※この作品はR-18です。

タツミ無双   作:聖獅

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悪党が斬る!(八)

「博士~伝書鳩ですよ~」

 

「なぁ~にぃ~?アタシへのラブレターかしら~うふふふ・・・何々この娘の髪の毛から目を一つ生成しろ、一か月以内な、以上・・・・・・んもぅ~ドぅえす~~」

 

セリューが博士と呼ぶスタイリッシュに手紙を渡し、彼(?)が何やら悶え蠢めいている。

 

「も~ぅ、タツミ様ってばいっつも無理難題ばっかり~~~いけず~~そのクセ全然アタシの相手してくれないんだから~くやし~い~わ~」

 

「博士、前から気になってたんですがそのタツミってどういう人なんですか?」

 

ここはスタイリッシュの個人研究室であり、セリュー・ユビキタスはその助手を務めている。

 

「あん?あんたみたいな小娘が知る必要無いのよ!」

 

「・・・の割にはたまにタツミさんの話題が出ますよね?」

 

「むっ・・・言うようになったじゃない?・・・仕方ないわねぇ、耳の穴かっぽじって良く聞きなさい・・・あれは忘れもしない、華の学生時代・・・」

 

スタイリッシュはその回想に入り、セリューは茶菓子に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

ナジェンダはナイトレイドアジト広間に皆を集めた。

 

 

「集まって貰ったのは他でも無い・・・みんなシゴトだ・・・」

 

一同の目が光り、それぞれ最近の近況を言い合う。

 

「メイドの仕事も楽じゃないわよね~誰かさんが店長のお陰で?」

 

「あたしのお陰で変装完璧に出来るのに、上司の苦労、部下知らずよね~」

 

「誰が上司よ!!!」

 

「けど嬉しいです。ナイトレイド以外でまともに仕事が出来たのは初めてなので・・・」

 

「まともねぇ・・・シェーレはドジしててもそれが受けてたからね~」

 

「・・・レオーネは接客も上手くて凄かった」

 

「マッサージ屋で慣れてたからね~アカメももう少し愛想よくすれば人気出るって」

 

「ああ、俺も行きてぇな~・・・チャルシ―ちゃん達のメイド喫茶」

 

「ほぉ、ラバ?じゃあ俺が代わりにメイドしてやろうか?」

 

ブラートの親切(?)にラバックは顔面蒼白となり、

 

「それでボス、今回の相手は?」

 

アカメが先を促す。

 

「標的はタツミという奴だ、そいつの仕事は今一つ不明だが恐らくロクでもないものだろう。帝都で親を失った子供達をさらって売買しているという噂だ。つい先日、この帝都の叔父を頼って来た少女達がそいつに犯された上、無惨に殺されたそう

だ・・・そいつの居場所は・・・」

 

一同の目が表に出さないようにしていても僅かながら鋭さが増す。

 

「それで依頼料は500万・・・から密偵への手数料を引いて450万だ」

 

ここ帝国に置ける金銭価値として中々の高額の依頼だと皆もどよめく。

 

「これが奴の似顔絵だ・・・表社会では余り目立つ事をしていないからな、間違えるなよ・・・あと腕も立つとの事だ、油断するな!」

 

それを見て、ラバックの表情が固まる。

 

「全くちょっと良い男っぽいけど・・・腕が立とうが狙撃で一発よ!下衆な奴一人なんてあたし一人で十分だわ、450!」

 

「あはは、はりきっちゃて~・・・マインが450なら、あたしは440!」

 

「むっ?430よ!」「42じゅう~5!」「・・・415!」「413!」

チェルシ―と二人で細かく競り合っている中、

 

「なぁアカメ、今回のシゴトあたし達二人で一緒にしないか?」(410.5!)

 

「レオーネ、こないだ私が残していた肉が消えていた・・・」(はぁ?410.4!)

 

「ああ、あれね~・・・酒のつまみが無かったから、ちょっとねぇ~・・・」(もうあほらしー400.9!)

 

「・・・400!私一人で十分だ」 (あんた、細かく競り過ぎなのよ!)

 

「なっ!?くぅ~・・・390!」 (ブーメラン事案発生!)

