ぎにゃあああああ!!
人目の付かぬ河原で断末魔を上げ、胴が二つに割れた猫や犬が散乱し血みどろな図がそこに広がる。
陽は沈みかけ、逢魔ヶ時が差し迫る・・・
「くくく・・・やはり、木太刀ではつまらん・・・真剣を持ってこそ・・・この美しさ、命とは儚く、綺麗なものだな・・・犬猫でもそうなのだ・・・人は・・・、やはり、業深き人間こそその罪色は幾重にも輝こう・・・くくく、ははは」
其の刀を彩る血の色に恍惚な笑みを浮かべる・・・その男の名はイゾウ。
道場では最早彼に勝てる者はおらず、次第に周囲の人間からも疎んじられていた。
「・・・むっ・・・面妖な・・・、風の色が変わった・・・ふむ、これは拙者を試すと見た・・・ふふふ、今宵が新たな自分と成る門出となるやもしれぬな・・・ふふふ」
気配を感じて、引かれるように向かった先には白の引き回し外套に目深に被った三度笠、咥えた長楊枝が目立つその男が岩に腰掛け、杖のように白木拵えを地面に突き差していた。
侍なのか、地廻りなのか不明な妙ないでたちである。
男はイゾウを一瞥した後、それ以上は見なかった。
傍で無数のススキが静かにたなびく。
イゾウは咥えていた笹を投げ捨て、
『妙な男な・・・拙者を見て笑った?・・・ように見えたが・・・ふふふ、斬り応えがありそうな・・・』
イゾウは武者震いを覚え、一歩、また一歩と・・・少しずつ間合いを詰めていく。
ザ・・・・・・
ザ・・・
ザ…
・・・・・・
無ッ!!
イゾウは素早い抜刀でその男に斬りかかる。
外套がぱっと、閃いた瞬間、
その白木の鞘ごと、凄まじい力で弾く。
ぬっ!?こやつ?
即座に体勢を整え、上段からの斬りも弾かれ、
くっ・・・
よろめいたイゾウだが男は背を向け、そのまま数歩歩き立ち止まる。
つっ・・・、何処まで拙者を愚弄する・・・!?
イゾウは脇や額から汗が滝のように流れ、刹那が無限に感じられる時間を感じたその直後、
突ッ!!
白外套に穴が空く・・・同時にイゾウの鳩尾は白鞘で突かれ、
「ぐっ・・・がは・・・」
痛みで動きもままならず、呼吸困難に陥る。
男はそこから静かに白拵えの真剣を引き抜く・・・が、イゾウはどうにも抵抗出来
ず、白鞘を握ったまま・・・
男は右片手上段に振りあげた後、そのまま後ろ首目掛け振り下ろした。
帝都より南へと行ったある地方において
「貴様!ベア様の御前だぞ、道を開けんか!?」
「ああ!?」
街の往来をそう怒鳴られたその男シュラが、ベアとその一味の横を素通りしようとしていた。
「ベア様は、この地方を潤わす為に、必死に働かれ、他民族の脅威を仰られ、警備や軍装備を拡充されている方だ、その働きが判らず挨拶も無しに素通りとは・・・さては田舎者だな?」
「田舎者だぁ・・・?てんめぇ誰に向かってその口聞いてんだ?たかが地方の役人風情がよぉ・・・」
シュラも怒りに任せ睨みつける。
「ふぅ・・・仕方ありませんね、この方にも公平性というものを教えてあげなさい」
「はっ!!ベア様畏まりました!」
「ああ?公平性だぁ?面しれぇ・・・教えて貰おうじゃねぇか?」
シュラはその部下達を全員のした後、
「ま・・・まて・・・私は、・・・私に危害を加えれば、た、ただでは済まないぞ!」
「お前さっき公平性がどうのこうの言ってたよな?お前もぶん殴らなきゃ、公平じゃねぇよな?おお?」
「私はあのオネスト大臣と親しい間柄だぞ!こ、こんな事して只で済むと」
「オネスト大臣だぁ?・・・へへへ、ははは・・・お前と親しいなんて聞いた事ねぇぜ?ハハハ、こりゃいいや。どうせ大方親父に貢いで、2つ3つばかし耳触りのいい言葉でも言われただけじゃねぇのか、・・・お前は死刑な、親父に言っとくわ」
「え?あ?親父・・・貴方まさか、大臣の・・・が、あががが・・・」
恐怖とストレスでベアは嘔吐し、
「げっ、きたねぇ奴だな・・・もういいわ、俺が直々に死刑にしてやるわ」
そこに見物している観衆の中から白い外套で茶髪の男がやって来る。
「・・・そいつを死刑にするのは別に構わねぇが、手順を踏まねぇと親父さんもちぃと面倒だと思うじゃねぇのかい?なぁシュラさんよぉ・・・」
「あ・・・?なんだ、俺に喧嘩売ってのかお前?・・・俺は今、機嫌がわりぃんだ・・・殺されてぇか?」
「・・・なんだ?じゃあ小僧?親に喧嘩売っちゃいけねぇ相手を教わらなかったのか?ならば俺が親切に教えてやろうか?」
「・・・ああ・・・。判った、お前も死刑確定だわ」
1分後、街の水飲み場に連れられ、
「ぶはっ、何処だここ・・・お、お前!」
気絶したシュラは白外套の男に気付けの水を浴びせられた。
「どうだ?喧嘩売っちゃいけねぇ相手が少しは判ったか?」
「くっ・・・この野郎、さっきは油断しただけだ、俺が本気になりゃお前なんざ!」
「お前の下らねぇプライドなんざどうでもいんだ!お前・・・大臣を、親父を超えてぇんだろ、なら教えてやるさ・・・」
「な、なんで知ってやがんだ?いや、んな事どうでも良い・・・お、俺が何処の野郎ともわからんねぇ奴に聞くと思うか?俺一人の力でのし上がってやるに決まってんだろ!」
「さっき、親父の名ぁ出して、その力を少しでも頼ろうとした奴がか?ナマ言ってんじゃねぇ!!」
彼はシュラを壁際にふっ飛ばし、
「良いか?もうお前に選択肢なんざねぇんだ?俺に従わねぇなら、死んで貰うぜ?・・・安心しろ、俺はエスデスよりは優しい・・・・だけどな、時には奴よりも厳しいぞ」
「て、てめぇ・・・、ちきしょう・・・、(エスデス?誰だそいつ・・・)」
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