チェ「ふぅ・・・なんでタツミってあんなに色んな帝具を使いこなせるんだろ?反則だよ・・・」
タツミの消えた部屋のベッドで寝転がり手持無沙汰なチェルシー、そこに窓から蛾が入って来る。
その時、反射的に髪に隠した仕掛け針を抜いて、蛾へと投げつける。蛾は両羽を貫かれ壁に縫われる。
一瞬彼女の目が光り、仕留める恍惚に浸るが・・・直ぐにそんな自分に気付き軽く自己嫌悪する。
チェ「あ・・・、ごめんね・・・」
蛾を針から解放し、よたよたしながら飛び去って行ったが、やがて落ちて行った。恐らく長くはもつまい。
チェ「長年染みついた(殺しの)習性は・・・そう簡単に落ちないか・・・」
哀しげに針を回す。
安寧道、ボリックの部屋
タツ「さてと、これを持っていけば良いか・・・しかし、あいつ帽子一体いくつ持ってんだよ?それも同じやつを・・・誰だ!?」
物陰から現れるスズカ
スズ「・・・誰だとはご挨拶ね・・・それはこっちの台詞じゃ無い?」
タツ『スズカか・・・』「ああ・・・俺はボリックさんの使いの者で彼に頼まれて衣類を持ち運びに来たんだ・・・」
スズ「本当・・・?・・・ふ~~ん」
スズカはタツミの周りを回りいぶかしんでいる。
タツ「・・・・・・それでは俺はこれで・・・」
会釈して立ち去ろうとするが・・・
スズ「待って!くんくん」
タツミは後ろから羽交い絞めにされ、匂いを嗅がれる。
スズ「う~~ん、どうも君からボリック様本人の匂いがするんだけど・・・どうしてかな?」
タツ『!?・・・女は男より嗅覚鋭いと聞くが・・・お前ら(エスデス含む)鋭過ぎだろ!!』
スズ「ねぇ・・・どうも妙なんだよね・・・皆余り気にして無かったけど、ある時を境にボリックは変わったんだよね・・・君何か知っているでしょ・・・洗いざらい吐きなよ・・・優しくするからさ・・・」
そう言ってスズカは後ろからタツミの頬を舌で舐める・・・そして・・・
ズドン!!
スズ「ぐっ・・・」
スズカはいつの間にか地面に叩きつけられ、首を抑えられる。
タツ「・・・ここで見た事聞いた事、全て忘れて貰おうか・・・」
スズ「ぐ・・・『・・・どうやらビンゴみたいね・・・ふふふ』
虚六郊外
人通りの無い、路地を歩くチェルシー
チェ「はぁ~あ、タツミ何やってんだろ?早く帰って来ないかな・・・」
何ともなしに気晴らしに外を出歩いていた。
チェ「・・・誰?」
クロ「・・・流石、殺し屋の一味、察しが良い・・・」
クロメが物陰から八房を片手に姿を現す。
クロ「どうも怪しいと思って手配書類を調べたら、反乱軍の手先、チェルシー・・・、お前一人くらいならあたし一人で十分!治安を乱す輩はイェーガーズが狩る!」
チェ『・・・アカメの妹・・・』
クロ「それに・・・あんなでもタツミは私達の仲間・・・、お前、タツミに近付いて何をする気だ!」
チェ『ははー・・・そういう事・・・』
チェルシーは満面な悪女面で、
「・・・馬鹿なイェーガーズの男・・・くくく、あいつあたしに首ったけさ、だけどあいつはもう用済み・・・聞けるだけの事は聞いたからね・・・後で始末するさ!?」
クロメはチェルシーが言い終わるや否や抜刀し袈裟斬りに来る。それを寸でかわし、チェルシーは針をクロメの右肩に刺した後、素早く逃走を図る。クロメはそれでも片手で八房を薙ぎ払い、チェルシーの首の皮を裂き、一筋の血が流れる・・・。
チェ「じゃあね、間抜けなお菓子っ娘ちゃん!」
クロ「くっ!逃がさない!・・・ん!?」
クロメの靴の先端と地面を縫いつけるように針が刺さっている。チェルシーはもう何かに化けたのか姿が見えない。
クロ「・・・、ちっ・・・八房が発動出来てれば・・・あの飴BBA・・・恐ろしい女・・・」
逃走中のチェルシー
『ふぅ・・・危なかったぁ・・・、タツミと特訓しといて良かったぁ・・・』
二人の泊まっている宿に戻ると、タツミは既に帰っていた。
