“人生において、その人の性格がその人に相応しい事件を引き起こす”
という話があります。
世界、国、個人に起こる要因の一つ一つは私達自身にあると、そう思いながら過ごす日々です。
2020/3/21 僅かばかり加筆修正しました。
2020/8/27 一旦区切りが着いた後も読んで頂けている方がいらっしゃって嬉しい限りです。
2020/11/20 12月辺りに短編を投稿予定です。
「はぁ~・・・参った・・・」
タツミは誰も居ない事を良い事に、1人弱音を吐きながら部屋から出た。
彼が参る事が部屋の中で有った訳だが・・・
「・・・!?」
直ぐにタツミは周囲の異変に・・・気の流れ具合の違いを察知した、厭な方向での・・・。
エアとライフが息を切らしながらこのアジトまでやってくる。彼は気配を察知し二人の所まで向かい、
「どうした、エア・・・」
「え?この包帯のおじさん・・・?」
全身包帯姿の事を見ず知らずの少年に触れられ、タツミは聞き流した。
そして事態の顛末を聞き、タツミは愕然とする。
「・・・・・・」
「ファルちゃん、ルナちゃんも、チャンプさんも・・・イゾウさんも・・・みんな・・・みんな・・・」
「エンシンとシュラは・・・?」
「エンシンさんの事は・・・すみません、判りません・・・シュラさんは・・・あの人もあたしを庇ってくれたんです・・・だけど生きているかは・・・いいえ、きっと生きてます!」
「・・・・・・」
タツミは宙を睨み、あのシュラがか・・・と刹那感慨に耽った。
「ライフと言ったな、ブドー大将軍はどうなった?」
「ブドーさんは、僕に今話した通りのことをタツミさんに話すようにいわれたんで
す・・・あの人がそのあとどうしたかは・・・え~と、ごめんなさい!」
「そうか・・・大変だったな、有難な・・・」
ブドーは恐らく死んだ、あの男の気配が感じられない・・・念の為後で調べてはみるが・・・。
タツミはカライもブドーも死に、チャンプ達も亡くなった今、本来の予定を大幅に変えなくてはならない事に内心頭を痛めた・・・。
「タツミさん・・・?」
「エア、この子と一緒に俺が懇意にしている菓子屋に行ってくれ、大丈夫だ悪いようにしない。後で手紙を書くが、ランと言う人の所で世話になって貰え」
「タツミさんはこれから一体・・・どうされるんですか?」
タツミは深い溜息をつき、
「こうなったのも全部俺の責任だ・・・もう手遅れだが・・・それを付けてくる・・・」
「あ、あたしにも手伝わさせて下さい!」
彼女の頭に手をやり、
「いや、後はもう俺の仕事だ・・・もし、俺がやっても上手くいかなかった時は・・・今のお前じゃまだ無理だ、ランと言う人の所で自分を磨いてこの世界を変えていってくれ・・・頼んだぞ、エア!」
「は・・・はい」
タツミは次にライフの方を見据え、
「ライフ、このお姉ちゃんに何かあったら守ってやってくれ。出来るな?」
彼から元気のいい返事を聞き、今後の段取りに取りかかった。
次の日までにタツミは情報を集め、エアは彼らとの思い出の品を集め別れを惜しみつつ、タツミはその菓子屋の主人に二人を預けた。
タツミは誰も居なくなったアジトを粉々にし、目的地へと向かう・・・おうとした矢先、
「・・・なんだ?俺に用かい?」
夕暮れ時、荒れ地と化したその場所にタツミは背中で聞いた。
覆面をした刺客が無数取り囲み、手にアカメの村雨を持った者や鎖鎌、離れた位置から銃口で狙っている者達が・・・。
ナイトレイドのアジトを1人留守を守るラバック。
