※この作品はR-18です。

タツミ無双   作:聖獅

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悪党が斬る!(七)

周りの手下達を跳ね飛ばし、機関車の如くそれは突進し、その獣を蹴り飛ばした。

 

 

「ギャワワワ・・・キャウン、キャウン・・・グルルルル・・・・・・・」

 

 

チャンプはドグを蹴り飛ばしたが、

 

『ちっ・・・浅かったか・・・』

 

相手は一瞬怯んだものの、逆に闘争心に火をつけてしまった。

ドグの主人は怒りと恐怖の感情でない交ぜとなり、オタオタしている。

 

こうなればもう殺すしかない・・・だがそうなると、

 

 

 

「・・・タツミさん、これは一体どういうつもりですかね・・・?」

 

バックは怒りを抑えた静かな声色で問いかけた。

 

タツミはこうなる事を計算に入れていたが、さも偶発的なものだったという顔で

 

「うちの奴が申し訳ない・・・」

 

「どうけじめをつけるつもりなんですか?」

 

互いに静かに睨み合い周りが固唾を呑んで見守る中、ドグと睨み合っていたチャンプの前にタツミは出て行き、相手の実力が判らぬ獣は牙を剥き襲いかかった。

 

 

「キャ・・・、ガアガガッガ・・・」

 

 

ドグは後ろでのたうちまわり、声を思うように出ず口から血を垂れ流す。

タツミは半身ですれ違った瞬間、その舌を引っこ抜き、更に顎も外していた。

 

「・・・・・・!?」

 

一瞬の早業にバック初め周りは戦慄し、チャンプさえも改めて恐怖した。

 

「地獄の閻魔は舌を引っこ抜くモノと相場が決まってんだ・・・お客さんあんたの犬、躾が悪いんじゃないのか?」

 

主人のスゲは震え上がり、陰に隠れてしまう。

 

バックも敵に回せば極めて厄介な相手が目の前に居ると再認識している、だがこのままでは今後の商売に差し障る、何か妙案は無いか必死に計算し始めた。

 

「タ、タツミさん、先に手を出してきたのはそっちだ。これ以上邪魔をするならこちらも考えが有る!」

 

精一杯の虚勢を張り、恐怖を隠す。曲がりなりにもどん底から這い上がり荒事もこなしきて自負があるが今はそれも霧散霧消している。その考えもブラフでしかない。

 

タツミは右手に付いた血を刀の血振りのように振り落とし、それでも残った痕は懐の紙で拭い、更にそれをバックの座るテーブルの前に突きだした。

 

「な、これは・・・」

 

それは少々厚みのある札束だった。

 

「なぁバックさん、うちの奴があんたの客の可愛い犬に暴行を働いたのは詫びる、だが俺に手荒な挨拶した分は差し引いて・・・これでどうだ?」

 

「あ・・・ぐっ・・・ま・・・まぁ、これで手打ちにするつもりなら・・・今回だけは大目に見ましょう」

 

バックは止むを得ないと・・・この辺が妥協のし所かと納得しようとしたが、タツミは相手の落とし所の結論を察し

 

「・・・ん?ちょっと待った、俺にあんな真似させた原因を作ったのはそこの小娘共だ・・・人に迷惑掛けたらどうなるか、叩き込む為にこいつらも貰ってくぜ、良いな?」

 

「な?何を馬鹿な!?ふざけるのもいいかげんに!」

 

「なぁあんたの持ってた契約書を見せてくれねぇか?俺も後学の為に良く見ときてぇんだ・・・」

 

バックは内心の動揺を必死に隠した・・・改竄が見透かされる可能性を、本来は親達には休みは年一の数年奉公という名目で取り交わしただけだったのだ。とはいえ、力の無い者が契約違反と判って訴えてもこの帝都では通らない。・・・が、そうでは無い者なら

 

