夜
アリア屋敷
今日も泊まるように勧められイエヤスは与えられた部屋で眠っていた・・・のだが、
「・・・・・・・・・」
起き上がり目を覚ます。
夜中に屋敷の廊下を一人歩く女性、アリア母親だ。
「さぁて・・・今日も日記を付けようかしら・・・ふふっ止められないわねこの趣味は」無垢な子供のような笑顔である。
月夜が彼女を照らして影が出来ており、その背後にもう一つの影が浮かぶ。
斬・・・!!
母親の胴体は真っ二つになり、本人は何が起こったか判らぬまま、出血多量で直ぐに絶命した。
斬った・・・いや、切った得物は巨大な鋏であった。殺したのは眼鏡を掛けた紫色の長髪の女性であり、その綺麗な服には返り血を浴びるもその表情には感情は無かった・・・のだが。
「すみません」と呟き、その女は殺した母親に頭を下げた。
イエヤスは部屋を出て廊下を歩き、窓越しに空を見た、すると5つ人影が宙に浮いて・・・いるように見えた。
「糸の帝具・・・か?成程・・・来たか・・・、ナイトレイド・・・、周りに誰もいないとはいえ、目立ちたがり屋な奴らだな、ふふふ」
糸の帝具を操っている緑髪の男が「護衛三人、標的だぜアカメちゃん」
言われた黒髪長髪の女性は「葬る!」と呟いた後、鎧らしきものをまとった男とそこから飛び降りる。
アカメと呼ばれた女からは何を考えているか判らない表情なものの氷のような殺気が溢れ出ていた。彼女は刀を携え近付く。
護衛の従者達はそれぞれ武器を構えており、その中のガウリが助言する「・・・いいか、あの刀に少しでも触れるなよ」
そう言って3人は向かって行く、が。
ガウリはアカメの瞬時の抜刀で首の皮一枚を斬られる。そして鎧男は槍のような武器で一人の従者の胸を射抜く。
「!・・・心根も・・・腐っていた自分には・・・当然の報いかー」ガウリは斬られた箇所から梵字の呪詛が流れ心臓停止し絶命した。
最後の残った従者は怯えて逃げ出した。
「な・・・なんなんだよこいつ等化け物過ぎる!」
だが、彼の後頭部を銃撃し仲間の後を追わせる。
「・・・情けないわね、敵前逃亡なんて・・・」
桃色髪のツインテールの女が呆れて呟く。
それを聞いた緑髪の男は同意、或いはそれは無茶だととも取れる苦笑をした。
その様子を見ていたイエヤスは「・・・へぇ・・・やるなぁ・・・」
一方、屋敷内の別廊下にて
「ぐ・・・う・・・た・・・助けて・・・娘が、娘が居るんだ・・・」
アリアの父親は黄金色の髪と獣の耳が生えた半獣人のような女に片腕で持ち上げられていた。
「安心しろ、直ぐ向こうで会える」
「娘まで・・・情けは無いのか!」
「情け?・・・悪党ってのは他人に厳しく自分達に甘くがモットーだよな・・・くくく、意味不明だな」
首の骨が折れる音がした。
「お嬢様早くこちらに!」
この家の従者の最後の一人がアリアを連れて逃げていく。
「どうなっているの?」
「とにかく離れの倉庫へあそこなら安心です」
だがそこにアカメと呼ばれた殺し屋が迫る。
「クソっ!もうここまで!」
手持ちの銃を乱射するが・・・アカメの頬を掠った程度だ。
「標的・・・葬る」
横一線薙ぎ払いで最後の従者を文字通り葬る。
「ひぃっ」
アリアは腰を抜かし怯えてただ死を待つのみとなった。
アカメは躊躇無く迫り、先程も呟いた言葉を言う「葬る」
その言葉は彼女にとって命を奪う事が出来るようになる為の自己への暗示なのだろう。
「ちょっと待ってくれ」
「!?」アカメは虚を突かれた気持ちとなり飛びし去った。
イエヤスは不敵な笑みを浮かべ「わりぃな、綺麗な姉さん。このアリアさんには一宿一飯の恩義があるんだ・・・見逃しちゃくれないか?」
「お前は標的では無い・・・斬る必要は無い。・・・が、顔を見られた以上葬るしかない・・・」
「あー・・・そりゃ大変だ・・・」
アリアは半泣きの状態でただオロオロしているのみであった。
「あーばっちぃばっちぃ」
腕を振りながら、こちらに歩いてくる一つの影。
「!・・・アカメの奴、珍しいな。まだ仕留めて無いのか・・・あれ?あれは確か・・・」
イエヤスは微動だにせず、ただ両手を前気味に下げているだけであるが・・・、アカメは攻めあぐねていた。
