※この作品はR-18です。

タツミ無双   作:聖獅

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理不尽を斬る

西へ向かう街道に杖を使い、日差しの強さを防ぐ為に手拭を頭から被った長身痩躯、40歳程の一人の男が歩いていた。

その横を、

 

「とうさん、どれくらいあるいたら、おじいちゃんおばあちゃんのところなの?」

 

「そうだな、あと1時間くらいかな?」

 

「えー、もっとはやくー!」

 

「これ我儘言わないの!あなたはお父さんにおんぶされてるんだから」

 

3人の親子が談笑しながら通り過ぎるのを、その男は僅かに笑いながら和む思いを胸に納めた。

 

そしてしばらく経つと、

 

『はて・・・?私よりも早く歩いて行ったはずが・・・さっきの親子の気配・・・匂いがまだ残っている・・・ふむ?』

 

 

街道から横に逸れ離れた所で、

 

武装した山賊が先の親子を縄で縛り、木に括りつけていた。

 

「どうします?こいつら?」

 

「そうだな、娘は売っぱらって来い!母親はまぁ…言うまでも無いな、父親は斬る練習にでもしろ!」

 

「おお!」

 

頭目が命令すると手下達もそれに従う。

 

猿轡もされ、親子は必死になって逃れようとするがどうにもならない。

 

 

「お前さん方、元は帝国軍兵士じゃないのかい?・・・革命で職を失ったのかい?嫌だねぇ、貧するのは・・・人間こうはなりたくないものだねぇ」

 

山賊一味がぎょっとして振り返ると、杖をついた男が立っていた。

 

「なんだ貴様!」

 

「・・・何故俺達が元兵士だと判った?」

 

「私も帝国に居た時は、あんた方兵隊さんの足音や動きを聞いてたからね、否応なしにでも隠し切れてねぇのさ」

 

頭目は舌打ちを鳴らし、

 

「見られたからには、お前も生かしておく訳にはいかん・・・無駄に命を散らすとは、つまらん好奇心に悔い、そして死ね!」

 

 

部下達が周りを取り囲む。

 

「やれやれ・・・、親切丁寧に私の実力を聞かせてやったのに、判らないか・・・だからお前らは三下風情なんだよ」

 

そう言い終えた後、後ろの敵が斬りかかる。

 

事もなげにかわすと同時に、後ろを見ずに杖を相手の鳩尾に叩きこみ、気を失わせる。

 

「ちっ、野郎!」

 

槍で突きかかる右手の敵と刀で斬って来る左手の敵をギリギリでかわすと、その槍は味方に突き刺さり、その瞬間彼は杖を槍の男の首に当て瞬時に地面に叩き伏ると同時に気絶させ、しばらくは動けなくなる程の苦痛も加える。

 

残り一人の部下は恐れおののき、逃げ腰の所を頭目に顎を砕かれるほど殴られ、失神する。

 

「おい、お前少しは出来るようだな・・・これでも俺はエスデス軍の教官だった」

 

「エスデス・・・だと」

 

男はその言葉に反応し、僅かに顔を顰めた。

 

「ああ、そうだ。帝国最強の軍隊のな。だが、くだらねぇ反乱軍が帝国変えやがったおかげで俺はお役御免だ・・・ちっ、エスデス様も腑抜けになりやがって、何処行きやがった・・・まぁそんな事はどうでもいいが、どれだけ俺が前の大臣共に貢献したと思っているんだ・・・世の中間違ってるよな?ああ?・・・こんな腐った世の中を楽しんでるような奴らは狂ってやがるんだ、だから俺達は悪くねェ!」

 

「そうかい?やれやれ・・・」

 

「お前俺の部下にしてるやるぞ、こいつらよりは役に立ちそうだ」

 

「・・・おい、ハナタレ小僧!死にたくなかったら、消えろ・・・」

 

それまでよりもぞっとする声色で言うと、相手も一瞬怯んだが、

 

「てめぇ・・・」

 

そう言って、重い得物を振り回し次第にその速度を上げていくとなんと、風圧による空気の刃を発生させ、触れる物を斬り裂く。

 

だが・・・

 

「なっいねえぇ・・・どこに?どこだ!隠れてねぇで出て来い!」

 

その瞬間に首下に杖が刺さり、苦しく息も出来ず倒れる。

 

そして彼は親子の縄をほどく。

3人が涙を流しながら礼を述べるに対し、

 

「なぁに、袖振り合うも何とやらってね・・・」

 

「あ!おじちゃん!」

 

娘が声を上げ、起き上がろうとする頭目が懐から銃を抜き出すと、

 

瞬時に反転し杖から目にも止まらぬ速さで居合を行い、

 

「ぐっああ・・・」

 

銃声と同時に苦悶の声を上げたのは撃った本人だった。

 