「ぐ・・・うっ・・・そ、その必要はありません・・・ええ、判りました。貴方にはいずれ先のお詫びをと思っていた所なんです・・・これでチャラで良いですか?・・・・・・」

 

タツミなら・・・この男なら・・・徹底的に調べ上げる恐れがある・・・親達の契約控えを見た日には・・・自分達の縄張りを取られる・・・最悪殺される大義名分を与えてしまう・・・。タツミはニヤリと笑みを浮かべ

 

「あんた、若いのに話が判るな・・・じゃあ、邪魔したな」

 

チャンプがそのやり取りをただ唖然として見守っているだけだった為、タツミはどやしつけ三人の少女達を連れてくるよう促す。

 

事態の推移をただ静観するしかなかった彼女達は、この場の地獄から別に地獄に行くのかもしれない・・・そんな諦観もあったが、今はその場の強者に従わざるを得なかった。

 

足の折れたファルにチャンプは声を掛けた。一瞬体を強張らせたが、もうどうにでもなれと素直に背中に乗り、ルナは片目を失った状態で心のダメージも強かったが、どうにか歩きだし、エアには上着を着せ5人はやっとその場を後にした。

 

その後ろ姿をバックは恨みのこもった眼球でいつまでも睨みつけていた。

 

 

 

「・・・ふむ、帰って来たでござるか・・・タツミ殿とチャンプ殿の足音の他に」

 

帝都の裏通りにある人家から少し離れた目立ちにくい場所に彼らの根城は有った。外観は普通の民家だが地下には武器や抜け道も作られている。

 

「イゾウ、頼んだ仕事は片づけてくれたのか?」

 

「・・・いずれタツミ殿の耳に入るで御座ろうて、風のうわさとやらでな」

 

タツミはそれを受け、片側の口角を僅かに上げた。

 

 

「ところでその童達は?ククク、紅雪の良い贄になってくれそうな・・・」

 

「おい、イゾウさん。この子達が怖がるだろうが!!」

 

3人の少女は感覚が麻痺し始めたのもあるのか、僅かに恐れただけだった。

 

「ククク、いやいや済まんで御座るな。この帝都では犬猫同様に命は簡単に消えていく故な、童達もせいぜい気をつけるでござるよ」

 

イゾウの悪ふざけをチャンプが窘める。

 

タツミはファルを背中から降ろさせ、無言で足を触り

 

「うっ・・・つ・・・いたああああああ」

 

骨接ぎの要領で折れた足を繋ぎ合わせる。それを包帯で縛り上げ仮処置を施す。

 

「とりあえず、このまま数週間骨同士が付くまで安静にしてろ」

 

その間チャンプはルナの傷付いた片目を消毒し包帯を巻く。

ただ、彼の脳裏に一瞬邪な感情が芽生えた・・・“俺はあいつ等とは違う・・・あんな外道共とは違う・・・下らねぇ事考える、俺は消えろぉお”

それまで圧し黙っていたエアが口を開き

 

「どうして・・・あんな大金を出してまであたし達をあの場から助けてくれたんですか・・・それとも、あいつらみたいに、似た事をするつもりで・・・」

 

彼女同様他の二人の少女も疑心暗鬼に駆られている。

 

「あ、いや、俺達は・・・」

 

「・・・・・・・」

 

チャンプが戸惑っているに反しタツミは何も言わずにその場を離れ、これからの身の振りの判断を仰ごうと彼を追った。

追った先で立ち止まっているタツミにチャンプは近づこうとすると・・・

 

「ぐ・・・・・・げほごほ・・・」

 

殴り飛ばされ、数メートル吹っ飛びチャンプは驚愕した。

 

「てめぇ、勝手な事しやがって!あの場に俺が居なかったらどうしてたんだ?おお?」

 

「つぅ・・・、そ、そりゃあ勝手に動いたのは悪かったけどよ、あの場はああするしかなかっただろう!」

 

