちが無ければここまで来るはずがないのだから、決して強要されて、という話ではないはずなのだが。
「よくわからないんだよな、そのあたり」
女心はよくわからない。志貴はふぅ、と肩まで湯舟に使ってため息を付いた。
と。
「……」
目の前に、長い金髪と黒色の髪が浮いているのに気が付く。
片方はアルクェイドのものであるのは間違いない。もう片方は色合いからして、シエルだろう。
さっきまで二人とも湯汲をしていたのだから当たり前だが、不意にその事を意識した志貴は少しだけ顔を赤くした。
「いやいやいや、落ち着け。変な事を考えるなよ」
髪に気が付いた途端、この湯に二人が入っていた事をどうしても意識してしまう。浴室に漂う香りも、何か意味ありげなものに感じてしまう。
結局、志貴はもんもんとしたものを抱えたまま湯から上がったのだった。
タオルで水気を拭い、志貴は湯上りほかほかのバスローブ姿でベッドルームに向かう。目の前には閉じられたドア。足元には、自分以外の誰かが残した、水気の足跡。
少しだけ呼吸を整えて、志貴はベッドルームに踏み込んだ。
「お待たせ」
ベッドルームは、カーテンが開かれて明るかった。これからする事を考えると不用心だが、一応そのあたりは考えてある、という話だ。
まだ早朝ともいえる時間、白い朝日がベッドに降り注いでいる。
そこに。
二人の女が、一糸まとわぬ姿で志貴を待ち受けていた。
「ふふ。いらっしゃい」
「…………」
一人は金の髪に赤い瞳、白く磨き抜かれた石膏像のような美の容。
一人は黒髪に蒼い瞳、命の輝きを人の形に押し込めた、瑞々しき少女の容。
方向性は違えど、それぞれで女を体現する美女が二人そろって、ベッドの上に無防備に横たわっている。
何度見ても色あせないその輝きに志貴はドアの前で足を止める。そんな彼をアルクェイドは蠱惑的な流し目で呼び寄せ、シエルは恥じらいに顔をそっと逸らしつつも、ベッドの上で大人しくしている。
「あ、ああ」
「もう。なんでいつもそこで固まっちゃうのよ」
「し、仕方ないだろ。二人とも綺麗なんだから……」
てんぱってそんな事を志貴が言い出すものだから、アルクェイドはきょとんとして、シエルは一層顔を赤らめてベッドに顔を沈める。
「も、もう。志貴ったら。……ねぇ、来て」
「ああ……」
バスローブを脱ぎ捨て、ぎしり、とベッドに乗る志貴。彼がこれ以上ないほど興奮しているのを見て取って、アルクェイドが満足そうに微笑んだ。
「ああ……志貴。来て、貴方の望むように、私を無茶苦茶にして……ねぇ」
「アルクェイド……」
至近距離で見つめ合い、再び口づけを交わす。先ほどのように挨拶のような触れ合いはすっとばして、最初から肉欲を露に貪り合う。
ベッドの上に白い体を押し付けて、口づけを交わしながら志貴はアルクェイドの胸へと触れた。
信じられないほど柔らかく、きめ細やかな肌はいつまでも撫でていたくなる。だけど、触感だけでは物足りない事を、今の志貴は知ってしまっている。
どうせ志貴の力では傷つけられない。少し強めに胸を揉みしだくと、口づけの奥でアルクェイドが小さく喘いだ。
その拍子に口づけが外れる。
「……ぁ、んぅっ……志貴、ちょっと、強い……っ」
「嫌か?」
「ううん……貴方相手なら、どれだけ強くされてもいいわ……」
涙で潤んだ瞳が嘆願してくる。
それならばと、志貴はアルクェイドの胸を餅のようにこね回しながら、そそり立った乳首を軽く口で吸う。どこまでも柔らかい肉の中にピンと立ったそれを、舌で転がし、肩や指でくりくりと掘り出すようにして、潰す。
忽ち、熱のこもった嬌声が上がった。
「あ゛っ! あ、んぅ……ああっ! 良い……いいよっ、志貴っ。素敵っ」
「……大丈夫か?」
「ううん、いいよっ、乱暴にされるの、好きぃ……っ! 刻みつけて、お願い……っ」
頬を真っ赤に上気させて、感極まった様子で喘ぐアルクェイドに、志貴も加減をわすれる。
