「!?・・・うっ・・・」
「どうした、チェルシー?」
アカメとチェルシーは長旅にも耐え得るよう、ナジェンダ紹介の舟大工に指導を受けながら人が使わなくなった舟の補修に勤しんでいた・・・そんな時のチェルシーの頭痛だった。
「ううん、何でもないよ・・・ただ、ちょっと・・・」
チェルシーには嫌な予感がしていた、それは
「タツミは・・・私達の前から姿を消して、もう何ヶ月経ったか・・・全く何処に行ったんだ・・・?」
「本当だよね・・・『タツミ・・・』」
チェルシーは曇り空を仰いで心の中で呟いた。
「さぁ、時間のある奴らはどうか見てってくれ!」
牛の皮を被った男、カルビが帝都の広場で路上芸を披露していた。
まずは手始めに、林檎数玉使ってジャグリングをし、終えた後に欲しそうな子供には渡し、次はパントマイムを行い・・・そのラストは黄色の長い果物の皮を食べて捨てた所作をした後、それを今度は別の役としてその皮を踏み潰そうと思いっきり走って飛び上がった後、それに躓き豪快に転ぶ・・・というものであった。
観客からは爆笑の渦が巻き起こり、おひねりが飛び交い、それを拾い集め生計に当てている。
「くぅ・・・け、結構面白かったじゃない・・・ふ、ふん、でもあたしはアイドル目指すんだから、・・・そうよ、もっと有名になってあたしを見下してきた連中を逆に見下して・・・ハーフとか肌の色の違いで虐めてきた奴らを逆に虐げてやるんだから・・・、ってぇ!それするにもお払い箱になったあたし達じゃひっそり生きていくしかないじゃない?なんでよぉー!革命成功したのもあたし達が頑張ったからなのに―!あたしの勝ち組計画―!これもなにもかも全部あいつのせいよー、あいつ、変に力があるんだから、あんたが居たらナイトレイドの事を単なる噂で処理して、・・・そしたらそしたらあたしは・・・大舞台に立ってたのに・・・むきー!・・・全くあたしが有名になったらタツミはマネージャーくらいにはしてやったのに・・・うふふふ」
マインは変装してカルビの芸を見ていたようだが、色々と妄想と独り言を呟いてい
る。そこに、
「はーい、おじさん!あたしもやらせて?」
「ん!?」
カルビが何事かと振り返ると、
「じゃあ、2番スズカぁでぇーす、うぃき、まーす!!・・・ひでぶぅーー!!」
勢いよく芸を披露とする彼女を
「はい、スズカさん遊びに来たんじゃありません!」
ランはスズカの首根っこを即座にひっ掴み、広場外へと引き連れて行く。
「さて、スズカさんここで問題です・・・私達は一体何しにここへ来たのでしょう
か?」
「げほっ・・・えー、帝都観光?」
ランが笑顔でビンタを・・・、ビシビシビシ×10hit ROUND1 スズカKO!
「ぶふっ・・・え、え~と、帝都の民衆の活気を調べるだったかな・・・」
「はい、正解です・・・元々の観光の意味は民衆の生活状況を調べる意味があったんですがね」
「じゃあ、あたし合ってた」
「スズカさんがそういう意味で言ったのではないと判ってましたので×です」
「ぶー!!」
少々理不尽なやり取りをするランだが、スズカにはそういう対応が一番だと把握している。そして、そこに
「久しぶりね・・・」
「あ、貴女は・・・、・・・誰ですか?」
ランの?にずっこけるマイン。彼女は被っていた青髪長髪のカツラとマスクとサングラスを取る。
「あんた忘れたの?痴呆でも始ってるの?馬鹿じゃないの?」
「ああ・・・やっぱりマインさんでしたか・・・変装の為とはいえ、極めて怪しかったので知らない人を装おうと思いましたのに・・・残念です」
「・・・あんた、タツミと何となく似てるとこあるわよね!」
「そうですか?まぁそれは良いとしまして、貴女がた元ナイトレイドの方々が何故まだ帝都にいるんですか?・・・まさか・・・まだ暗殺稼業を続けてたくて、ここに居るんですか?」
ランが静かに殺気を沸き立たせるに対し、
「違うわよ!あたし達はほとぼり冷めるまで旅に出るつもりなのよ。今はそれまでの資金集めの小銭稼ぎと・・・あと、タツミも探してるのよ」
殺気を納め、
「そうでしたか・・・タツミ君を・・・」
彼は以前タツミと会った事を話す。
「なに?あんたら密かに会ってたの?・・・まったくあいつ、その事あたしには一言も言わなかった癖に・・・しかもあたし達には何も言わずにどっか行って、・・・もぉーばかーーー!!」
「・・・それだけ」
「そうなのよ♪タックンはあたしに会わずに一人で拷問出来るもん(注・タイトル詐称)だけマスター(ラン)に渡して・・・お預けを永遠に・・・あ~~ん♪」
ランの発言を遮ってスズカが喘ぎだし、
「ぶべら!!」
「・・・それだけ貴女方は彼から信用されてなかったんじゃないですか?」
にっこり語るランは裏拳をスズカ顔面にかまし、そして、こけるマイン。
「な~んで、あんたにはそんな事言える訳ぇ!!」
「半分冗談ですが」
「半分なの!?」
足を上げたまま気絶しているスズカ。
「・・・私も彼では無いですから、全て判る訳じゃありませんが・・・何となく貴女方を信用しきれてない事もあったんじゃないですか?」
「はぁ!?あんた、タツミとあたし達の何が判るって言うのよ?良い?あたしはね
ぇ、時には皆で怪談話で盛り上がったり、・・・もう~あの時タツミ怖がってあたしに抱きついたり・・・そして無人島で二人きりになって・・・んふふ、全くあいつったら~~」
「あ~・・・大体判りました。つまり、エスデスさんと良い勝負の妄想癖がおありなんですね?」
「う、ううう嘘じゃないわよ、本当の事よ!!しかもあいつと一緒にするんじゃないわよ・・・ん?」
本当の事だと言うが、マインは明らかに動揺している!
