本当は昨年に完結させる予定でしたが、すみません。
あと1話位だと思います。
危険だ・・・この俺相手にここまで気配を断つとは、慢心が油断が・・・あと一歩で危なかった、帝具も用いず些細な道具のみで此処まで追いつめられたとは・・・このブドー一生の不覚・・・やはりナジェンダは侮れんな・・・
「・・・・・・」
ナジェンダは自身の帝国時代の記憶よりもブドーが数倍以上脅威である事に計算違いをしていた。
千載一遇の勝機を逃し、これでも仕留め切れなかったのであれば作戦を練り直すしかない・・・最もここから逃げ切れるか、死中に活を見出すか・・・。
マインはレオーネの顔を見、目で互いに頷きその意図を悟る。
彼女のパンプキンを撃てるように介添えし、ナジェンダもそれを目で確認する。
武器に鎖分銅を隠し持っている彼女がどれだけブドーを引き付け、その間隙にパンプキンの衝撃弾を当てるか・・・勝機があるとすればもうそこしかない。
「・・・・・・」
ナジェンダの事だ、他に策を二重三重に弄している可能性がある・・・これ以上援軍が来れば陛下をお守り切れるか判らぬ・・・俺の部下達はナジェンダにやられたか・・・?已むを得ん、こうなればどのような策を弄そうとも其れ事、灰燼に帰してくれる!
ブドーは息を吸い込み、その後長く吐き出し始めた・・・・
「こぉぉぉぉぉおおおおおおお・・・・」
レオーネは怪訝な様子で見ていたが、
「・・・!?ボス、あいつ何かするつもりだ!」
「不味い、この場から一旦離れるぞ!」
ブドーがその動作を行って数秒、長くとも十秒ほど・・・次の瞬間、
「喝ッッッツアアアアアア!!!」
帝都宮殿の一室からオネストは外をグラス片手に眺めていた、
「ほぉ・・・?なんですかな、あの光は・・・あの方角は確か」
空になったグラスに配下の者が酒を注ぐ。
「ふふふ、ブドー大将軍も皇帝陛下も賊と渡り合って名誉の戦死・・・なりますかな・・・おっと、今のは失言。酔いが回ってしまったようで・・・世の中そう思い通りにはいきませんからね・・・くくく」
オネストが今回の件を裏で糸引き、宮殿内部に潜む革命軍の密偵達に伝わるように情報を流した。
「陛下ももう少し操れ・・・聞きわけの良い方でしたら、長生き出来たかもしれませんがねぇ・・・」
大臣、西の異民族を全滅させ、首謀者を公開処刑させる?それは少しやり過ぎではないのか?
いいえ、いえ、奴らは極悪非道、婦女子でも殺し金品強奪し、私ども帝国の領土の一部は元々我々の物だったと嘘を流す輩です。前の政府は甘い顔をしていたので、その異民族共をのさばらせていたようですが、陛下は帝民の為にも毅然としていただけなくては!
・・・ですので、陛下の名のもとに異民族全滅と処刑執行許可のサインを!
そ、そうか・・・やむを得ないか・・・
大臣のサインは?
私のものは必要ありますまい・・・
大臣!?お前から聞いていた話と違うぞ!その異民族はお前から聞いていたような悪事は余りしておらず、むしろ我々帝国軍がしていたというではないか?どういうことだ!
