そう・・・、ブドーは何度イメージしても己が相手を殺せるイメージしか湧かない・・・。
だが対手のタツミは刀を納めて、即抜刀出来る状態…鍔を丹田前にしているのみで、後は脱力して、一見ぼっーとしか見えない・・・。
ブドーは焦っていた・・・一刻も早く主の元に馳せ参じなくてはならない・・・だが目の前の相手は若輩とはいえ容易ならざる強敵、迂闊に飛び込めば命は無い・・・だがどう計算しても己が勝つイメージしか湧かない・・・だが、だからこそ妙に感じていた・・・。
変わらずタツミは・・・不動の如く能面に何を考えているか判らない・・・いや本当に何も考えていないのかもしれない・・・。
「・・・?」
ズシャアアアアアアア・・・ドォォォォォォオオオンンンン・・・
其の時、皇帝のシコウテイザ―の波動砲が二人の側まで貫き、革命軍、ブドーの部下達の何割かが死滅する。
「これは一体・・・まさか・・・陛下・・・!?」
タツミも驚愕し、
「・・・!?・・・あれは・・・、あの破壊力・・・恐らく代々の皇帝にしか使えない帝具・・・」
「貴様・・・何故そこまで知って・・・くっ・・・何故・・・私の部下達にまで・・・?」
「・・・あの若さだ・・・本人も制御しきれる程の能力が無いんだろ?それに・・・操り人形風情に満足に扱えるほど、あの帝具は甘くない・・・」
「陛下を愚弄するとは許さんぞ!・・・ちっ!・・・俺がお傍にいれば・・・、タツミとやら・・・もう好い加減腹の探り合いは終わりだ・・・そろそろ終わりにするぞ・・・」
「・・・結局、自分は武官だと言って、世の中の流れに無関心だった・・・それが今日の結果を招いた・・・何もせず自分がせずとも、誰かが世の中を丸く収めてくれると信じている・・・他人任せで安易な生き方だな・・・あんたは」
「知った口を聞くな!!武官には武官の立場がある、分をわきまえたまでだ!」
「ああ・・・軍人は闘い専門だからな、政治が専門ではない・・・だがその立場を捨てて大臣に付く可能性もあっただろ?」
「・・・その減らず口もこれで終わらせてやる・・・」
・・・それまでブドーは構えを少し変えてはタツミを斬り倒すイメージを何度も行っていた・・・その度にタツミも構えを微細に変え、傍目には二人がただじっと相手の様子を伺っているようにしか見えなかったが・・・実際は激しい駆け引きを行っていた・・・だがそれも終わる・・・。
「・・・むっ・・・」
先に動いたのはブドーだった。そしてその後にタツミも動いた。
『後の先を狙うつもりだろうが、そうはいかん!!』
ブドーは先にタツミに攻撃させた・・・ブドーの首が斬られる・・・だが浅い。
そして、ブドーは間髪いれずにタツミの胸を斬った・・・致命傷では無くてもこちらは深い・・・。
互いに離れ・・・、双方睨み合う。
タツミは苦しそうに肩で息をしていた。
『流石に一撃では仕留め損ねたか・・・?』「もう立っているのもやっとだろう?・・・未来が楽しみな中々の腕だったが・・・このまま生かしておく訳にはいかん・・・せめて、これ以上苦しまんように一瞬で片をつけてやろう・・・最期に何か言い残す事はあるか?」
「・・・あんたもそう死に急ぐ事は無いだろ・・・?」
「何・・?」
気が付くとブドーの首に少し長めの針が刺さっていた。
『・・・なんだと・・・まさか・・・あの攻防の中でだと・・・、あれは俺の必殺の一撃だった・・・なのに仕留め損ねたのは妙だとは思っていたが・・・この針で力を出しきれなんだか・・・くっ・・・』
「・・・・・・・」
『確かにこの状態で動くのは満足には出来ん・・・、だがここで針を抜けばその隙に奴は乗じる・・・何故だ・・・何故敗れた・・・』
タツミの駆け引き勝ちだった。帝具戦であればタツミに分があった・・・だがその代わりこの一帯を・・・下手すればアカメ達が戦っている場所も含めこの帝都一帯全てを焦土と化す程の火力を持ってしなければブドーには勝てなかった。だからタツミは本気の帝具戦を避けた。
そして、純粋な白兵戦ならば・・・若い身体のタツミでは強いと言ってもまだ武の練度が達人なブドーには一歩及ばなかった。タツミはそれが判っていたので、心理戦に持ち込み、ブドーの焦りを誘った。そう・・・身体は若く、武の動作の染み込みがブドーよりも例え劣っても、中身の老錬さは・・・。
「純粋な真っ向勝負ならあんたの勝ちだったさ・・・」
「・・・肉を斬らせて骨を断ったか・・・、或いは焦った私が他の動作には目がいかなかった・・・くくく、成程その盲点を付いたか・・・エスデスでは叶わん訳だ・・・ははは」
「・・・・・・・・・・」
ブドーはこの戦場で初めて座り、肩を落とし呟く。
「お前の勝ちだ・・・さぁ殺せ・・・」
「生憎・・・あんたの言った通り俺も立っているのがやっとだ・・・」
「ふっ・・・『それも本当かどうか・・・』・・・頼む・・・暴走した陛下を止めてくれ・・・お前に・・・いや貴殿に頼みたい・・・」
「俺の役目はブドーさん、あんたを足止めする事だ・・・それ以上は関わるつもりは無い」
「なに!?・・・お前は革命軍、それにナイトレイドの仲間では無かったのか?」
「俺の目的は全ての帝具を回収し破壊する事・・・これら武器は人間達には過ぎた代物だからな・・・」
「なに・・・?全ての帝具を・・・?」
「だから革命軍やナイトレイドが死のうと俺の知った事ではない・・・」
「ならば陛下の暴走を止めてはくれぬのか!?」
「・・・ナイトレイド達が止められなければ・・・どの道、あの陛下とやらはあのままなら敵味方を選別して攻撃も出来ず、辺り構わず廻りを滅ぼしてやがて力を使い果たして自滅・・・文字通り自分自身も死ぬだろうな。あの帝具も負担が大きい・・・自滅さえすれば俺は労せずあの帝具を壊せる」
「・・・外部のお前が何故そこまで知っている・・・それまでに仲間が死んでもいいのか?」
「・・・俺はこの国の人間ではない・・・自分達の国の不始末は自分達でつけたらどうだ?」
ブドーはそれを受け苦笑しながらも
「・・・ふっ、そうか・・・お前は別の国の・・・成程、確かに貴殿の言う通りだな・・・」
「閣下!!」
ブドーの部下達が彼の元へ集い、タツミを睨みつける。
このまま生かす気等無い・・・全員で掛かれば或いは・・・と。
「やめんかぁ!!!・・・我々の負けだ・・・」
将たるブドーが負けを認めた・・・ならば彼らもそれに従う・・・部下から彼への信頼が伺える。
ブドーは立ち上がり、
「だが私はこれから陛下を御止めする為、宮殿へ向かう・・・再びあの砲撃が来るかもしれぬが、お前達は己の身を守れ。そしてタツミとやらの指示に従え!!」
そして部下が「閣下に至急、飛行危険種を連れて来い!早くだ!!」
ブドーはそれに跨り、「タツミ、そなたの国はどのような国だ・・・?」
「・・・どの国にも長所短所はある、他人の芝生は青く見えるものさ・・・」
「ふっ・・・」
ブドーは飛行を促し、勢いよく飛んで行った。
日は傾き掛け・・・タツミはその向こうに見える宮殿を見据えていた・・・。