帝都、メインストリートでは・・・複数の老若男女の斬られた遺体が散らばっており、帝国警察が調べに当たっていた。
その殺害現場周辺を枠で囲み、その外にラバック、そしてマインが駆け付けた。
マイ「何?また・・・?」
ラバ「ああ・・・被害者がいきなり血を噴き出して倒れたってさ・・・目撃者はゼロだ」
「ここ最近起きている手口と全く同じじゃない・・・、・・・・・・・!子供まで・・・」
顔を歪めるマイン
ラバ「眉刹会(びせつかい)の仕業だ。あいつら最近、ナイトレイドよりもよっぽど暴れてるぜ」
そこに能天気な声が聞こえてくる
「うーっす!二人とも金貸してくれない?」
レオーネだ。
マイ「・・・夢一杯、詰め込めれそうな頭が来たわ」(訳・頭からっぽ)
ラバ「貸して欲しいなら先に今までの分返してよ!」
マイ「どーせまた、賭博でスったんでしょ」
レオ「にひひ」
レオーネは二人の顔を両脇に抱え
ラバ『うぉぉ!!///』ラバックの顔に豊満な胸が当たっている。
レオ「今回はちゃんと調査費に使ったよ」
マイ「!?・・・つまり・・・」
ラバ「・・・普段は飲み食い博打に使ってるって事だね・・・」
レオ「あー・・・、とにかく!!依頼が入った・・・」
ナイトレイドアジト広間、ナジェンダ、ブラート、アカメ、レオーネ、シェーレ、ラバック、マイン、そしてタツミを含めた全員が集合している。
ナジェンダは煙草の煙をくゆらせながら、
「今回の標的は眉刹会・・・最近帝都を賑わせている有名な殺し屋だ・・・」
タツ『・・・いつも体にわりぃものを・・・壁についたヤニ落すのも大変なんだぞ!・・・いつか全館禁煙にしてやる』(タツミは下っ端な為、雑用をやらされている)
そして、後になってそれが本当に実行されるのをこの時のナジェンダはまだ知らない・・・。
シェ「ご同業なんですね」
レオ「私達との違いは眉刹会は金を貰えれば誰でも殺すって事。相当怨みを買ってるよ」
タツ「・・・・・・・・・」
レオ「ふふん、シリアスな顔してんね」
タツ「ん?いや別に」
レオ「だいじょーぶ!おねーさんはちゃんと居場所も突き止めて来たんだよ。帝都近くに住んでいる老人達・・・そう、確か4人、それが正体さ」
ブラ・アカ「!?」
タツ「・・・・・・」
レオ「用心深い私達と違って奴らは派手に動き過ぎたよ・・・全てが雑だ。スラムの居酒屋で彼らに依頼したって自慢してる馬鹿が居たから問い詰めたんだ。更に賭場にいる情報屋が持っているネタも同じようなモンだった」
マイ「今回は抜けは無さそうね・・・1回に1回の確率でレオーネの下調べには抜けがあるから怖いのよねぇ・・・」
レオ「それ毎回失敗してるって事じゃん!万に一つもしくじってないでしょ、あたしは!!」
シェ「マイン!・・・でも確かにそうですよねぇ」
レオ「むきー!あたしだってやる時はやるって、文句言うなら自分達で調べて来なって!」
アカ「いや・・・恐らくレオーネの言う事に間違いは無い・・・その老人達には私達も一度会っている。山寺で会った時の老人達の隙の無い立ち居振る舞い、それに僅かながら血の匂いもした」
タツ『・・・気付いていたか・・・』
ブラ「ああ・・・だがありゃあ、山暮らしで獣か危険種狩っての返り血じゃねえのか?」
アカ「本当はブラートも気付いているんじゃないのか?妙な気迫を・・・あれは只の武の鍛錬した者の気じゃない・・・暗殺者のそれだ」
ブラ「・・・・・・・」
アカ「それに達人が犯人だと言うなら奇怪な殺し方にも説明が付く・・・余りに速く斬られると人はそれに気付かず何歩も進んでいくと言う・・・これなら斬っている時他人には判らないし、被害者が倒れた時に犯人が隣に居ない・・・目撃者がゼロな訳だ」
タツ『・・・百歩討ちか・・・人間共の中にも器用な奴らがいたもんだなぁ・・・』
マイ「恐ろしい相手ね・・・」