『・・・・・・こんな感覚は初めてだ・・・何者だ?・・・』
イエヤスから放つ気迫に圧され、戸惑っていると、なんと彼の方からするすると近づいてくる。
『!?・・・何か帝具でも持っているのか?・・・』
アカメは余計な事を考えるのを止め、無心の最速で斬りかかる
『ああ・・・速いな』
だがアカメの予想に反してあっさりとイエヤスの首へ刀を突き付けられた。
「どうした?・・・何故刀を止めた?」
『・・・何故だ、何故私は刀を止めた?』
アカメは標的でも無い人間を殺す罪悪感で止めたか或いは・・・
イエヤスはアカメの刀を指で掴む。もう彼の眼は生気のないものでは無く力のこもったものに変わっていた。
「この刀で何人斬ってきたんだお前は?」
「・・・・・・・・」
「まぁ良いだろう・・・、どうした?俺の首に当ててそのまま引けば斬れるだけの・・・簡単なお仕事だろう?」
アカメは脂汗をかいていた・・・もしここで自分が先に動けば・・・倒されるのは自分ではないかと・・・アカメの長年の殺し屋としての勘がそう告げていた。
『アカメが緊張してる・・・あの男一体・・・』
その二人のやりとりを見ていたレオーネもその者が只者では無い事だけは悟り・・・それにこのまま膠着状態が続けば仕事に支障をきたすと判断した。
「さぁ・・・俺を殺してみろ!・・・俺も死にたくて仕方がねぇんだ!・・・『ばっさり俺をやってみな・・・そうなれば、俺の代わりに別の奴がこの星に派遣される・・・
或いは俺があの場へ戻って、議会に貴様らの愚かさを・・・例え多少歪曲したとしても、提言して俺の手で全てを皆殺しにするまでだがな・・・』
※タツミの過去、参照
アカメは僅かながら肩で息をし始め、暗殺者となってから久しく忘れていた恐怖の感情を思いだしていた。
「兄さん、ここは引いてくれないか!!・・・アカメ、あんたもやめな!」
レオーネが割って入った。
アカメは刀の村雨を降ろし、ほっとしている。
「・・・ん?・・・あんたはあの時の・・・変わった衣装だな・・・『帝具か?』」
「兄さん、覚えててくれたかい?ひゅー、あんたアカメ相手に一歩も引かないなんて大したもんだねー」
「・・・おっかなくて動けなかっただけさ」
レオーネはふっと笑い、アリアに近づく・・・
「兄さん、あんたには貸しがあるはずだ。違うかい?・・・ここはお互い見て見ぬふりであんたもあたし達も何も見なかったって事で良いかい?」
アリアは怯えながらも少しずつ後ずさりする。
「・・・レオーネ、良いのか!?」
「ボスには内緒な?・・・兄さん、あんたの事信じてるよ・・・じゃあもうどっか行っておくれ」
「・・すまないな、レオーネさん。俺はこの女に一宿一飯の義理があるんだ・・・」
「あたしの恩より上って事かい?」
アリアが喚きだす
「そ、そうよ!イエヤス、この女達を追い払って!!その為にあんたみたいなみすぼらしい男拾ったんだから!」
「・・・流石お嬢様・・・言う事が違うな・・・」
イエヤスは淡々と返す
「兄さん・・・イエヤスさんかい?・・・それでもこの女かばおうってのかい?」
「・・・・・・・」
イエヤスは懐から日記帳を取りだす
「○月×日、天候雨、感染させた伝染病は思いの外、進行速度が速く、若い程その傾向はある・・・。その為の薬を求め、許しを乞い、苦しむさまを見るのは心地いい。人間騙される方が悪く、拷問か病気かの2択となると後者を選ぶ者の方が多い。どちらにせよ死が待っているのに馬鹿な奴らだ・・・・、と面倒臭ぇからこれ以上は止めるが・・・嬢ちゃん、これあんたの母親ん所から出て来た日記だな」
「え?お母さんが?知らないわよ、そんなの!」
『あたし達と同じ事を知っている!・・・一体・・・?』
「・・・その伝染病はルボラ病だな。掛かれば余程の効果な薬で無いと治らない・・・」
レオーネが内心驚き、アカメが病気の説明をする。
「おい、お前知らないってんならあの倉庫に一緒に行ってみるか!」
そう言ってレオーネはアリアを引きずって倉庫の扉を開ける。
