帝都宮殿 会議の間
オネ「反乱軍がエンの関も無血で突破したそうです。この脅威にどう対するか・・・何か妙案はありますかねぇ」
「くそっ、今回も無血降伏とは・・・どいつもこいつもなんと不甲斐無い太守どもだ」
「地方軍は何をしている?一揆の鎮圧よりも反乱軍に当たらせろ!」
「・・・既に何回か地方軍と反乱軍はぶつかっている・・・しかし反乱軍には戦上手の元将軍達が帝具付きで身を置いている・・・そこでどうだろう?我々も正面では無く懐柔策を用いては?」
オネ「ほぉ・・・懐柔策とは?」
「帝都市民の不満も燻って来ています・・・ここは鞭ばかりではなく飴も必要はではないかと・・・」
「!?今、甘い顔をすれば余計に市民共は付け上がり、引いては帝国の威信が下がるぞ!何を言う!」
「いや現にエスデス将軍も以前と比べ温情な手段を取られ始めている・・・そうする事で反乱の芽を少しでも失くそうと・・・」
オネ「・・・おやおや・・・」
「何を腑抜けた事を言っておるのだ!!・・・それでも民の上に立つ者か!」
「・・・ブドー大将軍」
「おお!」
ブドー「・・・エスデスに如何な考えがあるか知らんが、今ここで引き締めを緩めれば賊軍やそれに準じる者達を伍する事になる・・・」
「将軍・・・」
ブドー「このような変事であるからこそ上に立つ者の規範として襟を正し引き締めなばならん!」
オネ「いや全く、ブドー大将軍の仰る通りですな・・・貴方がたにも爪の垢を煎じて飲ませてやりたいですねぇ」
ブドー「・・・本来武官は政事(まつりごと)に口を出すべからず・・・、大将軍の家系に生まれ代々その家訓を遵守してきたが・・・この状況とあらば私も黙ってはおれんぞ貴様ら・・・そして反乱軍を撃滅した後は、国家の安泰を乱す歪みを元から断ってくれよう・・・それが何者であろうとも、な・・・」
オネ「・・・おぉ~~怖い怖い。誰か知りませんがその者は覚悟しておく必要がありそうですな」
ブドー「・・・・・・・」
オネ「・・・・・・・」
周りの一同は固唾を飲む
そして、その様子を影で盗聴しているラン
アジト朝
ナジェンダ室
ナジェ「二人に来て貰ったのは他でもない・・・例の私達がしくじった仕事・・・ボリック暗殺を依頼したい・・・二人の面は割れていないだろうからな」
タツ「ん?んん・・・ああ、了解した」
チェ「ふ・・・くすくすくす・・・・」
ナジェ「?・・・お前な・・・私達が失敗した事がおかしいか?」
チェ「・・・いえいえ、すみませんボス、タツミが呑気なのが可笑しくて・・・」
タツ「悪かったな・・・『くくくく・・・』
ナジェ「チェルシー、タツミはそういう男だ・・・余り気にするな・・・とにかく、そういう訳だ。やってくれるな?」
タツ「う~む、確か5人掛かって逃がした相手でしょう?倒せるかなあ?」
ナジェ「エスデスをも従えさせる事が出来るお前だ・・・やってくれると信じているぞ」
タツ「はい・・・判りました、なんとかやってみましょう・・・ところでナジェンダさん、一つ条件が」
ナジェ「なんだ?報酬の上乗せか?」
タツ「いえ、そうじゃなくナジェンダ・・・」
ナジェンダに近づく
ナジェ「な、なんだタツミ・・・///・・・まさか・・・///」
チェ『・・・・むっ!!』
タツ「・・・このアジト至る所で煙草の匂いが充満しているんで吸う時は室外でお願いしたい・・・それが条件だ」
ナジェ「な!!///・・・お前・・・くううう・・・」
チェ「いひひひひ・・・くすくす」
ナジェ「チェルシー!!お前笑い過ぎだ!」
チェ「けどボス・・・確かに煙たいですよ・・・マインやアカメちゃんも言ってましたよ?」
ナジェ「な!?・・・ふぐぐぐぐ・・・判った、私は部下思いなんだ・・・こ、これくらい我慢してやる・・・」
