帝国の街では戦後の傷跡が当然ながら残り、それの建て直しを行う革命軍や町の人、その中にはセリューやボルス、彼の妻娘も炊き出し等の手伝いを行っていた。
ある山小屋を仮の住まいにしているウェイブとクロメ。
体が余り満足に動かずベッドで休むクロメに、ウェイブは粥を食べさせていた。
「旨いか、クロメ?出汁に煮干しと昆布醤油を少量使ってみたんだ」
「うん♪美味しいよ!・・・でもウェイブそんなに料理上手かったっけ?」
「前にボルスさんに教えて貰ったんだ・・・あの人生きてたらなぁ・・・」
「・・・あたしも直接ボルスさんが死んだ所見てないよ?」
「ああ、まぁとにかくお前が元気になる事が先決だ、もっと食えよ」
「・・・いらない」
「なんでだよ?」
「別の方法で食べさせて♪」
「別の方法?」
そう言ってクロメは目を閉じ口を付きだす。
「ん」
「ん?」
「・・・んーん!」
「???」
「ウェイブ・・・ちゅーう!」
やっと判ったウェイブは「ばっ…お前!」
「もう・・・誰も居ないんだし良いじゃない、はぁ~あウェイブは肝心な時に・・・」
「なんだよ?俺は別に・・・ってそんな睨むなよ!」
「ウェイブ・・・」
「・・・ん?あ・・・誰か居るな・・・」
「うん・・・」
「クロメ、お前はここに居ろ!」
そう言って帝具である刃型のグランシャリオを握り、戸に手を掛け次の瞬間思いきり開け放つ!
そこには不敵な笑みを浮かべからかい半分の表情のタツミが立ち
「悪いな、邪魔して」
ウェイブはほっとし「タツミ・・・なんだお前は無事だったのかよ・・・俺はてっきり刺客でも来たかと思ったぜ」
「・・・実は俺がその刺客だと言ったらどうする?」
クロメはタツミを警戒し体が動かなくても何か出来ないか思案する。
「お前が刺客だぁ?馬鹿だなぁ、タツミ(?)も休み休み・・・、話に聞いたがま
さか皇帝の帝具ぶっ倒したのはお前か・・・?」
タツミは無言で何も言わず、それが却って彼には肯定と受け止めた。
「そうだ・・・お前に会ったら一つ確かめたい事が有った・・・クロメも言ってたがお前・・・革命軍に内通してたな、どうなんだ!?」
これもまたタツミは無言のままで、やはり肯定と受け取られた。
「やっぱり・・・てめぇ初めっから俺たちの事騙してやがったんだな!」
ウェイブは激昂しタツミの胸倉を掴む。
「待ってウェイブ!・・・あたしもタツミに聞きたい事が有る・・・」
ウェイブは手を離し、タツミも視線をクロメに移して次の言葉を促す。
「タツミは・・・初めて会った時にエスデス隊長を倒してたって本当?」
「・・・ああ」
あれはやはり見間違いじゃ無かったのか?とウェイブは戦慄した。
「た、隊長が油断して、もしくはわざとやられたんじゃなかったのか?」
「ウェイブ・・・あの隊長がわざとやられたふりだとか・・・性格上考えにくいよ」
「隊長よりも強いタツミが・・・どうして、部下になったりあたし達と行動を共にしたの?」
「俺は全ての帝具を壊す目的があってこの国へ来た・・・グランシャリオも渡して貰うぞ、ウェイブ」
「な・・・どういう事だ一体!」
「やっぱり・・・、ウェイブ、あたしも疑問が確信に変わったよ、タツミが八房を使えなくしたんだ・・・」
「タツミお前本当なのか!?」
「ああ・・・」
なんでそんな事した・・・と怒りそうになったウェイブだが・・・八房の帝具としての能力は死者を操り人形にする・・・その命への冒涜に言う事も出来なかった。
「以前ならあたしもタツミを殺したいくらい憎んだろうけど・・・最後にナタラに会えたし・・・もうその事は良いよ・・・」
「物判りが良くなったなクロメ・・・」
タツミが感心するもクロメは一つの疑問がわいた。
「でも、なんで今まで使え無かったのに最後の最後でナタラが・・・」
タツミには理由が思い当たる節が有ったが・・・だが敢えて何も言わなかった。
「・・・それでタツミ?ウェイブの帝具だけ取りに来たの?」
「お前の八房はもう壊れたのはアカメからも聞いている・・・」
「・・・!?そう・・・お姉ちゃんも生きてるの・・・」
俺を呪い殺しかねないくらいだがな・・・と小声で呟くタツミに
「え?なに?」
「いや独り言だ・・・」
そこでウェイブが
「・・・ん?まさかタツミ、クロメに気を使ってアカメが生きてるって伝えに来たのか?」
「・・・俺がそんな事の為だけにここまで来る訳ないだろ!」
『ふふふ、否定はしないんだ』とクロメは少しだけ微笑んだ。
「あ・・・あの時、ボルスさんがいて・・・お姉ちゃん達と一緒に闘った時に助けに来たのはタツミ?」
「ん?それが本当ならなんでお前そんな事したんだ?」
タツミも面倒臭げに
「そんな事はどうでも良い・・・、良い話を伝える代わりにとっととグランシャリオを寄越してくれ」
「お前、全ての帝具壊すなんて言ってるが、本当は全部の帝具使って自分が国を乗っ取りたくてんな事言ってるんじゃないだろうな!?」
「クロメ、お前よくこんな頭ん中海産物しか詰まって無い奴と一緒にいるな?」