身体はまだ全快でなく、痛み止めをしながら居間で寝そべっていた。
「1人でいるとむしょ~~に、広いよなここ・・・これで姐さん辺りがつきっきりで看病してくれてたらな~・・・いや、手出して酷い目に遭わされんな・・・それも一種のコミニュケ―ションって、ナジェンダさんわかってくんねぇかな・・・暇だ・・・町のヤクザ連中始末すんのに、ナジェンダさんも出張るなんて珍しいよな・・・?何か俺に隠してたんかあれ?・・・退屈だ・・・ブラートでも良いから帰って来てくれたら・・・いや、やっぱいいや。しかし、3人はともかく、帝都内のシゴトの4人、遅いよな・・・何もなきゃ良いが・・・ま、あの4人に限って大丈夫だろ」
彼は暇潰しに、片手で帝具のクローステールを糸状に飛ばし調度品を近くに手繰り寄せたり戻したりを繰り返した。
「お・・・?誰か帰って来たか」
窓に人影が写り、そして消える。
「ん?・・・」
不審に思ったラバックは痛む身体を押して身構えた。
帝都宮殿の一室、そこにオネストと客人を交え二人で酒を酌み交わしていた。
相手はオネストの空になった盃になみなみと注ぐ。
「いやいや、もうこの辺で良いですよ・・・しかしまぁ、貴方には初め何処の馬の骨とも判らん方だと・・・その程度の認識でしたが、今やもう立派な私の右腕ですよ、バックさん」
「お褒めに預かり光栄です・・・オネスト大臣」
所々傷跡が残っているが、バックは細菌に侵されて死の淵だった所、皮肉な事にブドーの放った電撃爆風でその細菌が死滅しダメージは負ったものの瓦礫がガード代わりになったりで悪運で辛くも乗り切っていた。
「バックさん、私は死んだ息子に用は無いんです。碌に私の所に顔も出さずに・・・反抗期でしたらまだ可愛いですが、本格的に盾突き始めてましたからね、全く悪い輩と付き合うから・・・付き合う人は選ばなくてはなりませんね」
「もうご心配には及びません、ご子息を誑かしていた輩は私の手の物が始末致しました」
バックはその者達が全員半死半生の態で相当手こずった・・・彼らのその報告は伏せた、相手は奴なのであれば殺せただけでも良しとしようと。
「いや、本当に貴方を実の息子にしたい位ですよ、仕事も早く・・・それに私が望む事の先手を打てる・・・ブドー大将軍も皇帝陛下も不慮の事故で亡くなり・・・おっと行方不明ですしね」
「はい、陛下の安否が気遣われますが此処は帝国民の心の安寧の為にも陛下の代わりをご用意を・・・ふふふ、年背格好も近い少年が居ります・・・私の仕事が役に立ちました、人生何が何処で役に立つか判りませんね」
「くくく、ははは・・・ついでにブドー将軍の代わりは?」
「流石にその年齢の者は・・・」
二人は揃って高笑いをした。
外は夜の帳が下り、宮殿門番も疲れ気味な所に
「よぉ、御苦労。親父に会いに来た・・・ここを通せ!」
直ぐに二人の門番は槍を構え、その者の道を遮る。
声を出し、帰れと威嚇するが
「まぁ、ゆっくり休めよ」
その男は一瞬で自然に槍をいなし、抵抗する気も失せさせる動きでそのまま二人の肩にポンと触った・・・呆気に取られ門番達は男を追おうとした刹那、
肩の筋肉の筋が痙攣を起こし、激痛が走って地面で悶える。男は何か気でも送って人体操作でもしたのか・・・。
「そこで休んでな。なに、数時間後には治る」
部屋で祝宴に興じているオネストの所に配下の者が耳打ちする。
「何ですか一体・・・ん?シュラが・・・?」
それが聞こえたバックは一瞬顔が強張る。
「バックさん、確かシュラは・・・?」