ブラ「・・・確かに昔っから人を喰ったような底の知れなさはあったが見境なく殺すような人じゃねぇぞ・・・師範時代だってお偉方を影で意見してたのを俺は知ってんだ・・・なのに・・・何故・・・」
タツ「・・・・・・・・」
ブラ「ナジェンダ・・・頼む、念の為、本当に俺の師範、ゲンセイが犯人なのか確かめさせてくれ!」
ナジェ「ブラート・・・気持ちは判るがこれだけの証言・・・、状況証拠が揃っているんだ・・・それに、もしそこで話に行ってブラートから私達の事がばれたらどうするつもりだ?」
ブラ「・・・・・・・」
ナジェ「私達は誰かがヘマをすれば芋吊る式で全員が危なくなる・・・それぐらいお前も判っているだろう!」
ブラ「くっ・・・」
シェ「ボス・・・どうでしょう、ブラートには今までの功績があります。1回くらいは彼の好きにさせて上げては・・・」
ナジェ「・・・・・・・」
ブラ「・・・・・・・・」
ナジェ「はぁ~・・・判った、良いだろう・・・だがもし私達全体が危機に晒されるような失敗をした時は・・・判っているだろうな?」
ブラ「ああ・・・それ相応の覚悟は出来ているぜ」
タツ『・・・ゲンセイは只者じゃ無い・・・返り討ちに遭えばブラートのインクルシオが取られてしまうな・・・』
タツミには最終的に全ての帝具を壊すという目的があった。
月の照る夜、ゲンセイの住む寺。
併設している道場には彼は一人で居り、仏像と蝋燭の光が静かに瞑想を行うゲンセイを照らしている。
そこに一人の男が上がり込む。
ゲン「・・・ブラートか・・・」
ブラ「・・・・・・・」
ゲン「なんじゃ?またお前の昔の恥話を聞きたくてきたのか?」
ブラ「・・・・・・・・」
ゲン「はぁ~・・・、全くお前は本当に殺気を隠すのがド下手くそだのう・・・。そんなんでは誰も斬れんぞ」
ブラ「師範・・・、今帝都を騒がせている眉刹会をご存じですか?」
ゲン「ブラートよ、お主今は軍人を辞め、猟師で生計を立てていると言っておったが・・・」
ブラ「答えて下さい!!」
ゲン「ふぅ・・・やれやれ・・・知っておる・・・なんでも恐ろしい使い手らしいのう・・・」
ブラ「師範も実はそれに一枚関わっていませんか?」
ゲン「・・・関わっておる・・・」
「・・・・・・・・・!」ブラートの顔が怒りに歪む。
ゲン「・・・また殺気が膨れ上がったのう・・・全く、もう少し隠したらどうじゃ?」
ブラ「・・・ゲンセイ師範、貴方はそんな人では無かった・・・何故、そんな真似を・・・」
ゲン「・・・良いじゃろう、儂の昔を話してやろう・・・儂は小さい頃から生きるか死ぬか、相手を殺すか殺されるかの二つに一つの剣を習い、そして異民族と闘って育ってきた・・・。そんな時、儂は今まででもっとも強い師匠に出会い教えを乞うた。数年で儂に叶う兄弟弟子はもうおらず、師匠とも互角という自負があった・・・そのような時に儂は師匠に呼び出されいきなり斬りつけられた・・・。その時の傷がこの片目のそれじゃ・・・」
彼の顔の右目が縦に斬られていてその傷跡の事である。
ゲン「その時、師匠が何故儂に斬りかかって来たか判らんかった・・・だが、儂の心眼は師匠以上であった・・・だから、師匠の剣を捌き、儂は圧倒した・・・。あれだけ強かった師匠がまさかと・・・な・・・そして、師匠も観念したのか、剣を置き、正座した。儂も安心し、刀を納め、斬りかかった訳を聞こうと近付いたのだが・・・」
そこでゲンセイは一呼吸置いてから
「いきなり抜刀してきおった・・・危うく斬られかかったが、儂もそれに瞬時に反応する事が辛うじて出来、師匠を斬った・・・。」
ブラートは黙ってそれを聞き、いつの間にか正座していた。
ゲン「・・・その時は儂は師匠が乱心したのかと思った・・・もうそこには居られぬ・・・最も師匠が斬りかかって来たと弁明した所で他の証言者も居ない・・・その頃の儂は余り弟子仲間で好かれておらんかったしのう・・・それに、斬りかかって来た師匠にも怒りはあった・・・だから儂はそのままその地を離れた・・・その後、儂は強い相手を求め、次々に斬っていった・・・そうしているうちに儂は気付いた・・・」