中には、逆さ吊りにされ、激しく損傷した遺体が複数ぶら下がり、ホルマリン漬けの人間の首や赤ん坊が並び、ギロチンや腸を引きづり出す道具、溺死させる水槽、針が無数に生えた椅子や内部に刃物がびっしり生えた棺桶のようなものまであった。
「兄さん・・・どうだい?これが帝都の闇だ」
「全く・・・良い趣味してんな、おたくら家族は・・・」
「地方から来た身元不明の者達を甘い言葉で誘い込み、己の趣味の拷問に掛けて死ぬまで弄ぶ。兄さんの思った通り、それがこの家の人間の本性だ・・・」
「・・・人族って奴らは何処に行っても同じだな・・・、何年経っても変わらねぇみたいだな・・・なぁ・・・いっそ全てを皆殺しにしてぇんだが・・・良いか?」
「ん?・・・皆殺し?」
イエヤスは冷たい眼光で頷くが・・・目の端にある女性の遺体が写る。
「ああ・・・・ん?・・・サヨ?・・・馬鹿な・・・」
「知り合いがいるのかい?」
「・・・いや、ただの気のせいだった・・・少し似ていただけだった・・・『俺は何を馬鹿な事を・・・あいつは・・・イエヤスと一緒にとうの昔に・・・』
「おっと、逃げようたって虫が良過ぎだぜ嬢ちゃん」
レオーネは咄嗟にアリアを抑え込む。
「念の為に聞くが、この家の人間、・・・護衛の奴らも加担してたのか?」
「加担したまでははっきり判らないが、黙って見殺しにしていたからな、同罪だ・・・」
「う・・・嘘よ!私はこんな場所があるなんて知らなかったわ!イエヤスは助けた私とこいつらをどっちを信じるのよ!」
その時、拷問されていた途中で身体が破損していながらも息のある男が声を掛けて来た。
「・・・あ・・・が・・・、そ・・・その女が俺達に声を掛け・・・飯を食ったら意識が遠くなって・・・ここにい・・・た・・・俺の・・・恋人も・・・そこの・・・ころ・・・た・・・・・たのむ・・・そのおんなを・・・こ、ころ・・・・・・・・・」
もう声は聞こえてこない
「・・・・・・・・・」
イエヤスの表情は暗がりな為窺えない。
アリアはレオーネから離れ叫び出す
「何が悪いってんのよ!お前達はなんの役にも立たない地方の田舎者でしょ!?家畜と同じ!!それをどう扱おうとアタシの勝手じゃ無い!!大体、そこの女、家畜のクセに髪サラサラで生意気過ぎ!私がこんっなにクセっ気で悩んでいるのに!・・・ああ、そうよ、だから念入りに責めて上げたのよ!寧ろこんなに目を掛けて貰って感謝すべきだわ!」
「善人の皮を被ったサド家族か・・・邪魔して悪かったな、アカメ・・・」
「葬る・・・」
だがその時・・・
「・・・確かに家畜だな・・・ごもっともだな・・・良い事言うなぁ・・・」
「!?」
「あんた、何を言って!!」
「そ、そうでしょ!イエヤス、あんたとは気が合いそうね、さぁそこの家畜共を蹴散らして・・・そう、そいつらもこいつらに加えて楽しんでやるわ!」
イエヤスはニコニコしながらアリアに近づいてく。
「判った・・・あの女共は俺が綺麗に片づけてやるからな・・・アリアお嬢様・・・あんたには恩があるからな・・・」
「そ、そうでしょ?だったら早く・・・」
だが次の瞬間、アリアは軽い脳震盪を起こし頸椎に痛みを感じた後、もう地面に顔をめり込まされていた。彼はそのアリアの後頭部に片足を置いていた。
アリアはわめきちらすが、その度に足で抑え込む。
「・・・・・・ひゅー・・・、兄さん、そいつそのまま殺しちゃいな?」
「・・・出来ないなら私が葬ろう・・・」
「さっきも言ったが、この“家畜”には一宿一飯の義理がある・・・、だから悪いがこいつの生殺与奪を俺にくれないか?」
アリアはそれを聞き、顔を上げる。
「あ・・・あん・・・たぁあああああ、げほげほ・・・ごほ・・・、ば・・・ば・・・ばにをいって・・・」
「アリア、お前、このお姉さん達に殺されるのと俺の家畜になってとりあえず殺されないのとどっちが良い?」
「そ・・・ぞんな・・・あた・・・あんたに・・・」
「あー、そうだ・・・、お前もやってて知っているかもしれないがな、人間ってのは舌切っても簡単には死なねぇんだ・・・それなりに深く斬らないと出血多量で死なないんだ・・・だから、そのうるせぇのを黙らせるのにちょっとだけ切っておくか?な?・・・それとも歯ぁ全部へし折るか・・・目ん玉くりぬくのも悪くねェな」
