この話に置けますイェーガーズから離れた後の生活やタツミに協力を求められた後、
帝都の職へ復帰するまで描こうと思います。
木を切り薪とし、コロを使って食べれる野草を見極めたりとセリューは素朴な生活を山小屋の中で送っていた。
汗を拭き、ふと我が手を見つめた・・・、
かつてドクターと呼んで慕ったスタイリッシュが施した自身の鋼鉄の手を。
『悪は何がなんでも滅ぼさなくてはならない・・・くくく、正義執行!!』
それによって幾人もの人間を葬った返り血が染み込んでいる、例え綺麗にメンテナンスしようが・・・。
「きゅ・・・」
コロが心配そうに彼女を見上げるが、
「あ・・・ううん、なんでもないよコロ・・・でもあたしのこの手、きっと冷たいんだろうな・・・もうその冷たさも判らないや・・・あはは・・・」
セリューは鋼鉄と化した両腕を抱くように呟く。
ガサガサ・・・、・・・ごふごふ・・・
「!?」
「コロ・・・何か近付いている・・・」
小屋の傍まで3m程の危険種の熊が近付き・・・そしてグルグル徘徊し始めた。
コロが巨大化し戦闘体型になったのに対し、セリューも臨戦態勢を取った。
このままやり過ごすか、或いは討って出て片付けるか・・・以前の彼女なら躊躇なく殲滅に臨んだが。彼女の心の中は直ぐにでも殺したい欲求と頼むから退いて欲しい気持ちが拮抗していた。
だが、
「ごがあああああああ!!」
その熊は窓を破り室内に乱入した
「ちぃっ!」
セリューは直ぐ様、その鋼鉄の義手から散弾銃を放つ!・・・だが急所を外れている為致命所にならず、
「があああ!!」
咆哮を上げながら、彼女の両腕を抉り取り直後片腕の爪を振り下ろす。
『しまった!』
死を覚悟するセリュー、だがコロが横から体当たりを喰らわせそのまま頭から噛みつく。
だが熊も暴れ、コロの口の中、顔と強靭な腕力と爪で引き裂き抵抗する。
「があああああ!」
「ぐるるうるるるううがあ」
二匹は揉み合う中、セリューは口に仕込んだ銃を・・・冷静に見極めながら
『まだ撃つな・・・最後の一発・・・力を抜いて・・・』
ここだ!と決めた瞬間にセリューは熊の脳天に向けて放つ。
「ぐ・・・ぐがああああああ」
一瞬、暴れるも・・・力を失い、その機を見逃さずコロは熊の鼻を食い千切り、そのまま頭を噛んだ・・・人間を違い強固な肉体と骨と為、食べるのは容易では無いが、辛くも命を奪う事には成功した・・・。
相手の息の根を完全に止めたのを確認したコロは、セリューに駆け寄る。
「コロ、あたし・・・腕鈍ったかな・・・『今までこんな事無かった・・・タツミに言われなければ考えもしなかった・・・余計な事を・・・心の中で迷っていたらいざという時に生き残れない・・・罪なんてどうでもいい、あんな死ぬ思いは嫌だ・・・』
「きゅい・・・?」
「コロ・・・あたし生きたいよ・・・」
破壊された義手の変わりはまだあるが・・・先程の恐怖はまだ消えなかった。
数日後、襲ってきた熊はコロが食い切り、セリューも機械化した破損の部分や怪我の治療もある程度完了した。
『ドクターが作った腕の予備はあと3つか・・・、またあんなのが襲ってきたり・・・いや、以前のあたしならそこまで苦戦なんか・・・でももっと強い強敵と闘ったら・・・』
ぼんやりとそんな事を小屋の外で考えていると、そこに銃で武装した人間が複数訪ねてきた。
「お嬢さん・・・君はここの家の人かい?」
セリューはこの周辺に人が居らず、廃屋になったこの山小屋を住めるように改装していた為、まさか持ち主が戻って来たのか?と気まずくなった
「はい、そうです・・・えっと何かありましたか?」
「なら早くここから立ち去った方が良い!」
やはりか、と思い
「あの、ここでの暮らしにやっと慣れてきたんです・・・特にもう使って無さそうでしたし、このままここで居させてくれませんか?」
「何を言っているんだ?この辺には凶暴な危険種が現れて、もう10人以上が殺されているんだ・・・悪い事は言わない、早くここから立ち去った方が良い」
「危険種・・・ひょっとして熊みたいなのですか?」
「ああ、そうだ・・・まさかもう見かけたのかい?」
「えっと・・・、はい・・・」
「なんだって!?何処で?」
セリューは素直に本当の事を言うか、それともはぐらかすか逡巡したが
