この間、マインは修行しながら独自にセリューを追跡していた。
そして・・・、ナイトレイドとしての仕事の依頼が帝都民から入り、仕事の下調べをし終え帰り際・・・。
マイ「あーやだやだ、こんな森ばっかな所。・・・ん?」
山小屋の前に一人の女性と犬らしき動物が焚き火で話をしている。
セリ「はい、コロ魚焼けたよ」
コロ「・・・きゅいきゅいきゅい!」
セリ「え?この間まで見たく死刑囚でもなんでも良いからたまに人間を食べたい?駄目よ、コロ!」
コロ「いいい!」
セリ「何故って・・・駄目なものは駄目よ!」
コロ「きゅきゅきゅい!」
セリ「人間は結構色んな生物食べているから、一人でもいなくなればそれだけ、多くの生物も助かるって?・・・コロ、なんか良い事言ってるけど本当はただ食べたいからそんな事言うでしょう!あんまり我がまま言うと閉じ込めるよ!」
コロ「きゅいー・・・」
セリ「なんで人間は駄目で他の生き物は食べても良いかって?・・・同じ人間は食べない方が良いに決まっている・・・て、あいつなら言うわ。なんとなくだけど」
コロ「・・・きゅきゅきゅい」
セリ「自分は帝具だから人間じゃない。だから、共食いにならないからOK!だって?・・・あんたも人間から作られたのよ」
コロ「・・・・・・」
セリ「とにかく、もう二度と人間食べちゃ駄目、でなけりゃあいつがコロ、あんたをどんな目に遭わすか・・・」
コロ「・・・・・・」
マイ『・・・・、ふ、ふふふ、とうとう見付けたわ。シェーレの仇、セリューユビキタス!絶対に仕留める!』
そのマインをタツミは離れた位置で木に隠れて、手裏剣片手にマインの様子を窺う。
マイ「・・・・・・」
彼女の銃型帝具パンプキンの引き金に指の力を入れる。
タツ「・・・・・・・」
タツミはいつでも手裏剣を放つ体勢でいる。
セリューは食事を終え、本を読んでいる。
セリ「ふ~む、アクニンショウキ説か、悪こそ救われる・・・?どういう意味だろ?」
コロ「・・・・・・?」
マイ「・・・・・・はぁ・・・、シェーレもこんな方法での仇討ちは喜ばないわよね、きっと。せめて遺言くらいは聞いてやるか、・・・あたしも甘いわね」
タツ「・・・・・・」
手裏剣を納めるタツミ。
セリ「ふむふむ・・・・ん!!」
コロ「!!!」
マイ「久しぶりね、セリューユビキタス・・・」
セリ「あ、あんたは・・・ナイトレイドの一味・・・、よくここが判ったわね」
マイ「あたしの仲間を殺したあんたへの憎しみ、片時も忘れた事が無かったわ、覚悟しなさい!!」
コロ「グルルルルル!!」
セリ「・・・・・タツミ『自分の死に時は自分で決める』・・・『とうとうその時が来たって事かな、タツミ』・・・死ぬ前に一つ聞かせてくれない?」
マイ「・・・・?・・・あんた・・・以前に戦った時と比べて随分しおらしくなったじゃない?『これは、油断を誘う為の作戦?』
セリ「あんた達ナイトレイドは、帝都の治安を乱す、金を貰って人殺しをする殺人集団じゃない?」
マイ「・・・帝都の治安ってなに?私腹肥やす大臣やその配下の奴らが安全に暮らせるのが治安って言うの?市民は重税や圧政で苦しんでいるのに・・・」
セリ「私達、警備隊は反乱軍なんて革命軍とか聞こえの良い呼び方もされるが、国に仇なす犯罪者集団と教えられたわ、ナイトレイドも」
マイ「・・・・・・」
セリ「あんた達は国に反逆してまで、見つかったら処刑されるかもしれないのに国に反旗を翻すの?」
