シコウテイザ―は思い切り飛び上がり、そして着地し地震と見間違うほどの地割れや震動を起こす。
スサノオや他の兵士達も体勢を崩し、攻撃防御への一手が遅くなる、その機を逃さず、
「余に逆らう者共がぁ死ねぇえええええ!!」
スサノオに向け、その巨大な拳が振り下ろされる。
「くっ・・・」
単純な物理攻撃となると…それが強大となれば八咫鏡では跳ね返しきれない為、使わずに迎撃の体勢を取るが…潰される覚悟で待ちうける。
・・・・・・・・・、
スサノオは目を大きく見開いた。
寸前で拳が止まっているのを、
「・・・・・・・・・?」
「ねぇ、あんた・・・なんか止まっているけど、どういう事?」
「判りません・・・ただ今がチャンスと言う事です。
「OK・・・スーさん、今助けるわ!」
マインのパンプキンが火を噴き、シコウテイザ―にダメージを与え、よろかめかせる。
ドガン!!
だがパンプキンは使用オーバーで暴発する
「きゃあああ!!!」
吹っ飛んだマインをランが受け止める。
「・・・上出来です・・・」
「うっ・・・、でもあれじゃあまだ倒せない・・・あんた、何か良い手ないの・・・」
内部のコクピットでは、
「くっ・・・何故だ・・・おおのれぇえ・・・何故だ・・・ちっ・・・早く動け!!」
「きゃあああああああ・・・くっ・・・皆も外から頑張って攻撃してる・・・あたしも早くしないと、巻き添えね・・・何とかこれの動き止めないと・・・」
シコウテイザ―の中の動力部分にチェルシーはかなり小さい動物に化けて忍びこみ、所々に針を刺したり手持ちの道具で動きを止めれないか悪戦苦闘していた。
「全く・・・これは後でタツミから割り増し料金貰わないと・・・、普通の人間ならこの辺の神経系刺したら、もう体動かなくなるのに・・・くぅぅーー!」
・・・内部侵入者発見・・・殲滅セヨ・・・
「え?何?この声?」
すると、チェルシーに無数の機械人形達が不気味に目らしき部分を光らせ、迫りくる・・・。
「えーーー!!ちょ、ちょっとタンマ!!聞いてないよー!!だ、誰かああ!!戦闘タイプの誰か来てぇえ!!タツミーー!!」
ズドガァアアアンンンン!!!!
シコウテイザ―が大きく揺れ、内部の機械人形達も体勢を崩し、足場から滑り落ちて行く機体もあり・・・勢いよく目の前にある障害を突き破っていく何者かが、チェルシーを襲おうとした機体を瞬時に蹴散らしていく。
「こ、ここここ今度はなにーーー!?」
とはいえ、彼女も安定を崩し落ちて行く・・・。
外では・・・
「あ・・・」
「・・・・・・・・・・」
「なんだあれは・・・?」
「・・・あれは・・・ひょっとして、インクルシオに似ている・・・?」
「・・・な?まさか・・・タツミか?」
シコウテイザ―の強固な外壁を突き破り、そのまま逆側まで突き抜ける程の貫通力を見せたのは空中に浮かぶ、元のインクルシオに翼が生え、全身が刺々しく黒炎の如く・・・その廻りが陽炎のように揺れる・・・悪魔のそれに近い、だが堂々とした姿形であった。右腕には大きめな刃が備え付けられ、左腕には帝具の闇よりの巨砲を備え付けていた。
「きっと・・・そうよ・・・タツミよ・・・インクルシオをあんな悪趣味に変えるなんてあいつくらいなもんよ・・・タツミー!遅れた分きっちり始末つけなさいー!」
『・・・まさか・・・、話に聞いたあの帝具をあんな風に・・・、かつて魔帝だったのは伊達では無かったと・・・』
「くっ・・・雑兵がいくら集まろうと・・・千年続いた我が一族の前では霞みも同然・・・死ねぇえええ!!」
自己修復を終え、機能が回復した波動砲を放つ。
タツミは左腕のそれを撃つ!
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!
