ナジェンダから事の次第を聞いたタツミは宮殿のブドーの元鍛錬場へ向かった。
立ち合いする人数はナジェンダ含む少数でその中には革命軍の腕に覚えのある幹部が後学の為に見たいと希望した。
「うむ・・・この鍛錬場もこれで見納めか・・・」
ブドーは感慨深げに辺りを見回した。
もしもの時の為に銃を用意し控える幹部がいるものの、彼はそれを気にせず・・・彼がその気になれば、そのような武装は意味の無いものだった。
「来たか・・・」
ナジェンダに連れられたタツミが入ってきた。それを認めたブドーは、
「よく来てくれた礼を言うぞ!」
「・・・・・・・・・・・・・」
タツミは無言でブドーを見、
「果たし合いを望んでいる訳ではない・・・ただ、先の勝負は勝負として今度は互いに策を弄さず、陛下の事も考えず、純粋にぶつかりたい・・・女々しいと思われようが・・・そなたほどの相手にはこれから先会えそうにも無いんでな・・・この後私は生涯堀の中の生活だ。・・・せめて冥土の土産が欲しい故、許せ」
タツミは数ある武器が置いてある中、何も言わず近くの木剣を握った。
彼は素手でも良いと考えていたが、この方がより判り易く相手に伝わると判断したからだった。
ブドーもナジェンダに同じ物を促した。
タツミはだらんとそれを右手に提げ、ブドーは数メートル離れた位置で構えた。
その静かな気迫に周りに居た者達は息を飲み、ナジェンダも『これが・・・あのブドーか・・・』
木剣だけで床を割り、いともたやすく命を奪える技量が見て取れ、彼の間合いに入れば即死に繋がる事は容易に想像できた・・・。
だがブドーは気付いていた・・・この前に闘った時と様子が・・・いや2,3枚腕を上げたか…或いはあの時わざと力量を同等に見せたのかと疑いたくなるくらいのタ
ツミの技量を・・・。
目に前に奴がいるのに・・・居無いかのような・・・それでいて隙が有ると踏み込めば即座に斬られるような・・・何を考えているか丸でつかめない・・・。
タツミはそれを両手で持ち下段に構えたまま、するすると近付いてきた。他の者達には自らブドーに打たれようとしている見えたが・・・実際の彼自身は追い詰められている気分だった・・・。
ブドーは目にも止まらぬ早業で剣を振りおろせる・・・が、その起こりが心に僅かでも浮かんだ瞬間、タツミに斬られるなと判ってきた・・・、如何にブドーと言えどもするべき時に・・・あるべき時に自然に体が動く・・・その境地にまで達してはいなかった・・・。
もうブドーには勝てる要素は無かった・・・それまでの修練、日頃の心の持ちよう、柔も硬も知る相手にこれ以上向かい合っても時間の無駄だと…今更ながら自らの皇帝一族への盲信というその心の固さを彼に諫められているような気がして、ブドーは恥の感情が湧いて出・・・そして、
「参った・・・私の負けだ・・・有難い立ち合いだった、この恩は生涯忘れん・・・」
ブドーは深々と頭を下げ、タツミも一礼し何も言わず去っていた・・・ナジェンダ
は…はっきりとは判らないが、何かブドーに会得して貰いが為にタツミは来たのだろうと考え、その後ろ姿を見送った。
その後、ブドーは20年後恩赦で解き放ちになり、残りの人生を民と皇帝一族の為に捧げた。
死亡扱いになっているボルスは一段落した後、帝都から姿を消した。再び生きていると思われたら革命軍から狙われるのでその辺りの工作は、セリューから聞いたタツミの依頼でナジェンダも協力した・・・そのセリューは元同僚達の警備隊達に軽度の処分で済むよう奔走しランやタツミに掛け合ったり、タツミの斡旋で彼女は新政府下の警察官になれるようにと・・・その話はまた別となります。
タツミはこの間、壊せる帝具は全て壊しその中から賢者の石と呼ばれたもの等を取り出してシャンバラや飛行帝具を使って一気にその成分をこの世界中に撒いた・・・それは本来この空気濃度ではありえない巨体の危険種達は弱体化し、縮小・・・人間も含めた全生物の強さが本来あるべき姿に・・・弱る事を意味していた。それは徐々に反映されていく。
「これでやっと先達が犯した過ちを無効化出来る・・・この星の住人が混乱するのを拍車を掛けるような事して面白がりやがって・・・もうこんなおかしな帝具などという兵器は持たせる訳にいかない・・・これで本来の生物バランスになるはずだ・・・後はお前達の力次第だな・・・」
タツミの顔には一つの仕事をやり遂げた安堵感がにじみ出ていた。
そして・・・
ナイトレイド・・・元ナイトレイドのアジトでは、彼らは次の生活に向けて少しずつ準備をしていた。ナジェンダ除く他の者達はほとぼりが冷めるまで帝国を離れ暮らす事となった・・・その前にアカメが以前希望していた皆で世界を回ろうとなり、
「羨ましいなお前達・・・私は革命後の処理が色々山積みなんだ。・・・頭が痛い、こんな事なら革命なんかしなければ良かった」
とナジェンダのギャグに珍しく皆が笑った
