其の広間を波動砲による破壊が覆い、一気に灰塵と化す。
「あ・・・危なかった・・・」
「なにあれ・・・」
「え~~?でけぇ・・・」
ランはレオーネとマインを両脇に抱え、上空へ飛行していた。
眼下には、巨大な帝王・・・皇帝の意匠をした家一軒を軽々と見下ろす程の超巨大な帝具が宮殿内部から現れ、周りを威圧していた。人間で言う口に当たる部分から先の波動砲を放ったようだ。
「ねぇ、あんた・・・なんであたし達助けたの?あんたが勝手にやった事なんだから、お礼なんて言わないわよ・・・」
「おい、マイン」
「・・・別に礼なんか要りませんよ・・・ただ、あの帝具を止めるには貴女がたの力が必要だと思ったまでです・・・」
「なぁ兄さん、ありゃ一体なんだ?」
「あれは・・・皇帝陛下代々に伝わる帝具・・・シコウテイザ―。くっ・・・陛下・・・まだ使いこなせていないのに・・・大臣め、さては焚き付けたな・・・」
「シコウテイザ―・・・ですって?・・・あれが・・・、・・・千年前の皇帝のネーミングセンスだっさー」
「・・・マインさん呆れている場合じゃないですよ!貴女には一緒にあの帝具を止めるのを手伝って貰います!」
「はあっ!?なんであたしがあんたと一緒に?」
「民を守るのがナイトレイドの仕事じゃ無かったんですか?」
「ぐっ・・・仕方ないわね・・・ここは共同戦線という訳ね・・・」
「私は何をすればいい?」
「レオーネさんは地上に降ろすので他の方々の避難、或いは闘える人達と地上から援護して下さい・・・私とマインさんでこのまま上空から攻撃を加えます・・・ですが最後に説得を試みてみます!」
「判った!」
ランはレオーネを降ろし、背中にマインを乗せ上空からシコウテイザ―に話しかける。
「陛下、聞こえますか?陛下?」
シコウテイザ―を操る皇帝・カライは
「なっ・・・おのれ・・・誰だ・・・余を呼び付けるのは・・・!?」
内部のコクピットに座った彼はこの帝具が自分の感覚と同化し、シコウテイザ―の目が耳がそのまま彼が外部を知覚する手段となる・・・だが、当然その原理は本人も把握している訳ではない。シコウテイザ―に乗り込んだ時に頭に流れた操作方法等の情報を教えられたままに鵜呑みにしているだけである。
「どうか、このまま怒りを御鎮め下さい!このようなやり方では、味方も殲滅してしまいます!どうか御制御の程を!」
「・・・ランか?・・・あれは・・・誰だ?まさか、敵方か?・・・許さんぞ・・・余を裏切りおって・・・もう誰も信じんぞ・・・エスデスも大臣もブドーも肝心な時には余を置いていく・・・だがそれは余が力及ばぬかった故・・・もう、他の者の手は借りん、全ての者を灰塵と化し、新たに国を造り上げるのだ・・・ははは、何故今までそうしなかったのだ・・・もっと早くに気が付いていれば・・・ははは!」
その声は外のラン達にも聞こえ、彼は顔をしかめる。
「くっ・・・、あの帝具の闇に呑まれたか・・・もうああなっては、止まらない・・・」
「どうすんのよ!?」
「力づくでも止める!」
「・・・たくっ・・・レオーネも物判り早すぎよね!・・・良い、あんた少しでも妙な真似したらあんたから先に撃ち落とすわよ!」
「判りましたよ・・・では落ちないようにしっかり掴まって下さい!」
「ええ?・・・って、ふぎゃああああああああ!!!」
ランはマインを背中に回転を加えながら急上昇を行う。
その間にシコウテイザ―はラン達に連続で波動砲を放つがすれすれでかわしていく。
「さむっ、耳も痛っ・・・は・・・うっ・・・吐きそう・・・しかもあたしのツインテールのかたっぽがぁあああ!!あんの馬鹿皇帝ぜぇぇったぁぁああいいゆるさないー!!」
「・・・髪ぐらいなんですか?・・・それに人の背中で吐いたら、ヒロインならぬゲロインとして、皆に言い触らしますので覚悟して下さい!」