双方の威力は拮抗している・・・
「タツミィイイ!!そのままいっちゃいなさい!!」
「・・・不味いですね・・・僅かながら圧されている・・・」
「くっ・・・、何とか持ち堪えてくれ・・・」
「いや・・・」
タツミは圧されながらもそのまま捻じ込むように、突き進む・・・、
「よっしゃあああ、あの野郎、悔しいがそのまま倒しちまえ!!」
「・・・駄目だ、ラバック・・・倒せたとしても・・・」
その時、巨大な爆発が起こり、シコウテイザ―はよろめく・・・双方の攻撃は相殺された。
「ああ~惜しい。あのまま圧し込んでれば・・・」
「いえ・・・出来たでしょうが・・・敢えて彼はしなかったのでしょう・・・」
「どうしてよ?」
「どういう事だ、アカメちゃん?」
「ああ・・・あの巨体だ・・・あれが倒れたらどうなると思う?」
「ナジェンダ、ここを離れろ」
「くっ・・・我々は足手まといなのか・・・」
タツミは空中で止まったまま、次の攻撃を考えあぐねていた・・・。
「おのれおのれ・・・余を見降ろしおって・・・貴様、何様だぁ!!」
回復した目から破壊光線をタツミに飛ばす・・・が、右腕で弾き飛ばしてしまう。
皇帝カライは必死に思案していた…どうすれば、こいつを倒せるかを・・・歴代皇帝が代々受け継いだこの帝具は最強では無かったのか・・・、誰にも負けないのでは無かったのか・・・もう彼は混乱し始めていた・・・。
タツミも攻撃しあぐねていた・・・倒すのはそれ程困難では無かった・・・だが、倒すにはそれ相応の火力が・・・この周囲にまだいる人間達の犠牲を・・・仲間達の犠牲も払わなければならない・・・、それにこの後の事を考え、皇帝は生かしておきたかった・・・とはいえ、帝具の闇に心を囚われたカライをこのままにして置く訳にはいかない・・・。タツミは最悪の選択を選ばなければならない時間が刻一刻と迫っている事に焦燥感を抱いていた・・・。
「タツミも・・・両方とも動かない・・・」
「・・・きっと、タツミ君は・・・」
ランは険しい顔になる・・・どういう結果になろうとも受け入れる覚悟を・・・。『俺一人だけでも逃げ切れるか・・・、出来るかもしれない・・・、・・・ですが・・・まぁ良いでしょう・・・ここで果てるとも・・・』
ランは諦観じみた笑みを浮かべた。
「スサノオ・・・動けるなら、廻りの兵達背負えるだけ背負って逃げろ・・・」
「ナジェンダ・・・お前はどうする?」
「私は・・・将軍だ・・・、最後まで見届ける責務がある・・・」
スサノオは逡巡した後、「・・・ここに居る兵達は誰もがお前を置いて逃げるという選択肢などない・・・逃がしたいのなら、自分の脚で逃げろと命令しろ・・・俺はこれ以上マスターであるお前の命令を聞く気など無い・・・」
ナジェンダは苦笑いし、彼の言う通りに生き残った兵達に通達した・・・だが、スサノオの言う通りとなった・・・。
「ラバ・・・さっき言った事・・・」
「ん?何?」
アカメはラバックの新薬の嘘に気付いていたが・・・敢えて触れるのは止めた。
「なんとか、ボスの所に連れて行こうか?」
「いや、良いって・・・アカメちゃんだってボロボロだろ?」
「・・・・・・・」
「確か船で世界を見たいって言ってたっけ?」
「ああ・・・」
「あともう少しで叶うな・・・」
「ああ・・・その時は船上でラバとボスの結婚式を披露してくれな・・・」
「・・・ははは・・・、ああ、任せてくれ!」
タツミは決断した・・・これ以上、シコウテイザ―をほっておく訳にはいかない・・・他のその他多数の民衆を生かすにはこの周囲に居る仲間や兵達を見殺しにするしかない・・・。タツミはその圧倒的な巨体である相手を消滅させうる火力までパワーを上げ、その帝具の反動に備え右手を添え照準を定めた。
その時・・・、タツミが突き破ったシコウテイザ―の穴から人が出てくるのを確認した・・・。