「何故師匠が儂に斬りかかって来たかを・・・儂は剣に溺れていたのだ・・・、自分の腕で相手を倒し、命を奪う快楽に酔いしれておったのだ。そして、儂はそれに気付いた時に初めて師匠を斬った事を後悔した・・・あの時、師匠に斬られるべきだったのだ・・・確かに今思い起こすと師匠は儂を正す事を言っておった・・・だがその時の儂には理解出来ず、聞き流しておった・・・」
ブラートは神妙な顔で聞き入っている・・・。
ゲン「そして、儂はそのうち死に場所を求めるようになった・・・誰か儂を斬ってくれる者はおらぬかと・・・だが誰も殺してくれる者はおらんかった。儂を斬りに来る者もおったが・・・幼少期より相手を殺すか殺されるかの技が身にしみた儂は無意識に体が動いてしまう・・・これはなブラート、剣を持つ者がいずれは行き着く業苦の世界じゃ・・・
そんな時に儂の腕を何処で嗅ぎつけて来たのか・・・帝都政府のお偉方が儂を武術師範として招きたいと来た・・・儂はそれに応じた・・・少しでも罪滅ぼしを、儂のような過ちをこれ以上増やしたくないと・・・その頃の事はブラートもしっておろう・・・」
ブラ「・・・・・・・・・・」
ゲン「そのように教え子達に教えておっても、持って生まれた宿業が儂を苛む・・・、一時期は剣を持つのも嫌になったくらいだ・・・。生きている事自体が苦痛じゃよ・・・、お主ら教え子達に武の技を教えている時にふと、殺したくなる時があった・・・儂はそんな自分に嫌悪したぞ。だから儂は生きながら死ぬ道を選ぼうと考えたり、仏に縋ったりもしたが・・・駄目じゃった・・・。所詮、己の中の悪鬼を殺すには己を殺す以外に無い・・・人を一人でも殺し
た者には未来永劫救いの道など無い・・・だから儂は年だから引退したのもあったが・・・かような自分を抑える為に人里離れた地に住むようにしたのじゃ」
ブラートは自身にも突き刺さる言葉として複雑な顔になる。
ブラ「・・・ですが師範・・・貴方が教えた・・・俺も含めた訓練生達は厳しかったがあの稽古の日々を楽しんだ奴らも多かった・・・それは間違いねえよ・・・」
ゲン「ブラート・・・お前、最近も人を殺したようだな・・・その気を感じる・・・やはり猟師では無い・・・帝都の秘密警察か・・・それとも・・・」
ブラ「・・・・・・」
ゲン「・・・・・・言いたくは無いか、はっはっは・・・まぁ良いわ。しかし人生の表街道を歩いているような感じは無いのう・・・お前は先程の殺気同様隠し事が下手だからのう・・・」
ブラ「あはは・・・、やっぱ師範には叶わねえな・・・」
ゲン「はっはっは、当たり前じゃ!」
二人で気持ち良さそうに笑い合う・・・
ゲン「それで・・・儂を倒しに来たんじゃろ・・・?」
ブラ「ああ・・・本当にあんたが・・・あの街の彼らを殺したのか・・・?・・・何故だ、何故、あんな見境も無く・・・子供までいたそうじゃねぇか」
ゲン「何故か・・・、良いじゃろう・・・その答えを明日教えてやる・・・、明日再びこの時間に来い・・・その時に教えよう」
ブラ「今じゃ駄目なのか!」
ゲン「同じ事を何度も言わせるな!儂は逃げも隠れもせん・・・」
ブラートは悩んだ末、ゲンセイを信じ寺を後にした。
その外で蹲っている人影、『・・・大した爺さんだ・・・』タツミはゲンセイに気付かれないようにしばらくはそこに止まっていた。
ゲンセイは道場から離れ、仲間達の居る部屋へと向かった。そこではその3人がそれぞれ鍛錬を行っていた。
「おお?ゲンセイ殿、どなたか客人が来られていたようだが・・・?」
ゲン「うむ・・・昔の教え子でのう・・・実は貴殿らに折り言って頼みがあるのだが・・・」
「頼み・・・?」