※この作品はR-18です。

タツミ無双   作:聖獅

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悪党が斬る!(参)

ここは帝都、表通りの賑やかな一角とは裏腹に路地裏はあからさまに治安も悪く、暴行が後を絶たない。

 

「お・・・おねがい、たすけて・・・だれか・・・」

 

「そう逃げるなって、可愛がるだけだって、大丈夫直ぐ気持ち良くなるから、な?」

 

恐怖に声も掠れ大声も出ず、年端もいかない少女に男がそう言って近づいて来る。

 

そこに肩を叩かれ

 

「ああ?なんだ、今良い所?」

 

次の瞬間、男は殴り飛ばされゴミ溜めに突っ込む。

 

「げほ、ごほ、な、なんだてめぇ!」

 

その殴った男は全身浅黒く頭は剃りあげ、しなやかな筋肉を持っていた。

 

「ここは俺達のシマだ・・・下らねぇ事してんじゃねぇよ」

 

「あ・・・?俺を誰だと思ってやがんだ?良い気にな・・・」

 

その後ろにおどろおどろしい雰囲気を纏ったもう一人の男が立って壁に寄り掛かっているのに気付き、こいつは不味い・・・と、その男の本能に告げていた。

 

「お・・・覚えてやがれ、必ずこの礼はしてやるからな」

 

 

 

「けっ、口程にもねぇ・・・げっ?兄貴?・・・タツ兄ぃ・・・あ~・・・なんだ睨み利かせてくれてたのかよ・・・待っててくれよって、言ってたのに・・・ひょっとして俺の事信用して無かったのかよ?」

 

「そうじゃねぇ・・・もうお前は昔のお前じゃねぇよな・・・俺はただ暇つぶしにどう喧嘩するか見物に来ただけだ」

 

「あ~オレかっこうわりぃ・・・俺も早くタツミの兄ィみてぇに一睨みであんなチンピラ追い払いてぇぜ・・・」

 

「そのうちお前も出来るようになるさ、チャンプ」

 

二人のやり取りを呆然と見ていた少女は自分がどうやら助かったのだと把握し、

 

「あ、あの・・・ありがとうございます・・・」

 

「お・・・?おお・・・」

 

チャンプは気不味そうに視線を泳がせ、それを見ていたタツミは

 

「・・・嬢ちゃん、おまえさんなんでこんな所にいるんだ?」

 

「あたし・・・よくわからないんですが、エライひとに逆らったつみとかでお父さんとお母さんが・・・それで、親戚のおばさんの家にこないだまでいたんですけど・・・いじわるされて、もう家に帰りたくなくて・・・それで・・・」

 

少女は唇を噛みしめ、必死に悲しみを堪える。

 

チャンプは哀れに思い、手を差し伸べ頭を撫でた瞬間、ドス黒い欲望が脳裏を掠め、

 

「うっ・・・」

直ぐに手を縮めた。

 

 

「大方、大臣かそいつらに連なる奴らに・・・それで、親戚連中もそんな彼らの子供を引き取ってたら上の連中の目の敵にされると・・・そんなとこだろうな」

 

「・・・・・・お、俺は・・・あいつとはちが・・・」

 

「おい、チャンプ!何ブツクサ言ってんだ」

 

「え?あ・・・いや・・・」

 

「・・・さて、どうするか・・・お前、何処か他に知り合いが・・・居る訳ないよ

な・・・」

 

コクンと頷く少女に、

 

「なぁ兄貴、・・・こないだの子みたいにあの先生の所にまた連れていかねぇか?」

 

「あのなぁ・・・お前、子供一人増えりゃそれだけ金もかかるんだぞ!あ?そんな、この界隈の悲惨な子供の面倒見てりゃな、金が幾らあったって足りねぇんだ、お前これ以上自腹切れんのか!」

 

「あ・・・う・・・もっと俺頑張るからよ!頼み兄貴、この通りだ!」

 

タツミは怒るか呆れるか逡巡し歯噛みしていた。

 

「・・・あ、あの・・・おにいさんたち・・・、あたしならなんとかがんばってここで生きていきますんで・・・さっきのことはどうも・・・ありがとうございました」

 

去ろうとする少女・・・だが、腹の虫が聞こえ、タツミは少女の肩を掴み、

 

「・・・一晩だけなら面倒見る・・・あとは自分で何とかするんだぞ、いいな?」

 

「タツ兄・・・」

 

 

 

 

数日後、チャンプは彼らが従えた飛行型危険種に少女を乗せて、ジョヨウと呼ばれる地方都市に向かった。

 

農村のその小高い丘に小さい施設が有り、そこの責任者にチャンプは会いに来た。

 

 