チェルシーに捕獲され、首に針を突きつけられた皇帝だった・・・。
「あ・・・あれ?」
「ん?・・・・んん?あれは皇帝と・・・まさか・・・」
「チェルシー!?宮殿で内部撹乱すると聞いていたが・・・あんな所にいつの間に・・・スサノオ、二人を回収しろ!!」
「了解した!!」
「あれはチェルシー・・・」
「嘘?よく見えるなぁ・・・?」
タツミは安堵し、照準を降ろす・・・だが、操縦者を失ったシコウテイザ―はゆっくりと傾き始める・・・。
「・・・えええ?きゃあああああ!!」
「うわぁああああああ」
スサノオは飛んで行き、二人を回収し両脇に抱える。
タツミは焦った・・・次は多くの人家のある方向へその巨体が倒れ始めたからだ・・・、直ぐ様それを抑えようと、飛んで行く。
マインもそれを見て驚き、
「え?いやいやあんた無茶よ?逃げなさいよ!!」
「無理でしょう・・・あそこには民家が密集しています・・・。避難した人達もいるでしょうが・・・まだ残っている人も・・・」
「ど、どうするのよ?あんた、何とかしてよ!!」
「無理ですよ!!・・・私の帝具はもう無い・・・」
「嘘よ・・・あたし達は助かるかもしれないけど・・・ねぇ?」
「仮に私の帝具があったとしても、あれを受け止める程のパワーは無い・・・」
「でもタツミなら・・・」
「彼の帝具だって、破壊に特化している・・・いくらインクルシオを最大限まで強化・・・いやあれは自身の力も更に上乗せしている・・・、それでも・・・あの巨体を貫けても、受け止めるは無理だ!」
「なら粉々にすれば・・・」
「しても・・・小さくても人位の大きさにはなる・・・、それが空から降ってきたらどうなります?」
「じゃ・・・じゃあ、塵も残さない程、消滅させれば!」
「それだけの膨大な火力ならば私達だってただでは済みませんよ・・・」
「・・・・・・!?じゃあ、見殺しにするしかないの・・・?」
「・・・・・・・・、あなた方が殺してきたような、悪人だってあの中に居るかもしれないのだから良いのではないですか?・・・・」
「あんた何言ってんのよ!?・・・いや・・・なんでもないわ・・・」
マインは直ぐに自己矛盾に気が付いた・・・、悪人とはいえ人を殺してきた自分に言える筋合いは無いと・・・ランもそれ以上何も言わず、地面を殴った。
「・・・・・・・」
スサノオは二人を解放し、後ろからこれから起こる事態を只・・・静観するしかないと思い定めていた。
「あの帝具が・・・民家へ倒れていく・・・」
「おい・・・女、そうなると、どうなる?」
判り切った事を・・・敢えてカライは震えながらチェルシーに問う。
「当然・・・あの辺りに居る人達は・・・下敷きになって圧死だろうね・・・」
カライは帝具・シコウテイザ―を操っていた時は気持ちも大きくなっていたが・・・今、そこから解き放たれ、普段の彼へ徐々に戻っていっていた・・・。
「余に・・・余に・・・歯向かう民など・・・死んでしまえば・・・しかし・・・いや・・・」
チェルシーは冷めた目で彼を見据え、「・・・あんたは今殺さずに、断頭台で皆が見ている中、公開処刑がお似合いかもね・・・」
ぎょっとチェルシーを見るが・・・そのまま俯き、その後倒れいく先祖伝来の帝具を苦い顔で見つめた。
「タツミでも・・・くっ・・・これ以上は無理か・・・タツミ・・・もういい、撤退してくれ・・・」
ナジェンダはこれ以上見ていられないと、目線を背けた・・・。
「アカメちゃん・・・悪い・・・何とか俺をあの丘まで連れて行ってくれ・・・」
「何をするつもりだ!?・・・これ以上動いたら、ラバックでも・・・」
「俺のこれで何とか、少しでも倒れるのを食い止める!!」
「・・・諦めろ、ラバック!!・・・私だって気持は同じだ・・・くっ・・・」