 

「じゃあ~・・・私は~370です」

 

「ハッハッハ、シェーレ?最近俺も腕が鈍っててなぁ、腕が立つなら面白い、330だ!」

 

ブラートがこの中で最安値を叩きだす。

 

「330万・・・どうだ、他にはいないか?皆、ブラートに任せるか?」

 

ナジェンダが問うが、マインが待ったを掛ける。

 

「もぅ、ブラート!果たし合いとかじゃないのよ!そういう男の勝負は他でやって

よ、モノにはモノの相場ってものがあるじゃない?・・・だから、あたしは280!」

 

「あ~あムキになっちゃって・・・あたしは店長の仕事も忙しいから~降りるよ」

チェルシーも肩を竦め呆れていた、これ以上張りあうと当初の半値以下になってしまうと。

 

「・・・おい、マイン・・・フッフッフ、お前は実は男だったんだな!ならば俺も応えよう!250だ!」

 

「誰が男よ?違うし!!」

 

「250・・・、良いのかブラート?その分、差額は私に入るから構わんが・・・」

 

 

「・・・・・・10」

 

 

「10?じゃあ、あたしは・・・って、えええ?誰よ言ったの?」

 

「10万だ・・・ナジェンダさん」

 

「ラバ・・・あんた、正気・・・?」

 

マインもいぶかしみ一同ラバックに注目する、ナジェンダも念の為に聞き直す。

 

「ラバック良いのか?まさか、このタツミに個人的な恨みでもあるのか・・・?」

 

「あ・・・いや、別にそんなんじゃ無いですよ・・・ただ、少しでも金が欲しいだけでさぁ・・・」

 

ナジェンダも不審に思い、改めて問い直す。

 

「ラバック、判っているとは思うが私達のシゴトは個人の感情を剥き出しにすれば・・・感情で動けば仕損じる確率が高くなる。だから、本来なら標的の名前、顔形等しか言えないのが決まりなのだが・・・お前達とは寝食も共にしているからな、サービスで話していると思ってくれ・・・ラバック、感情に流されて命を落とすな

よ?」

 

ラバックは皆に見えないように一瞬険しい顔になるが、努めて明るく

 

「いえ、別に大丈夫ですって、タツミ何て奴と面識無いですし本当に10万でも欲しいだけですって、本の仕入れがここん所嵩んでるんですよね~あっはは」

 

「・・・いつも通り期限は2週間以内だ、仕留め損なえばラバを抜かして仕切り直しだ」

 

それを聞いたチェルシーは驚いて目を剥く。

 

「え!?ラバックを抜かしてって・・・彼が生きてた場合は、そのままですか?」

つまり仕留め損ねてもお咎めなしか、と彼女は聞いている。

 

「ああ、それがどうかしたか?」

 

「いえ・・・別に」

 

「何よはっきり言いなさいよ?」

 

「・・・あたしが居た所じゃ、期限内に標的を始末出来なかった時は同じ仲間に殺される事になってたの・・・」

 

一同それを聞き僅かに驚くが、

 

「我々の真の敵は帝国政府だ、仲間内で争っても仕方ないだろう。チェルシーが居た所はともかく、私達の所は私達なりのやり方が有る」

 

「そうですよね・・・その私が居た所の仲間達は全滅しましたからね・・・」

 

「あんた・・・本当は結構苦労してるのね・・・」

 

「・・・別に・・・それが普通だって思ってたし、恨みを持つ人から見たら早く相手を殺して欲しいって思うだろうし、厳しい決まりだったけど仕方ないかなって・・・」

 

チェルシーの相手の命だけでなく自分の命も重く感じていないようなその表情の横顔に、改めてマインは戦慄と憐れみを感じた。

 

「んん~・・・まぁ、チェルシーちゃんの身の上話は今度ゆっくり聞かせてくれよ・・・じゃあ、ナジェンダさん?」

 

前金の5万をナジェンダから受け取り、後金は済んだ後で貰う。ラバックは片手をひらひら去っていった。

 

 

 

タツミはここ数週間、アジトへ余り帰らず帝都の繁華街をうろついていた。

 

「オヤジィ、酒粕まんじゅうあるかい?」

 

