昔
「どんなにお前が腕をあげようと、お前がお前である限り絶対に俺には勝てん!」
「くっ・・・」
今
「ふふふ、タツミがどんなに腕を磨こうが、タツミがタツミである限り、私の愛の前に屈服する定めだぞ!・・・だからこないだの事でそんなに怒ってはダメダゾ、マイタツミ♪」
「ふぐぐぐぐぐ・・・」
エンシンはそのサーベル…帝具の円月刀で次々にかまいたち状の真空波の技を繰り出すが、ブドーには通じない。ブドーは微弱の電気を増幅させて、それを見えない防御壁の層と化し無効化している。
『ちっ・・・どうなってやがる?だったらこれならどうだ?』
ブドーの頭上に真空波を飛ばし、室内の外壁が崩れ諸々の塊が崩れ始める。だが、その落下も音も無くかわす。
「にぃ!??最小限の動きでかわしやがった・・・見ねぇで、か・・・」
仏心でも起きたのか、ブドーは説明した。
「空気の揺れ・・・それを感知したまで・・・雨粒をかわすよりも楽なものだ、雨にも空気の微細な押し退けが有るからな」
「ぐっ・・・」
何を言ってやがるんだ、こいつは・・・?化物だ・・・まさか、タツミよりも強いんじゃねぇだろうなぁ・・・ちっ、化物には化物でいくしかねぇ、か・・・。
「けっ・・・まさか、政府の腰抜け連中相手に使うなんざな、シュラやタツミを瞬殺出来る技なのによ・・・」
「む・・・?ほぉ、乱れた気を集中させ始めたか・・・」
ブドーは余裕から相手が何をするか見定めようとしていた。
エンシンは、帝具の其の刀を横にし、窓から入る月の光を自身の目に反射させ、次第に筋肉質な体が更に隆起し、衣服は破け、顔も変貌し狼のような獣人へと変貌した。
「ほぉ?その帝具にそのような奥の手があったとはな、実に興味深い」
一度発動してしまうと、効力が切れて元の人間に戻るまで暴れ続け、目に映る者を破壊し続ける禁じ手でもある。
完全に変身し、その刀をブドーに目掛け投げつけた。
「・・・!?」
それをかわし、そのまま背後の壁に真っ直ぐ突き刺さる。ブレもほんどんとなくその威力の程が知れた。
『掴み取ってやろうと思ったが、かなりの早さだった。理性を失った只の獣だと思うは早計か?・・・!?』
ブドーの2秒程の思考の間にエンシンは獲物目掛け一気に距離をつめ、長く尖った爪で刺し殺しに掛かる。
流水の如くそれをいなし、カウンターを叩き込もうと鳩尾に目掛ける。
ブドーの外を覆う防御壁は並みの打撃ならば、その打ち込んだ者が逆にダメージを受けるが、それを超える打撃はカバー出来ない。それでもその者に痛みは残るが、エンシンにはもう通じない・・・或いは痛みを感じていないだけやもしれない。
ぐがぁ、ぐぐぐぐあああ!!!
言語発声は人間のそれと違い出来なくなりダメージを受けているようだが、
『今、奴から飛びし去った・・・成る程・・・』
次はブドーから間合いを詰め、それに呼応するようにエンシンも殴りに掛かる。
だが、互いに両腕を封じ力の勝負となる。
「ぐぐぐ・・・流石は獣だな、大した力だ・・・この俺に力勝負とは・・・」
その間にエンシンは伸びた牙でブドーの頭を噛み砕こうと喰いちぎりに掛かる。
馬鹿め!!との発声と同時にブドーは後方に倒れ込みながら、エンシンの鳩尾に強力な蹴りを叩き込み、上空へ飛ばす。その反動を利用し、辛くも空中で回転し天井に着地した後、猛然と爪を尖らせブドーに落下する。
・・・愚かだ。
最小限の動きで、かわした後に鉄山靠でエンシンを吹っ飛ばす。
だが、ブドーの顔にも一筋の血が流れる。
怒りに燃えた唸り声を上げながら、エンシンは再び立ち上がる。
「・・・中々大したものだ、その耐久力、回復力、私の技を2,3度受けているのにな・・・ふっ・・・このままでは埒が明かんか。捕獲するのは止めにするか・・・死体でも何か判るだろう」
エンシンは相手の言葉が理解出来なくなっている、だが、本能的に侮られている事を悟り、闘志を再び剥き出しにする。
「良いだろう・・・引導を渡してくれる、来い!」