「それで無駄金使っちまったわけだ・・・、大体俺があの痩せ男にカマかけて、その通り契約書偽造してやがったから、あれで納まったが・・・本当にあいつの言う通りだったなら、逆襲されて大恥かくとこだったんだぞ!・・・下手したら俺達のこの帝都での立場も悪くなるところだ、判ってんのかぁあ!」

 

「わ、悪かったよ・・・だけどな、俺はあの時に止めに入ったのは間違ってたとは思って無いぜ」

 

「・・・じゃあ、お前は丸腰であいつら全員相手に出来たのか?仮に倒せたとしてもだ・・・目の敵にされて付け狙われるのがオチだぞ」

 

「・・・・・・」

 

チャンプは言い返せずに黙りこんだ。そんな彼に対し、タツミは懐の紙を取り出し投げ渡した。踵を返して去った後、チャンプはその紙で口から出た血を拭った。

 

その様子を少し離れた影から覗いていた少女達は、

 

「あたし達・・・助けられたの・・・?つぅ・・・いたぁ・・・」

 

「ファル、足が折れてるのですから無理しない方が良いのです」

 

ルナの肩を借りているファルも

 

「ルナも、あんた目はもう大丈夫なの?」

 

「まだかなり痛みますが、平気です。私はこう見えても我慢強いのです」

 

「・・・・・・」

 

エアは口が重くなっている。

 

「エア?どうしたの?」

 

「無理も無いのです・・・エア、私達は何とか大丈夫なのですから、気にしないで下さい」

 

「ねぇ・・・どうして二人ともそんな呑気でいられるの?あの人達だって安心させといてまた、あたし達に酷い事するかもしれないのに?あたし、怖い・・・」

 

「・・・あたしは信じるよ」

 

「ファルちゃん!?」

 

「あのまま、あそこにいれば、あたしはどうなってたか・・・とりあえず、あたしはこの状態じゃ逃げる事も出来ないよ。だから不安だったら二人で逃げなよ」

 

「・・・ファル、あなただけ格好付けようたってそうはいきません。私だって頭がジンジンしてますし、少なくとも今は彼らは私達に危害を加えようという気はなさそうです・・・それに、ここを出て行って、またバック達に捕まれば今度こそアウトですよ・・・最悪と、幾らか悪いのどちらか選べと言われましたら・・・考えるまでも有りません・・・うっ・・・すみません・・・私も少し休みたいですね」

 

「ルナちゃん・・・、わかったよ、ここから逃げるにしてももう少し様子を見てからだね・・・」

 

 

その時、イゾウが居間に入って来て皿に盛った先程蒸したふかし芋を頬ぼっている。三人はその物音にビクつき、後ろを見るとランプの灯ったその居間のテーブルで美味しそうに食べる彼の姿が目に入った。

 

「はむはむ、我ながら上出来で御座るな・・・しかし、ちと作り過ぎてしもうたな・・・うむ、仕方ない。これは、一人では食べ切れん・・・だから、誰かが食べて

も仕方ないでござるな・・・もうこんな時間か、歯を磨きさっさと寝ると致すか!」

 

“チャンプ殿、拙者の房楊枝知らぬで御座るか?”

“いやイゾウさん知らねぇって!”

 

その場から離れたイゾウが何やら軽口を叩き合っているのが聞こえ、三人は顔を見合わせた。

 

居間には湯気の立ったふかし芋が目に入り、

 

「ねぇ・・・お腹へったね」

 

「ファルは食いしん坊ですからね・・・けど、お腹が空いたのは事実です」

 

「・・・あたし食べてみるよ、3人の中で怪我してないのあたしだけだから、ね?」

弱々しい笑顔を二人に向けたエアは止める暇もなく、食べた。

 

「んぐんぐ・・・、たぶん毒は入って無いと思うよ・・・でも食べて数時間したら出る毒もあるかもしれないから・・・朝まで二人は待った方が・・・って、えええ?」

 

今度は止める間もなく二人がぱくつき始めた。

 