「おおーでっけー、こないだきたドラゴンだぜドラゴンー」

 

「のせてのせてー」

 

「あんたらこどもねー」

 

その施設の子供達が飛び出して騒ぎだしている。

 

「こら、お前達!まだ勉強も終わっていないだろ!終わったら、農作業もあるんだ、早く戻りなさい!・・・あ~チャンプさん、こんにちは、すみませんね、私の躾が至らずに・・・こら早く戻れ!」

 

「あはは・・・いえいえ、ラン先生、気になさらずに・・・それで今日はその、この子の・・・」

 

チャンプの後ろからランを覗き見る少女は、好奇心と不安な目でいた。

 

「話はタツミさんから直接伺ってます・・・あ、すみませんこの事は内緒にしてくれと言われたんでした・・・」

 

『ふっ・・・兄貴の奴』

 

「と、とにかくこの子の面倒は任せて下さい・・・さぁ可愛いお嬢さん、君の名前

は?」

 

とりあえず教室へ連れて行き、自己紹介を済ませ、一旦子供達にその子の事は任せた後、客室で茶を呑んで控えているチャンプの応対の為、ランは再び訪れた。

 

「お待たせしました・・・話には伺ってましたが、あの子も可哀想に・・・ただ、あの様子だと、貴方がたのケアがしっかりなされたおかげじゃないのですか?普通、程度の差はあれ、トラウマが残るんですが・・・その兆候もほとんど無さそうなので安心しました。きっとあの調子なら周りの子達とも直ぐに打ち解けるでしょう・・・」

 

チャンプは湯呑を眺めながら、安堵した。

 

「チャンプさん、立ち入った事を聞いても宜しいでしょうか・・・たまに、子供達と一緒に遊ばれては?今まで何処か一線引かれて・・・子供達と距離を取られてるような・・・本当は子供たちが好きそうですのに・・・あはは、思い違いだったらすみません」

 

少し沈黙した後、チャンプは

 

「先生・・・俺は・・・言われた通り、子供が好きなんです・・・ただ、昔子供達に酷い事を言われて・・・ああ、俺も悪かったんでしょうけど、その頃家も飛び出しましてね・・・兄・・・ああ、タツミに拾われて・・・まぁ色んな仕事をしてきました・・・けど、俺やっぱり子供が心のどっかで好きなんですよね・・・で、いつだったか、タツミに聞いたんですが、“子供なんざ白い紙の上にいろんな絵具が置いてある状態で、混沌としてやがる、どの色に統一されるかは、自分自身と周りの大人次第だ!”って・・・」

 

「面白い例え方されますね・・・・ふむ、なるほど」

 

「それで、大人になったら子供の時より綺麗な絵にもなりゃ、その逆にドス黒くなるっと・・・で、俺、兄貴に聞いてみたんでさぁ・・・兄貴はどんな絵なんだって・・・そしたら・・・」

 

「そしたら・・・?」

 

「俺の絵は、黒さを極めて、逆に綺麗に輝いているんだって・・・まぁ呆れましたけど・・・ははは」

 

「あははは・・・そりゃ傑作ですね~」

 

そこでチャンプは声のトーンを落とし、

 

「俺は・・・子供たちに関わると・・・子供たちという絵を壊してしまいかねない・・・そんな感情が・・・だから・・・俺もあの子を襲ったあの野郎と・・・大差

なんて・・・ぐっ・・・」

 

「チャ、チャンプさん、・・・そ、そうでしたか・・・これは立ち入った事を聞いてすみませんでした・・・」

 

「いえ・・・聞いて貰って少しすっとしました・・・ですんで先生・・・俺は子供たちに余り関わる訳にはいかないんです・・・」

 

「チャンプさん・・・」

 

 

ランはそれ以上、言葉を掛ける術も無かった・・・

 

 

そして、帰り際

 

「チャンプさん、貴方のその心の葛藤が克服されるのを祈っています・・・どうかご自分に負けないように!」

 

「すみません、先生・・・もし、俺が自分に負けてしまった時は・・・そん時はタツミの兄ぃにぶっ殺される事になってますんで・・・」

 

チャンプは軽く笑いながら、危険種に乗って帰って行った。

 

1人になったランは、

 

「一体帝都には何人の不幸な子供が居るんだろう・・・今この時にも悲惨な目に遭う子がいるのかもしれない・・・全員を救うなんて・・・今の帝都では無理だ・・・私には私に出来る事しか出来ない・・・、・・・私もチャンプさんを非難出来るのか?この施設だって・・・太守の彼女を利用して資金を裏から回して貰っているじゃないか・・・、私だって本当は子供達に教える資格なんかあるのか・・・」

 

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