「はい、シュラは・・・ああいや、彼は確かに跡方も無く・・・きっと、シュラさんを語る強請り集りの類です、私が確かめて参ります!大臣はどうか此処で寛がれていて下さい」
「う~~む、頼みましたよ」
宮殿には複数の部屋が有り、大臣のそれは一際大きい。
普段なら巡回の兵士が歩いているが、今日は特別だと言う事で周囲に人は居ない。
明かりもまばらで暗がりに背を向けて立っているフードを羽織った男をバックは認めた。
「ん?・・・シュラ・・・さん?ああ・・・そ、そうですか?その顔とかの包帯は、あの爆発で?・・・ああ、ははは・・・先だっての事怒っているんですか?男はその、拳で語りあうって言うじゃないですか・・・生きてたんでしたら、お互い悪運の強い者同士これからは仲良くやっていきませんか?」
「・・・仲良くだぁ?そいつは無理だな、何故なら俺はもう死んでいるからだ」
バックの方を振り返った時のその声で
「!?お前は、シュラじゃないな!てめぇ・・・生きてやがったのか!ふざけた真似しやがって!」
用心の為に咄嗟に持ってきたサーベルを抜き放ち、バックが斬りかかるのをタツミは寸でかわし追撃で横薙ぎに振り斬ったそれを後方にかわしながら、腰の江雪を抜刀した。
その互いの得物を振った音が鋭く空を裂いた後は、数瞬その闇に静寂が訪れる。
窓から差す月明かりがバックを照らし歪んだ怒りの形相が窺えるが、タツミは逆光で顔の表情も判らない。
次の瞬間、バックの頭上に江雪が襲いかかるが、事もなげにサーベルで弾き飛ばす。タツミは弾かれ体勢を崩し両手で持っていられなくなり右手で持って牽制しながら後退し続ける。
強い斬撃だったが、話に聞いていたより大した事は無い・・・噂は只の噂か・・・バックは拳同様刃を一回交えれば相手の力量が判る。
上段に振りかぶって一瞬で真っ二つにしてやる。助け何ぞ呼んでオネストに借りは作らない。
自身の最速でタツミをぶった斬る!
サーベルが上段から目にも止まらぬ速さで地面に向かい、相手を斬った!
転瞬、喜びが苦痛に変わった・・・?
斬った・・・はず・・・?
実際はバック自身が下から身体を斬り上げられ、それが判った瞬間既に後ろに居るタツミに片手斬りに背をやられた、即死しない加減で。
「ぐぐっぐぐぎゃあああああああ!!!」
バックは痛みで堪え切れず声を上げる、なんだなんだこの、匙加減の痛みは・・・
自分が手を出してはならなかった相手だったと言う事を漸く気付く。
相手がどうされれば最も嫌がり恐怖するか判っている・・・今まで猫を・・・
立っ・・・立っているのがやっと、力がほとんど入らな・・・何をするつもりだ。
バックは倒れるように部屋とは反対側の窓の方へ身を預ける。ガキの頃聞いたな、悪い事したらそのうち何かが来るって、ああこれがその死神か・・・
タツミは江雪を頭上に上げ、弧を描き、大股開きで振り斬る。
バックは鼻が真っ二つに、喉も前側が斬られ、身体前の臓器を覆う骨も斬られてい
く。
声が出ねぇ・・・辛うじて持っていたサーベルも落とし、まだ死ねない・・・慈悲を乞うように震える手をタツミに向け、次の瞬間江雪で腹を貫かれる・・・否、貫かずに内部で留まりそのまま引き摺られ意識が朦朧とする中、オネスト専有部屋のドアをバックをぶつけて開けさせる。
バックは痛みの度を超え・・・ショック死していた。
部屋内は幾つもに分かれ先ず玄関と呼べる間があり、その奥にオネスト達はいる。
配下の者達が異変に気付き、駆け付けてくると一瞬絶句する。
「むぅ・・・これは・・・」
「あら~痛そ~ふふふ」
「一体誰が?大臣の息子が?」
