今でも読んで下さり、有難う御座います。
何とか12月中の投稿を果たせてほっとしてます。
鬼滅の刃が人気で、初めはまるで関心無かったのですが…仏教の色即是空、空即是色…私なりに解釈すると、
他人は自分、自分は他人と思っています。
その主人公がそれを無意識に分かっているからあれだけ優しいのだろうなと。
これを全巻読んで思ったのは、もう自分が小説などの創作を書く必要無いなと(笑)
ここはある空域、物質世界とは異にする別次元の領域。
そして、あらゆるものを広大に管轄しているその執務室は広く、数多の宇宙や星の情景が浮かんでいる。
その荘厳な雰囲気に包まれた部屋で2つの存在が言い争いをしていた。
「タァツゥミィイイ!!何故もっと早く帰って来なかった!どれだけ私が心を痛め、何度会いに行こうとしたか!?何故プロテクトを掛けた!おかげであの星に行けなかったではないか!……まさか、浮気か?浮気なんだな?…くうううううう……私は慈悲深い…素直に話せば許してやるぞ!」
怒られて詰られている彼は、空を見据え星間の動きや宇宙の中の放射線などを調整、生命に及ぼす影響の強弱を付けてプラスに働くように手心を加える行為をしながら、妻…の話を片手間に聞いていた…初めは大人しく聞いていたが段々腹が立ってきていた。
「うるさいぞ!お前が余計な事しなけりゃ、穏やかに事が進んだんだ!それまで俺が計画していた事を水の泡にしやがって。それの手駒になる奴らを育成していたのに、ほとんど死んでしまっただろうが!おかげで俺が直接片を付ける事になったんだぞ、本来宜しく無い事だからな、お前だって分かってるだろ!」
「タツミィ!浮気の言い訳なぞ聞きたくは無いぞ!」
「してねぇ!」
とうとう堪忍袋の緒が切れた彼は、その場から去っていった。
1人残された彼女…エスデスは、指を鳴らし紅茶を顕現させた。
更に言うと、諸々必要としないが肉体を持っていた頃の名残で空気や重力なども気分で顕現させている。
そして、飲食も実際に飲んで食べても、体内で消えていき雰囲気を楽しんでいるだけである。
この場合は苛立ちを紛らわす為だが。
タツミは仮の肉体を持たない限り、飲食の動作は滅多に行わない。
「ふぅ…全く何をあれ程怒るのだ?だがやはり怒る覇気もそそり、可愛いがな、ふふふ。いや、ここは毅然としなくては!愛する妻とは一刻も離れず居たいものだろう?同衾している時だけ優しければ良いというものでは無いぞ、はぁ…昔はもっと優しかった…」
ふと昔に思いを馳せた…
“エスデス、もしもだ…お前が俺の言った事を破ったら…その時は死んで貰うぞ…”
「………今の方がまだ優しいか…だが、あの頃のタツミの私を本気で殺しかねない、あの眼光もそそるものがあって良いものだった…ふふふ…険しい目も可愛いかったなぁ…くふふふふ…おっと、駄目だ。真面目に考えねば…何故タツミはあんなに怒るのだ?…そうか!マンネリか!?夫婦の間も同じ事をし続けると苛立ちもつのる…ここは新しい風を吹かせなくては!」
エスデスはテレパシーで緊急事態だと飛ばしてタツミを呼び寄せた。
執務室である空間の前で、統括であるエスデスの指示を仲間達へ連絡するなどを一手に引き受けているガーディアンがいた。
タツミがその前を通ろうとすると、彼は声を掛けた。
「また喧嘩ですか?」
一睨みされ、ガーディアンは目を逸らした。
今度は一体なんだ?つまらない事だったら承知せんぞ、という顔で中に入った彼を待っていたのは…
室内が真っ暗となる、そんな中一点だけ光が当たりその地面から白いドレス姿で、煌びやかなアイマスクをしたエスデスが登場した。
彼はこの時点で軽い頭痛を覚えた。
「ふふふ、問われて名乗るもおこがましいが、知らずば答えてくれる!何を隠そう…」
くるりと一回転し、不思議なステッキを掲げながらポーズ決めて
「私は時を駆ける魔法少女、マジカルエスエス…だぞ!」
「……………」