「ばくばく・・・、なにを、ばく、水臭い事言って・・・ばく、ここまできたら死ぬ時は一緒です・・・あ、意外においしいですね」

 

「エアあんた!そっちの大きいのあたしもらうから!もぐもぐ・・・ウうっ・・・み、みず!」

 

エアは呆気に取られながらも二人に負けじと食べ続けた・・・そのうちどういう訳か理由が判らずも涙がこみ上げ、泣きながら食べ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

それから幾週後、朝から天気は悪く帝都郊外の墓地にはひと気等無いと思われていたが・・・

 

フードを被った男が大金を握りしめ、ぬかるんだ地べたに膝をついている。

 

「どうか・・・この恨みを・・・」

 

対手の男は革命軍の密偵であり、ナイトレイドのサポートもしている。

顔半分を隠し、周囲に気を配り罠では無いかと警戒もしている。

 

「事の次第をお聞き致しましょう・・・バックレさん」

 

「う・・・嬉しいです。まさか、噂のナイトレイドの方と会えるなんて・・・」

 

「私はナイトレイドではありません・・・」

 

帝都にある宗教的施設の建造物に手紙や願い事を書くスペースが有り、そこに暗号で書かれた内容を読み解くと、彼らと接触できるというものである。

帝都に複数潜む密偵達が革命仕事の片手間にそれを望んでいるであろう人を見つけた時、それとなく方法を伝える。

その気になれば、金だけ受け取り懐に納めれるが、そんな事をすればナイトレイドから反感を買うだけでなく、ナイトレイドは実は革命軍の仲間と密かに民衆に思われている為、自分達の評判を下げる真似をする訳にもいかない。

 

 

 

「それで、頼みの筋とは・・・」

 

その男は涙を流しながら

 

「はい・・・先日、私の可愛い姪達が・・・田舎から私を頼って、出稼ぎに来たんです・・・ですが・・・ある日、彼女らは私の目の前で・・・くっ・・・乱暴をさ

れ・・・、足を折られ目を潰され・・・それに、犯され・・・純潔も・・・くそ・・・私に力があれば・・・殺しても殺したり無い・・・くぅぅぅぅ・・・」

 

「・・・それは、何処の誰ですか・・・?」

 

「・・・それは・・・最近、この帝都で密かに幅を利かせている、ちょっとした顔役のタツミ、という奴です・・・こいつが私の姪達を・・・ちくしょう、ちくしょうおおおお」

 

バックレと名乗った男は地面を何度も叩いた。

 

「事情は判りました・・・その姪御さん達は?」

 

「殺されました・・・ですから、どうかこの恨みを・・・晴らして下さいぃぃぃ・・・」

 

「・・・裏を取り次第、お引き受け致します・・・但し、もし依頼に嘘偽りが有った場合は・・・、」

 

「有った場合は・・・?」

 

「貴方の命・・・頂戴致します」

 

「は、はい・・・それはもう・・・どうぞ」

 

そして、その男はお金を渡し、頭を深々と下げている。

雷鳴が轟き辺りが一瞬明るくなったその時に、陰湿にほくそ笑んだその男の笑みが泥水に映ったが、その密偵は気付けなかった。
























「ファル!」謎のポーズを取っている。
「ルナ!」謎なポーズを取っている。
「エア!」謎々なポーズを取っている。
「チャンプ!」不可思議なポーズを取っている。

「み」
「ん」
「な」
「揃って!」
「「ワイルド特選隊!!」」

彼ら後方が謎の爆発を起こし、決め顔で悦に入る。
そして、彼らは仲間になって欲しそうにタツミを見ているが・・・彼は新聞を読んで一切を無視した。


「師匠!一緒にやってよー」
「そうです、タツミさん、私達と活動を共有すべきです!」
「そうですよ、あたしも恥ずかしいですが、頑張りました!」
「タツ兄ぃ、ノリ悪いぜ!」

・・・彼は新聞を読んで一切を無視した。


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