ラバックはそれがアカメなりの自身への優しさと気付き、それ以上何も言わず、せめて目を背けまいと、しっかりと行く末を目に焼き付けようとした。
倒れて行く地点にある民家からまだ残っている人や兵士達が逃げ出していく。
「セリューちゃん、私達もそろそろ逃げないと!」
「はい・・・しかし・・・、まだ残っている人達がいるかもしれません!!」
「たぶん・・・大丈夫だよ・・・後は逃げた事を信じよう・・・」
「はい・・・」
二人とも・・・人助けの心と自身の生存本能の狭間で揺れ動いていた・・・、全員逃げたと思うのは・・・自身ももう逃げたいという考えに対する方便なのかもしれない・・・だが、それは致し方無い事だった・・・。
『何が・・・正義だ・・・何が・・・あたしは・・・』
「セリューちゃん?」
「ボルスさん・・・コロを連れて逃げて下さい・・・あたしは、まだ残っている人がいないか探してきます・・・」
「セリューちゃん、何を馬鹿な!?」
「・・・それに、あれきっとタツミ君です・・・あの人が必死に抑えようとしているのに・・・あたしはまだ逃げれません・・・」
「・・・判ったよ・・・女の子1人残して、私だけ逃げれないよ・・・」
「・・・もう、女の子って年じゃないですけどね・・・」
コロは頷き、
「・・・コロ?今のどういう意味?」
「・・・?・・・・きゅ!?」
コロは誤解だと、必死に首を振った。
「よくぞ言った!お前達は下がっているが良い・・・」
タツミは少しでも倒れを抑えようと必死の形相だった・・・インクルシオも限界まで来ており、許容以上のパワー出している為、所々で破損が生じていた・・・当然、タツミ本人への負担も大きい・・・
『体が・・・これ以上・・・』
その負担は骨に亀裂が入り、肉の筋は切れ始め・・・生命の保障も無くなっていく・・・。
その時、セリュー、ボルス、コロの間に高く見上げるほどの土の壁が出来、そびえ立つ。
「い、今のは・・・まさかブドー大将軍?」
「大将軍ですか?・・・あれ?タツミ君はあそこに居るのに・・・確か大将軍と闘って・・・あれ?」
ボルスとセリューは首を傾げるが、
地面の土をごっそり使い、巨大なゴーレム達を出現させていく・・・そして、シコウテイザ―が倒れる方向に向かって巨大な穴が出来るように、ゴーレム達を生成していく・・・その過程では、民家の下の土が盛り上がる・・・その為、家の中にまだ居た者たちは驚いて・・・出て行く・・・。それでも怖がって中に止まる者たちも家ごと脇へと押しやっていく。その過程で何かしらの形で圧死した者もいたかもしれないが・・・。
「借りは返すぞ・・・ぬおおおおおおおおおお!!!!」
雄叫びと共に全身全霊で無数のゴーレムを操り、シコウテイザ―を止め、穴の中に沈みこませようと試みる・・・。
「・・・おい、アカメちゃん・・・今度はなんだあれ?」
「・・・?」
「スーさん、あれ何か判る・・・?」
「・・・判らんが・・・あれも帝具か何かだろう」
「・・・まさか・・・ブドーか・・・そうか、ブドーか!?」
「あれは・・・ブドー?・・・そうか・・・あの規模の帝具を操れるのはあいつくらいか・・・しかし・・・何故・・・」
「まさか・・・ブドー閣下が・・・これは参りました・・・タツミ君・・・殺さなかったんですね・・・」
「そう・・・タツミ・・・、生かしたんだ・・・」
マインはふっと微笑んだ。
ゴーレム達のおかげでタツミへの負担は軽減し・・・
「タツミ・・・もう良い・・・離れろ!!」
タツミは遠くのブドーが言っている言葉は聞こえなかったが・・・何を言わんとしているか悟り、離れる。
その後、ゴーレム達が倒れる速度を殺しながら、自分達も土に戻りながらシコウテイザ―を穴の中に埋めて行く・・・
ズシャァアァアアアアア!!!!
巨大な土飛沫が起きた後、空は一瞬暗くなったが・・・再び、光が辺りを照らす・・・。