甘味処の店軒下の長椅子に腰かけ、注文をしている。

腰の低そうな主人が愛想笑いを浮かべながら現れ、

 

「へいへい、どうぞどうぞ。最近甘いモノの物価も上がりましてねぇ・・・以前の3倍になりました・・・どうかご勘弁を・・・へへへ」

 

「あ?こないだ上がったばかりだろ?冗談じゃねぇや!何やってんだ政府の連中は?」

 

「あんまり大きな声で言うのは止めた方が・・・何処で特殊警察やらが見てるか・・・」

 

「特警や政府が怖くて道歩けるかってんだ・・・このままじゃいずれ終わりだな・・・なぁ?」

 

「勘弁して下さいよ・・・こっちに話振るなんて」

 

「・・・で、何か変な動きはあったか・・・?」

タツミはそれまでの声の調子を変えて低くドスを利かせる。

 

「いえ・・・今の所は・・・ただここ数日、反乱軍らしき密偵が動いているとか、例の先日の一件が何か絡んでるんじゃ・・・」

 

「だからあいつは、動くなっつったのに余計な尻拭いさせやがって・・・まぁ仕方ないか、ああいう目に遭いそうじゃなぁ・・・」

 

「・・・・・・」

 

他の情報交換をしている内に、女性の店員が注文の品を持ってくる。

タツミはそれを平らげた後、

 

「じゃあここに置いとくぜ」

 

「へい、またどうぞ、御贔屓に!」

 

タツミは品代よりも多めの金額を盆に置いていった。

 

 

 

 

ファルは気合い声と共に蹴り技をチャンプに叩きこむ。

それを片手で弾き、張り手の要領でファルを吹っ飛ばす。

 

「いったぁあああーい!!もっと手加減してよ―――!!」

 

彼らのアジトの物や木箱やらが散乱している置き場所に突っ込んだ為、酷い有り様である。

 

「あはっはっは、まだ骨だって完全にくっついて無いだろうに、その辺にしとかねぇと、また折れるぜ?」

 

「くぅ~~~~、ゼッタイおじさんをぎゃふんと言わせて見せるー!!」

 

「お?おいおい?俺はまだおじさんって年齢じゃねえぞ?」

 

エアとルナは傍で見物している。

 

「ファルちゃん元気になって良かったね」

 

「ファルから元気を取ったら何も残りませんよ?」

 

それに対し、二人は談笑し出す。

 

「しかし・・・エア、バック達から何かの仕返しが来ると思ってましたが今の所なにもありませんねぇ・・・」

 

「諦めてくれたのかな?」

 

「だと良いんですけどねぇ・・・って、のわあああああああ!!」

 

勢いよく吹っ飛ばされたファルが二人に直撃する。

三人は口喧嘩を初め、しまったなぁ・・・と頭をかきながら苦笑したチャンプが倒れているエアに手を伸ばす。

 

「うっ・・・」

 

一瞬邪な感情が湧きあがり、エアを押し倒す自分を想起してしまう。

 

「あはは、すみません・・・?チャンプさんどうかしました?」

 

「あ・・・いや、何でも無いんだ・・・あはは、ちょっと下痢気味でよ・・・稽古はまた今度な?あはは・・・」

 

3人の少女の苦笑いの声を聞きながら、家屋に入りチャンプは鏡の前で険しい顔をした自分と対峙する。そこにイゾウの姿も入る。

 

「チャンプ殿、己が持つ業からは容易には逃げられるもので御座るなぁ・・・」

 

「・・・イゾウさん、判るのか・・・?」

 

「拙者もお主の詳しい事までは判らねど、何やら己が己の思うように成れていない事だけは判るので御座るよ」

 

「丁度良い、イゾウさんはなんでタツの兄と一緒に来たんだ?」

 

「はて・・・懐かしいで御座るな・・・あれは拙者がまだ祖国に居た頃、数年前・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・長くなるので止めるで御座る!」

 

「・・・っておいいいい!!」

 

チャンプは壮大に突っ込みを入れた。

 