其のとき、二人の間に強力な衝撃弾が近づき、咄嗟に避ける・・・避けた後には地面を抉る穴が開いた。
「ぬぅ・・・、此奴との戦いで接近を気付かなかったか・・・」
後方の扉を見ると、パンプキンを構えたマインが立っていた。
「ちっ・・・、狙撃は完璧だと思ったのに、流石ね・・・ブドー」
「・・・・・・、賊か、そうかお前はナイトレイドの一味か・・・風変わりな体だ
が、そうか・・・ハーフか・・・成る程、大方世に逆恨みをし、賊になったか」
有無を言わさぬ薙ぎ払われた衝撃波が辺りを覆い、室内の内壁は崩れ、受けたブドーも後方へ飛ばされる・・・
「・・・・!?」
ブドーは防御に徹し、余りダメージは受けていないようだ。
彼を覆うアドラメレクにもだ。
なんて奴・・・あのパンプキンを受けて、大してダメージを受けてないなんて・・・。
「うむ・・・今のは中々良い一撃だった、その帝具は怒りで攻撃力が増すものだっ
たか?」
そうしている内に、エンシンがマインに牙を立て襲い掛かる。
一気に間合いを詰められ、予想外からの攻撃にマインも寸ででパンプキンで防ぎ、反動を利用して彼の顎にその帝具の銃床で一撃を加える、並みの相手ならダウンするほどの攻撃だ。
やったか・・・
エンシンは顔を仰け反らせるも、ギロリとマインを睨み再び蹴り飛ばす。
「きゃあああ!!!」
何とか防御するも吹き飛ばされ、追撃しにエンシンが迫る。
「くっ・・・何よこいつ?ブドーと闘ってたんじゃないの・・・?」
不味い・・・やられる・・・
「ふんっ・・・賊は賊同士で潰し合え・・・ん?」
ブドーは手を出さずに見ていると、何かが乱入しエンシンが吹っ飛んだ・・・
「いやぁ、おっさん共の相手してたら、遅くなっちゃった!モてる女はつらいね~あたしは本当は年下好み「緊張感ないの、あんたはああ!!」
「おお!?さっすがマイン、食い気味のツッコミ、冴えてるー!!」
帝具で獣化したレオーネが壁を破りそのまま相手を蹴り飛ばし、マインを救った。
瓦礫を払いのけながらエンシンが唸り声を上げ、マイン達を睨みつける。
「へぇ~結構本気で蹴ったのに・・・あんまり効いてないかな~」
「みたいね、けど何こいつ?」
「さぁね、アカメの村雨なら、こいつみたいなのでも即殺だろうけど、帝具の相性かぁ~アカメもまだ、他の奴に手こづってんのかな?」
「とにかく、今は目の前の相手よ。あんたはこの化け物をお願い、あたしはブドーを相手するわ」
それを聞いていた彼は、この自分相手に一人で挑むとは、と内心の失笑を隠した。
「うらぁああああ!!!」
何度か傷を負った後に、レオーネは相手の腕で腹を貫かれながらもエンシンの口中に手を入れ、舌を引っこ抜く。
「ぐがぐが・・・ぎゃああああああ」
更に毒を塗った手で口中を引っ掻き回した為、エンシンは苦しみだす。
レオーネは彼を蹴り飛ばし、佇んで帝具による回復に専念する。
「へっ、一丁上がりっと。マイン、そっちは頼んだぞ!」
「ほぉ、成る程。そういう倒し方もあったか・・・獣には獣なりの闘い方か」
ブドーが感心している中、パンプキンの衝撃弾が襲うが、片手で防がれる。
「なんて奴・・・」
「諦めろ・・・、お前達たかが殺し屋風情が、道から外れた外法者共が、武の高みを、闘うとは何かの高みを目指す我とは、そもそも重みが違うのだ。世を恨み、国を恨み、自らの生き方を省みない・・・貴様らとは背負う物が違うのだ!」
マインはパンプキンを降ろし、黙っていると
「・・・どうした?納得したか・・・一つ良い事を教えてやる、先程、賊の侵入時に大きな闘気を感じ、そして二つ消えた・・・かなり手練だろう・・・恐らくお前らの仲間、ナジェンダ、アカメ・・・かもしれんな。他の賊は知らんが、元々陛下の為に働く身でありながら、裏切り牙を向くとは天に仇なす大罪・・・全ては他の責にし、己の責とせぬからだ」
「ボスやアカメが死んだ・・・?マイン、そいつの口車に乗せられるな!」
「あれだけの気の強さ、お前らには判らぬか・・・ふっ」