タツミは全ての質問を放棄し、勢いよく空気を吸い込んだ。
「すうううううううううう…………」
一拍置いたのち、彼の全てから吐き切る如く、その動作を行った。
「はあああああああああああああああああ……………」
その後、今までかつて無い程の笑みを浮かべた。
「タ、タツミ!そ、そんな満面の笑顔を…今までで一番の…」
話終える前にさっさと彼は出て行った。
「?………???一体、どういう訳だ。いまだかつてない最高の可愛い笑みだったが…?う〜ん?何故かいまだかつてなく冷ややかな感情を感じたのは…何故だ?……まぁ良い、きっと気のせいだな♪ タツミも忙しかったのだな、もうしょうがないな〜タツミは〜、後でたっぷり構ってやるからな…さて、魔法少女となったからには何か為さねばな、とりあえずここは一つ下々の者を救うか、それできっとタツミも私を見直すな♪うむ、そうと決まれば善は急げだ!」
「..............?」
執務室から不気味な波動を感じた後それが途絶えた為、ガーディアンはエスデスが何をしているか気になり中に居るだろう主にテレパシーを送ったが返答が無い…なので失礼を承知で中を覗くと…
「居ない!あの人はまた!」
エスデスことマジカルエスエスは、気体のような状態となり通常の空間では光の速さでも100年以上掛かる距離を空間の裏側を通り…時と距離の法則を無視した、いわば裏道を通って一気に目的の星へと向かった。
到着した後は、通常の空間に顕現した。
宇宙からその星を眺めている。
“私達が元いた世界とほぼ同じか…ふふふ、面白い。原点と言うべき場で救ってやろう!”
彼女の独り言も空気が無い場では周りには聞こえない、そして聞く者も居ない。
言い終えた後は一気に地上に向けて降下した。
成層圏を通過し、雲を突き破り、
そして、エスデスは衝撃で周りの塵を吹き飛ばしながら地面に降り立った。
夜空の星の下、感慨深げに
「邪気、臭気が入り混じっているな、久方ぶりに心地よい。先だってマイタツミに会いに行った時は、しっかりとした肉体顕現では無かったが、今は違うぞ。さて、改めて私に惚れ直させ且つ今度はどの角度から怒らせると良いか…待っているんだぞ、タツミ♡」
その頃の彼はエスデスが持ち場を勝手に離れた事に、激しく憤っていた。
「さて…まずは魔法少女らしく箒が必要だな。む?」
前方数キロ先に、お誂え向きの見窄らしい家屋の外にそれは立て掛けてあった。
エスデスは駆けていく、かなりの速さで。
「では頂くとしよう。これはその代償だ、受け取れ」
家人は既に寝ていて、エスデスに気付いてはいない。
側に積み上げられた木炭を彼女はダイヤに変えた。
「愛しのタツミの技を私なりにアレンジしてみたぞ、フフフ」
法則転換…その技は、例えば引力を反引力にしたり任意で操作が出来る。しかしその反動で色々別の被害を生み出す為、使うべきでは無い。エスデスはそれを少々模倣する事に成功し局地的に且つ他への被害もなるべく抑える事を可能にした。そして、その技を自身の肉体に宿した為自分がこの世界で言う所の超絶な力の帝具とも言える。
所変わって此処は国の中枢、腐敗の根源である宮殿の大臣…皇帝を操る実質No.1のオネストが自室でダイヤを数えていた。
「くくく、これだけの質の良いものを使えばどれだけの大臣や将軍共を買収出来るか…他には…大半の新聞屋は平伏させた。ですが、まだ私に楯突くあの新聞屋を飴と鞭を使って、必ずや…んが!?」
彼が数えてたダイヤが木炭に変わってしまった…。
「??????は?ほ?ひ?……ほひーー?」
ある肖像画の如く、両頬を両手で抑え奇声を発した。
「馬鹿な、これは一体?………だ、だだだ誰の仕業だ!?」
エスデスは箒に跨り、夜空を飛んだ。
「うむ、これは悪くない」
普段なら空を自由に飛ぶのも造作は無いが、肉体を持つ場合は当然制約が生まれる。
彼女は自身の周りの空気、高圧低圧自在に操った為空を飛び、スピードも変えている。
