意外にちょっと続けるかもしれません。
昨今の世情不安、戦争、物価高と頭が痛い事が多いものの自分に一体何が出来るのだろう?と出来る事をしていくしかないなと思う日々です。
パンとサーカスという言葉があるように、
食事と娯楽を満たせば、人々は政治に関心無くなるとあるので、気をつけねば。
真夜中、一つの影がナイトレイドのアジトに向かう。
満月の明かりを頼りに、それはアジト屋敷の三階に向かって、手を地につけ自身をその高さまで押し上げる程の氷層を顕現させる。
侵入者は笑みを噛み殺しながら、その窓に手を掛けた・・・その瞬間、
「な・・・!?」
侵入者は音も無く首を掴まれ、反撃する間もなく傍のベッドに押し倒され、先端が尖った凶器を首元に当たられる。その気になればそこから脳髄まで貫くつもりだ。
月の明かりに照らされ侵入者が誰か判り、迎え撃った者は驚愕した。
「エスデス・・・」
「うふん、タツミ♡」
彼の手には鋭利な凶器・・・竹串が握られていた。エスデスは頬を紅潮させ、その手を口付けた後、彼の腕の中に入り込み微笑んだ後、彼の口にも口付けた。
タツミはそれをかわそうとはしなかったが、執拗にしてくるそれを抑え込んだ。
「ここには来るなと言っただろうが!なんで来た!」
「んむぅ、タツミが悪いんだぞ、半日も私を一人にするからだぞ?」
そう言って、エスデスは自身の頭を彼の腹にぐりぐりと押し付ける。
うんざりした顔でタツミは嘆息すると、
「良いから、テントに戻るんだ!」
「ふふふ、い・や・だ・ぞ♡」
エスデスはタツミを押し倒し、顔を擦り付けまくる。
「本当に不味い、良いから帰れ」
この間、二人は小声で話し然程物音を立てるような事はしていないが、ここのメンバーには気付かれる。
「・・・ほぉ、私達の逢瀬を邪魔する愚かな輩が来そうだな、くくく」
向かってくる気配に気付いたエスデスは、右手に冷気を作り出し戦闘態勢になろうとするが、タツミは彼女を抱え上げる。
「タ、タツミ?こ、これが姫抱っこというものか、ふふふ、悪くないぞ♡」
喜んでいるエスデスをタツミは、窓から放り投げる。
一回転した後に地面に着地した彼女は憤慨し、彼に抗議する。うるさいと黙らされ、文句と先の代償を言い合った挙句、渋々帰っていった。
そして、タツミには次の試練が待っている。
「あんた、何騒いでるのよ。あたし、密偵の代わりしてて1日寝ずで働いてたのよ・・・少しは称えなさいよ~ふあ~あ。」
例によって勝手に改造した押し入れから、マインはネグリジェ姿で侵入してくる。
「ああ、そうか~大変だったな、お疲れさん」
タツミは何事も無かったように、愛想よく応対する。
「今誰かいなかった?」
「蝙蝠がうろついてたから、追い払っただけだ」
「・・・蝙蝠?それで窓空いてるの?あたしてっきり、誰か来たかと思ったわ・・・」
些細な変化で、しかも取るに足りないものだが、そこから異変を察知する能力にも長けてはいる。それがまた彼には厄介であった。
「ん?ああ、月が綺麗だったからな、夜風を入れたかったんだ」
「!?」
マインは何やら驚いている、タツミには意図を図りかねた。
「・・・あ、あんた、どういう意味で言っているの?」
「な、なにがだ?」不味い、何か勘づかれたか?
マインはタツミの心を覗き込むように、近づいてくる。
・・・まさか、本当に勘づかれたか?どうする・・・?