マイ「・・・私はね、今のこの国が大嫌いなのよ!!もともと私は西の異民族とのハーフで・・・そりゃもう酷い差別を受けたわ。あんたなんかに判るもんか!人ってね、自分と毛色の違う奴には・・・弱い奴には、もしくは集団から外れている奴には攻撃して排除しようとするのよ。今の帝国の西の領土はもともとその異民族のものだったのよ。この革命が成功したら、その土地は彼らに返還・・・そしたら、双方の交流が盛んになって私みたいなハーフで苦しむ人間を減らせるわ!」
セリ「・・・・!」
マイ「あんたが信じる国ってなによ?あんたが信じる正義ってなによ?」
セリ「・・・今まで私は自分の行動を振り返るなんて事無かった・・・、人から受けた優しさもそのまま信じてた。けどある人間に会ってから私も考えるようになった。今の目の前にある現実は本当に見える通りなのかって・・・、目に見えない何かがあるんじゃないかって」
マイ「ふ~ん、少しは言うようになったじゃない・・・」
セリ「確かにあたしも任務で何人か殺してきた・・・けど、殺す事自体が悪じゃないかって・・・そう思うとあんたがいくら人の為って言ったって、殺している事には代わりは無いじゃない!」
マイ「・・・確かにあんたの言う通りよ。でもね、あたしは自分が正義だと思って無いわ。・・・そう正義じゃない・・けどね、一人の許せない奴の為に他の十人の良い人が苦しむ姿を黙って見過ごせないわ。・・・人ってね、話して判る奴と判らない奴がいるのよ。・・・権力とか身分で分けられたら尚の事、下の者の意見なんて耳に入らないわ。あんた・・・あたし達と闘った時、こちらの言い分聞く気あった?」
セリ「・・・・うっ・・・けど、こんな私でも変われた。だからもう・・・」
マイ「甘いわね、今言った通り、身分も権力も無くして対等に話せる・・・或いはいつでも対等な立場になれる環境にでもならない限り、話合いにはならないわ・・・人ってね、自分がその立場にならないと判らない事もあるのよ・・・だからその立場に・・・虐げられる立場に一生立たないと保証される所に居たら相手の意見なんか聞かないわ・・・あたし達革命軍がいるのも帝国が耳を貸さないからよ・・・だから元将軍が革命軍にもいるのよ、この事実判る?」
セリ「・・・・・・・そういう事・・・、けどそれって他人のせいにしてない?自分が変われば帝国だって自然に変わるんじゃあ」
マイ「そう思うならあんた帝国を内部から変えてよ、・・・でもね、悪いけどあんたにそれは出来ないわ!」
セリ「今は無理でもいつか必ず!」
マイ「違うわ、あんたには今ここで死んで貰うわ・・・、例えあんたが改心しても、いえ改心したフリかもね、どっちにしても仲間の仇をここで討たせて貰うわ。」
コロ「ガルルルルルル!!!!」
コロは巨大化し戦闘態勢に入る。
セリ「コロ!やめて!」
コロ「・・・・・・?」
セリ「・・・判ったわ。確かに私の言った事を信じろと言っても無理かもね。それに私も・・・ひょっとしたら無実だったかもしれない人を殺したかも・・・そういえば、あんた達、「すみません」とか「正体がばれた以上、来て貰うか・・・」とか言ってたなあ、それを聞いた時は賊の戯言だと気にとめなかった、けどひょっとして本当は話し合う余地が・・・もっとよくあんた達の事調べてたら別の行動も取れてたかもね・・・けど、どのみちあの時の私の立場なら良くてあんたら生かして捕縛だけどね」
マイ「・・・・・・」
セリ「・・・・・・」
マイ「・・・私達も殺し屋、いつか報いを受ける日が来ると覚悟してる、けどね死んだ者を・・・相手を必要以上に辱しめてきた事はないわ。あんたの帝具のその犬はシェーレを食べ殺した・・・綺麗な死に方じゃないわ・・・あたしはそれも許せないのよ」