オネストも後からやってくると、バックの死体を見下した後ドアの向こうを警戒す
る。そこから江雪を片手に下げてタツミがゆっくりと歩いて入って来る。
「お前がシュラを騙る、不届き者か?」
睨みつけるオネストに、僅かに不敵な笑みを浮かべたタツミは彼の配下、羅刹四鬼・・・かつて見知った別の世界の彼らを一瞬思いだした後、即座に。
「がはっ!!」
大臣にシュラを騙る存在をいち早く伝え、出来る事なら自分で始末するつもりだったが・・・、ここに来るまでのタツミの行動を監視していた・・・天井裏から奇襲しようと機会を窺っていたイバラの鳩尾を江雪で突き刺した次の瞬間、もう一つ腰に差していた村雨で目の前のメズの顔面を割った。
「いやああああああああああああああ」
痛みに転んで壁に激突し苦しんでいる間、それ以前にもうタツミは後ろのスズカと目が合うと、
あれだけ惨い事も出来るんだから、どんな痛みを・・・と恍惚な笑みの彼女にタツミは相手が、スズカが嫌がる殺気を飛ばし、違和感を覚えさせる。「!?」考えるか考えないかの僅かな短い間のやり取りを本能で察知し逃げようとする背中に彼女が嫌な痛みしか感じない神経を狙って片手斬りに斬り裂いた。
「いや・・・いた・・・死にたくな・・・」
生まれてこの方痛みは快楽でしなかく、他人への虐殺行為も苦しんでいるようで実は本人達も少しは快楽を得ていると誤解していたスズカ、死の間際嫌な痛み、死への恐怖に気付き、死んでいった…そして2人ともタツミの斬りに因る痛みと村雨の呪毒の痛みで…。
彼女達がまだ死ぬ前にタツミの背後に回ったシュテンがその剛腕で吹き飛ばそうと身構えた瞬間、タツミは村雨で両手持ちにし、少し上段から振り下ろし斬り倒そうとする。
それを瞬時に判断したシュテンは両手を交差し白刃取りを両の甲部分で合わせ更に腕を硬化させ、先ず動かないように抑える。
してやったり!と思ったほんの刹那、タツミは自然な流れで村雨を横へずらし思ってもみなかった方向へシュテンは誘導され、村雨を手放し片手で刃の部分を封じたシュテンの両手を抑え、
「ぬあああああ!?」
叫んでもどうしようもなく、タツミは既に天井に刺さったままの江雪を引き抜き、シュテンの脇腹から心臓手前に目掛けて突き刺し、嫌悪感が伴う神経のみ抉る。
これまでに感じた事が無い痛みに思わずシュテンは、頼む・・・助けてく・・・。
この間、タツミはオネストに背を見せ続けていたがこのままではとても敵わぬと判断し、オネストは逃走していた。
そして、その主の下で魂の救済の名のもとに多くの人間を理不尽に殺してきた、彼の魂は肉体から解放され、この場に生きている者はただ一人になった。
ラバックは痛む身体を堪えながら物影へ隠れ、相手の出方を見る為帝具の糸で窓を開け放つ。
「ラバックか?」
相手も姿を現さないが、声で主を把握した。
「・・・ん?何だお前か・・・妙な事しねぇで表から入って来いよ」
アジトの表のドアから入って来たタツミは、
「誰か居る事までは判ったが、念の為にな」
「この敷地内に俺が(帝具で)結界張ってたのに何の反応も無かった、1人で来たんだろ、潜り抜けてくるなんて嫌な奴だなお前・・・なんだその包帯?ミイラ男の仮装でもすんのかよ?」
「・・・聞くな・・・チェルシー達はどうした?」
「皆出払って俺一人だ、身体がまだ治らねぇだよ、誰かさんのおかげでな」
「・・・じゃあ、俺が言うより密偵達から聞いた方が良さそうだな、あばよ」
手をひらひら、帰ろうとするタツミのその手を帝具の糸が絡みつく。
「何のつもりだ?」