タツ「チェルシー、あんた何処行ってたんだ・・・、どうしたその首の怪我?」
チェ「ちょっとねぇ・・・、ドジっちゃった・・・ま、大した事は無いよ・・・あはは、実はクロメに見つかってさ、あたしの事ばれてた!」
タツ「なんだと!?・・・クロメはどうした?」
チェ「とりあえず足止めしただけだよ」
タツ「う~~~む、とりあえずあいつらに顔を見せてくる・・・」
チェ「タツミはあたしに誑かされているって、クロメは思ってたよ・・・意外に仲間思いなんだね、アカメちゃんの妹は・・・」
タツ「・・・ははは、あいつの仲間意識は歪んでんだがな・・・それでも少しはマシになったか・・・だが誑かせているのは的を得てるな・・・」
チェ「何言ってんさ!ひどー!」
タツ「とにかく、俺はあいつらの所へ行ってくる、一人になっても気を付けてな」
安寧道休憩室
シュ「観念して、死を受け入れろ!もはやお主に道は無い!」
ウェ「くっ・・・まだだ、まだ俺は負けちゃいねえ!」
シュ「ほぉ・・・?どれそれでは飛車取り、その二手後は王手じゃな」
ウェ「だ――――――!」
シュテンとウェイブは将棋の最中でたった今、勝負が着いたようだ。
シュ「はっはっは!何度やっても同じじゃ!」
ウェ「かーーーー、勝てねえ・・・ああ、もう一回!」
シュ「良かろう、何度でも相手してしんぜよう」
そこにクロメが帰って来る。
シュ「うむ?おお、お嬢ちゃんお帰り・・・ぬしの妻が帰って来たぞ・・・くくく」
ウェ「う~む、今度はこの手で・・・ん?おお、クロメお帰り・・・って、べべべべ、別に俺達はそんなじゃ・・・///」
クロ「ウェイブ・・・」
ウェ「んん?いや、違う、違うぞ、クロメ!そういう意味でも無い訳では無い様な・・・いやえーと」
クロ「・・・・・・」
ウェ「悪い、シュテンさん・・・ちょっと席外すわ・・・また今度な?」
シュ「む?ああ・・・判った、では儂もそろそろイバラとメズと交代してくるか・・・ではな、お二人さん」
クロメが使っている部屋に行き、そして
ウェ「どうした、クロメ?怪我でもしたのか?」
クロ「・・・流石だね、ウェイブ、やっぱり判っちゃう?」
ウェ「当たり前だろ!動きが微妙におかしいぞ、何があったんだ?」
クロ「・・・あたし一人で片付けようと思ったんだけど、あたし達がさっき会ったタツミと一緒に居た女、反乱軍の暗殺者・・・」
ウェ「あの女がか?・・・なんで一人で行ったんだよ!」
クロ「ウェイブには人を・・・しかも女を殺させたくないよ・・・ふふふ」
ウェ「・・・っつ、馬鹿だな・・・クロメ、お前・・・」
タツ『・・・どうしたものか・・・中に入りづらい・・・』
クロ「タツミはあの女に騙されている・・・一応仲間だから・・・なんとかしなくちゃ・・・」
ウェ「そうだ・・・タツミ、なんであそこに居たんだ・・・?あいつ確か帝都にいるはずじゃあ・・・」
クロ「隊長に言われて、ウェイブを監視に来たとか・・・?くすくす」
ウェ「な!?・・・ああ、そういえば!・・・たたた、隊長が決めた、帝都に帰って来るよう言われてた期限が過ぎてやがる・・・ま、不味い・・・!こ、今度はソフト拷問エヴォリューションどころじゃすまねえぞ!・・・まままま、まずいー!!まだ俺は死にたくねェ・・・!」
クロ「大丈夫だよ、ウェイブ・・・あたしに任せて!」
ウェ「クロメ!」
クロ「あたしから隊長にせめてソフト拷問レヴォリューションで留めて貰うように言うから」
ウェ「・・・・・・・、あ、ありがとなクロメ、お前の優しさに涙が出るぜ・・・」
勿論皮肉である。
タツ『やっと中に入れる・・・』「よぉ、お二人さん久しぶりだな」
ウェ「な!タツミ!」
クロ「タツミ・・・」
二人はぱっと離れる。
ウェ「お、お前・・・えーとな、聞く事が多いな、まずはだな・・・」
クロ「・・・あの女とはどこまですすんでるの?」
