ひょっとしたら今年の投稿はこれで最後になるかもしれません。
私の思いを書きますと、
来年以降も世の中、大方こうなるだろうと予想していて、楽観はありません。
ただこうなっているのも本当の意味での課題を過去に終わらせておらず、現在に至っていると、今このような世の中も止むを得ないと覚悟を決めるに至った一年でした。
せめて、実社会で関わる周りの人達には本気で生きる事への熱い意思などが僅かでも伝わればなぁと思います。
そんな生活を送っていたある日再びタツミが彼女達の元へ訪れ、エスデスを助ける為に手を貸して欲しいと頼まれセリュー、コロは再び帝都へ戻る。
その後、セリュー達は帝国体制への革命戦も生き延び…その復興にも姿を現していた。
戦いの傷跡から早くも立ちあがろうと人々が動いている中、タツミはセリューとコロと共に歩いていた。
「タツミ君・・・最近、この辺で寝泊まりしているみたいですが余り帰りたくないんですか?」
エスデスはタツミが居るアジトに突如現れ…余計な事をしてくれたお陰でこの1週間ナイトレイドの女性陣と剣呑な雰囲気となり、帰りづらくなっていた・・・。
「・・・戦火に巻き込まれた人達を間近に見たくてここに居るんだ・・・」
「なるほど!良い心掛けですね♪・・・確かに皇帝の使った帝具でどれだけの人や家屋が無くなった事か・・・生き延びても家を無くして困っている人達がいますからね・・・」
「ああ・・・」
「まだ体の方痛むんですか?」
「・・・大丈夫だ、気にしないでくれ」
タツミにとっては、心が針のむしろのアジトより、多少体が痛くても今はセリュー達と居る方が良かった。
「そういえば、ボルスさんも来ていたと言ってたが、どうしてるんだ?」
「ボルスさんは、奥さんと娘さんと炊き出しの手伝いをしたりと頑張ってましたよ、一度家に帰ってまた来るって言ってましたね」
「不味いな・・・、革命軍から暗殺依頼が来てたんだ・・・今はまだこのゴタゴタだからごまかせるかもしれないが、落ち着いて来て革命軍が本腰入れて目を光らせたら不味いぞ・・・」
「え!?そんな・・・、ボルスさんが一体何を!?」
「忘れたのか?彼は焼却部隊で多くの人間を火炙りにしてきたんだ・・・火炙りは死刑の中でもつらい部類だ・・・、それに後で調べたがどう見ても無実の奴らも居たからな・・・」
「くっ・・・」
セリューは唇を噛みしめ、悩んだ・・・どうすれば良いのかと。
「・・・あれは俺が依頼を請け負って、暗殺した事にして見逃したんだ・・・たくっ、ボルスも人助けだからって余計な事を・・・」
タツミは喜びとも着かぬ顔で苦虫を潰した。
「そうだったんですか・・・」
「そうだったんですか・・・じゃないぞ!もしこの事がばれてみろ、俺だけじゃない、他の奴ら(ナジェンダ達)にも責任が及ぶ・・・そうなりゃ折角助けたのに今度こそ殺さなきゃならないぞ!」
「人一人助けるって簡単じゃないですね・・・」
「一人だけじゃねぇ・・・合わせて三人だ・・・」
「そ、そうですね!」
「何とかナジェンダに駆け合って、辻褄合わせするか・・・偽名を使わせるか・・・よし、ナジェンダに嫌とは言わせねぇぞ!煙草の件も含めてあいつにはたっぷり借りがあるんだ」
「・・・な、なんだかよく判りませんが頼もしいです!」
後日
「なぁあああああにぃいいいい!!ボルスを暗殺してなかっただあああああ!?」
「ああ」
ナジェンダは卒倒し、タツミは軽く答えた。
「ちょっ・・・おっ、おまっ・・・ふ・・・ふざけるなああああ!」
部屋のガラスはガタガタ揺れ、
流石にナジェンダも激怒したが、タツミは何処吹く風で
「確かに無実の人間を火炙りにしたボルスは許せねェよ・・・でも帝国の命令でもあったしな・・・まぁ、実行責任はあるとは思うがな・・・因みに奴は今改心して、一民間人として、革命の被害を少しでも食い止めようと尽力してたぞ」
「・・・・・、話は判るが見逃すわけにはいかないぞ・・・」