タツ「う~~む、やっぱり条件変更であんたの禁煙にしようかなぁ・・・」
ナジェ「オニぃいい!アクマぁぁああああ!煙草は私の唯一の生きがいなんだぁぁぁあああ!!!」
タツ「鬼?悪魔?・・・そう・・・、あんたの思った通りだよ、ナジェンダさん・・・くくく」
ナジェ「・・・いやあそれ程でも・・・とか照れるか、ボケるか何かしろぉぉおおお!!!話そこで終了だろうがああ!!」
チェ「くくくく」
タツ「別にふざけてはいないんだがなぁ」
ナジェ「タツミの冗談に付き合っている暇などないわ!」
タツ「・・・判ったよ・・・、ではアジト外での喫煙に譲歩しよう」
ナジェ「うう・・・有難う・・・って!!なんで礼を言うんだ私ぃぃ!?しかも初めより条件悪くなっているだろそれ!」
顔を見合わせ失笑するタツミとチェルシー
ナジェンダの部屋から出た二人が廊下で
チェ「あーおかしー・・・くくく、くすくす、うふふふふふ・・・」
腹を抱えて蹲る
タツ「そんなに可笑しかったか?」
チェ「だって、だって・・・ボリック暗殺を本人に・・・くくく、あーお腹痛い・・・」
タツ「まぁ・・彼女も責任感じてたんだ・・・別に良いんじゃないか?」
チェ「で、旦那?どうするの?」
タツ「あいつの被ってた帽子でも渡せば暗殺成功したと思うだろ?」
チェ「・・・うふふ、タツミはなんだかんだで甘いんだね・・・そういう所好きよ・・・」
タツ「・・・甘いモノは好きだが、取り過ぎは控えてんだ・・・虫歯が怖いからな・・・」
チェ「・・・そう・・・、ここって笑う所?それともやっぱり何かの例え・・・?」
タツ「・・・・・・」
チェ「あたしってさ、結構甘いモノ食べても虫歯にならないんだよねー、どう?あたし達の相性良くない?」
タツ「・・・さぁな・・・」
チェ「タツミ、飴舐める?」
タツ「いや、別に良いよ」
チェ「タツミ・・飴、舐めなよ?」
タツ「はぁ・・・他の選択肢は無さそうだな・・・判ったよ」
チェ「そう、選択は一択のみ、はい♪・・・あ、噛み砕いちゃ駄目だよ」
タツ「注文が多いなぁ」
チェ「はい、今度はあーんして」
タツ「?」
チェルシーは自身が舐めた飴をタツミの口の中に入れ、彼のそれを取って今度は自分の口の中に入れる
タツ「・・・・・・・あんたなぁ・・・///」
チェ「良いじゃない、別に?あたし達キスした仲じゃない?///」
タツ「あれは・・・・・・、そうだ、・・・チェルシーに聞きたい事があったんだった」
チェ「え・・・///なに?なんでも聞いて・・・ス、スリーサイズでも教えるよ///」
タツ「・・・・・、あんたなんでこの稼業に入ったんだ?」
チェ「・・・おっと!意外な事聞いて来たね・・・でも良いよ、タツミになら教えてあげる」
チェルシーは過去、要領よく立ち回り領内の役所に勤めた。だが、そこの太守は賄賂や人間狩りを楽しむ外道であり、女一人ではどうする事も出来ずその惨状をただ黙って見過ごす事しか出来なかった。何も出来ない自分へのやるせなさと虚無感に襲われ魂が死に掛けていた、そんな時、城の宝物庫に今の自身が持つ帝具を見付け・・・そして、時間を掛けてそれを盗み出しその変身能力を利用して太守を殺害。皆は暴君の死に安堵し新しい太守は領内をそれなりによく治めた事を語った。
チェ「―――という事があってね、あの時、私は世直しをした・・・そう実感すると朽ちかけていた魂が・・・甦ったような・・・そんな感覚だったわ・・・」
タツミは飴を噛み砕き、遠い昔に思いを馳せた
タツ「・・・・『
土砂降りの中、道場の門の前まで殴り飛ばされて蹲る竜人が一人。
「師匠!・・・自分は誰もが見て見ぬふりをする、あの者を他から頼まれ始末したにしか過ぎません!・・・何故ですか、何故他の者達のように黙って見過ごさねばならないのです!」