ウェ「そうそう、それは俺も気になってた事・・・って違うだろ!・・・あいつ、お前と一緒に居た女な、反乱軍の暗殺者だぞ!」
タツ「なに!?本当かそれ!?」
クロ「うん・・・間違い無い・・・」
タツ「ん?いや、だけど・・・、俺達は愛し合っているんだ・・・彼女も説得すればきっと判ってくれる・・・」
クロ「タツミ・・・悪いけど、あの女はタツミを利用する事しか考えて無い・・・それに、情報を聞き出し終えたから貴方を始末するって言ってた・・・」
タツ「なんだと・・・、ちっ・・・ちきしょう・・・・・」
悔し涙を浮かべて見せる。
ウェ「タツミ・・・」
タツ「判った・・・有難なクロメ・・・あの女は俺が始末付けとく・・・俺一人にやらせてくれ!」
クロ「気を付けて・・・、並みの相手じゃないから」
タツ「ああ・・・」
ウェ「・・・よし、その件はタツミに任せるとして、・・・タツミお前どうして虚六に来たんだ?」
タツ「・・・隊長がウェイブ早く帰って来いと、それを伝えに来たんだ・・・ボリックの件はクロメに任せてと、あと確か“ウェイブの奴め・・・ソフト拷問ファイナルアンサーだけでは済まんぞ”とか言ってたような・・・」
クロ「ファ、ファイナルアンサー・・・あ、あの・・・」
ウェ「あ、あばばばばば・・・ク、クロメ・・・そ、そんなきついのかそれ?」
クロ「あたしも噂にしか聞いた事無いんだけど・・・確か生きて帰って来れた者はいないとか・・・『くすくす・・・ウェイブかわいい』
ウェ「おい、それ半分死刑だろ!いやそれもう死刑だろそれ!・・・ち、ちくしょう!こうなったら隊長と刺し違えるまでだぁああああ!」
タツ『くくくくく・・・』「じゃあ用件だけ伝えたからな・・・俺は別に宿を取っているから明日にはもう帰る・・・ウェイブも早く帰れよ・・・じゃあ最期の夜を過ごしてくれよお二人さん」
ウェ「・・・ちくしょう・・・笑えねェよ・・・」
クロ「大丈夫、どんな事があってもあたしはウェイブの味方だから・・・」
ウェ「クロメェ・・・」
タツミは宿に向かう道すがら
「・・・愛し合っているか・・・フッ、嘘とは言え我ながららしく無い事を・・・」
そして宿にて
タツ「・・・くくく・・・ウェイブは本当良い奴だ、面白い奴だ・・・そして良い奴だ・・・くくく・・・いひひひ」
チェ「・・・どうしたの?帰って来るなり思いだし笑い?いやらしー」
タツ「いや、あいつ本当面白いんだこれが、今時あんな帝都には似合わない純朴な奴でさぁ・・・ああ、面白ぇ・・・」
チェ「へぇ・・・そんな人なら一度話してみたいな・・・うふふ」
タツ「ああ、・・・何読んでんだ?」
チェ「ん?地方紙・・・なんか面白い記事書いてないかなぁって」
タツ「おお、じゃあ俺も見せてくれよ」
チェ「はいよ♪」
タツ「なになに、“安寧道立ちあがる!?民衆救済の為、対決辞さず”か・・・」
チェ「あと特にこれといって目立つ記事は無いよ」
タツ「そうだな、・・・“帝国将軍、反乱軍と内通か!?政府、許し難き所業と断罪、明後日処刑”・・・んん!?」
チェ「・・・どうしたの?」
タツ「いや・・・なんでもない・・・」
チェ「もぅ、貴方がそんなに驚くなんて余程の事でしょ?見せてよ・・・え~と、政府関係筋に因ると若くして功績名高いエスデス将軍と思われる。何故彼女が変節したのか未だ詳細は不明で追って調査中との事・・・」
タツ「・・・・・・・」
チェ「・・・・・・・」
しばらく長い沈黙が訪れた後、
チェ「・・・助けるの?」
タツ「・・・まさか・・・」
チェ「そうよねぇ・・・、あたし達の仲間もあいつの部下や軍に殺されたは・・・エスデスなんて処刑されて良い気味よ・・・」
タツ「ああ・・・、全くその通りだ・・・」
チェ「・・・・・・、あたしなんか疲れたからもう寝るわ・・・お休み・・・」
タツ「・・・ああ、お休み・・・」
チェルシーはタツミの部屋から出ていき、自分の部屋に入り扉を閉め、
チェ「・・・ばか・・・」