「俺はお前を信用しきってないぞ?何を企んでいるか吐くか、そろそろ誰か帰って来る。それまで居て貰おうか?お前が実は帝国軍の密偵とも限らねぇしな」
「・・・・・・はっ、良いニュースと悪いニュースが有る、どっちが良い?」
「なんだそりゃ?」ラバックは前者を促すと
「ブドーと皇帝が死んだ・・・」
一瞬何か判らなかったが、全てを合点したラバックは
「町のゴロツキ始末しに行くのに、何でナジェンダさんも出張るのか不思議だったんだ・・・やっぱりな、畜生俺も行きたかった!はは、そうか・・・とうとうやったか!よぉし!後はあのクソな大臣だけだな!」
「話したぞ・・・」タツミは絡まったそれを外して去ろうとする。
「待ちな!」
後者の方はと。改めてタツミの知る限りを、伝聞や後日の現場検証を伝えた。
それを聞き、ラバックは眼前が真っ暗になった。そして、タツミの肩を大きく揺さぶった。
「なんでだよ!何であの人が死ぬんだよ!ホラ吹いてんじゃねぇぞ!姐さんやマインが、アカメもいたんだぞ?あいつらが死ぬ訳ないだろ・・・ナジェンダさ・・・」
ラバックは力を失い、涙ながらその場に座り込む。
「俺の仲間のほとんども死んだ・・・俺の作戦ミスだ、その後始末を付けてくる」
「・・・お前1人でやるつもりかよ。ならなんでわざわざこうして話に来たんだ・・・」
「吠える相手を間違えてんぞ?ナジェンダ達は無駄に死ぬ事は望んで無いだろ、お前は此処で大人しくしてな・・・革命終わった後にもやる事はあんだろ」
「くっ・・・うるせぇ・・・、・・・ちっ・・・、ああ、そうだな・・・。お前の言う通りだ、この体じゃ足手まといだな・・・タツミ、お前がどんな後始末するか、此処でのんびりと良いニュースが来んのを待たして貰うぜ・・・引きとめて悪かったな、じゃあな・・・」
タツミが去った後のラバックの形相は、誰も居ない事で気兼ねなしに殺気と怒りを放っていた。
オネストは奥の部屋の調度品に隠した扉を開け、隠し部屋の小窓を開き外の様子を窺いながら懐の銃を取り出し、タツミの隙を付いて始末しようと待ちかまえている。
その背後でいきなり明かりが灯り、気が付く前にオネストは銃の持ち手を捻り上げられる。
「な・・なななな、だ、誰だ!」
室内の調度品を支点にして、相手の手を帝具の糸で宙釣りにし、更に首に巻きつかせ窒息死を狙う。
「舐めるなぁあ!!」
オネストは左手でもう一挺取り出し、相手の心臓に目がけ銃弾を飛ばす。
目標が外れ、右肩に当たるが充分だった。
「ぐっ・・・くそ・・・」
拘束は解け、オネストは刃物を取り出し
「ふん、たかが暗殺者風情が、死ねぇ!」
勢いよくぶつかり、腹部を抉りだす。
血を吐き、苦痛の声を耐えながら左手で帝具の糸で刃物状の武器を作り、歯に銜えオネストの首に突き刺す。
ぐっ・・・だがこの程度、とオネストは致命傷にはならないと判断し息の根を止めようと刺した刃物に力を込めた瞬間、
「手が動かな・・・」
刺さった刃物状のそれから無数の糸がオネストの体内を張り巡らせ、神経系を次々に破壊していき・・・それはこの世の地獄、激痛の上をいく激痛以外何物でもない。
「ま・・ままま・・・ぎゃあああああああああああああああああああああ・・・」
断末魔を上げた後しばらく苦痛は続き、身体表面の損傷は少なくとも中身は脳、心臓諸々ぐちゃぐちゃとなった。
只の肉塊と化したオネストは倒れ、ラバックはふらふらになりながらも扉を開け、出血を恐れず敢えて刺さった刃物を抜き、止血もそこそこに窓から外へと糸を使って下りて行った。
