昼間、帝都路地・・・そこに二人の若い男女が、
「おーえす、おーえす!」
「ママー、あの人達何してるの?」
「しっ、見ちゃいけません!」
ウェイブは道のガス灯にしがみついて離れない・・・それをクロメが引っ張っている。道行く人は見無かった事にしたり物珍しげに見たりさまざまである。
「クロメェ、おーえす・・・じゃねぇよお!!・・・後生だぁああああ、やっぱ行きたくねええええええ」
「ウェイブ・・・あたしも一緒に来たんだから、隊長に(拷問を)少し軽めにして貰う為にわざわざ来たんだよ・・・羅刹の人達だってボリックさんの件は自分達に任せろって・・・だからほら早く!・・・ふぎぎぎぎぎ」
「いやだ――――!隊長の、ちょっとハードだよ拷問ビッグバンテラ、なんて絶対嫌だ―――!」
「違うよウェイブ、ちょっとハードだもん拷問ぷんぷんドリーム・・・あれなんか違う・・・?とにかく、虚六出た時はあんなに、勇ましかったのにどうして此処に来ておびえるの!」
「クロメ!それはあれだ!休み明けは仕事となると、エンジンが入って無くて憂鬱になるのと同じだ!俺は出勤拒否・・・この場合は罰受けっから出頭拒否児童なんだ!」
「もう、なに大の男が偉そうに言ってんの!・・・ウェイブは海の強い男なんでしょ!・・・見損なったよ!」
「はっ!!」
ウェイブは急に手を離して立ち上がる、クロメは反動で後に転がる
「きゃっ!」
「クロメ・・・俺が間違っていた・・・隊長がなんだってんだ!・・・よし行くぞ!」
ウェイブはさっさと足を進める
「ウェイブ待ってよー!」
そして・・・イェーガーズ隊長室
ウェイブはその部屋の前でドアを開けるか躊躇している・・・。
「どうしたのウェイブ?」
「・・・・・・・・・」
「ウェイブ?」
「・・・どうも今日は腹の調子が悪い・・・また明日に」
「ウェイブ!」
「わわわわ・・・判っているって・・・クロメ!」
「なに?」
「押すなよ・・・俺自身で開けるからな・・・押すなよ・・・ぜーーーったい押すなよ!」
「判っているから・・・早く開けてよ」
「ああ、判っている・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
クロメは後ろで大声を出す!
「わっ!!!」
「どわわあああああああ」
ウェイブは驚き、勢いで部屋の中に転がり込み・・・
「いてて・・・クロメ、押すなって言っただろ!」
「押してないよ」
「はっ!!・・・あばばばばば・・・たたったたたた隊長・・・申し訳ありません・・・、このウェイブ海より深く反省しております!」
「・・・・・あれ?ウェイブ、隊長じゃないよ?」
「へ?」
窓を背に逆光気味だった為、顔が判りにくかったのか・・・その机の椅子に腰かけていたのはランだった。
ラン「やぁ・・・二人ともそろそろ来る頃だと思ってましたよ・・・」
ウェ「ラン・・・なんでお前が隊長室にいるんだ?」
ラン「さぁ・・・どうしてですかねぇ・・・それにしてもこの椅子なかなか座り心地良いですよ、君たちも座ってみます?」
クロ「エスデス隊長は・・・何処にいるの・・・?」
ランは今までの事をかいつまんで話した。
ウェ「なにーーーーーー!隊長が・・・おい、一体どういう事だよ!」
ラン「言葉通りですよ、エスデスは反乱軍と通じていたので、処刑が決まりました・・・ですが何者かが彼女を連れ去りました・・・めでたし、めでたし・・・という訳です」
ウェ「わ、訳判んねえよ・・・隊長が・・・どうしてだよ・・・なんでだよ・・・畜生・・・」
クロ「・・・ウェイブ、あたしも俄かに信じたくないけど・・・エスデスさんが敵と内通してたなんて・・・」
ウェ「ああ・・・俺だって信じたくねぇよ・・・」
ラン「まぁ・・・そういう訳で不肖、私が臨時ではありますが将軍職に就きました・・・おめでとうの一言でも言って下さい?そうそう、イェーガーズは解散し、君たちは私の直属の部下になりました・・・ああ、でも今まで通りに接してくれて良いですよ、気にしませんから」
ウェ「おい、ラン・・・とりあえず隊長は生きているかもしれねぇけど、お前、隊長が死ぬかもしれないのに黙って見てたのかよ!」
ラン「・・・・・・、ええ、黙って見てました・・・」
ウェ「てめぇそれでも一緒に過ごした仲間かよ!」
クロ「ウェイブ抑えて」