どの道、素手では傷一つつけられない相手なのだ。相手の望むように、容赦なく相手の性感を探り出すように指を沈める。かり、と乳首をかるく噛んで歯を立てると、鋭い嬌声で女が鳴いた。
「っ、ああっ! ああっ、いい、素敵、ぁああっ! んっ! ああっ」
「まったく……出来上がりすぎだろ、お前……っ」
「だってぇ……一週間、ずっと楽しみにしてたんだものぉ……。いいでしょ? 言いつけ通り、大人しくしてたんだから……」
幼子のような顔で、幼子のような事を言うアルクェイド。悶える裸体とのギャップに、志貴はくらりと頭痛を覚えた。
「……っ!」
「あっ……ふふ……」
獣性をむき出しにする志貴に、アルクェイドは一瞬だけ目を丸くして、淫靡に微笑んだ。誘うように足を開き、こんこんと蜜の湧きだす秘所をさらけ出す。細い指さきが、くちゅり、と音を立てて秘唇を押し開いた。
「ねえ……来て。もう我慢できないわ……」
「ああ……」
誘われるがままに、志貴は怒張した己の逸物を押し当てると、一息に貫いた。
形がないのではないか、と思うほど柔らかい媚肉の中に、いきり立った肉幹がずぶずぶと沈んでいく。
「あっ、ああぁああっ! んぅっ! あぁあ゛っ!」
「挑発しやがって……! 最初から、飛ばすからな」
「ん゛ぅうっ!? あっ! んあああっ!」
アルクェイドの腰をがっしりと押え、志貴は最初からハイペースで抽挿を開始した。ずん、ずんっ、と女の最奥が突き上げられ、リズミカルに体が揺れる。
振動に胸を揺らしながら、女は仰け反るようにして喜悦を奏でた。行き場のない衝動を逃すように、両の腕がシーツをくしゃりと握りしめる。
「ん゛ぁあっ! あっ!! いい、良いよ、志貴ぃ……っ! 奥、奥がいいの……っ!! もっと滅茶苦茶にしてぇ……あぁあ゛っ!」
「く、この……エロい事ばっかり、覚えやがって……っ!」
「あっ! あ゛ぁあっ! ひぃっ! あっ! 好きよ志貴、大好きっ! 愛してるっ! あぁあ゛っ!」
矯正の合間に愛の言葉を叫びながら、アルクェイドがベッドの上で悶える。
それを、真横から至近距離で、シエルは呆然と見つめていた。
そこに居るのは、最後の真祖でも、吸血鬼の処刑装置でもなく、ただ愛しい男に貪られる事を至上の喜びとする、女でしかない。
コンクリートを切り裂く爪は無力にシーツを握りしめるだけで、銃弾すら跳ね返す白磁の肌は今は真っ赤に充血し、食い込む男の指にされるがままだ。
人の容をしただけの怪物が、今は誰よりも弱く無力な女として、男に組み伏せられている。
「……綺麗」
ぼそり、とつぶやいた自分の言葉に、果たしてシエルは自覚があったのだろうか。
そうこうするうちに、競演は最高潮を迎えつつある。先に限界を迎えたのはアルクェイドの方だった。
「あ゛っ! し、志貴ぃっ! わたし、もう、もうっ!」
「ふ……っ、もう少し、頑張れるか……?」
「む、無理……ぃっ! 我慢なんか、でき……ぁああ゛っ!!」
赤く色づき、汗ばんだ裸体が跳ねる。仰け反るように無防備な喉を晒し、白い女が頂きに達した。
志貴は顎伝いに汗の雫を落としながら、その美しい末期を見届ける。ああ、自分に牙があったなら、あの白い喉を噛み破ってやるのに、と思いながら。
「ああぁあ゛ああぁあーーーーーっ!! っああぁああーっ!」
「アルクェイド……っ」
無条件で男を受け入れていた膣が、ぎゅぅ、と絶頂に閉まる。柔らかい媚肉の向こうにある肉の筒に強烈に締め上げられて、志貴は呻くような声をあげた。それでも大量に分泌されていた喜びの蜜のおかげで、抽挿に差し支える事はない。
心臓に白木の杭を穿つように、志貴は断末魔を上げるアルクェイドの最奥へと己の怒張を突きこんだ。あまつさえ、ぐりぐりと捩じるように奥をすりつぶす。
「あ゛あ゛ぁっ!? あ、ダメ、おく、おくがぁああっ!? あぁーーーーっ!?」
「奥? 誤魔化すな、違うだろ。何て教えたっけ?」
「……っ!」