「ナジェンダさん、俺絶対週一でこっそり来ますからね!」
「ああラバ、だがもう私も今までのように女癖の悪さは大目に見ないからな」
「ナジェンダさんそれって・・・」
「・・・皆まで言わせるな・・・」
ナジェンダは照れてそっぽ向き、ラバックはいぇーい、やったーと、大きく喜ぶ。
それを聞き、周りからヤジや黄色い声が飛び交い、
「・・・ラバックにとってこの時が人生の最高の日であった・・・だがしかし、その後、彼の殺した者達から命を狙われ、あのような結果になる事を・・・この時は奴はまだ知らない・・・」
タツミがそう語ると
「お前!なんでそんな不吉なナレーション入れるんだ、この野郎!」
「ボス・・・お土産楽しみにしててくれ。あと他に誰か良い男が居たら連れてくる・・・」
「あ?ああ・・・」
アカメが言うに対しナジェンダも苦笑いしながら、それにラバックは激昂し
「うぁかめつぁん!!どうしてそんな事言うんだよ!!」
「・・・私なりに“ふふっ”と笑って貰おうと思ったがつまらなかったか?」
「つまるつまらない以前の問題だ!!あーもう、タツミィ!!お前アカメちゃんの教育係だろうが、どういう事だこれは!!」
「んん??いつから俺がアカメの教育係になった!?」
「そうだぞ、ラバ・・・タツミは私と、教師と生徒の禁断の関係なんだ!」
タツミが複雑な顔でアカメを見、レオーネ、チェルシーも
「あー・・・アカメ?ちょっと後であたしと勉強しようか?」
「そうそう、あんまり人の心凍らせる事言うのはよくないよ?」
顔をひきつらせながら作り笑顔で言い、
「む?そんなにつまらなかったか?・・・人を笑わせるのは難しいな・・・」
アカメは首を捻り、連れされていく・・・その後皆でスサノオの料理に舌鼓みを打ち、一しきり騒いだ後床に付いた。
そして彼が皆の後片付けをし終えるのを待っている姿が有った。
「・・・タツミか」
「最後の晩餐はどうだった、楽しめたか?」
「ああ・・・俺もマスターの仕事完遂に付き合えた、これから先は俺が居なくとも何とかなるだろう・・・帝国も変わっていく、俺のような帝具人間も前時代の遺物だ・・・もし次のマスターが悪しき奴なら俺はそれでもそいつに従わなくてはならない・・・」
「帝具人間の哀しい定めだな」
「・・・・・・、もう俺は十分生き続けた・・・悔いはない」
「結構だ・・・ここでは無理だな、付いてきてくれ・・・」
スサノオはタツミに連れられ屋敷から外の暗闇へ消えていった。
いつの間にか雨が降り出し雷鳴が轟く、ゲリラ豪雨となった。
深夜、帝都から離れた山小屋のそのベッドにセリューと帝具生物のコロは眠ってい
た・・・彼女は連日の疲労でぐっすり寝入っていたが、相棒のコロは窓ガラスを叩く音に目を覚ましていた。
「・・・・・・」
コロは起き上がり、じっと女主人の顔を見ていたが・・・彼女が寝返りをうち布団の乱れを整え、その場を離れる。・・・そしてドアの所で一度振り返り一礼をした後、そのまま外へ出ていった。
そこには土砂降りの中、フードを羽織ったタツミが立っており全く表情が掴めない。
「・・・悪いが例外は認めない・・・帝具は全て壊す、殺さなくてはならないんだ・・・」
コロは雨に濡れながら黙ってタツミを見上げている。
「主人の影響で物判りが良くなったか?・・・では行くか・・・」
タツミは大き目の傘をさしてコロはその中に入り、後に続いた・・・。
夜明けの~晩に~つ~る~とか~め~がす~べった・・・うしろの正面だぁ~れ・・・
エスデスは夢を見ていた。何処かで聞いたような童歌を・・・。そういえば私もこんな事を子供の頃、狩りが出来ない間の暇つぶしに同じパルタス族の子供達と遊んだ覚えがあったような・・・あれはどういう意味だったか・・・父に聞こうと思ったが、聞き忘れていたな・・・そうだ、今度一緒になる男が出来たと報告しなければ、ふふふ、父は何と言うか?“お前のような奴に男が出来た?それは相手の男が可哀想だ、同情するぜ”と憎まれ口でも叩かれるか?母は・・・ああ死んでいたな。弱かったから仕方ない・・・自然の摂理に抗う事など私には・・・だが彼は抗う・・・いや、自然に逆らわずともそれに屈せず、上手くその手綱をひいている・・・?或いは・・・しかし、私の父は生きていたか・・・?私が殺した・・・?もしあの時直ぐにでも手当てをしていたら、今の帝都の技術が有れば・・・いやまぁ良い・・・。
エスデスは夢の中で記憶が前後し混濁していた、目を覚ませばその記憶の誤差も直ぐに修正され現実に気が付く・・・目を覚ませばではあるが・・・。
残る最後の帝具を滅すべくタツミは・・・エスデスの直ぐ傍までもう迫っていた・・・。
これにて連日投稿は一旦終了です。
お目通し有難う御座いました。
次回で最終章となり、更新は1ヶ月先か2ヶ月先か未定です(苦笑)
その前にセリュー主役編を差し挟もうか検討中です。
また気が向かれた際にでも読んで頂ければ幸いです。