平静を装っているが、内心はかなり動揺している。誰であろうとアジトに連れてきて隠したとなると、裏切り者となる。であれば、ナイトレイドのメンバーとの関係は悪化する・・・そうなる前にいっそ、マインを・・・。
いや、そんな理由で殺してどうする!とタツミは一瞬沸いた自身の殺意に呆れ、隠してた竹串を折った。
「なに?今の音?」
「ああ、これだ・・・。アカメから焼肉や鶏肉定食が如何に素晴らしいか聞かされて、食べさせられたから、その・・・鶏肉に付いてた串の余りが手元にあったんだ」
「ふ~ん?ところで、あんたから女の匂いがするんだけど、なんでかしら?」
“この世界”に来てからタツミは最大級の冷や汗をかき、内心顔面蒼白となった。
「そ・・・それはだな・・・ええと、あれだ」
「な~~~に?」
時間にしては数十秒だが、永遠にも感じる重い時間の流れだった。そして、マインは嘆息した。
「良いわ、許してあげる。でも、これからはそういう店に行くの許さないんだからね?」
「んん?おお、ああ・・・」
マインから怒りと殺意にやや近い感情が消えていったのが分かって、タツミは安堵したが、一体何に納得したのかまでは分からなかった。
「あんたも男だったって事よね?なぁに?どうせラバに誘われて仕方なくそういう店・・・・・・付き合いで行ったんでしょ?」
タツミには一体なんの話をしているのか・・・少しずつ分かってきたが、何やらまだマインとの齟齬があるような気がするが、とにかく、この場を凌げそうな流れを感じ、とりあえず頷いておいた。
「やっぱりねぇ・・・あとでラバにはきつく言っとくわ。あたしの“彼氏”を巻き込むなって」
「・・・ん?」
カレシ?どういう意味だ?誰の事を言っているんだ?話の流れから俺・・・?いやいや、そんな事あるわけないな・・・。きっとマインは眠くて支離滅裂な事を言っているんだろう。
「マイン、とにかく、もう寝たらどうだ?疲れてるんだろ?」
「な!?あんた・・・もう、しょうがないわね~物事には順序があるじゃない?」
そう言って、マインはタツミのベッドの中に入っていく。
タツミにとっては当然の疑問をマインに聞いた、何故俺のベッドに入っていくんだと。
「・・・?何言ってるの?これからは、あんたのものもあたしのものじゃない?」
こいつは何を意味不明な事を言っているんだ?ふざけるにも程がある、どれだけ傲慢なんだ?エスデスの方がまだマシに思えてくる。
「いや、自分のベッドで休めば良いだろ?なんで俺ので?」
「・・・あんたって、変な所で紳士的よね・・・まぁ良いわ。今日の所は・・・そうね、あたしの頭を撫でなさい!ちゃんと丁寧に撫でるのよ?変な撫で方したら朝までやり直しだからね?」
何を言っているんだこいつは?子供じゃあるまいし。何やら先程からマインがおかしいが、とりあえずエスデスが居た疑いを逸らせるなら、まぁ良いと判断した。
「えへへ・・・」
普段うるさすぎるマインもこうしてると少し可愛い所もある・・・場合によっては、こいつと付き合う未来もあったのか?いや、まあ良い。今はエスデスの贖罪の方が先決だ。あいつに言う事を聞かせるには、あいつの男でいた方が都合がいいしな・・・。
「初めてにしては上出来じゃない?今日はこの辺で勘弁してあげるわ。次はもっと心を込めるのよ、良い?」
何故こいつは、俺にここまで居丈高なんだ?いつもそうだが、今回は特に酷い。やはり、任務疲れの寝不足か?とはいえ、今後のマインとの上下関係を考えて一度こいつを震え上がらせた方が良いか?
タツミは心眼で相手の感情、思考はある程度読めるが、細かい所まで把握するには時間を要し、更に相手が思考を悟られないように、隠していると難易度が高くなる。
マインも表面の喜怒哀楽は激しいが内面の感情コントロールは天性のものと訓練はしている。
マインはタツミに近づき、目を瞑って唇を突き出してくる。
「?」
いつまでもしてこないタツミに業を煮やしたマインは、
「・・・なにしてるの?」
「なにしてるんだ?」
は?ナニしてるんだ?・・・ですってーーー!!!なに?タツミ?あたしのキス顔見てるだけで・・・満足してるの?ええ?
