その後、ナジェンダは革命軍との最終調整に入り、帝国側で無血開城出来る所はあらかた話を付け・・・エスデスの処刑は温情で取りやめになったと政府は伝聞したが実際の目撃者は多く、政府の威信は地に落ち、それに乗じて革命軍は進軍、あと一歩まで帝国へ入り込んでいた。
そして、最後の要害シスイカン。
ブドーの近衛兵が守るそれは鉄壁の要塞と化し、革命軍の進軍を完全に防いでいたのだが・・・。
ドロテアの工房
「いよいよ、反乱軍が迫って来とるのう・・・」
ドロテアはのんびりと菓子をつまんでいる。
「呑気な事を言っている場合ではありませんよ・・・」
そう言ってオネストも大量に菓子をほおばる
「まぁ良いわ・・・こちらはエスデスが捕えた捕虜を喰わせて、かなり強くなったのじゃ・・・、コスミナは」
「・・・まだ“食料”が必要ならいくらでもエスデスを助命嘆願した者達を渡しますよ?」
「・・・大臣、お主も悪党じゃのー・・・あれだけ手駒に使った女やそれに類する者達をこうも慈悲無く斬り捨てられるとは・・・くくく、妾も気を付けるのじゃ」
「・・・・・・私の目的は世界の全ての富を我が手に納める事・・・、その為には泥水を啜ろうが、同胞だろうが、なんでも斬り捨てますよ・・・」
「前にも言っとったが、そこまでして富が欲しいかの?流石の妾もそこまで欲しいとは思わんのじゃ」
「・・・・・・、もう二度とあの貧しい日は送りたくありませんからね・・・、私は自分より富める者は許せない・・・あの貧しかった頃の金持ち共の蔑んで私を見た目は今でも忘れない・・・もっとも、その時の怒りがバネになってここまで来たのですからね・・・そういう意味では感謝しなければなりませんかね・・・」
「・・・・・・・『劣等感の塊のような男じゃの』
「最近、陛下も私の言葉を余り耳を貸さなくなってきてしまいました・・・これだけの忠臣は他に居ないと言うのに・・・致し方ありません・・・、色々なご心痛が重なったのでしょう・・・これでは政務も満足に行えず・・・そのうち病死してしまわれるかもしれませんね・・・おっと、これは滅多な事いうものじゃありませんね・・・ぐふふ」
「『・・・ふっ、妾に毒を盛れと言いたいのかのぅ?・・・まぁ良いのじゃ』・・・そうじゃのー、若くして病死する事もあるかもじゃのー」
「ええ、悲しい事ですが病死はお若くてもある事です・・・ふふふ」
トントン
「むっ!誰じゃ?」
「オネスト様・・・こちらに居られましたか・・・反乱軍を如何に防ぐかの会議が開かれます・・・お早く・・」
スズカが呼びに来た。
「はぁ・・・、まぁ良いでしょう・・・それでは、ドロテアさんまた後ほど・・・」
「おお・・・またなのじゃ」
オネストを先行させ出て行こうとするスズカがふと立ち止まり
「ドロテアさん・・・でしたね?・・・今度貴女の国の話を・・・錬金術とか色々聞かせて下さいね・・・」
「?・・・まぁ良いがの、興味でもあるのじゃ?・・・それにしてもここに来て随分しおらしくなったのじゃ・・・どういう風の吹き回しじゃ?」
「ええ・・・郷に入れば郷に従えと・・・ふふふ」
笑みを浮かべて去って行くスズカ。
『・・・?妙な女じゃ・・・』
要塞シスイカン
ブドーは革命軍との膠着状態の中、敵が見える城壁で静かに不動の姿勢で瞑想をしていた。そこに部下が伝令に来る。
「大将軍!・・・申し訳御座いません・・・逆賊エスデスは今尚見つかりません!・・・明日には必ず!」
ブドーは微動だにせず
「・・・構わん・・・今は反乱軍を撃滅させる事が先決・・・この闘いを鎮圧した後にエスデスは、この俺が直々に探し出す・・・」
エスデスの居る小屋
タツミは小屋の戸を叩き、即座に体を横にする。
「タツミーーーーー///」
エスデスが猛突進してドアを開け、当然そこには誰も居ないので勢い余って転び受け身を取る。
「・・・なにやってんだ?」