「・・・もうその危険種は現れないと思いますよ・・・」
そのうちの1人が激昂し
「何が現れないだ!!・・・あんのやろう・・・うちのかかぁを食い殺しやがって絶対に俺の手でぶち殺しやる!」
セリューも一瞬呑まれる迫力に驚くが・・・ひょっとしたら自分も傍から見ればこんな風に他人を委縮させたりもしたのかと思った・・・とはいえ気持ちは判るが。
「すみません・・・えっと、元は私、帝都警備隊の者でしてエスデス将軍の元にもいました」
「なんだって!?あのエスデス将軍の?」
彼らは互いに顔を見合わせ、そのうちの1人が
「・・・あんた、こんな所で一人で何を・・・まさか、危険種討伐に?」
「いえ・・・私は訳あって隊を離れまして・・・それでここで暮らしていたら貴方がたに言われている危険種に遭遇しました・・・」
「そうか・・・、それで・・・そうか!・・・あんたが殺してくれたのか!?」
「はい・・・」
彼らは大いに喜び、セリューの手を取った
「いや本当によくやってくれた・・・なんとお礼を言って良いか・・・」
「さっきはちょっとばかし酷い事言って済まなかった・・・これでこれで仇が・・・うわあああああ」
その男は号泣し、仲間達も肩を抱いて泣いた。
セリューもその時は自分がした事に価値があったと、何やら暖かな気持ちになっていた。
そして、セリューは彼らの村落に呼ばれ、もてなしを受けた。
コロも久しぶりの御馳走に舌鼓を打ち、喜んでいる。
皆からも歓迎されセリューも楽しんでいた。そこに、
「あのにっくたらしい危険種にはうちの飼ってた家畜達が何匹食われたか・・・でも貴女のおかげです。おかげで家畜達の数を気にする事もありません。さっき絞めたばかりの新鮮な鳥肉です!どうぞ召し上がってください!」
「有難う御座います!」
セリューも喜んで箸を伸ばすが・・・いつぞやのタツミの言葉が突き刺さり、
自分達の安全の祝いに生き物を殺す矛盾を感覚的に感じ、一瞬止まる。
「どうかされましたか?」
「い、いいえ!なんでもないです、美味しそうですね、頂きます!」
その傍に10歳程の少年がやってきて、
「ねえちゃんがあのオレのかあちゃん食った熊殺してくれてのか、ありがとう!」
「んん?・・・んん、そこのコロと二人がかりで何とか倒しただけだよ・・・」
「やっぱ、そうかすげぇ!かっこういいなぁねえちゃん・・・」
「あはは・・・」
少年の羨望の眼差しを受け、照れるやら自分はそれに値しない思いも僅かに生まれていた為、曖昧に笑ってこたえた。
セリューとコロはその村で泊って行き、翌日お礼の品を貰って帰った。だがその前に例の少年から
「ねえちゃん、オレにも格闘を教えてくれよ!」
父親がそれに対し
「おい、テンモウ!すみません、セリューさん息子が厚かましい事を・・・」
「とうちゃん、オレがもしねえちゃんぐらい強かったらあん時、かあちゃ・・・母さんまもれたかもしれねぇんだ!」
「テンモウ、お前・・・」
「だからねえちゃ・・・いや先生!おねがいします!」
彼は頭を下げ懇願する。
「う~~~ん・・・」
セリューも悩んだが、気晴らしにこの少年に稽古を付けるのも悪くないかと思い、
「じゃあ3日に1回、この時間に…そうだね、こっちからこの村に迎えに来るから、それでどう?」
「ありがとう、先生!」
「すまんな、セリューさん。月謝は・・・」
「お気持ち程度で良いですよ」
本当は少年からセリューの家へ来させようと思ったが、まだ獰猛な危険種が居ないとも限らず、この村とはそれなりに離れてもいる。それに村の集団そのものとも交流を持ちたいのもあった。
『あたしが先生か・・・ふふふ』
くすぐったい気持が湧き上がりながらもセリューは約束通りコロと共に村へ通った。
「そう、そこで一瞬だけ拳に力を込めて、後はお腹の下辺りに気を入れて!」
「でりゃあああ!!」
荒削りなセリューらしい教え方をしていた、無理も無い人に教えるのは難しい。
「そう、一回一回に相手を確実に仕留めるつもりで気合いを込めて!」
その時、セリューが嬉々として悪と断じた相手を殴って殺した事に脳裏を掠めた。
その為、それ以上は何も言わなかったのでテンモウも
「・・・?どうしたの先生?」
「ん?・・・んん?なんでもない・・・じゃあ稽古続けよう」