マインはブドーを真っ直ぐ見据え、
「あたしはあんたがどういう生き方をしてきたかなんて、見てないから判らない。あんたみたいに、武を極めようとか、そんな殊勝な心掛けも無い・・・ええ、認めるわ。あたしは革命に成功して勝ち組になって優雅に暮らしたいって・・・だけどね、目の前の弱い人達が苦しんでいる現状をほっておいて、それが全部、自分の責任?生き方を省みない自分が悪い?あんたみたいに明日の食事の心配する事もなく、余裕があって武の鍛錬出来る人とは違うのよ、生きる事だけで精一杯な奴にはね、あんた一度あたし達庶民の生活してみなさいな!それでもまだ、自分の責任だっていえるなら、それであんたは本物だって認めてあげるわ!!」
「ちぃ・・・知った風な口を・・・」
マインはパンプキンを持ちながら空中へ高く飛び上がり、照準を定める。
「愚かな・・・回避が出来ない空中へと」
ブドーはアドラメレクから放たれる電撃球で撃ち落そうと力を溜める。
仲間の死、強力無比な相手、逃げ場はない・・・ええ、ピンチよ、話しても判らない相手なら尚更ね・・・、・・・いっけけえええええええ!!!!
なにっ!?さっきとは威力が・・・
だが、ブドーもその衝撃弾の威力を負けじと電撃球で寸前で耐え、徐々にだが圧し帰そうとしている。
ぐぐぐぐぐふぐぐ・・・く・・・・
マインもパンプキン自体が射撃の反動を吸収しているが、長くは持たない。
「ぐあああ!!・・・おのれ・・・」
ブドーの横面に円月刀が矢の如く飛び、寸で気がつき、弾いたものの傷を負い注意が逸れてしまう。
「な・・・お前・・・」
レオーネはダメージがまだ治っておらず、マインに加勢出来ない中振り返ると、そこには獣人が倒れていたと思っていた所に一人の男の姿を認めた。
効力が切れ、元の姿に戻ったエンシンは反動でもう体はボロボロであり半死半生で最後の力を振り絞ってのブドーへの一撃だった。
ぬあああああああぁあ!!!
ブドーは衝撃弾に巻き込まれ、そのまま後方の壁へと突き破り吹き飛ばされる。
マインは撃った反動で天井の地面を蹴り、一回転しながら辛うじて着地する。
「うっ・・・」
かなり体力も精神も消耗しているようだ。
「ははっ・・・やったな、ところであんた、助かったぜ・・・あ・・・」
レオーネは安堵し、エンシンに振り返るが・・・彼は既に絶命しゆっくりと倒れ、そのまま物言わぬ骸となった・・・だがその顔はどこか満足そうであった。
「・・・さっきのあの狼の化け物は何処居ったの?」
「まさか・・・この兄ちゃんが・・・?」
レオーネはも確証はないが、匂いが似ていたのでそう感じた・・・
其のとき・・・アドラメレクの電撃球がマインを襲う。
悲鳴を上げながら、直撃したダメージは致命傷に至る。
「ああ・・・・・うっ・・・そんな・・・」
マインは立てなくなり、内臓は出血し骨もひび割れている。
レオーネは彼女が無事か気遣い、ブドーを睨む。
彼はゆっくりとした足取りで一歩一歩彼女らに死が近づいている事を想起させるように距離を詰める。
「大した精神力だ・・・このアドラメレクに傷付け、私もそれなりのダメージを負った・・・先刻の若者は・・・ふむ、死んだか・・・私もそれなりに腕のある者達の稽古をつけているが・・・ここまで気合を見せたものは滅多に居なかったぞ・・・ナジェンダめ・・・狂ってしまったのがつくづく惜しいが、骨のある部下をもったな」
「くっ・・・しぶとい奴」
レオーネもある程度回復し、戦闘態勢を取る。
「お久しぶりです。こないだはお世話になりました」
エアは黒服の一人が他の仲間と離れて行動していた所を見つけ、廊下の真ん中で丁寧にお辞儀した。内心の恐怖を抑えながら・・・
「お前・・・あん時の・・・なんだ、意趣返しか?あいつらが邪魔に入りさえしなけりゃ・・・良い度胸だ。腕足全部へし折ってやるぜ」
拳の関節を鳴らしながら近づいてくる。
「相変わらず悪い人なのです、天罰を与えます!」