その頃、オネストの一室では
「き、きっと日頃の激務のせいで疲れているのでしょう…私ほどこの国を愛し、国の為に身を粉にして働く者はいませんからね。寝て目を覚ませばあの忌まわしい木屑も素のダイヤに戻っているはず!さあ善は急げ、さっさと寝ますかね」
ベッドが重さで軋むものの気にせず、床につくオネストだったが…
「ぶはっ!?なんだこれは!息が苦しい!風が!!なんだ一体!窓も開けていない!ひーおばけー!?」
得体の知れない突風や空気の濃淡が彼の周りに渦巻いた。
「さて、月が綺麗な夜だな…うふふふふふふ」
エスデスは不気味に微笑んだ。
「この世界のタツミに会うとしよう!たっぷり可愛いがってやるからな!」
その頃、この星の本来のタツミは人里を襲う危険種を始末する為、険しい山の中で探索していた。だが、こういう時は一向に現れない。
「夜だと襲い易くなって来るかと思ったけど、来ないなぁ…こっちは外れか?ラバと合流するかな…ん?」
その時、月を背にエスデスが急降下してきた。
「ターーー〜ツミーーーーーー!!!」
「どわあああああああああ!!!!??」
タツミの近くに激突し、軽いクレーターを作り且つ粉塵を撒き散らす…迷惑の極みをしてのけた。
「げほ、ごほ、だ、誰だ一体…?」
「う〜ん、タツミ!明らかに初々しいなぁ〜私のタツミも良いがこのタツミも捨てがたい!」
いきなり現れた事にも驚いているが、普段の軍服姿では無いエスデスを見て二重の意味で驚きを隠せないでいる。
「エ、エスデス…!?…さん。ど、どうして此処に!?」
「愛故にだ、ぞ!」
「意味がさっぱり分かりません!」
「…むぅ〜そうか、この世界では初めましてになるのだな。…という事、この世界にわた…いや、エスデスも居るという事か…」
「?…え〜と、さっきから何を?エスデスさんですよね?」
一応正体は隠した方が良いので、
「私はエスデスというタツミが生涯想い慕う女では無い!」
くるくる回転し、無駄にキレのあるポーズを披露しながら
「私はタツミの体と心を愛で支配する魔法少女、マジカルエスエスだ、ぞ♡」
タツミはかつてない程の困惑と険しい顔つきになった。
「ど…どうしたんですか?エスデスさん?…頭でも打ったんですか?」
「ああ、その呆れ果てた顔も悪くないぞ!」
タツミは心の距離を1m離した。
「とにかく、私はエスエスだ。エスデスでは無い!」
「いや!どう見たってエスデスでしょ!じゃなけりゃなんで俺の事知ってんですか?」
「ふっ、私が魔法少女だからだぞ!お見通しだ。」
「だーもう!何からツッコめば良いんだ!そもそも魔法少女って、エスデスさん年幾つだよ!」
「ああ、もうよんひゃ…………ごほん!25だぞ!」
「ん?初めなんか四百?魔女の設定を作り混んでいるのかな?それでも結構年上だったんですね」
「む?タツミは幾つだ?」
「俺は17ですよ」
エスデスは心の中で吐血した。
「タ、タツミ?8歳違いなど、た、大して年の差にはならんからな?」
「え?ああ、はぁ…そうですか…うん、まぁ良いや」
「全く良くは無いぞ!」
「……良く分かりませんが、なんで此処に?」
「うむ、魔法少女としてこの国の者達を救いに来てやったのだぞ!」
「へぇ〜え。前に弱い奴は死んでも当然みたいなこと言ってましたけど、良い心境の変化ですね(上から目線は変わってないみたいだが)」
「む?それはかなり昔の話だぞ」
「昔?いや、そんなに経ってないですよ?」
「ふっ、私3日逢わざれば刮目して見よ!と言うだろ」
「言わないですって、しかも言ってる漢字違う気しますし…ああ、もう話進まねぇ!とにかく俺はこの山の人を襲う危険種を退治しに来たんです。協力してくれませんか?」
「そうか…ここの世界ではそのようなイベントがあったのだな、ふふふ」
「何ですかイベントって?しかも全然楽しく無いですからね?人が襲れてるんですからね」