セリ「・・・あたし達だって他の動物を焼いたり煮たり、人間に置き換えたら酷い方法で殺しているじゃない?それと何が違うの!そういう意味ではあんた権力で胡坐を掻いている奴らは下の者の気持ちが判らないと言ってたけど、人間とモノを言わない動物も似たものかもね」
マイ「・・・ええそうね、私もこれから行動を改めるわ。けどねとりあえずあたしとあんたは同じ人間同士、シェーレへの行動は許しておけないわ」
セリ「・・・・・・私も納得してすっきりしたわ」
マインはパンプキンの引き金に指を当てる。
セリ「・・・最期にお願いがあるんだけど聞いてくれる?」
マイ「・・・良いわ、言いなさい・・・」
セリ「このヘカトンケイル・・・コロを引き取ってくれる?」
コロ「・・・・・!」
マイ「その帝具を?・・・そいつも仇だから・・・核ごと破壊するわ」
セリ「お願い!コロは帝具だから私に命令されただけ、使う人間が違えばコロも変わるわ」
コロ「・・・・きゅ・・・・・い・・・」
マイ「・・・約束はしないわ、けど話だけは聞いたわ・・・」
セリ「・・・ありがとう。コロ・・・元気でね、私がなしえなかった正義、叶えてね・・・」
コロ「・・・・・きゅいきゅい」
首を横にふり、必死にセリューに縋るコロ。
セリ「コロ、あんたは帝具だから人間よりも長生きするの、お願い、いつか必ず本当の意味での正義の役にたって、・・・良いから言う事聞きなさい・・コロ!!」
マイ「・・・・・くっ・・・」
マインの照準がぶれる。
セリ「・・・なにやってんのよあんた!はやく!はやく撃ってぇぇぇぇぇええええ!!!!」
必死にセリューに縋りつくコロ。
マイ「・・・・・、・・・・・・」
セリ「コロ・・・・コロ・・・・・コロォォォォ・・・・」
涙を流しながらマインに背を向けて・・・せめてマインの銃撃から少しでもコロを庇うようにうずくまるセリュー。
マイ「・・・・・はぁ・・・・・馬鹿じゃないの・・・下らない三文芝居・・・興醒めだわ・・・、今日の所は見逃してやるわ。けど次会った時は必ず殺すから、いつまでも怯えて暮らしなさい・・」
セリ「・・・・・・・・」
コロ「・・・・・・・・」
マインはそう言い捨てて、森の闇へと走り去っていく。
セリ「・・・・・・コロ・・・コロ・・・うわぁああああああああ」
コロ「きゅーーーーーーいーーーーー!」
一人と一匹は互いを抱き締めながらいつまでも泣いていた。
タツ「・・・・・・・・」
ナイトレイドアジト
ラバ「よぉ、マインちゃん遅かったな、仕事の下調べは終わったのか・・・、・・・どうした?」
マイ「・・・、なんでもないわよ・・・いや、なんでもあったわ・・・」
ラバ「・・・・・・」
マイ「シェーレの仇は討ったわ・・・」
ラバ「・・・!セリューを仕留めたのか・・・、けど一人で仕掛けたのか、危ねえな。まあ、マインちゃんなら大丈夫か。単独行動は控えてくれよ」
マイ「ごめん・・・・・」
ラバ「・・・・・んん、ああ、まあ、なんだ、みんなには俺から上手い事伝えておくわ。じゃあ今日はもう疲れたろ、お休み」
シェーレの墓の前、月明かりに照らされている。
マイ「・・・・・・・・、シェーレ、これで良かったのかな?あたしの行動間違って無かったのかな?・・・良いよねこれで、良かったよねこれで?うう・・・うわああああああああああああ!!!!」
タツミはそんな彼女の姿を見届け去っていく。
(現在)
エス「・・・・・・・・」
タツ「・・・・・・・・」
エス「・・・・・・・・」
タツ「一旦これで話は中断だ、少し休むぞ。・・・どうした?」
エス「・・・ダーリン!!」
有無を言わさずエスデスはタツミを後から抱き締め、顔を寄せる。
タツ「な、な?どうした一体?」
何も答えずそのまま抱き締め続けるエスデス。