タツミも自身の置かれた状況も把握し
「・・・いつの間にこの間合いに?・・・時間でも止めたか、それとも瞬間移動か?」
「ふっ、タツミなら以前の闘いの時に既に判っていたと思っていたが・・・お前何者だ?」
「・・・言いたくないな」
「ならば・・・このまま五体不能にし拷問に掛けるまでだ・・・くくく」
「エスデス・・・俺はお前のそんな狂気に歪んだ顔を、支配欲に溺れたお前の顔を見たく無かった・・・」
「ふんっ・・・、遺言として聞いておくぞ」
タツミは観念したのか、目を閉じ
「助けてくれないか?」
と言った。
「何・・・?・・・今なんと言った?」
「だから、助けてくれと言ったんだ、降参だ・・・」
エスデスは初め彼が何を言っているか判らなかった、意外する言葉だったからだ・・・だが段々と怒りに顔を歪ませ、
「貴様・・・、本当のタツミならこの程度の事で屈せん!タツミの名を騙る愚か者がぁ!!楽には死なせん、恥を知れ!」
エスデスが刃に力を入れ首を死なない程度に斬ろうとした瞬間、タツミはニッと不敵な笑みを浮かべた。
「・・・・ん!?」
カタカタカタ・・・
持っていた刃が小刻みに震え、エスデスは自身の体が言う事を効かないのを覚え始めた。
「ぐわああああああああ・・・な!?」
殺せ殺せ殺せ・・・焼き殺せ・・・蹂躙・・・殺殺殺殺殺、滅滅滅
・蹂躙・・・殺殺殺殺殺、滅滅滅・・・蹂躙・・・殺殺殺殺殺、滅滅滅
エスデスの中で自身の帝具、氷を操る危険種であり破滅のデモンズエキスが暴れだし、制御不能となる・・・
「なっ・・・今まで抑えてきた・・・それが何故・・・ぐはあああああああ、ああああああああああああああああああああああ」
エスデスが絶叫しのたうち回る・・・、
「・・・だから言っただろ、助けてくれって・・・お前が俺を殺そうと思わなければ、お前はこうならずに済んだ・・・」
エスデスは苦しみながら
「タ、タツミ・・・お前は・・・ま、まさか私自身の命乞いを・・・ぐううううああああ」
タツミはエスデスを見下ろしながら
「どうだ、苦しいか?簡単には死ねねぇだろ?」
エスデスはやつれ、肩で息をしながら
「はぁはぁ・・・今まで私はこれを抑えてきた・・・それが・・・」
「お前自身が知らない間に、少しずつ精神を侵食されてきたんだろ?そうでなければここまで能力が上がった理由も判らない・・・“お前がお前のままでいる限りはな”」
「心が・・・乱され・・・私が私で無くな・・・」
「外からの痛みには強いお前も内からの痛みには弱かったようだな・・・あれだけ闘い、俺とも闘わなければこうならずに済んだものを・・・闘いだろうが何であろうが物事に執着し溺れた者の行く末は哀れだな」
タツミは既に姿勢を整え刀を鞘に納め、立ち去ろうとする。このまま放っておいても自滅するのが判っていたからだ。
エスデスは満身創痍の態で立ちあがり、
「ま・・・まて・・・う・・・ま、まだ闘いは終わっていない・・・」
タツミはエスデスの意を悟った顔で振り返った。
そして、来る刃をかわしタツミはエスデスの心臓に手を当て・・・
「お前はもう・・・斬るまでも無い」
そう言って、無拍子で激烈な震動を当て心停止にする。
エスデスは心なしか安らかな顔で絶命しタツミの肩にもたれ、それまで覆っていた氷壁も全て砕け散った。
「タツミ!!」
アカメが安堵し駆け寄ってきた。
「エスデスを・・・やったなタツミ!」
タツミはエスデスの死体を地面に置き、
「・・・こいつの埋葬は・・・いやどんな方法で埋葬されたって何も言えた義理じゃないよな?こいつのやって来た事考えれば・・・あと済まなかったな・・・」
「?・・・誰に謝っているんだ?」
「俺が・・・あの青猫に余計な更生をさせなければ、ひょっとしたらこいつもここまで強くならずお前達にこれ程まで迷惑を掛けずに済んだかもしれない・・・」
「・・・?タツミが何言っているか判らないが・・・お前のお陰で帝国は救われた・・・ありがとう」
アカメが笑顔で言うに対し、タツミも心がドキッと悪い気はしないが気を取り直し
「お前達のタツミはまだあっちに居るぞ」
「・・・?タツミはインクルシオ化した後、何とか分かれてここに居るんじゃないのか?」
タツミは首をふり、
「俺の事は幻だと思ってくれ・・・お前達の知っているタツミはあの中でまだ生きている、早くあのインクルシオの中から助け出してやってくれ・・・」
「???・・・わ、判った・・・」
アカメは半信半疑ながらもそう言って駆け出した。
タツミには判っていた、この世界のタツミがインクルシオにのまれた後も・・・辛くもインクルシオがその術者のタツミを最後の最後で守った事を。
アカメは何を思ったか駆け出しながらふと振り返ると、そこにはもう彼の姿は無く・・・、
その一帯は雪も氷も解け始め、暖かい日差しが舞い込んでいた。
ナイトレイドアジトの玄関先に陰陽太極印が突如出現し光を放つ中で、そこにタツミが出現した。
「あれがエスデスの限界か・・・どんなに強くなろうと、あいつがあいつのままじゃな・・・、もし心入れ替えられていたら・・・ふっ、俺もどうなっていたか判らないな・・・少しは鍛え直すか・・・それよりも・・・」
流石に疲れたタツミは、食堂の食品庫を漁る。
「・・・タツミ!!」
厳かで凄みのある声が聞こえ、その先にはスサノオが仁王立ちしていた。
「うぉ!・・・なんだスズキさんか、脅かすなよ・・・」
「誰だそいつは!・・・とにかくタツミ、前にも俺は言ったはずだな?帰れん時は前もって言えと!」
「ん?んん・・・そうだったな・・・」
「全くお前と言う奴は・・・お前の分はアカメがたいらげたぞ」
「いや、まぁ別に良いけど・・・俺は俺で勝手に作って食うから」
「駄目だ!俺にも作る上での材料もちゃんと計算してるんだ、食うなら自分で買ってこい!」
『しまったな・・・今月金が余り無いんだった・・・』
「・・・それはそうと、タツミは俺の釣り竿知らんか?」
「いいや・・・そういやぁこないだラバックが、アカメ達が風呂に入っていた時に釣り竿持って脱衣場に向かって何かしてたな・・・」
「恐らくそれだ!おのれラバックめ・・・うむ、とりあえず話を戻すが俺にも情けはある、ここにお前の為に夜食を置いておいた・・・食べたら食器は洗って自分で片付けておいてくれ」
「ス、スズキ社長・・・」
そう言ってスサノオは姿を消し、タツミは僅かに感動しながら置かれた食膳の前で箸を取る、そこには・・・
玄米一膳
たくあん二切れ
「・・・・・・、・・・・・・いただきます」
そういってタツミは涙交じりにたくあんをバリボリと噛みしめた・・・。
余談ですが、
この無双のタツミはこの闘いでエスデスの摩訶鉢特摩を行うタイミングを悟り、
以前に書きました、タツミが居ない世界のエスデスを仕留める際に応用し一気に片を着けるのに役立たせました。
只今風邪をひき、書く作業が滞っております。もうしばらくお待ち頂けましたら幸いです・・・。