「・・・はいはい・・・まぁ、彼の場合、意識して距離を敢えて置いたのかもしれませんがね・・・」
「どういう事?」
ランはそれに対しては答えず・・・、だがマインは・・・引き続き、足を上げたまま気絶しているスズカ。
「エスデス・・・そういえば、あいつあれから見かけないけどあんた知らない?」
「さぁ知りません!・・・、・・・と言いたい所ですが、大方彼でも追ぃ~かけて~雪国~・・・」
「・・・滑ったわね?」
「・・・おほん、ではなく乾燥した西の方じゃありませんかね」
「うわっ!?あいつ何やってんのよ!?信じられない!あたしの帝都で有名女優計画がぁあああ!!」
「・・・貴女方は帝都を離れるんじゃなかったんですか?・・・それに、暗殺稼業されるよりはいいですが・・・マインさんが女優さんですか?・・・ぶふっ、あ、失礼」
ランの失笑に、
「あんたぁ何笑って・・・、ふっ・・・まぁいいわ。そうやって笑っていられるのは今のうちなんだから!・・・ほとぼり冷めたら帰って来て、あたしとタツミのタッグで吠え面かかせてやるんだら、おーほっほっほ!」
うざっ・・・と、心の中で思うラン。
「とにかく、こうしちゃいられないわよ。タツミは西に行ったのね?待ってなさいタツミー!あんな拷問年増女から、仕方なく・・・助けてあげるんだから!!」
マインはそう言って駆け出し行った・・・が、ランは
「・・・・・・何故彼が、“乾燥した地に行く”と言わず、“西へ行く”と言った
か・・・マインさん、貴女は西方浄土という言葉をご存じなかったのですね・・・タツミ君は、一概には言えませんが・・・彼は死ぬつもりだったから、西へ行くと言った・・・自分の悲しみが理解できないであろう貴女方に彼は、ならば何も言わないのがせめてもの優しさ・・・とでも思ったんですかねぇ・・・ふ~む・・・」
「え?何?タックンどうしたって?」
気が付いたスズカが起き上がり、
「何でも無いですよ、・・・生きてたら彼ともまた会えるでしょう・・・仮に死んでも、こうして貴女の為に残したものがあるんです・・・人は死んでも、生きている人の記憶の中に残り続けれれば・・・私はそれで十分だと思います・・・ただ、こんな形で残るのもどうかとは思いますが・・・」
ランはスズカの胸元にしまってあった、タツミのスズカ向け拷問冊子を取り出し手に取る・・・本気で書かれたものがあるが、中には冗談だったり、拷問とは何か?を考えさせられる内容もある。
「あ、マスター?」
子供のように取り戻そうとするスズカの頭をランは撫で、それを彼女に返し、
「さて・・・まだ仕事は残ってます、行きますか」
「アイアイサ―」
ランの後をスズカは追いかけた。
後年、カルビ氏は雑誌記者にこう語っている。
「いや、どうも・・・いえいえお構いなく・・・そうですねぇ僕がこの道を志したのは今から10年前だったかな?丁度その頃、皇拳寺って所を破門にされましてね。結構良い所までいったつもりだったんですが、なんで破門にされたんだっけかな?すみません、忘れました。たぶん俺が一番強いとか思ってたんだと思います。そんな時に・・・確かエスデス将軍と言ったかな?え?覚えてますよね?帝都で一番強い女将軍と言われたあの・・・それで彼女主催の武道大会がありまして、俺の腕を見せる良い機会だと・・・で、初戦で確か・・・え~と、タツオ・・・ああ、確かカツオ君と言ったなぁ。彼と当たったんですよ、そしたら何を思ったのかいきなり黄色い果物の皮を地面に放り投げてきましてね・・・あの時は馬鹿にしていると本気で頭にきましてね・・・そう、挑発行為だと。はい、実は昔やってました芸の原点がそこでして・・・(笑)で試合の結果は何処をどうされたか訳が判らないまま、あっさり倒されたんですよ・・・しかも彼、エスデス将軍とその後話をしてて何か気に入らない事でもあったのか、これまたなんか倒しちゃって、そのまま担いで室内に・・・いえ、その後の事は知りませんよ(笑)でもびっくりしましたね、あんな無名の青年があの将軍もあっさり倒すんなんて・・・後からじわじわと自分の未熟さを思い知りました・・・え?カツオ君今何処に居ますかって?・・・さぁ何処でしょう?もし会えたら、お礼の一つでしたら今なら言えますね(笑)・・・でも、負けた直ぐ後の時は当時やってました仕事も手ぇつかず、武道・・・というよりも闘う事もいやになって・・・これから何していこうかと思っていた時に、近所の子供たちに、“おじさん、あの時の試合面白かったね~”って言われまして、その時は子供にも馬鹿にされてイラっときたんですけども、そこで・・・」