「まぁ、待て愛しきタツミ。人とて他の生物を殺し喰っているのだ。全くの無罪では無いと思うぞ?」
「え……?え、いやまぁそうですけど、貴女本当にエスデスさんですか?本当にどうしたんですか、一体?」
「うふふふふ、もっと惚れても良いんだぞ?最も我が夫の影響だがな」
「え????エスデスさん結婚してたんですか?」
「む?う、うむ、まぁそんな所だ」
エスデスは内心、この世界のタツミと恋人以上、夫婦未満な雰囲気のみだけでも作って楽しもうとしたが、それを言うと出来なくなる恐れを憂慮した。
「うわーもう、情報過多で頭がパンクする!」
「タツミ?私が結婚していたら…残念か?」
「え?ああ、いや、どうだろう…?あれ?でも、旦那さんがいるのに…前に部屋で何で俺にキスして来たんですか?確か愛人は作らない。1人だけに絞るみたいな事を…」
「だからそれは…」
彼らが会話している最中に、遠くから声が聞こえた。
「とお!!」
竜の危険種に跨っていたこの世界のエスデスが彼らの存在認め、付近の地上へと降り立った…再び砂埃を周囲に撒き散らし、
「このような夜更けに何をしているお前ら……ん?タ、タツミ♡」
武器のサーベルを構え、睨み付ける顔から一瞬で乙女の顔に変わったエスデス。
「え?え?え?エスデス!?こっちの人もエスデスさん?あっちもエスデス?ど、どうなってんだ!?」
「やはり…居たか…面倒だからタツミ、私の事はエスエスと呼ぶと良い」
「いや、ええあれ?どういう事だ?」
この世界のエスデスはエスデス…エスエスを見て、いきり立った。
「貴様…私の似た姿と妙なナリをしているが…まぁ良い。大方何かの帝具か変装だろう…捕らえて拷問に掛けてやる。大人しく捕まれば吐かせた後、少しは楽に死なせてやるぞ?…そして、タツミ?この者を直ぐに始末して助けてやるからな♡」
「え?ええ?ええ〜〜〜」
どうすれば良いか分からず困惑する。
「はぁ…やれやれ…認めたく無いものだな…若さ故の自らの誤ちというものは…こんな事になるなら来なければ良かったか…くくく」
自嘲気味に笑ったエスエスは、
「未熟者、少しだけ相手をしてやるから掛かって来い!…タツミ、私の後ろに居てくれ」
どうしたら良いか分からず、軽い混乱状態の彼は素直に従った。
「貴様!タツミから離れろ!」
エスデスは氷槍を無数に投げ飛ばす。
その時エスエスは周りに見えないバリアを張る。
タツミは幾ら彼女の後ろといえど、迎撃しようと前に出ようとするが
「お、おお!」
次々にそのバリアに吸い込まれ消えていく。
「すげー!何かの帝具ですか?」
「ん?いや違うぞ。…元は同じだったがな。我々の先達が持っていた技術を私は受け継ぎ、そして帝具はその先達のを部分的に用いた…と言ってたぞ」
「?」
ーーーーーー
「ひーー!ーーーほーーーはーーー!」
その頃、宮殿のオネストは自室に大量の氷槍が降り注ぎ、辛くもかわしきり激しく動揺していた。
「ななななな、なんだこれは一体、一体私が何をしたというのだ!この氷はまさか…おのれ、あの小娘裏切………ひーーーー!」
ーーーーーー
「おのれ、妙な技を使う……貴様も帝具使いか?ではもう少し本気でいくぞ!」
「少し本気?くくく、死ぬ気で来い!おっと、タツミが居たら本気は出せぬか?良いだろう。もう少し遊んでやる!…タツミはここにいるんだぞ♪」
「エスエスさん俺も一緒に戦か…いや、どっちの味方すれば?」
「ふふふ、悩む姿も悩ましいぞ!」
エスエスはタツミをそのままにバリアの外に出て、先程よりも激しさが増したそれを手持ちのステッキで弾いていく。
「少しは出来るようだが、まだまだいくぞ!」
エスデスは氷槍の他更に、頭上に巨大な氷の塊を顕現させる。
「逃げ場は無いぞ!ハーゲルシュプルング!!」
「くくく……ならば、ダークネス・メガキャノン!!」
地上から巨大な大砲が顕現され発射、轟音が鳴り響き空に向かって数十キロ離れた場所からでも分かる程の射線が見えた。