「あああああああ・・・・・いやあああああ・・・・・・・おおおおおおねがいします・・・・いうことききますから・・・・」
「ああー・・・良いとも・・・お前は良い家畜になりそうだ・・・ははは」
気持ちよさそうに笑う。
レオーネとアカメはそれを聞き、目には目をのカタルシスと標的を見逃す事についてどうするか苦笑した。
「・・・どうする?レオーネ?」
「う~~~~~ん、弱ったなぁ・・・こいつが生きてるのばれたらボスにこっぴどく叱られるなぁ・・・」
「叱られるのは私も同じだ」
「兄さん、あたし達が見逃したって生きているばれたら、他のメンバーが殺しにいくって」
「姉さん達の事情はわかった・・・こいつはもう二度と世間には出さねぇ・・・それで手ぇ打ってくんねぇかな?」
「「う~~~~~~~~ん」」
二人して悩んだ・・・。
「止めたのはレオーネだ・・・レオーネに任せる!」
「あたし・・・ん?・・・ええ、あたしぃいい、やっぱり!・・・アカメあんた、あたしに任せて後でばれた時の責任、あたしに擦り付けようとしてるだろ?」
「・・・うん!」
アカメは気持ち良く頷いた。
「うん!・・・じゃないよー!」
「ははは、悪いがそういう事でこいつ連れてくぜ・・・あばよ、美人なお姉さん方・・・、おい、アリア!お前も礼を言え!」
「あ、ありがと・・・ご・・・」
「頭がたけぇ!!!!」
そう言って彼はアリアの後頭部を足で抑えつけ、豪快に地面にめり込ませた。
アカメはぷっと笑い、レオーネは腹を抱えて笑った。
「あははははは、こいつ本当はここでアカメに殺された方が幸せだったんじゃない?・・・あははははは!」
「くくく・・・」
「あー、久しぶりに仕事でこんなに笑った・・・ところで兄さん、そいつ連れてってどうすんの、まさか・・・くくく・・・Hな事するの・・・?」
「生憎、俺は家畜とそんな事する気は無いんでね・・・くくく」
そう言って、アリアが逃げないように再度痛めつけた後、彼は彼女を担いで闇の中に消えていった・・・。
彼の姿を消えたのを確認した二人は
「・・・アカメ・・・彼は仕えそうか?」
「ああ・・・」
彼はアリアをある洞窟に監禁しそこから出られないようにしていた。その後エスデスが仲間になった後、彼女にアリアの教育を依頼したのはまた別の話となる。
数日後、帝都広場から外れた人通りもまばらな所で、ゴザを敷き、正座している物乞いの男がいた。
「探したよ兄さん・・・、うちさー、人手不足なんだ・・・だからうち来ない?」
レオーネが声を掛けている。
「レオーネさんか・・・、俺は殺し屋になる気は無いよ・・・」
「う~ん、今はそれでもいーや、あの時のクソ生意気な外道女、痛い目に遭わせた手並み、スカッとしたよ、うん、君は十分殺し屋の素質がある、お姉さんが保証しよう!」
「・・・嫌な保証だな・・・、大体、俺が強いんじゃない・・・、あの女が弱過ぎただけだ・・・あの女を生かしたのも殺すのがおっかなかっただけだ・・・そんな俺は殺し屋に向いてないさ・・・それとあんた方のは事は他言しない、安心してくれ」
「殺すのが怖いの?・・・へぇ~びっくり、あれだけの事したあんたなら、平気だと思ったのに・・・まぁ良いや・・・そのうちに、ね♪・・・それに本当に口堅そうだね・・・あたし、兄さんに個人的に興味持ったのもあるんだよねー、だから一緒に来て・・・それにまだ・・・お金上げた貸しを返して貰って無かったかなぁー、いつも借金でひ
ぃひぃいってるあたしが人様に恵むなんて・・・雨でも降るような事なんだよ、あ、だからあの時、雨だったんだ!」
「ぷっ・・・くくく・・・判った、姉さん、付いて行こう」
「うふふ、そうこなくっちゃ、そうやって笑ったら良い男だね~」
『・・・本当は全て消し去るつもりだったが・・・良いだろう・・・もう少し様子を見るか・・・』
「・・・えっと~、兄さんの名前は・・・ヒデヨシだったっけ・・・?」
「・・・違う・・・リュウジンノカミ・タツミだ・・・」