「もう?しなさいよ?」
「何をだ?」
全く、タツミ・・・ふふふ、とぼけちゃって・・・。
俺も眠くなってきた・・・いい加減帰ってくれ・・・。
「しょうがないわね、あんたはする方じゃなく、されたい方なのね、判ったわ。あたしもそれで良いわ。次にそういう機会があったらしてあげる!」
何をだ?と思ったが、もう良い。早く終わってくれと願い、マインの頭を再び撫でた。
「!?・・・もう、子供扱いしないでよ・・・うふふふ。あんたって本当変な所で紳士よね・・・ふふふ」
子供扱いしろとか、するなとか忙しい奴だ。
満足したマインは、タツミに今度は抱き着いた。
「お・・・おい?どうした?」
「やっと、あたしの魅力に気付いたみたいね・・・遅いのよ」
「もう良い、戻れ」
タツミにはどういう訳か分からず、マインはタツミの方を終始微笑みながら見て、押し入れから帰っていった。
「なんだあいつ?なんで最後・・・、今まで冷たい態度取った後、偶に優しい態度で接する・・・人心掌握の一つか?」
ただもう、どうでも良い。タツミにとって今までで最も疲労困憊の刻だった。
マインかく語りき
あたしは、この帝国と西の国境沿いの異民族とのハーフ、国境沿いで偶に小競り合いが起き、小規模の戦闘は何度もあった。
そんな中、戦闘の略奪の中で強姦されて生まれたのか・・・それがあたしだ。
父親は知らない。母親は多くを語らず、あたしを5,6歳まで育てた後、望まぬ子として産んだからか我慢出来ずに捨てられた。
ある意味、気が楽だった。いつも、憎々し気に見てくる母親といるよりは。
町の親無し子達、浮浪者の一員となった、だけどそんな中でもあたしの立場は悪かった、ハーフという理由で。
仲間内で喧嘩や死にそうな目にあったけど、一緒に盗みや日銭稼ぎの子供も出来る仕事をして、次第に打ち解けて数年過ごした。
ある時、警察の取り締まりで腹の居所が悪かった警官に何度も殴られて死んだ仲間がいた。
次第にあたしは、どうして自分がこういう目に遭うのか考えるようになった。
仲間達で、その警官に復讐しようと立ち上がり、その中でまた仲間達の何人かが死んだ。あたしは偶然落とされた拳銃を握って、その警官を撃ち、仲間達の仇を討った。
そんな中、町のゴロツキ達があたしを含めた生き残った仲間達に自分たちの配下になれ、悪いようにはしないと持ち掛けてきたが、胡散臭い連中だったから断ったら、殺しに来た。
だから、応戦し、銃を見様見真似で使って、あたしだけが生き残った。
なんであの重たい銃をまだ子供の自分に使えたのか、今なら分かるけど、当時は必死だった。
仲間はもう要らないと思ったけど、やはり不便だ。生きていく為に、小悪党を脅してお金を取ったりするうちに、大物ヤクザの息子を相手にしてしまい、あたしも危なかった所を、ナジェンダ・・・今のボスと標的が同じだったから偶然共闘した事で、ナイトレイドに誘われた。
何人か殺してきた、仲間も何人も死んでいった、だから、どうせ血塗られた道なら、少しでも国がマシになる道を歩きたかった。
浮浪児時代、年上の男があたしに悪戯しそうになった。噛みついて事なきを得たけど、不信感は残った。
だけど他に、あたしも興味を持った男の子はいたけど、その子は風邪で死んでいった。薬もない、医者にも掛かれない。あたし達は少しでも風邪になれば、大人しくしているしかない。
悪化すれば死ぬしかない。
あたしの人生もこんなものだと、勝ち組になってやると周りには虚勢を張っているが、そうでも言わないと悲しみで圧し潰されそうで、独りになったら、苦しくなる、だから煩く賑やかにしてないと平静を保てない。
ナイトレイドでの過ごす日々は、暖かいベッドもある、病気も治せる、痛かった虫歯も治せた、空腹になって苦しむ事も無くなった。いつ殺した奴から敵討ちで自分が殺されるか分からない不安さえ除けば、比較的居心地が良かった。
ああ、幾らかこんな日々が過ごせたんだ、遅かれ早かれ死んでも良いかなと思っていた。
そんな時に、あいつが来た。
なんでもレオーネが見つけてきて、使えそうだからスカウトしてきたと言ってた。
「不合格ね!とてもプロフェッショナルなあたし達と仕事できる雰囲気ないわ・・・あんたなんて一生下働きがお似合いね・・・顔立ちからして!」
つい、あんな事言っちゃたけど、何あいつ・・・超タイプ・・・。どどど、どうしよう・・・。
レオーネもたまには良い仕事するじゃない?