エスデスが顕現させた氷は砲の直撃や風圧でほとんど吹き飛ばされてしまった。
「な………!?」
「す………すげーーあなたは一体!?」
「んも〜タツミ、そんなに褒めるな?もっと惚れても良いんだぞ♪」
エスエスは自分に対する今までにないタツミの素直な反応に照れて喜んでいる。
だがエスデスは…
「おのれぇ………気が変わった、生捕りなどはもうせん、殺す!」
「くくく、ここまで実力差を見せつけられて、まだ分からぬか?未熟者」
エスデスは一呼吸置いた後、手を素早く交差させた後に技名を叫び。
「摩訶鉢特摩!!!」
周囲の時間を凍結させる大技を放つ…だが、
「!?…摩訶鉢特摩返し!!」
エスエスは素早く手の交差をした後、払う動作を行い術者に跳ね返した。
「!?……………」
エスデスは固まって動かなくなった。
「え?え?何が起こったんだ?」
タツミには2人が何やら手をバタバタ動かしたようにしか見えていなかった。
「今のは危なかったぞ、タツミ?流石に私でもあれをまともに受けていたら止められていた……」
「何だったんですか今のは?」
「先程のは、辺り一体の時間を止める技だ。…タツミをもう2度と逃すまいと編み出したわ、ざ……………ぐっ」
「どうしたんですか?まさか、今の技が!?」
「いや………我ながら自らの恥ずかしさに……物理的に足止めしたからといって、相手の心がどうにかなる訳でもない…自分に惚れさせる自信が無い故に…うっ………ある意味キツイものだな、昔の自分を見るのも……」
「……?ええと、その意味は?…ひょっとして、エスエスさんは生き別れのお姉さんですか?」
「…ふふふ、まぁ、そんなものかな……」
エスデスはまだ固まったまま動けない。
「さてとタツミ♪願いを叶えてやるぞ!…は!?私とデートか?もう仕方ないなぁ、特別にしても良いぞ♪」
「いえ、そんな事一言も言って無いですから!」
「全く釣れないな、そういう所も夫とそっくりだ。ふふふ…だがその前にシュラ、そこに居るのは分かっているぞ!大人しく出てこい!」
岩陰から渋々その相手は出てきた。
「ちっ…てめえは誰だ?どうして俺の名が分かった!あのエスデスを倒すなんざ、お前本当に一体誰だ?」
「うるさい奴だ、エスデスを今のうちにさっさと南の島でも北の国からでもシャンバラとやらで送ってしまえ。」
「な!?俺の帝具の事まで知ってやがるのか!?益々持って一体てめぇなにもんだ!」
「良いだろう…お前如きに問われて名乗る名など無いが、仕方ないので教えてやろう。ふっ、私は魔法少女マジカルエスエスだ!」
再び謎の決めポーズを取っている。
タツミは少し距離を取った。
シュラはそこで豪快に気持ちの上で吐いた。
「ふざけんな!少女だぁ!?ババアの間違いだろうが!?」
その時、周囲が…主にシュラの周辺が凍てつき始めた。
「ほ〜お………よく聞こえなかったな…もう一度……」
シュラは帝具のシャンバラを即座に発動させ、エスデスを直ぐに何処かに転移させ本人は凄いスピードで走り去っていった。
「ふっ、小物が」
「な、何だったんだ一体…それよりもエスデスは大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ。しばらくすれば自力で戻って来れる」
「そんな事よりもタツミはエスデスの事をどう思っているんだ?」
「え?ええ〜……、綺麗な人だとは思いますけど、考え方がちょっと…合わないかな?改めてくれたら女性として…その…見るかもしれないですけども…」
「……そうか」
タツミはエスエスが何やらガッカリしているよう見えた。やはり、エスエスはエスデスの生き別れの姉でエスデス本人も知らないだけではないかと思った。
そして彼女は先の戦いで吹き飛んだ箒を探し当て、それに跨りタツミに後ろに乗るよう促す。
「えっと…やっぱり箒なんですね…後ろに乗れと…2人乗りで大丈夫なんですか?折れたりしないかな…」