「酷いぞ、タツミ!妻の出迎えを拒むとは!」
「どうして、ノック音だけで俺だと判った・・・?」
「ふっふっふ、タツミの匂いは100メートル先からでも判るぞ!」
「『・・・この無駄力何かに使えないかな?』・・・そんな事よりもエスデス、お前と懇意にしてた奴やお前の助命嘆願した奴らが拷問に遭ったり、殺されてるぞ・・・」
「・・・!・・・本当か!」
「ああ・・・」
「誰だ・・・そんな事した奴は・・・私が蹂躙して・・・死ぬより辛い目に遭わせてくれる・・・」
「オネストとドロテアだ・・・」
「ちっ・・・やはり奴が噛んでいたか・・・タツミ、止めるな、私は行くぞ!」
「まだ傷も治って無いだろ・・・」
「これぐらいどうという事は無い・・・いや、タツミの一撃は効いているぞ・・・」
「・・・どうしても行きたきゃ俺を倒していくんだな・・・」
「タツミ!!??」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
エスデスに緊張が走る・・・先に口を開いたのはタツミだった。
「俺はもうお前に人殺しはさせないと約束させられたんだ・・・」
そう言ってエスデスの頭を抱えて撫でた
「心配するな・・・お前の気が済むように、ちゃーんとしてやる・・・だからここで大人しくしてろ・・・」
「・・・・・・・///」
「じゃあな・・・」
そう言ってエスデスから離れる。
「待てタツミ!」
「ん?」
「こないだの話だが・・・、確かに私は父の言葉に固執していたかもしれん・・・、だから、これからは私なりの答えを求める・・・それで良いな!」
「ああ・・・お前なりの答えを探せ!」
「だから・・・だから・・・タツミ・・・私はもうかつて、仲間が・・・父が死んだように・・・弱いからといって死んでいくのを当然と受け入れるのはもう嫌だ・・・、頼む・・・、今まで散々な事をしてきた私だが・・・、まだ生き残っている部下がいたら・・・頼む・・・助け出してやってくれ!!」
エスデスは顔一杯泣き濡らしていた・・・。
タツミはセリューの居る小屋へと出向いた。
コロ「きゅい!」
セリ「・・・タツミ君、いつでも準備は出来てるよ!」
そう言って一人と一匹はタツミに敬礼をした。
「・・・軍人でも警備隊でも無いんだから、敬礼は止めてくれ」
苦笑するタツミ。
「へへへ、もう癖だよ、これは」
「・・・セリュー、今回はこないだのようにエスデスといった人間の救出じゃない・・・いわば本格的に帝国に牙を剥く事になるが・・・それでも来てくれるか?」
「うん・・・、良い国になるんなら・・・、もうかつてのあたしみたいに歪んだ人を生み出して欲しくない・・・」
「主に囚われている人命救助・・・、民衆の保護を優先的にして貰いたい・・・その上で時には自分達を守る程度の火力で行ってくれ!」
「了解!」
「きゅい!」
「・・・時にコロのエネルギーはどうしてる?人間を喰ってた頃よりはパワーダウンしてるだろ?・・・・・・」
「う~~~~~ん、まぁ・・・、この辺に出てくる人喰い熊や人喰い危険種を狩って食べさせてるからから・・・あはは」
「そりゃ結構だな・・・セリューあんたの体内の銃火器のメンテは大丈夫か?」
「う・・・、うん、大丈夫だよ・・・」
「最近スタイリッシュのある資料を見付けたんだが・・・、自爆用の小型爆弾を脳に仕込まれているだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「この闘いが終わったら・・・、そんなもの全部外して、普通の女として生活してってくれ・・・、いつ間違って暴発されたら敵わないからな・・・」
「・・・・・・・・・・、ありがとう・・・、ううう・・・う・・・」
セリューは号泣した・・・やはり彼女なりにいつ暴発するか判らない恐怖に怯えていたのだろう・・・それを今までどうにか正義の為にという言葉で抑えていたようだ。