着てる服は野暮ったいけど、あたしがコーディネートすればバッチリじゃない?仕方ないから今度買い物行った時に・・・ああ、ダメ。変な虫が付かないようにこのままで良いかも。
その日から、独りになっても苦しくなくなってきた、だから、ちょっと彼の部屋に出来心で穴をあけて通れるようにした。彼の声が僅かにでも聞こえれば安らぐ。
当然彼は押し入れに穴開けたの怒ってたけど・・・ごめん、怒る顔も良い、もっと見たい。
こないだあたしのタツミが、帝国の性悪拷問偏執女将軍に拉致された時・・・あの時は、皆に悟られないように平静を装うのが大変だった。
あと、一秒でも遅かったら、決死の覚悟で帝国宮殿に乗り込むつもりだった。
あの夜、のほほんと可愛い顔して帰ってきて、どれだけ心配した事か・・・。
これから彼を助けにと、意気込んでた時に玄関で会って・・・帝具のパンプキン片手のあたしを見て、
「これから仕事か?」
と呑気な事言うから、安心して嬉しかったし、可愛かったし・・・ついまた悪態ついてしまった。
その後の数日間、あたしを心配させた罰として、彼の服や飲み物をより多くこっそりコレクションに加えたのは当然の報いよね?ちゃんと新しいのと取り換えたのだから無問題よ!優しいわ、あたし。
そして、ボスから重要な話として、あのオネスト大臣の死やエスデスが離反したと聞かされた。それは良いんだけど、彼の方が重要で話半分だった。タツミが皆にお茶配るのに、自分が先に率先して飲むなんて…生意気で可愛い。あたしだけ、離した位置に置くなんて・・・好きな子に意地悪するあれね?全く困ったタツミだわ。
しかも、お茶を吹き出すなんて・・・どうして、あたしに向かって掛けなかったの?2回もチャンスがあったのに、瞬間移動が出来てたら・・・。
そしてあの時、何か知らないけど・・・あなたは平然としてたけどあたしには分かるわ!本当は慌てて、出ていったわね?ふふふ、取り繕うのも可愛い。
当然、その飲み掛けのあなたの湯飲みはあたしのコレクションに加えたわ・・・うふふふふふふふ。
これ、俺の湯のみかな?ちょっと違う気がみたいな首を少し傾げている所も良いわ。
そして、あの、あの・・・愛の告白・・・心の中で鼻血を大量に流したわ。
もう、最近あたしが読んだ小説の愛の告白を引用するなんて・・・困った人だわ?
本人は本当はかなり照れ屋だから、惚けてたふりしてたけど、あたしには全てお見通しよ・・・ふふふ。
あたしが一つお姉さんだから、しっかり守って支えてあげるからね、タツミ。