「くっくっく・・・まぁかいつまんで言うで御座れば、以前の拙者はあの時タツミ殿に首を刎ねられ、死んだ・・・ようなものであったな・・・拙者には斬る事の喜び、相手を殺す事の喜びが渦巻いていた・・・自ら斬られる事も然程苦ではないと思ったが・・・タツミ殿は恐ろしい御仁だ・・・相手の心の弱い面を突き、剛の者でも命乞いしたくなるような状態にしてしまう・・・それから拙者は己の業と向き合うようになったで御座るな・・・」

 

「・・・・・・」

 

「参考になったかは判らぬで御座るが・・・くくく、成程、タツミ殿は敢えてお主にあの童達を任せたであるか・・・これもまた修行で御座るな・・・では拙者も仕事に行くで御座るよ」

 

チャンプはイゾウの後ろ姿を見送り、

 

「修行か・・・何故俺は・・・あんな子供に・・・、俺自身がひょっとしてガキだからか・・・?」

 

そしてチャンプはふと気が付く。

 

「あれ・・・あのおっさん、なんの仕事してたっけか?」

 

 

 

タツミは帝都の門から出て付近にある森の中を歩いていた。

月が出て、微風が流れ心地良い。

 

・・・・・・月以外は漆黒の闇で塗られたその空間に居るものは・・・タツミは僅かに指を動かした。

その時、風の向きが変わる。

 

「よぉ、そっちは風下だぜ?姿隠して殺気隠そうが匂いで判るぜ?」

 

初めは微動だにしなかったが、この状態では埒が明かないと見て、

 

「いつから気付いてたんだ?お客さん?」

 

タツミはそれには答えず、

「・・・やっぱり本屋の店長か・・・こんな時間にお勧めの本の押し売りか?本日の営業はもう終了だろ、明日にしてくれよ」

 

「良いや、別のシゴトの営業は今からだ、おにいさんよぉ・・・」

 

ラバックは身構え、殺気を出し始める。

 

「正面切って闘うなんざ、あんたらしくないな」

 

「・・・まるで俺の事知ってるような口ぶりだな・・・ある程度はこっちの事も調査済みってか?流石ちょいと帝都の暗黒街で名が知れてるだけあんな・・・まさかあん時、店に来たのも・・・」

 

「どういう理由で殺しに来た?」

 

ラバックは何も言わずにタツミの隙を窺っている。

 

「そうか・・・それじゃあ仕方ないな・・・お前にはここで死んで貰うぜ、ラバック」

 

その時、空気が切り裂かれた。

 


















タツミは怪我が有る程度治って、元気になったファルにせがまれ稽古をつける事になった。
「タツミさん・・・いえ、師匠お願いします!」

面倒な顔はしながらも内心悪い気はしないタツミは相手をしていた。
初めは指一本で行い、そのうち空気投げのように手も使わずに投げ飛ばしたように見せた。
ファルは驚き、尊敬のまなざしで見るようになった、が一つ心配事があった。

『エスデスに見られてないだろうな・・・だけど子供に嫉妬なんか・・・』

彼らの世界の住人から見れば彼女は神のような立場になる。タツミでもこの世界の住人をしている以上、何処で見られているかまでは判らない。

数日は杞憂で終わったが、その日・・・。

「す、すみません・・・・ちょっとお腹が・・・あはは・・・」

その日一日、ファルはトイレと友人になった。
翌日も治ったと思って、タツミに稽古を付けて貰おうとすると・・・。

『ま、まさか・・・!?』

「おかしいね、ファルちゃんお腹そんなに緩かったっけ?」

「触らぬお腹に祟りなしですよ、エア」

疑心暗鬼のタツミは念の為にエアとルナと興味の引く話をして、1,2日親しく過ごした・・・そして、

「エ、エア、あ・・・あの本当に申し上げにくいんですが、く、口から臭いが・・・」

「え?いつもちゃんと歯磨きしているのに・・・でも、歯は良いほうだったのに、なんだか痛いような・・・けど、ルナちゃんもなんか・・・ごめん、臭うよ・・・」

「そ、そんな、昨日お風呂に・・・う・・・確かに・・・な、なぜでしょう?」

こ、これはアカン・・・疑念が確信に変わったタツミは少女達と余り関わらないようにした・・・。その後、案の定三人の症状は無くなった。


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