揶揄するような志貴の言葉に、一瞬だけアルクェイドの目に理性が戻ってくる。だがそれは羞恥を呼び覚まし、より深い快楽を彼女に覚えさせただけだ。
女性の絶頂は、男性のそれと違って十分に体と気持ちを覚えさせていれば、一度では終わらない。絶頂に達しても、ひと段落おいて次の絶頂が来る。
「あ、や、やだぁっ! 今、イったのに、ああ゛っ!? や、やだ、私、こんな下品な言葉……ぁあ゛っ!?」
「そんな事、今更気にするなよ……っ!?」
中途半端に戻ってきた羞恥と、激烈な快楽の合間で意識が混濁しているのか、教え込まれた言葉をつい口走るアルクェイド。完全に心も体も無防備になった彼女を追い詰めるように、志貴は薄く笑いながら奥をごりごりと責め立てる。
横で見ていたシエルがごくりと息を飲んだ。
「ひっ、あぁあっ!? それ、ダメっ、やめて、志貴っ! 感じすぎちゃ、うぅっ!? あっ! あぁあ゛っ!? また、またイくぅっ! ポルチオ潰されて、イくぅっ!!!」
折れないかと心配になるほど半身を仰け反らせて、アルクェイドがより深い絶頂に達する。その断末魔と、彼女に淫語を言わせた達成感に志貴もまた、高ぶりを解放する。
彼女の最奥に、熱く煮える白濁液をぶちまける。そればかりか、刷り込むように切っ先で子宮口へと塗りたくる。
一方的な欲望の発露。ただ相手を孕ませてやろうという意志がそこにはあった。
「っ、あっ! あ゛、あ……あっ」
「ふぅ、ふぅ……んっ」
最奥を貫いたまま、アルクェイドへと覆いかぶさって口づけを交わす。先ほどまでの乱暴で壮絶な性行為からは程遠い、優しい確かめるようなバードキス。
虚ろに濁っていたアルクェイドの瞳が、心地よさそうに細められた。
「ん……志貴……好き……」
「ああ。知ってるよ」
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスを繰り返す。荒い呼吸に上下する胸が、少しずつ穏やかになっていく。
そんな穏やかな恋人同士の逢瀬を、シエルはその真横にいながら、ただじっと眺めていた。
あまりに激しい交合を目の当たりにした興奮で、彼女もまた、顔を赤く上気させ、息を荒くしている。
「あ…………」
何事かを呟きかけて、きゅっと拳を握りしめる。
その秘所は、もう隠しようがないほどしとどに愛液が溢れ、ベッドに染みを作っていた。
「ふぅ……」
口づけを終えて、身を起こす志貴。
交わりがひと段落して気持ちは落ち着いたが……しかし、彼の分身はまだ、アルクェイドの中でガチガチに硬度を維持したままそそり立っている。
「っあ……っ」
ずる……と引き抜くと、白くねばついた愛液が糸を引いた。
アルクェイドの秘所からは、精液と愛液の混合液がどろり、と零れる。股を開いたままの潰れたカエルのような姿勢で、無気力に放心している彼女の姿を見ると、たちまち逸物は臨戦態勢へと移行した。
このまま二回戦目を始めてもいいが……。ぐったりとベッドに沈む恋人の姿を見ていると、ちょいちょい、と彼の腕を控えめにひっぱる指があった。
「?」
「遠野君……」
横に振り返ると、白状にも今の今までその存在をすっかり忘れていた相手が、居たたまれなさそうに控えめに、しかし絶対に離すものかと力を込めて志貴の腕をひっぱっていた。
視線を逸らしたその横顔は、羞恥と興奮に真っ赤に染まっている。
その、素直じゃない相手に、志貴はくすりと微笑んだ。
「ごめんごめん、先輩。じゃあ、その……抑えの利かない後輩の相手をお願いしてもいいかな」
「! し、仕方ないですね。私は先輩ですから……後輩の面倒を見るのも、仕事のうちですから。ええ」
言葉とは裏腹に嬉しそうに身を摺り寄せてくるシエルに、志貴はちょっと困ったように笑いながらも、彼女の細い腰を抱きしめた。
「じゃあ、お願いしますね……」
「え、ええ……仕方ない、ですもの」
言い訳をしながらも、口づけを交わす。
一方、二人の様子を、アルクェイドはぼんやりと虚ろな視線で見つめている。
その口元に、淫らな微笑を浮かべて。