タツミが毒舌を吐く中、
「え?・・・え~と・・・」
「クロメ、お前なんでそこ否定しねぇんだよ!それとお前、海産物に謝れ!」
「ウェイブ・・・お前みたいな下等な奴に判るように言ってやる!」
タツミも甘く見られたと思った為、イライラしていた。
「誰が下等だ!・・・お前、なんだか隊長とちょっと口調が似てきたな・・・ああ、そうか夫婦は似るって言うもんな・・・くくく」
「なっ!?」
・・・・・・・・・・・・・タツミは精神に深刻なダメージを受けた。
「と、とにかく帝具はこの世界の自然か生物を元にして造ってるだろ?」
「それがどうした?」
「俺は帝具を形成する核となる成分を取り出し、それを使ってこの世界の自然律を
元の状態に戻すのに使う・・・本来、今の生体系もこの帝具も有ってはならない・・・いやありえる訳無い物なんだ・・・」
「お前・・・」
一瞬重い沈黙が訪れ・・・
「何言ってんだお前?」
「あたしも今一つ何言っているのか・・・」
『はぁ~~~だから、話したくなかったんだ・・・』と心で愚痴り、
「この世界しか知らないお前らには…これが普通だもんな、無理も無いか・・・」
「お前・・・何言っているか良く判らねぇが・・・病院行って来いよ」
「うるせぇよ!とにかく、さっさと帝具寄越せ!」
「ちょっと待てよ、良い話はなんだよ、まさか今のか?」
「・・・いや・・・すっごい良い話だ、革命軍がクロメを始末しようと狙ってるぞ」
ウェイブは一瞬頭が真っ白になり、
「・・・な?・・・おい、ちょっと待てよ!戦争は終わったんだ・・・何で今更クロメが・・・?」
「元々、クロメは革命軍とナイトレイドの標的だった、戦争が終わって、はいめでたし、帝国軍の暗殺部隊もお咎めなしとはそう簡単にいかねぇ・・・そいつらだって戦闘中に殺されたか或いは数人捕縛されたとは聞いてるぞ」
「クロメ!?」
彼女は黙って俯き、無言で先を促す。
「ウェイブ、お前は特に探されるような事になってねぇ・・・お前国の為に・・・人の為になる事したいんだったらそのまま復職出来るぞ?」
「何言ってやがる!クロメを置いて行けるかよ?大体俺が復職したらどうなる?クロメの居場所を吐かされるだろ!」
「・・・だろうな、お前とクロメの繋がりは何人かに目撃されているからな」
怒りを込めて地面を叩くウェイブ!
「ちっ、どうすりゃいいんだ!!」
ウェイブの脳裏には恩人の言葉が掠めているだろう事はクロメにも判っていた・・・国の為になる事をしてくれればいいという・・・。
「ウェイブ・・・あたしは大丈夫!一人で何とかするから・・・それに、革命軍じゃ無くたって帝国軍が勝っててもどの道あたしは処分の対象になってたよ・・・」
「満足に動けないからかよ・・・タツミ、革命軍は帝国軍よりはマシな軍じゃ無かったのかよ!?」
「帝国軍よりはマシだろ・・・だがクロメが恨まれているのは事実だ・・・」
クロメは俯きに何も言えず、タツミがそれを代弁した。
「クロメが始末した奴らの中にはお前らのような恋人の片割れを殺した事もあるだろうよ・・・まぁ国の為なら仕方ないと割り切って洗脳されてたかもしれないが・・・それでもやった事には変わりない」
「・・・・・・、タツミは何が言いてぇんだ?クロメを黙って見殺しにしろって言いてぇのか!?・・・こいつは変わったんだ、帝国のふざけた洗脳だって解けかかってんだ・・・確かにこいつは罪のない人間も殺しただろうが、それでも俺は・・・」
しばらく重い沈黙が続いたが、・・・初めにタツミが口を開いた。
「クロメが取れる選択は俺が考えるに一つだな・・・、出頭して裁判を申し立ててその上で刑に服せば・・・遺族達も納得するだろう・・・最も極刑の可能性は高いがな」
「いや・・・もう一つある、俺がクロメを連れて別の国まで逃げる事だ・・・」
「ウェイブ!?そんなことしたらウェイブまで追われちゃう」
「うるせーよ!俺は母ちゃんから困っている女が居たら助けるように言われてんだ!」
「え?前にお母さんは「都会の女の子には気を付けろ」とか言われたって?ふふふ・・・それ初めて聞いたけど?」
「ど、どうでもいいだろそんな事!」
クロメとウェイブが騒いでいる横でタツミも考えていた・・・そして、
「おい・・・お前ら俺がこのまま黙って見逃すと思っているのか・・・?」
ゾワッ・・・・・
その瞬間、その場を強大な殺気が支配した。
クロメも息を飲み、ウェイブも戦慄した・・・
『こいつ・・・これが本当の・・・こいつが本当のタツミ・・・』
『確かに・・・これならお姉ちゃんや隊長も敵わない・・・』
後日タツミはナジェンダの部屋へ行き、
「タツミか?どうした?」
彼はナジェンダに折れた八房を渡す・・・それには血が付いていた・・・。
「タツミ・・・これは!?」
それを渡された彼女もこれがクロメの帝具だと把握しており、タツミを見返す・・・その表情を見て
「判った・・・成程な、これで本部へ話せる・・・」
そしてタツミはグランシャリオを叩き折った・・・。