ラン「・・・政府の命令に逆らうんですか?」
ウェ「ぐっ・・・・・・・・」
ラン「まぁ・・・私もそこまで日和見主義者じゃありませんよ・・・」
クロ「じゃあ何故?」
ラン「・・・・・・私の親しい人がエスデスか・・・或いはその部下に殺されているんですよ・・・」
クロメは少し悲しそうな顔になり、
ウェ「!!!それ本当かよ・・・」
ラン「はい」
ウェ「じゃ、じゃあなんで今まで隊長に従って来たんだ・・・」
ラン「・・・エスデスに会う為にここまで辿り着いた時は、本当は内心穏やかではありませんでしたよ・・・、倒すつもりでしたが、彼女の実力がはっきり判りませんでしたので・・・それで今まで様子見してたんです・・・、いよいよ倒す算段もついて、どうするかとなった時、悩み初めましてね・・・エスデスはある青年と出会って変わり始めた・・・だから殺すかどうか悩みました」
ウェ「誰だそいつは・・・?」
ラン「誰でしょうねぇ、彼女も名前は教えてはくれませんでしたが」
クロ「とにかくランは、変わり始めたエスデスさんを殺すかどうか悩んだ・・・その間に処刑が決まった、そういう事?」
ラン「そういう事です・・・『流石に君たちに彼に話した程の本音はまだまだ言えませんね・・・』・・・ところで、君たちは安寧道の武装蜂起に手も貸したそうですね?」
ウェ「!?・・・なんで知ってるんだ?」
ラン「ランイヤーは地獄耳なんですよ・・・ふふふ」
クロ「手を貸したと言っても、大した事はしてない・・・」
ラン「別に咎めようと言う訳じゃありません・・・、ただ私達が守ろうとしたボリックは今の教主の暗殺を企んでいました・・・、エスデスはそれも承知の上で護衛を引き受けたんですよ?」
ウェ「な!?あの教主様を?・・・良い人だったぞ・・・なんで・・・」
クロ「あたし達も何度かお会いして話したけど・・・悪い人じゃなかった・・・」
ラン「帝都政府からすれば治安の乱れ・・・武装蜂起を阻止する為に・・・でもまぁはっきり言うと、ボリックは自分が権力を掌握したかっただけですよ。裏で麻薬密売、人身売買してましたからね」
ウェ「なんだって?じゃあ俺達はそんな奴の護衛を・・・待てよ、ボリックがこのまま生きてたら・・・」
ラン「ああ、その辺は大丈夫です・・・ボリックと取引したので、彼の隠れ場所は判ってます・・・、命を助ける代わりに教主暗殺や諸々の犯罪行為から手を引かせました」
ウェ「ラン・・・人が悪いな・・・俺達の知らない所でそんな事してたのかよ」
ラン「敵を欺くからにはまず味方から・・・これぐらい出来ないと将軍にはなれませんよ」
ウェ「・・・・・、クロメ?」
クロ「・・・・・・・・、もう何を信じて闘えば良いだろう?」
ラン「クロメさんは、今まで物事の本質を見極める事を放棄してきましたからね・・・何が正しく間違っているか自分なりに考えて下さい・・・」
クロ「帝都の治安を乱す事が悪い事だ・・・、どんな理由があろうと・・・、治安は乱しちゃいけない・・・そう思って来た・・・」
ウェ「そりゃそうだって・・・、クロメの言う通りだって・・・だけどよ、安寧道もそうだったが、正当な手段でどうにもならない時ってあるよな・・・」
ラン「・・・時と場合によりけりというやつですかね・・・二人とも長旅で疲れたでしょう・・・部屋はそちらにあるのでゆっくり休んで下さい・・・」
廊下に出ると、
「ウェイブ、クロメ、帰ってたのか!」
ウェ「タツミ・・・」
クロ「・・・・・・」
ウェ「タツミ、お前隊長の件、知ってんのかよ?」
タツ「ああ、知ってる・・・一体誰がエスデスを連れ去ったか、血眼になってブドーの近衛兵やオネストの部下が探し回っているぞ・・・当然、エスデスと懇意にしていた奴らも尋問を受けている・・・助命嘆願した奴らはもう全員解雇になった・・・」
ブドーに届けた嘆願は彼が破り捨てた為、その者達は免れたが・・・オネストに提出した者達は・・・。
クロ「タツミ、それ本当?」
タツ「ああ・・・、お前達はランさんが庇ったから尋問の必要ないと、彼の部下という形で何も無いが・・・他の怪しい奴らはオネストの部下がそいつらを拷問で自白強要させているぞ・・・お前らも念の為、気を付けろよ・・・『エスデス一人捕えるのに・・・被害が拡大しているな・・・そろそろ決着を付けるしかないな・・・』」