「なぁナジェンダさん・・・あんたが昔、帝国から出た時もラバが死亡の偽造書作ったんだろ?それに上にはもう、ボルス暗殺成功と報告してるだろ?それ今更覆せるか?」
「・・・・・ふぎぎぎぎぎ・・・タツミ、お前はどっちの味方だ!?」
「いや、それにな・・・小耳に挟んだんだがボルスがあの革命の戦で火事場泥棒ならぬ戦泥棒した奴らの中に帝国軍だけでなく、革命軍の奴らも何人か居たって・・・」
「そんな馬鹿な!」
「これだけ大きな革命軍だ、中にはそう言う奴もいるだろ?なぁボス・・・どうだ?ボルスは他にも冤罪かもしれないが処刑した人達の名簿や村とかの資料を贖罪の気持ちもあったのか未だに持っているんだ・・・革命政府の正当性を更に際立たせるのに役立つと思わないか?・・・取引してみないか?」
「ぐぐぐぐ・・・タツミは悪魔か!?私の胃を殺すつもりか!」
タツミとナジェンダは互いに沈黙するが、
「・・・仕方ない、判ったよ。ボルスの事は諦めなるかな・・・その代わりナジェンダも我慢しなきゃならない事もあるよな」
「何の話だ一体?」
「何だ知らないのか?革命政府の閣議で麻薬は勿論、国に使える者はプライベートだろうが煙草も酒も全て禁止という話が通りそうだぞ」
「ちょっ・・・おっ、おまっ・・・ふ・・・ふざけるなああああ!」
部屋のガラスはガタガタ揺れ、
再びナジェンダは激怒したが、タツミは何処吹く風で
「いや、俺に怒ったってしょうがないだろ?政府でそういう方向性でいくとか聞いたからな」
「わ、私は何一つ聞いて無いぞ!ま、まさかタツミが裏で焚きつけて!」
「いや俺はそんな意地悪な事はしないぞ」
そう言いながら邪悪な笑みを浮かべる。
(う、嘘だ・・・タツミは何か関わっている・・・間違い無い・・・そもそも何故私も知らない情報を知っているんだ)
・・・・・・・・・・・・
革命後の新政府宮殿、
急拵えの政務室で椅子に座り、コーヒーを飲んでいるコウカツ。
「ふっ・・・とうとうここまで来たか、後は・・・」
ドアをノックする音がし、
「失礼致します、お飲み物の代わりをお持ちしました」
「ああ、頼む・・・しかしアリア、君が煎れてくれたものはいつも旨いな、以前はさる貴族の御令嬢だったとか・・・?」
「いえ…只の噂ですよ、ある方に行儀見習いを“しっかり”仕込まれた程度です…では冷めないうちに」
「そうだな」
「・・・あ、そうです、先日の一件はどのような形でされようと」
「あれはだな」
コウカツは今後の政治の方針を諸々語り、
「ふぅ・・・君のような若い娘にはこのような話つまらんだろう」
「いぇ、私は人の話を聞くのが好きなんです、またお教えくださいね」
「ふふふ、変わった娘だな君も」
彼女は一礼し部屋を後にし、誰もいない事を確認してニヤリとほくそ笑む。
・・・・・・・・・・・・
ナジェンダは戦慄しおたおたする。
「・・・言っておくが、本当に俺は何も裏で手はまわしてないぞ、ただそういう話があると聞いてだけだ・・・確か決定が5日後の午後だから、止めるなり変えるなら早く行った方が良いと思うぞ・・・皆への根回しとか」
「そ・・・そもそも、なんでそんな無茶な案を通そうと考える奴が居るんだ・・?」
「まぁ俺にとっては煙草が無くなればスカッとするが、政府の中にじわりじわりと全てを統制したい奴がいるんだろ?そいつが今度は前政府に代わって自分達が権力を手に入れて、国民を自分達に従わせる足ががりとしたいんだろ?恐らくそれが通れば他にも縛る法を出してくるだろうな」
「うぐっ」
歯軋りするナジェンダに
「まぁ俺は徐々に退くから、後はあんたが頑張ってくれ、それじゃさっきの話を上手く活用してその法案を廃案にしてくれ、じゃあ」
・・・という事が有り、
「・・・と言う訳でボルスさんの一件は何とかなりそうだ、俺のボスは話が判るからな、丁寧に説明したら二つ返事で納得してくれた・・・」
しれっと騙るタツミに
「良かった・・・」