「この愚か者が!!!いつ儂がお前にそのような事する為に武の術を、道を説いた!・・・今まで何を聞いていた!・・・その術を使って良いのは已むを得ず戦(いくさ)に巻き込まれ自衛の時のみと教えたはずだ!」
「これもある種の戦争では無いのですか!目の前で苦しむ人を黙って見過ごす・・・そんな事せずに手を差し伸べるのが力ある者の務めでは無いのですか!?」
「力がある?自惚れおって!!儂がお前に伝えたかったのは戦すらも止めさせ治める力だ・・・今のお前なぞまだまだひよっこ・・・まだまだ伝えとらん事が山ほどあるわ!・・・だが今日もって貴様は破門だ!・・・儂が教えた武をそんな事に使いおって・・・本来なら引導を渡す所だが、温情を持って破門程度で許してやる・・・もう二度とこの門を潜るな!!」
数日後
道場の門には看板はもう既に無かった。
「・・・?何かあったんですか?」
「いえね、なんでもここのお弟子さんが先生の教えに反したとかで・・・他のお弟子さんが全員辞めさせられたんだって・・・」
「そうですか・・・」
「しかもよ・・・そこの先生、責任感じたのか判らないけど、お腹を召されてお亡くなりになったんだって・・・可哀想にねえ・・・」
「・・・!・・・・・・・どうも・・・『・・・俺が・・・俺が師匠を殺したんだ・・・俺のせいで・・・ううううううわあああああ』」
・・・・・・・』」
チェ「この能力を使えば、今度は腐敗した世界そのものを変えられるかもしれない・・・そして私は一度汚した手ならばとここ(革命軍暗殺部隊)に入ったの・・・」
タツ「『・・・今なら師匠の言う事も判るな・・・』チェルシー・・・、そりゃ結構な話だな・・・あんたの正義感にも共感はする・・・その惨状を黙って見過ごせない心意気もな・・・」
チェ「・・・うふふ、タツミ、貴方ならそう言ってくれると思ってたわ」
タツ「だがな・・・その太守を殺して止めておけば良かったな。確かに悪徳な権力者を、正当な方法や法では裁けない悪党を暗殺という手段で葬る・・・そりゃ俺も成敗もまた已む無しと思うさ。だがあんたの場合、その正義の名のもとに殺しに快感を見出してしまったように見えるがな・・・」
チェ「・・・!・・・別に私はそんな事・・・」
タツ「あんたは、その惨状を打破する形で暗殺をした・・・その事で自分は世直し人(びと)になった気でいる。・・・確かに暗殺で時代の流れが変わる事もあり、悪い奴が死ねば一時的に良くもなろうだろう・・・しかしな、そう言って誰もが暗殺は世直しだと言って殺ってたら、世の中正義の名の元の暗殺が横行して毎日血の雨が降るぞ・・・」
チェ「・・・タツミ・・・!!!・・・私はそんな・・・それでも・・・そういう奴を殺す事で平和な世の中になるなら・・・汚名を被っても構わない・・・」
タツ「・・・チェルシー、あんた殺しに快楽を見出していないと・・・本当に言えるのか?正義という理性の名のもとに・・・本当は殺しが本能的に楽しいがそれを口に出すのは憚られると無意識に思って、正義の名で自身の快楽をごまかしていないと本当に言えるか?」
チェ「・・・も、勿論よ!」
タツ「じゃあ、何故・・・その太守を始末した後、それ限りにしないで暗殺を続けた?」
チェ「それは・・・帝国の腐敗を・・・根本の原因を正す為に・・・」
タツ「確かに帝国は腐敗しているし・・・俺もそう思う・・・だがお前、原因云々言ってたら人間皆殺しにしなければならないぞ?」
チェ「・・・・何もそこまで・・・」
タツ「・・・なぁチェルシー、あんた仮に革命が成功した後どうするんだ?」
チェ「そうなったら、平和に暮らすわ・・・」
タツ「本当にこの稼業から足洗って、すっぱりと止められるんだな?」