「髪は女の命よ!それと、元はと言えばあんたが悪いんでしょう!!・・・くっ・・・とりあえずあんた止まってなさい!」
マインはパンプキンを構え、シコウテイザ―に狙いを定める・・・マインは精神を最大限まで研ぎ澄ませる・・・
地上では別働隊がシコウテイザ―牽制していた・・・
時間は少し遡る。
「こ・・・これは・・・」
大臣…の替え玉を倒したその部屋は・・・スサノオはナジェンダを脇へ抱え、奥へ隠れていた・・・元いた場所はごっそり消滅し、ナジェンダ達と共に来た兵士達や帝国兵も大半が消滅していた・・・そう、シコウテイザ―の波動砲により。
空を見上げると、シコウテイザ―が次の標的に向けて波動砲を撃っていた・・・
「あれか・・・あれがあの・・・くっ・・・なんとしても止めないと・・・スサノオ、なんとしても止めるぞ!再度奥の手だ!!あの攻撃をなんとか出来るか?」
「ああ・・・だがナジェンダ・・・」
端目にはぱっと見判らない悲しげな顔するスサノオに
「構わない!・・・どの道このままでは共倒れだ!」
「判った・・・」
ナジェンダはスサノオに手をやり、目眩と血を抜かれたような立ちくらみが起きる。彼のマスターである彼女は、そうする事で自身の生命エネルギーのほとんどを渡すつもりだった・・・だが、
「もう良い、ナジェンダ!!」
「黙れ!・・・ぐっ・・・」
スサノオはナジェンダに首に手刀を行い気絶させ、生き残っていた革命兵に彼女を渡す。
「もし、ナジェンダが生き延びたら・・・伝えてくれ、この千年で最高のマスターだったと・・・」
スサノオはそういって、飛んで行った。
その影で…『な・・・なにあれ・・・あんな化物聞いてないよー・・・、スーさんだって叶う訳・・・ど、どうすんのあれ・・・タツミも居ないし・・・、これ以上の事はタツミから依頼されてないし・・・あたしじゃあ居ても邪魔になって足手まといになるだけだよね・・・』
チェルシーはその場から去って行った。
『かつてない程の強力な敵・・・敵すらも共同戦線を張るような相手・・・正にピンチね・・・』
「いいいぃぃぃぃけぇぇぇえええええ!!!」
マインのパンプキンがかつて無いほどの衝撃を放ち、シコウテイザ―の外壁を穿ち、怯ませる。
「よしっ!」
「・・・いえ、あの程度では決定打にならない・・・もっと急所を狙って近くで撃たなければ・・・」
「もっと近くで!?・・・あれに当たったらどうなるのよ・・・?」
「・・・最悪、塵も残らず消滅します・・・」
「はぁ~・・・痛みを感じるまでもなく死ねて、案外幸せかもね?」
「生憎・・・俺は殺し屋と心中する気は毛頭ありません!」
「なっ!?あたしをただの殺し屋と一緒にするんじゃないわよ!!」
ランはシコウテイザ―に近付いて行き、牽制しながら波動砲をすれすれでかわしていく。・・・だがその余波で他の者を巻き込み消滅させていく。
『しまった・・・くっ・・・』
ランの顔から苦渋が滲みでる。
「あんた!?・・・なんとかしなさいよ!」
「・・・こうなれば一かバチが正面からいき、マインさんの帝具であの波動砲を撃ち終わった後にその砲口を間髪入れずに撃って下さい・・・そうすれば・・・」
「成程ね・・・確かに内部破壊を起こしそうね・・・」
「では行きます!!」
「オーケー!!」
放たれる波動を螺旋状にかわしながら、ランはその砲口目掛けて突き進む。
だが・・・
「え?きゃあああああ!!」
「しまった・・・!?」
シコウテイザ―は薙ぎ払いを覚え、ランの帝具、マスティマの片翼を機能不全に陥れる。
「・・・このまま強行します!」
ランは落下しながらも残った片翼で調整しながら、砲口に向かう。
「あんたと心中だけは御免なんだから!!!」