「心配するな。しっかり捕まるんだぞ♡」
「ええ、それじゃあ…」
タツミはエスエスの後ろに跨り、ぎこちなさに戸惑っている。
「もう〜タツミ〜そんなのでは駄目だぞ。もっと密着し…そうそう、そして両手を私に回すんだ」
「え?ええ〜……………」
夫のタツミだとこの辺りで罵倒の一つや二つ飛んでくるが、若い彼だと素直な為そういう所が無く、エスエス…はかなり満足していた。
「んん、タツミ、何処を触っているんだ?もっと上の方…」
「ええ?そこは不味いでしょ!?」
「駄目だぞ♪それでは私の魔力(?)が持たなくなる」
「魔力なんですか?いや、もう良いやどうでも。ああ、いやいや」
「しのごの言わずに掴むんだタツミ!」
エスエスはタツミの両手を自身に胸に当てて、直ぐに飛び立った。
「え?いや、うわーーーーーー!!!!」
自分が飛ぶのとは違い、エスエスに委ねなくてはならない為タツミはしっかり彼女にしがみざるを得ない。その為、互いに色んな所が触れている。
「うふふふふふふふ、最高だーーー!」
エスエスは恍惚の表情で叫びだす。
「どわーーーーースゲェーーーー!!!」
タツミは彼女とは違う意味で喜んだ。
一気に雲の付近まで急上昇したかと思えば、急降下し海へ出向き海面スレスレで爆飛行し、急に止まったかと思えばエスエスはステッキを振るい、数キロ程海を割り地表面が現れ、横にして数百メートルぐらいとなっている。
「おおおおおお!!!」
タツミが驚いているのに気を良くし、割った海の地表スレスレを飛び、再び戻ろうと迫る海の水をかわしながらも、最後は海に飲み込まれるが、気にせず飛び続け刹那海中飛行をする。その間、ステッキで周りを大きく照らし、彼はその状況に目を見張る。
頃合いを見計らい海上に飛び出し、今度はゆっくり飛んでいる。
濡れた体をエスエスは適温で発熱し、タツミもかわかしている。
「うおおおおおーーースゲェスゲェスゲェ!面白過ぎるぜ!!」
「ふっふっふーーん!!」
タツミの興奮にエスエスはかなり気を良くしている。
「エスエスさんはスゲェ!!やっぱり貴女は魔女なんですね!!」
「……………」
「ええっと…魔法少女なんですね!」
「うむ、そうだぞ!私はこの世界でならば大抵の事は出来るからな!」
「おお!じゃあ、じゃあ、死んだ俺の仲間を生き帰えらせれますか?」
「ん?………………」
エスエスはそれまでこの世界のタツミは自身の夫が若い頃はこういう反応をするだろう想像とほぼ一致していたが、今の発言は想定外だった。
「ど、どうでしょうか……」
エスエスの視点からはタツミが仔犬のように哀願する様に見え、心が激しく揺さぶられたが、辛くも踏み止まった。
「だ、ダメだぞタツミ、そ、そのように迫ってきても駄目なものはダメなのだからな!」
「え?迫る?」
「全く無自覚は怖いものだな…確かに条件は厳しいが、出来なくは無い…」
「ほ、本当ですか?それじゃあ」
「だが駄目だ!」
「うっ………」
「…昔、死んだ者を蘇らせられる星があってだな。そこでは確かに初めは…死んだ親しい者が蘇る事で、喜んだ…だが、そのうち命の重さを軽んじるようになり…結果だけ言えば、その星の者達は全滅した」
「な…?」
「後で生き返らせれると無能な国のリーダーが愚かな国民達に言い続け、国同士で戦争も終わらず…そして、生き返らせれる者がいなくなってだな…」
「私は救うと言ったが、結果として滅ぶ手助けはしないつもりだぞ?」
「す、すみません…俺が浅はかでした」
「ふふふ、自らの過ちを素直に詫びれる、そういう所は好きだぞ♪」
エスエスはタツミの額に口付けた。
「あ……」
「ふふふ、とりあえずは何処に行けば良い?」
「俺の…故郷の隣村に行って下さい」
「隣村か?うむ、分かったぞ」
エスエスはタツミの額に額を付けて精神感応で場所を探る。
顔近い…と彼の心拍数が上がる。
「うむ、大体の場所は分かった。では夜明けも間近だな、行くぞ!」