チェ「ええ・・・・『・・・ケド、ホントウニ・・・?』」
タツ「・・・もうこの際だから隠さず言うが・・・俺があの時、根回しして無かったらあんた・・・、クロメ追掛けてって死んでたぜ・・・」
チェ「・・・、ええ、それは何と無く私も判る・・・『あれが正夢になってたんだろうね・・・』」
タツ「だから・・・、次はもう無いと思ってくれ・・・あんたがもし革命後も暗殺を続けていたら・・・俺があんたの首を刎ねる・・・」
チェ「・・・うっ・・・タツミ・・・!!!」
タツ「・・・ここのナイトレイドの連中は性格的には誰もかれも良い奴らさ・・・ただな、この稼業しているから仕方ないのかもしれないが、レオーネを初め多かれ少なかれ・・・表には出さないが殺しに快楽を見出している・・・、死んだブラートもシェーレも。この仕事をしている以上、適応する為の許容範囲内とも言えるが・・・、自身の殺しへの快楽を世直しとか正義という言葉で隠し始めたら・・・厄介極まりないぞ・・・」
チェ「・・・今いるメンバーで一番それなのが・・・私だって言いたいの?・・・」
タツ「・・・シェーレは生粋の殺人者だった・・・だから暗殺以外に自分の居場所は無いと思っていたようだが、そんな彼女でももっと別の生き甲斐、働き甲斐を見付けて穏やかに暮らして欲しかった・・・」
チェ「・・・・・・・」
タツ「・・・エスデスは、残虐な愚か者でその罪状を上げたら奴に多くの罵詈雑言を浴びせられる・・・そしてあいつも闘いに快楽を見出しているが・・・そんな奴でも自分の嗜虐性を正義の名でごまかしたりしない点ではまだマシだ・・・う~む、だが帝都の治安を守る云々言う時があるから・・・五十歩百歩かもな・・・ははは」
チェ「・・・あはは・・・、タツミって白馬の王子様?・・・それともやっぱり死神・・・」
タツ「・・・そう・・・あんたの思った通りだよ・・・チェルシー・・・」
光を背に、逆光気味で不敵な笑みを浮かべる
チェ「なにそれ?・・・ボスにも似た事言ってたね・・・それタツミのマイブーム?」
タツ「・・・・・・・ふっ」
チェ「あーあ、やっぱりあたしみたいな女なんかに王子様は現れないか・・・」
タツ「・・・理想の異性なんて幻想の中にしか居ないと思うぞ・・・」
チェ「王子様な死神なんて・・・正に、恋か死か・・・ね?」
タツ「・・・なんだそれは?」
チェ「あたしが読んでる本にそんなフレーズが載ってたのよ・・・」
タツ「・・・・・・なぁチェルシー、もう暗殺止めたらどうだ?」
チェ「・・・え?・・・」
タツ「まさか・・・自分でもう修正出来ない程、殺しが止められないと言うなら・・・その時は・・・判っているだろうな・・・」
タツミは殺気を放つ。
チェ「・・・!・・・・・・・良いの止めても?ボスから別件で依頼受けたらどうするの?」
タツ「・・・そいつは俺が引き受けよう・・・ナジェンダには俺から話を付ける」
チェ「・・・タツミ・・・」
タツ「ただ、条件として俺の仕事の手伝いだ・・・」
チェ「・・・判ったわ・・・その条件呑むわ・・・うん・・・」
タツ「・・・・・・・・」
チェ「・・・じゃあ明日からタツミ専属のメイドね?・・・どんな格好しようかな・・・きわどいのでもタツミが望むなら良いよ?」
タツ「ふざけた事言ってると叩ッ殺すぞ!///」
チェ「いつも冗談飛ばしているタツミには言われたくないわ!」右手でビシッ、会心のツッコミ!
タツ「・・・・・・・」
チェ「・・・・・・・」
タツ「ま、せいぜい生き延びてくれ・・・じゃあな・・・」
タツミはそう言って、チェルシ―頭を撫でて去って行った。
タツミが舐めていた飴を彼女は舐めながら
チェ「・・・タツミの味、・・・苦くて甘いな・・・」