・・・!?ああ~陛下・・・一体誰が陛下にそのようなデマを流したのか・・・それこそ嘘ですぞ!・・・それに陛下、もし仮に万に一つ間違いだったとしても陛下のご判断で処刑は執り行われました・・・本当に間違いだったとしたら・・・陛下は責任を取らねばなりません・・・最悪、断頭台に・・・ですので陛下、ここは騒がずに賢明なご判断を・・・くくく。(オネストがその気になれば皇帝への判断ミスによる罪の糾弾を握りつぶせるが、その逆もしかり)
大臣お前・・・
・・・あの若造、あの時は奴も保身に走ってあれ以上騒がなかったが・・・次は厄介だな・・・反乱軍の奴らと相討ちになってくれれば・・・皇帝と言う傀儡の替え玉を用意して・・・そこまではまだ高望みしすぎですかね・・・
オネストは以前のやり取りに思いを馳せながら再びグラスの中の物を呑みほした。
・・・・・ブドーの周囲はほとんどのものは黒炭と化すか衝撃で粉々となり、大広間も屋敷も・・・傍に居た彼女達は・・・やがて、朽ちていった・・・。
ブドーは辺りを見回し、払暁になるにはまだ早いが此処に来てから数時間は過ぎていたのかと空を遮る建物が無くなった為、その事を感じ一時安堵の念を禁じえなかった。
ほぼ形を残していない先程まで闘っていた者達を確認し、次に周囲を改めて凝視し
た。
「範囲を限定したつもりであったが・・・この屋敷のみならずその周囲の家々にも被害が出たか・・・許せ民共よ、陛下の御命さえ無事なれば国家は安泰だ・・・お前達(部下達)もいざとなった場合の覚悟は言っていたはずだな・・・安らかに眠れ」
ブドー直属の精鋭達には敵を倒す為なら互いの命を失う事になっても覚悟の上だと教育していた。
そして彼は改めて、気配と勘で巻き込むつもりが無かった周囲の国民達が負傷、或いは死傷した事を感知し、自身の未熟さを内心恥じた。
「賊共は粗方居なくなったであろう・・・陛下は・・・?」
ブドーは地下へと続く階段を瓦礫の中から探し当てたが舌打ちを鳴らした。
「しまった・・・陛下達は無事か・・・もしもの事が遭れば俺は・・・」
滅多な事では動じないブドーが心なしか顔色を無くし、階下へと向かった。衝撃の為か天井が所々落ちており、
大丈夫だ・・・地面方向へは余り被害は出んように制御した・・・た、大した事はないはずだ・・・。
ブドーは心の中でそう自身へ言い聞かせ、食堂の軋んだ扉を開けた。
「うっ・・・!?」
堂内の明かりは消え、ブドーは自身の帝具で電撃球を作りそれを明かり代わりに周囲を見回したが、余り耐震性が無いのか天井の壁が抜け落ち、生きている様子の子供たちが見当たらなかった・・・。
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああ、へいかぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ブドーは皇帝の名を呼び、絶叫しながら瓦礫を脇へと追いやった。そこには腸が飛び出し、目玉が飛び出た死体や小さい子を庇おうとして年長の子供が覆いかぶさったがまとめて潰れ圧死した子共達・・・だがブドーには皇帝カライの生存確認しか目に入らなかった。
「おい、子供らよ誰か生きている者が居たら返事をしろ!陛下は、陛下は無事か・・・・!?」
そこに僅かながら呻き声が聞こえ、ブドーは直ぐにその声の元へ駆け寄った。
「おじさ・・・?将軍のおじさん?」
ブドーは落胆したが、とりあえず状況を聞く事にした。
「子供よ、一体何が遭った?」
「ううっ・・・みんなで食べてたら上で大きな音がして、明かりも消えちゃうし、・・・いったい上でなにがあったの?・・・とにかくみんなこわくなってひとつにあつまってたんだ。皇帝のおにいちゃんが集めて・・・みんな大丈夫だって・・・」
「・・・陛下・・・それで陛下はどうされた?」
その小さい少年は泣きだし、
「にいちゃんは・・・僕をかばって・・・ううう」
ブドーは一瞬で全身の血の気が失せ、傍の瓦礫を恐る恐るどかした・・・そこには見るも無残な皇帝カライの死体が横たわっていた・・・。
頭は真っ白と成り、ブドーはしばらくは固まったまま動けなかった。
再び少年は泣きながら
「僕が・・・僕がいけなかったんだーーー!!皇帝のにいちゃんに守ってもらったばっかりにーーー!僕が代わりにしんでいれば!!!」
ブドーはその言葉で我に帰り、泣いているその子に一瞬殺意が湧いた。
そうだ、この小僧さえ助けなければ陛下は無事だったかもしれない・・・この小僧さえいなければ・・・。
それは違うぞ、ブドー!
ブドーはその方向に顔上げると、そこには皇帝カライが生きたままの姿で立っていた。
「陛下・・・良かったご無事だったのですね・・・」
ブドーは何も無い空間に話しかけ、それを傍の少年が怪訝な顔で見つめた。
「お、おじさん・・・?」
これはブドー一人が見ている心の中の幻想か、それともカライの霊魂か・・・?