駆け付けたタツミは、オネストの死体を認め、開け放たれた窓へと続く血の跡を・・・その後を追わずに只黙って見据えた。
運良く宮殿内の兵士達と出くわさず、ラバックは中庭の広い外の稽古場にある大樹にもたれ掛かり、月を眺めた。
此処でよくナジェンダさんにしごいて貰ったなぁ・・・、あの人と会えて楽しかったなぁ・・・俺こんなんだから、照れ隠しで他の女の子にちょっかい出してんだ・・・いや、本当だって・・・そっち行って会えたら・・・ちゃんと今度は・・・。
ラバックは顔や首に爆薬を塗り、ナジェンダの吸っていた煙草を取り出し銜えて火を付けた。煙を燻らせ、しばらくした後火種が彼に向って落ちた。
翌日、発見された彼の遺体は顔も判別も出来ず、検死した警察ウェイブはそれを記録に残し、勿論オネスト大臣達を殺害した容疑者としても。
その後、怪情報も飛び交うがオネスト達が用意した影武者の皇帝は意味が無くなり、帝国軍の残った将軍たちは徹底抗戦を望む者も居たが、ブドーが死んだ事も大きく作用し、小競り合いを除けば革命軍の無血勝利で宮殿は明け渡された。
皇帝を失った事で不安も広がったが、その後誰かの手により自立した個人で共同体をというスローガンで1人1人が自覚し初め、問題もあったが前進して行った。
皆が不安の中にも未来への希望を持ち始めた中、事の顛末を全て正確に知る者は少ないが・・・表面の情報でその裏側も察せられる人物もいる。
「・・・親父が・・・、はっ。ざまぁねぇな・・・下手したら俺も親父に殺されてたか・・・まぁ良いや・・・生んでくれた事だけは感謝しといてやるぜ・・・・どこの誰ともしらねぇ奴の仕業か・・・くくく、タツミの奴あいつめ・・・。もうこの国にも飽きたな、面白くはなかったが、つまらなくもなかったぜ。・・・あばよ」
傷だらけではあったがシュラは帝具のシャンバラで辛くもあの場を逃れていた。
数年後、
「だぁーかぁーらぁー、良い話持ってきたっつってんだろが!この俺がこの国良く
してやんだよ!ありがたくおもえ!」
「ですから、どこの誰かも判らない人を通す訳にはいきません!お帰り下さい!」
「強情な奴だなお前は、嫌いじゃないが良いから退け!」
二人は宮殿の門で押し問答を繰り広げ、他の門番の大人達はのんびりとその様子を眺めていた。
相手している門番はまだ10代前半でいつまでも孤児院で出来る仕事も限界がある為、恩返しの為にも伝手のおかげで就職が出来た。
「一体どうされたんですか、ライフ君・・・そちらの方は?」
宮殿から出て来た二十歳位の女性が門番の彼に呼びかけた。彼女は若くしてその才能を発揮し今の大臣達の意見調整に一役買っている。
「ああ、エアさん?すみません、酔っ払いの方が大臣の方々に会わせろってきかなくて・・・さぁ、ほら。僕ですからこのぐらいで済むんです。怖い人が来る前に帰って下さい!」
エアはその彼を見て、呆然とし持っていた物を落としてしまった。
「あ・・・あたし、あの後皆さんのお墓参りをずっと・・・でも・・・でも、誰か一人はきっと生きているって・・・シュラさん・・・ですよね?」
「あ・・・?ああ・・・お前か・・・なんだ、でかくなったな・・・死なずに生きてやがったか・・・」
この国の呼び名も以前と変わり、
その町雑踏の露天商でタツミは値段が安い、高いと文句を付けたり、からかいながら楽しみ練り歩いていた。
とりあえず、一旦これで最終回です。
お付き合い頂き有難う御座いました。
次回は未定ですが、気が向いたら気楽な短編でも書ければなぁと思います。