休憩を取りながら稽古を続け、爽やかな汗に微風が心地良い。
セリューも1ヶ月以上教え、中々筋が良い彼に満足していた。
「先生、前から気になってたんですが・・・両腕共、作り物ですか?」
彼も好奇心ではっきり言う。
「ん?うん、そう・・・義手なんだ・・・」
「きっと、先生は今まで強い危険種と戦って来て・・・かっこういい・・・オレもこの腕、先生みたく変えてもらおうかな?」
セリューはそれを聞き、過去に思いをはせた。
『・・・オーガ隊長はどういうつもりで、私に格闘技を教えてくれたんだろう・・・それに、どういうつもりでドクターに私の体の改造を・・・、確かに私はあの時悪を倒す為の力を身につけるならと言った・・・』
「・・・?先生どうしたの?」
「あ・・・ううん、なんでもないの・・・うん、なんでも」
「?」
そうこうしている内に、時にはテンモウの方からセリューの家に出稽古に行くと言う事になった。初めは危険だと反対したがここ最近脅威になりうる危険種の気配も
なく、気も緩んでいった。
そんなある日、時間通りに来るテンモウが中々来ない・・・。
「どうしたんだろ?」
「きゅう・・・」
「そうだねコロ、ちょっと探しに行ってみようか」
セリューとコロは森の中を探し初め、
「きゅきゅきゅう!」
「え?あっち?」
コロが駆け出しセリューが続く、そしてそこには。
危険種の子熊を嬉々として殺したテンモウの姿があった。
「これで、これで・・・母ちゃんの仇が討てた・・・やったやった・・・」
肩で息をし、彼も傷を負ってたが手にはナイフを携えていた。
「ん?ああ!?先生!」
「テンモウ君・・・」
血まみれになった彼はセリューに駆け寄り
「やったぜ、先生!オレ一人で母ちゃんの仇の子熊を討ったぜ、ははは、ざまぁみやがれ!」
「・・・そ、そう・・・うん、良かった、良かったね・・・」
笑顔の彼に対しセリューも笑って対応するしか無かったが・・・そこにかつての自分を見ていた・・・。
三日後
テンモウの容態が悪化し、ベッドに横たわっていた。
「テンモウしっかりしろ・・・」
「うう・・・父ちゃん、大丈夫だ・・・オレ先生の弟子だぜ・・・これぐらい、直ぐよくなるって・・・」
時折痙攣をおこし、息苦しそうにも健気に強気を見せる。
セリューとコロも後ろで心配そうに見つめ、父親は
「先生ちょっと頼みたい事があるんだ」
そう言って部屋から出て
「・・・あいつは破傷風だ・・・前に俺の仲間で危険種を倒したは良いがその時闘った傷が元で苦しんで死んで行きやがった・・・だから頼む先生、俺は何としてでも息子を助けたい、帝都の名医を連れて来てくれないか・・・お金はいくらでも出す・・・頼む」
深々と頭を下げる父親にセリューも涙ぐみ、
「判りました、大急ぎで医者を連れて来ます。それまでお父さんはテンモウ君の側に居て上げて下さい、コロ行くよ!」
「きゅい!」
外を出たセリューは
「コロ、最速化!全力で駆けて!」
コロは巨大化したが、戦闘形態ではなく走るに特化した細身の姿になり、森を駆けていく。
途中休ませながらも数時間後、ようやく帝都に着き医者を探す。
「あ?そんな辺鄙な村の病気誰が見る?いくら出す・・・それだけじゃ足らんな・・・金持ちになってから出直して来るんだな」
当然ながら帝国には相互互助の保険制度や老後の手当も無く、全額自己負担でありお金の無い人達は病気になれば医者にかかれず、治らなければ容赦無く死んでいき、貧しい暮らしで高齢で生き延びている老人は少ない。
「こちらの先生は訪問診療は行っておりません、お引き取りを」
・・・と、けんもほろろに門前払いをくらい、セリューも焦燥感に駆られ、いっそ力づくで引き連れようかとも考えた・・・自分が警備隊やイェーガーズの時はここまでの対応されなかった・・・それが地位も名声も無ければこの扱いなのかと。
「くっ・・・、どうすれば・・・いっそ隊長や皆に頼ろうか・・・タツミは・・・、駄目だ、何処に居るか判らない」
セリューはイェーガーズの詰所へ訪ねた、そこには・・・
「おや、セリューさん・・・どうしたんですか?」
「ランさん!すみませんがお願いが有りまして・・・」
事の次第を聞き、
「はぁ、成程・・・判りました。私が書面にその旨したためまして渡します。隊長名義でこれを持って行けば誰も嫌とは言わないでしょう」