影に隠れていたルナがゴムパチンコで硬球を連弾する。
一撃目は見事にそのサングラスを割るが、後は防がれてしまう。
「ガキ共が・・・ふざけた事しやがって・・・てめぇ・・・ああ、片目になった小娘か・・・もうは片方も抉り取ってやるから覚悟しろ!」
その時天井裏に潜んでいたファルが男が視線を下に向け、首がやや倒れた形のところに強烈な踵落としを行う。
「うううりゃああああ!!!」
思わず苦しんだ相手に間髪いれずに着地後鳩尾目掛けて勢いよく蹴り上げ、そして、ファルは間合いを置いて身構える。
「どうだ!!」
「っ・・・今度はあん時の田舎拳法娘か・・・へっ・・・ちょっとだけ頭に来たぜ・・・てめぇら三匹とも楽に死ねると思うな!・・・・・・がっ」
以前よりは打撃力は上がったが致命傷までは至っていない事にファルは苦虫を潰し
た。その瞬間に針金を輪にして首に巻きつけ地蔵背負いの形でルナが男の背中合わ
せに両手で締め上げる。身長差で宙に浮いてはいる。
「ぐ・・が・・・ガキが舐めた真似を・・・」
振りほどくのは細くて困難と察してそのまま壁に体当たりして振りほどこうとした時、「黒服のおじさん!気をつけて危ないよ!」とエアが咄嗟に声を掛ける
???敵に何を意味不明なと思いながらもまずはエアを始末しようとした時に、後ろから肩を叩かれる。
振り向いたそこにはチャンプが立っており、無言で殴り飛ばした。
「ぐふっ!!!」
2,3mふっとび、その時にはエアはもう手を離していた。
相手の意識がふらついている間にチャンプは、髪を掴み上げ
「よぉ、また会ったな・・・気合入れてやるぜ!耐えな!」
鳩尾に強烈な拳が入りその周辺の骨は砕けてしまう。
もう男は激痛で自分では立てず、目もうつろに涎を垂らす始末。
「ルナの片目を奪ったのはお前だったよな・・・同じ事させて貰うぜ」
「ぐ・・・が・・・」
違う、俺はただ命令されてやっただけだ・・・俺は悪くないと、言いたかったが言葉にならない。
「安心しろ、お前に命令した奴もついでに同じ目に遭わせてやるからな!」
チャンプは人差し指で相手の片目を抉り取り、絶叫を気にせずに地面に叩き付けた。激痛で気絶し当分の間はもう動けない。
それを見ていた三人の少女達は、
「や・・・やったね・・・」
「天罰です・・・片目も慣れたら大丈夫なのですよ、おじさん?・・・もう聞こえてはいませんね」
「あ~あ・・・、あたしの磨いた一撃で仕留めたかったんだけどなぁ~く~やしい!」
以前の悲惨な目に遭ったせいか心なしか度胸も以前より皆備わっている。
だがチャンプからは、
「バカヤロウ!俺は心配で心配でそっちのほうが冷や冷やしてたんだぞ!どうしても一発殴らないと気がすまねぇって言うから・・・見てて心臓止まるかと思ってぜ」
「まぁまぁ、結果オーライじゃん!」
「ファルの言うとおりです!ですが仲間が来るかもしれません。もうここから離れて次はバックのお兄さんを探しましょう!」
「うん!いこう!」
「・・・・・・嬢ちゃん達、頼むからもう無茶な事はしないでくれよ・・・」
それに対し三人の少女達はチャンプは良いお父さんになれそうと笑い、それを受けた彼はその言葉に僅かながら居心地の悪さを感じていた。
とにかく、チャンプはその後も襲い掛かってきた黒服達を倒し、三人の少女達と共にバックの居場所を探すべく周りを警戒しながら歩を進めた。
そのうち偶然ルナが隠し通路を発見し、それを潜ると大きな部屋の中に何やら大量の試験管や髑髏印が散見し、普通の事を行っている様子には見えなかった。
「こ・・・これは一体・・・なんだ?」
「ちょっと嫌な匂いもしてるね・・・」
「ルナ、何か判らない?」
「う~ん・・・ちょっと調べてみますね」
ルナが書類やらに目を通している時に・・・チャンプはもう一人近づいてくる気配を感じた・・・
大分間が置いてしまいまして、お待ち頂いて方すみません。
仕事も好調なり、世の中も良くなればぁと精進しております(笑)