残念ながらブドーよ、私は死んだ・・・だが悔いは無い。これで少しは罪滅ぼしが出来たかもな・・・
「陛下が罪を?・・・一体何をなされ・・・?」
言うな!・・・取り返しのつかない事だ、言いたくは無い・・・だがブドー、私は皇帝の役目とは・・・いや、国を統べる者の役目とは何か・・・今になって漸く判った気もする・・・何かあれば自ら進んで民達の盾になる事ではないかとな・・・
ブドーはどう返答すればいいか窮していると、
これで良かったのだ、これで・・・ブドーよ、お前達一族には世話になった・・・今までありがとう・・・本当に感謝する・・・
そう言ってカライは頭を垂れる。
「陛下!それは勿体無い、恐れ多い事です、どうか御止めを!」
ブドーが何も無い宙に向かって手をつき、頭を下げている姿に少年は只々驚愕した。
もう私は何も怨んではいない・・・ブドーも遺恨に囚われるな、私に・・・いや、皇帝というものに囚われず、ブドーは自由に今後生きて行ってもらいたい・・・どうやら迎えが来たようだ・・・今までありがとう、さらばだ・・・
ブドーは声にもならず、顔をぐしゃぐしゃにして泣き腫らした。
傍の少年は大の男が、大将軍とも呼ばれる男のその姿に驚く以外の感情は湧かなかったが、おかげで多少の冷静さを取り戻した。
ブドーも落ち着きを取り戻し、
「陛下・・・そうだ、私には陛下が守った子供を救いだす最期の務めがある・・・」
「・・・・・・」
「少年よ、名は?」
「ライフ・・・です」
「良いか、此処で起こった事を正しく伝えるのだ・・・」
ブドーは先の戦闘で・・・自分のせいでこの食堂に被害を招いた事を伝え、ライフに託す事にした。
この少年を一体誰に託すか・・・宮殿に向かわせるか・・・いや、駄目だ。私の懇意の者達に匿って貰ってもオネストの手が伸びかねない、この子供が利用されてしまう。
誰に頼るか逡巡した結果、
「ふっ・・・信が置けるかどうか一かバチかだ・・・よく聞け、ライフよ。タツミと言う男がいる。何処に居るかは判らぬが、きっと大丈夫だ。そなたは陛下が守って下さった強運の持ち主だ、必ず見つけられる」
ライフもよく判らないが、ブドーにそう言われ何となく自信が付いた。
「さぁ行け、此処を真っすぐ向かい扉も開けている・・・後の事は頼んだぞ・・・」
「大将軍は・・・どうするの?」
「その肩書はもういらん、私の事は気にするな・・・良いか、ライフよ。皇帝に救われた・・・カライ殿に救われたその命決して無駄にするな、後ろは振り帰らず、行け!!」
「は、はい!!」
勢いに呑まれ敬礼をしたライフは走り去って行った。
この空間で生きている者はブドー以外にはいない。
「・・・・・・陛下、いやカライ殿・・・先程は有難いお言葉でしたが、私にも償えない罪が有ります。今まで何人の部下を死なせてきた事か・・・それに我が先代達に私の手で陛下を殺したとあっては、このままでは顔向け出来ません・・・それでも皇帝陛下という概念に囚われている・・・子供如き私めをどうかお笑いください・・・どうかお傍でこの私を幼稚であるとお笑いください!」
ブドーは自らの手で自身の首を回転させ、その骨を捩じる。
「ふっ・・・・・・」
僅かな笑みを浮かべ、ブドーは仰向けにその場に倒れ、静かに絶命した・・・
外は仄かに白んでいき初め・・・そこに一つの影が動いた。
イゾウが動き出し・・・たように見えたが、その下からエアが現れた。
「これ・・・これって一体・・・?」
エアは辺りに瓦礫が散見し、ある程度の距離を吹っ飛ばされた事を確認した。先程までの屋敷がほぼ跡方もなく無くなっている・・・。
一時呆然としたが、死んでいった仲間達の事を思い気を奮い立たせた。所々傷は負ったがイゾウの死体に守られ、命に別条は無かった。
「イゾウさん・・・本当に最後までありがとうございました・・・シュラさんは・・・この様子じゃ・・・でもあの人の事だからきっと・・・とにかく今は、あっ!」
その時、こちらに掛けてくる1人の少年が目に入り声を掛けた。
「!?おねえちゃん・・・だれ?」
「え、え・・と」
しまった・・・あたし達の事どこまで話していいか・・・
「ブドーのおじさんにたのまれているんだ、タツミって言う人に会いに行けって」
「え!?おねえちゃんも知っているから一緒に行こう!」
エアはバック達の情報はある程度知っていたが、ブドー達が来ていた事までは良く判っていなかった。
二人は、何事かと近隣の住人達が集まって来る中、その波間を縫い駆けて行った。