切っ先で銃口が相手に向くよう反転させたのだ。

 

 

「ふふふ、いやいやお嬢ちゃん助かったよ」

 

彼はそれと気付いていたが、娘の親切心に礼を述べた。

 

「何とお礼を言っていいやら、あの宜しければお名前は・・・?」

 

「名乗る程のものじゃありません・・・ではこの後の道中お気をつけて・・・」

 

母親に聞かれるも去ろうとする彼を、娘が呼び止める。

 

「あたしサキっていうの、だからおじちゃんもなのって!」

 

「んん?んん」

 

「これサキ!」

 

父親が娘を窘めるも、彼もその真意を判り始める。

 

「ああ、そうか・・・そうだね、名乗られたからにはおじちゃんも名乗らなきゃな」

 

彼は“二”と名乗り、礼をしたいという親に対し、

 

「じゃあ、お言葉に甘えて私は人を探しているんで、この人を見かけませんでしたかね?」

 

彼は懐から、一枚の紙を出す。

 

そこには白い軍服で水色髪の女性が描かれていた。

 

「この人は確か・・・エスデス元将軍ですか・・・?」

 

「ええ・・・実は私はその人に・・・恩がありましてね・・・」

 

「ああ、成程、それはそれは」

 

先程から彼の顔を見ていた、娘が

 

「にぃおじちゃん、目痛いの?」

 

「これ、サキ!」

 

「いやいや、良いんです・・・そうなんだ、おじちゃんは前はちょっと目が痛かったけど、今は見えなくても全然平気なんだよ」

 

そういう彼の目は針で縫われた痛々しい跡があった。

 

 

 

 

一方、彼らはあの後、簡素でも式を挙げたいというエスデスに対し、頑なに拒否するタツミに、駄々をこねまくる彼女の脅迫(?)まがいの要求、

 

「タツミ、あくまで式を拒むなら私にも考えがあるぞ!・・・ふっふっふ、これからは場所等も弁えず、タツミに口付けるからな♪」

 

などと言われ、彼も渋々式を挙げるのだが、そこでまた一悶着があり・・・。

 

それを終えた後、西の集落で部族間の抗争の仲裁をしたり、エスデスが元帝国将軍ということで嫌悪される等、彼女にとっても因果な目に遭った。

そんな中、比較的発展した西の町に流れ着き、そのはずれで廃屋を買い、修繕した後そこを二人の拠点として、彼はエスデスに氷の彫像などを造らせる仕事をさせ始めた。

それも軌道に乗り、ある夜、エスデスは彼に自分が居ない時にナイトレイド共と何をしていたのか?と聞いてきて・・・

 

「大体、こんな所か・・・もう良いだろう、これで十分話しただろ!・・・(まだ話してない事もあるがもう疲れた)」

 

「ああ、判ったぞ!つまり、タツミは私に初めから一目ぼれとやらをしていたのだな、だからナイトレイドの雌共にも目をくれず・・・、ふふふ、全く仕様の無いダーリンだな♪」

 

「何処をどう聞けば、そう聞こえるんだお前は!!・・・もう良い・・・疲れた」

 

「そうだな、そろそろ寝るとするか?・・・その、・・・だな、今日は子を作れそうな日だぞ・・・」

 

エスデスがもじもじ照れながら、顔を預けている彼の胸板からチラチラ彼の顔を窺う。

 

「ん?・・・いや、子供は作りたくない・・・」

 

「ふふふ、まだその気分じゃないのか?大丈夫だ、必ず子供を作りたくなるように、その困った可愛い心を変えて見せるからな!」

 

「こまったかわいい・・・、前にも作りたくない理由を話さなかったか?」

 

「そんな事は忘れたぞ!子供は何人が良いか・・・まず一人目は男が良いな、うむ、ダーリン似できっと可愛いだろうな・・・ふふふ、思わず沢山、口付けたくなるな・・・」

 

「おい!」

 

「ん?ものの例えだぞ?・・・はっ!?やっぱり本当は私を独占したいのだな!ふふふ、大丈夫だぞ、私のこの唇はダーリンだけの物だからな!例えダーリン似の可愛い息子でもとてつもなく我慢して、口付けはしないからな♪ただ、頬が擦り切れるくらいは頬ずりするぞ♪」

 

「いや・・・まぁ・・・うん・・・もう良い、寝てくれ!」

 

「仕方が無いな・・・では今日は我慢するか」

 

エスデスは彼に口付けた後、彼の胸を枕に寝始めた。

 

そして、

 

『やはり、判っていないか・・・エスデスは自分に向いている応報の流れが・・・』

 

ベッドの中、暗闇の一点をじっと見つめ、エスデスが完全に寝るまでその頭を撫でていた。

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