「有難う御座います!それはそうと皆元気ですか?隊長は?」
「・・・ええ、皆元気にやってます・・・隊長は所用で居ません・・・」
ランは何処かものを含んだ言い方をしたが、セリューもそこまでは気付かない。
「そうですか、では宜しく伝えて下さい、では!じゃあコロ大急ぎで!」
セリュー達の後ろ姿を見送ったランは、彼女も少し変わったなと印象に抱いた。
その書面を見せられた医者も流石に嫌とは言えず、コロの後ろに乗り彼の居る家へ向かった。深夜となり日をまたいでいた。
「コロ、ありがと!休んでて」
「ぎゅ・・・ぎゅい・・・」
医者を連れて、ドアを叩き
「夜中すみません、お医者さんを連れてきました」
「・・・ちょっと待ってくれ・・・ああ、セリューさん!・・・医者の先生を連れて来てくれたのか・・・すまねぇ・・・」
「いえ、そんな事より早く!」
「・・・・・・・・・・・判った、先生こっちだ、せめて見てやってくれ」
「ああ・・・、『全く何故わしがこんな所まで・・・』」
彼の部屋の戸を開け、
そこにはベッドで静かに横たわっていたテンモウの姿だった。
「・・・・・・・」
医者は何も言わず脈を計ったが、首を振った。
「え・・・待って下さい、彼は今朝までまだ生きていたんです・・・どうして・・・」
「セリューさん・・・うう・・・あんたはよくやってくれた、こいつもあんたの名前を最後まで呼んでた・・・もっと稽古を付けて貰いたかったと・・・うううう」
「けど・・・そんなこんな早くに」
泣くのを必死に堪える父親にセリューも呆然自失し
「・・・確か破傷風と言っておったか、普通なら発症からこんなに早く死ぬ事も無い・・・危険種から移されたものなら、より菌の毒素が強いものになる可能性はある、子供なら持って1,2日じゃ・・・だがあっさり死ぬるならまだ、苦しみ抜いて死ぬ普通の破傷風よりはましじゃろ・・・」
医者の言い分にセリューも頭に血が上り、掴みかかる。
「あっさりって、あんた!!」
それを父親が制し、
「良いんだ、セリューさん・・・もう良いんだ・・・」
「お父さん・・・」
「こいつが途中から痙攣し息するのもつらくなってきて・・・俺は見ているのもつらくなってきたんだ・・・こんなにこいつが苦しむならいっそ・・・だからセリューさん、もう良いんだ・・・」
セリューも何も言えず、父親を残し医者と部屋を後にした。
「・・・あんたらも感染する可能性もある、念の為これは予防薬じゃ、ま、飲まんよりは良いだろう。あの父親にも渡してくれ・・・」
「・・・・・・」
「さっ、一眠りさせて貰うぞ。そして儂を朝一番で帝都に帰してくれ」
一連の事を終えた後、
セリューは自分を責めていた、
「あたしがもっと早く連れて来れば・・・死なせずに済んだ」
コロが心配そうに見上げていた。
その後、その村との交流は続いたがセリューの心の中では時折自らの生き方を問い直す機会が増えていった。
ある日、寝ていたセリューをコロが起こす。
「きゅいきゅい!」
「・・・どうしたの、コロ・・・ふぁ~あ・・・、・・・わぁあ!!」
見るとアリが行列を成して、家の中を歩き食べ物へと続いていた。
「きゅいきゅいきゅい!」
「え?早くやっつけなくちゃって?」
セリューは砂糖を取り出し、家の周りに撒き始めた。
「きゅい?」
「こうすれば、家にも入って来なくなると思うよ」
確かに入って来ないのもいれば・・・
「きゅい!」
「・・・確かに入って来るアリもいるね・・・ははは・・・」
セリューはチリトリでアリを取って庭に放した・・・だが、
「あ・・・」
セリューは逃げるアリの一匹を指でつまんで殺さずに庭に放そうとしたが、その鋼鉄の手では上手く加減が出来ず、つまみ殺してしまった。
「きゅい・・・」
「・・・・・・・・、生身の手だった時と比べて微妙な加減がもう出来ないよ、コロ・・・」
セリューは何を失ったのかはっきりと自覚し始めていた。
「きゅいきゅい!」
「え?そういう細かい事は自分がやるから任せろって・・・あはは、じゃあコロにお願いしようかな、そうだ!じゃあお裁縫もお願い♪」
「ぎゅっ!?」
只の風邪だと思ったらインフルエンザでした(苦笑)
次回更新は1週間前後か…まだ不明です、はい。