現実に勝ち越え、夢を掴む。
※この作品のみ、AIは使用していません。
……10年後。
何年もかかったけれど、僕は作家としての歩みを続けていた。どこかの出版社の新人小説賞も取ることができ「遅咲きの新人」として少しだけテレビにも出られた。
すでにいくつかの作品が出版され、書店の棚に並んでいる。
今はまだ兼業作家だけれど、もう少しで専業になれそうだ。
そう、……あれから間もなく、人生の伴侶を得ることができた。妻は聡明で、一緒に過ごしていると僕の知的好奇心を満たしてくれる。勿論……夜も快調だ。おかげで娘も生まれた。今は4歳になる。
・・・
ある寒い日、どうしてもとせがむから、娘を公園に連れて言った。ブランコで遊ぶ娘をベンチから温かく見守っていた。
ふと、娘が駆け寄ってきた。
「パパ、雪だよ!」
見上げるとチラチラと雪が降り始めていた。僕はしばらく眺めていた。
僕は空を見上げたまま、呟いた。
「雨だ……」
娘が咎めるように叫んだ。
「パパ、雪だよ!」
「うん、でもパパには雨なんだ」
僕の顔を流れる一筋の流れに、不思議そうに尋ねた。
「パパ……どうして泣いているの?」
僕は涙をぬぐい応えた。
「うん、むかし、雪の日に出会った恩人がいてね……ママやお前がそばにいるのもその人のお陰なんだ……」
「ふーん」
娘はあまり興味の無さそうに周囲を見渡した。
遠くから娘を呼ぶ声が聞こえる。
「あ、タカシくん!」
娘のボーイフレンドも来たようだ。彼女はタカシ君に駆け寄っていった。
「幸せになれよ」
僕が目を真っ赤にしたまま娘たちを見守っていると、妻が傘を持ってやってきた。ゆっくり、ゆっくりと僕の方へ向かってくる。
彼女は僕に傘を差しかけた。白い空が紅い傘に隠される。
「あらあら、こんなに濡れて……あぁ、あなた……やっぱり泣いていたのね」
彼女は全てを悟った様子だった。僕は少し俯き、恥じ入る様に応える。
「……うん」
妻は恩人の正体を知らない。
僕はどこか罪悪感を抱えたまま応える。
「いつもすまない……」
「いいえ」
妻は微笑んだ。
「あなたの恩人は、私の恩人よ」
僕はそっと涙を拭った。
「そうか、……そうだな」
妻は少し膨らんだお腹をさすった。
「調子はどうだ?」
「えぇ、エコーで見てもらったけど、とても元気ですって」
「……そうか」
僕は過去に飛び続けていた意識を現在に、愛しい妻と娘と、……まだ見ぬ新たな命に向ける。
「僕の人生、まだまだこれからだな」
「そうよあなた、いつまでも元気でいてくださいね」
「うん」
そう言うと僕は立ち上がり、妻の手を取って娘の元に向かった……。