チャンプが孤児をランの居る教育施設に届けていたその頃、タツミは諸々の所用を済ませ、気晴らしに勝手知った場所へと足を伸ばした。
『さて、この世界のあいつもあの場所で店開いているだろうか・・・』
賑やかな表通りから少し入った入り組んだ道の中にその店、本屋はあった。
タツミは若干建物も道も自分の知るそれとは違うな、と改めて不思議な感心をしていた。
「お?お客さん、そんな店の外のものより中へ入って物色してかない?」
タツミは目を僅かに見開き、その緑色の髪をした、かつての喧しい悪友と姿形も同じ彼に反応した。
「・・・ああ、そうさせて貰う」
中は普通の書籍もあれば、18禁のコーナー等が有り、その中のタイトルに『姉より優れた妹は存在しませんわ!』『エスタス様の調教授業』等、ここの店長の嗜好が窺い知れるラインナップになっていて、タツミはそれらを眺め苦笑した。
「お、にいさんその辺に目がいくとは・・・さては同志だな?」
「あ、いや・・・」
「わかってるわかってる、皆まで言うな!俺のお勧めはだな、これと、ああ、これも良いな、にいさんも知っての通り、帝都は色々せちがらいんだよな~、リアルにもこのエスタス様みたいな美人な軍人ねーちゃんがいりゃ、少しは俺も別のシゴトにやる気が湧くんだけどな~」
「別のシゴト・・・?」
「ん?ああ~ああ!そう、この帝都じゃ本屋だけじゃあ喰ってけないのよ~だから、ちょーと副業もしてんだよね~、にいさん、興味ある?」
「ああ、いや別にとりあえず俺はこれで・・・」
タツミには彼が言う副業が何か等痛いほど良く判っている。
「はい、毎度!じゃあ、このエスタス様と二人だけの放課後授業と、アネライブと
はい、これ特典、おまけにこれも付けるから・・・にいさん、また来てよね~ありがとうございました~」
『こんのアホラバがぁああ!!!誰がいると言ったぁああああ!!!』
心の中で絶叫するタツミだが、勢いに押され渋々購入してしまった。
入口入れ違いで顔を布で隠し、マントで体を覆った大男が入って来た。
タツミは驚き振り返ると、
「て・・・店長・・・れ、例の物・・・入っているか・・・」
声色を変えているが、タツミは男の正体に気付き、さっきよりも更に目を見開いた。
「おお!心のお客さん!!いつもありがとうございます!!いやね、ここの所、帝国警察の取り締まりも厳しいんだよね~でもさ、俺は仁義に厚い漢なんだよ?だからちゃんと一冊取り置いといたよ?ただ・・・値段は定価どおりとは・・・」
「判っている!!」
そう言って何と5倍の金額を出した。
その本のタイトルは『××なお姉さんが少年に××する話』とあり、タツミは目玉が飛び出るほど見開いた。
「さっすが~お客さん、きっと社長か偉い方なんだよね~どこのおエライさんか判らないけど、これからも帝都発展の為に頑張ってくださいね~」
そして、足早に去っていくその男をタツミは呆然と見送った。
ここは帝都宮殿、皇帝がおわす場所であり、警備も厳重それを束ねる威圧感溢れるその男が戻って来た。
「ブドー閣下、いつも御苦労様で御座います!」
「うむ、お前達も御苦労・・・変わった事はないか?」
「はっ!!異常は御座いません!」
「陛下のおわす宮殿だ!一瞬たりとも気を緩めるな!!」
このブドーと言う男が居るだけで、その場の空気が引き締まる。
彼が去った後、警備兵達は小声で話す。
「流石大将軍だな」
「俺もいつかああなりてぇ~」
「ところで大将軍は日頃なにやってんだろうな」
「確か瞑想のはずだ、・・・後は己の鍛錬に余念がないはずだ!」
「すげぇな~俺なら・・・」
「お前なんか言わなくたってわかってんだよ」
卑猥な話になり、しばしその話に華を咲かせる。
鍛錬場の一室に、ブドー専用の部屋が有る。
そこには多種の武具や武器が並べられ、古今東西の武術や戦争に関する本が書棚に敷き詰められている。
ランプを灯した中、ブドーは文机の前に正座し懐から・・・取り出す前に改めて周りを警戒し、
「ふっ・・・」
誰も居ないと確認し勝ち誇った笑みを浮かべながら、先程の本を懐から取り出した。
「やはり・・・、年上の姉は良いものだな・・・ふふふ」
中身を開き、当然タイトル通り年上のお姉さんが成人以下の少年にあれこれするものなのだが・・・
「・・・」ブドーは汗を流した。
「・・・・・・・」ブドーは大汗を流した。
「・・・・・・・・・・・・」ブドーは滝汗を流した。
誰も居ないと思っていたが、改めて気配に気づいたからだ。
それはタツミであり、不法侵入をやらかしていた。
「き・・・きさ・・・・!!」
怒鳴りたくても怒鳴れない、部下を呼べば、・・・もし見つかれば今まで自分が築きあげたイメージが炸裂してしまう。
ブドーは咄嗟に帝具のアドラメレクを放とうとするが、タツミは床板を踏み抜き、視界が散乱それを目くらましにし、その隙に乗じ一瞬の間に、ブドーが攻撃の為置きっぱなしになったその本を取り上げる。
「なっ・・・貴様ぁあああああ、ここから生きては帰さんぞおおおおお!!!」
「この人質(?)がどうなってもいいのか?」
「くっ・・・人質(?)とは・・・生きているからこそ意味が有る・・・貴様ごと滅すればそれで済む事だ!!!」
そして、血涙を流すブドー。
「これがもし、味方の軍や反乱軍に知られたら、明日からのあんたの地位は明らかに失墜する・・・どうだここは取引しねぇか?」
荒れ狂うブドーを一旦落ち着かせ、タツミは邪悪な笑みを浮かべながら言った。