※この作品はR-18です。

雪の降る夜   作:あべ模型製作所

9 / 9
泡沫の夢。エピローグ
現実に勝ち越え、夢を掴む。
※この作品のみ、AIは使用していません。


雪の降る……

 

 

 ……10年後。

 

 

 何年もかかったけれど、僕は作家としての歩みを続けていた。どこかの出版社の新人小説賞も取ることができ「遅咲きの新人」として少しだけテレビにも出られた。

 

 すでにいくつかの作品が出版され、書店の棚に並んでいる。

 

 今はまだ兼業作家だけれど、もう少しで専業になれそうだ。

 

 そう、……あれから間もなく、人生の伴侶を得ることができた。妻は聡明で、一緒に過ごしていると僕の知的好奇心を満たしてくれる。勿論……夜も快調だ。おかげで娘も生まれた。今は4歳になる。

 

 

・・・

 

 

 ある寒い日、どうしてもとせがむから、娘を公園に連れて言った。ブランコで遊ぶ娘をベンチから温かく見守っていた。

 

 ふと、娘が駆け寄ってきた。

「パパ、雪だよ!」

 見上げるとチラチラと雪が降り始めていた。僕はしばらく眺めていた。

 

 僕は空を見上げたまま、呟いた。

「雨だ……」

 娘が咎めるように叫んだ。

「パパ、雪だよ!」

「うん、でもパパには雨なんだ」

 僕の顔を流れる一筋の流れに、不思議そうに尋ねた。

「パパ……どうして泣いているの?」

 僕は涙をぬぐい応えた。

「うん、むかし、雪の日に出会った恩人がいてね……ママやお前がそばにいるのもその人のお陰なんだ……」

「ふーん」

 娘はあまり興味の無さそうに周囲を見渡した。

 

 遠くから娘を呼ぶ声が聞こえる。

「あ、タカシくん!」

 娘のボーイフレンドも来たようだ。彼女はタカシ君に駆け寄っていった。

 

 

 

「幸せになれよ」

 

 

 

 僕が目を真っ赤にしたまま娘たちを見守っていると、妻が傘を持ってやってきた。ゆっくり、ゆっくりと僕の方へ向かってくる。

 

 彼女は僕に傘を差しかけた。白い空が紅い傘に隠される。

「あらあら、こんなに濡れて……あぁ、あなた……やっぱり泣いていたのね」

 彼女は全てを悟った様子だった。僕は少し俯き、恥じ入る様に応える。

「……うん」

 妻は恩人の正体を知らない。

 

 僕はどこか罪悪感を抱えたまま応える。

「いつもすまない……」

「いいえ」

 妻は微笑んだ。

「あなたの恩人は、私の恩人よ」

 僕はそっと涙を拭った。

「そうか、……そうだな」

 

 妻は少し膨らんだお腹をさすった。

「調子はどうだ?」

「えぇ、エコーで見てもらったけど、とても元気ですって」

「……そうか」

 僕は過去に飛び続けていた意識を現在に、愛しい妻と娘と、……まだ見ぬ新たな命に向ける。

「僕の人生、まだまだこれからだな」

「そうよあなた、いつまでも元気でいてくださいね」

「うん」

 

 そう言うと僕は立ち上がり、妻の手を取って娘の元に向かった……。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。