マインはパンプキンを撃つのをギリギリまで待った・・・そう、シコウテイザ―が撃つ直前、コンマ1秒の間を狙って・・・
ズォオオオオオオオオオオンンンンン・・・・・・・
ランはふっと安堵し、マインははしゃぐ。
「やったぁああああ、どうよ、あたしが本気出せばざっとこんなものよ?」
明らかに体勢を崩しその砲口からは煙を出し、戦闘不能に見えた。
「・・・!?」
「え・・・?」
トゥィン・・・・・、
一筋の光線がマインを狙った。
ランは咄嗟にマインを放り、片翼でガードして弾くが耐えきれずそのまま落下していく。ランが彼女を放ったのはこのマスティマでもガードしきれる保障が無かったからだ。
『なっ・・・!』
マインはランが取った行動に驚き、ランはどうにか着地しようと足掻いた。
『くっ・・・上手く制御が出来ない・・・』
シコウテイザ―は波動砲が撃てなくなった分、別の攻撃手段を用い、目に当たる部分から光線を放っていた。
マインはパンプキンを撃ち、落下速度を殺して地上に先に降りた。
「!?」
今正に空中制御不能なランを撃とうとするシコウテイザ―に、
「あたしはこう見えても借りは返す主義なんだから!!」
ズドン!!
マインはその攻撃を牽制し、軌道を逸らせる。
ランは着地した後、その衝撃を和らげるため転がり体を痛めながらも無事である。
「・・・・・まさか、助けられるとは・・・」
「良い?お礼は終わってからたっぷりして貰うんだからね?」
そして・・・シコウテイザ―の目が爆発する。
「え?自爆・・・」
「・・・いいえ、マスティマの最後の力で目を封じました・・・ですが、他の攻撃手段もあるかもしれません・・・それに先ほど貴女が撃った外壁も修復されている・・・自己修復機能か・・・ちっ・・・厄介な・・・ひょっとすると、あの破壊光線も修復されるかもしれません・・・今のうちに・・・」
ランは歩きだす。
「あんた・・・帝具も無しでどうするの?」
「・・・内部に潜り込んで、聞き分けのない皇帝陛下にお灸を据えにいくんです・・・これは、宮殿内部の問題なので、マインさんは好きな所へ行って良いですよ?」
「・・・言ったでしょ?北の異民族から依頼されてるって?・・・例え皇帝を殺せなくても、彼らに納得いく懺悔をさせないと・・・、まずあたしの髪をこんなにした罪で土下座ね・・・」
「・・・あの陛下が土下座ですか?・・・くくく、それは見物ですね・・・」
「・・・あんたやっぱり性格悪いわね・・・」
「いえいえ、マインさんほどじゃ・・・」
マインも歩きだした。
「その帝具・・・あとどれぐらい持ちそうです?」
「さぁ・・・?大分さっきもガタが来てたわ・・・。最悪あと一回で終わりかもね・・・」
「間違ってもさっきの波動や光線攻撃には迎え撃とうとしないで下さい・・・その火力でも競負けますから・・・」
「あたし、昔から教師の言う事は余り聞かなかった方よ・・・」
「・・・どうやら貴女には、後で廊下にバケツ持って立って貰う事になりますね・・・」
「・・・その廊下が残ってればね・・・」
二人は声を揃えて笑った・・・勝算は無い、死を覚悟した開き直りであった。
『・・・妻よ・・・俺はまだ君の側に行く訳にはいかない・・・』
『タツミの奴・・・なにしてんのよ・・・こういう強敵はあんたが担当なんだから・・・さっさと来なさい・・・まさか・・・ブドーにやられた・・・それとも・・・こいつの言う通りあたし達を見捨てた・・・?ううん、今はそんな事どうだって良い・・・今は目の前の敵を・・・、・・・あぁもうあんた、本当は只のツンデレなんでしょ?さっさと来なさい!何もたもたしてんのよ!』
「・・・どうしました?」
マインの様子がおかしいので尋ねるラン。
「なんでもないわよ!!」