知らぬが仏のセリューは安堵し
「それと、彼には目立つ事すんなと俺も言っておいたが、セリューからも言っておいてくれ」
「了解!・・・あ!」
歩き煙草している男二人が、その辺に吸殻を捨てて去って行った。
「ちょっと待って下さい」
「あ?」
セリューが呼び止め、怪訝な顔で二人の男は振り返る。
「子供が真似したらどうするんです?良い大人が自分の出したゴミくらい、自分で片付けたらどうです?」
「あ?なんだ、ねーちゃん!」
苛立つ男にセリューも睨み返す。無論、セリューにとって敵では無い・・・その後ろでタツミは何も言わずその吸殻を拾って紙に包んで服のポケットに中に入れている。そしてセリューの背後からじっと二人の男を見据える。
「・・・・・・・、ちっ、行こうぜ」
「あ、貴方達!」
尚も呼びとめようとするセリューをタツミは制し、
「もう良い、ほぉっておけ」
「ですが・・・ああいう小悪も見逃したくありません」
「そりゃその通りだが、俺がセリューと初めて会った時、俺の言う事そのまま素直に聞いたか?」
「うっ・・・それは・・・」
「それと同じだ、もし本気であいつらを改心させたいなら、あいつらと知人になるか、それが無理ならその友人の友人になれるよう努力して、徐々に話を付けていくか・・・人の考え変えるなんてそんな簡単な事じゃ無い・・・のはあんたが一番よく判ったと思うがな」
「・・・ですが、時には周りが注意する事も必要では?」
「なぁセリューあんたは紛れも無くあの男達よりも強い、より強大な力を持った人間はその時が来るまで、只黙って静かに過ごすべきだと俺は思う」
「・・・彼らの行為も見過ごして、黙って後始末をするという事ですか?」
「ああ・・・」
セリューはタツミの言っている意味が余り理解しかねていると、街中で何やら演説しているまだ二十歳にならないであろう若い女性の声が聞こえてきた。
「今、我が国は偉大なる帝都千年の繁栄が哀しいかな、終焉に向かわんとしている!逆賊オネストの手により、国は腐敗の一途を辿ったが、皇帝陛下がおわせられたからこそ、この程度で済み、例え新しい政府が樹立されようと、陛下の政務を奪うなど言語道断!もってのほかである。今一度陛下に政務を戻さねば再び逆賊が現れ・・・」と彼女の話は続き、
周りの人間達もさほど気に留めず通り過ぎていく。
それを遠目で眺める二人と一匹は、
「タツミ君、何ですかあれ?」
溜息をつきながら
「・・・さぁな」
「きゅ」
コロも首を振りふり、やれやれと、ジェスチャーする。
「・・・コロ、判らないでやってるでしょ?」
「ぎゅ!?」
セリューはその女性を見ていたタツミに気が付き、悪戯心が…
「ぷぷぷ、タツミ君?ひょっとしてああいう黒髪ロングの子に惹かれるんですか?
あ、だからアカメの居るナイトレイドに?」
「・・・何を意味不明な」
「はぁ~あ、タツミ君になら隊長を任せても良いっかと思ってたけど、これじゃあ先が思いやられるなぁ、後でこの事報告しておきますね♪」
「言うようになったな、全く・・・言っとくがエスデスとはなんにも無いからな?」
彼の答えなど無視して、
「そういえば隊長は何処行ったんです?革命の闘いで負傷したと聞きましたが、お元気ですか?」
「ん?・・・うん、あいつはもう元気になって用があって飛び歩いてるぞ、うん」
「そうですか?それなら良いですが・・・」
彼の言動が少々不審だったが、まぁいっかとセリューは気にするのを止めた。根はお人よしなのかもしれない。
この間、タツミは他に残った帝具が無いか探したり、セリューの人助けに付き合ってもいた。ただもう一つの思惑もあって彼は彼女と行動を共にしていたのではあるが…。
そして、雨の中
「早く仮設の小屋や大きな雨宿り出来る場所を確保しないと・・・まだ住居も無い人達が大勢いますから」
「そうだな・・・」
タツミとセリュー、コロは合羽をしながら街中を歩いていた。
「あれ?」
先日、街頭で演説していた彼女が今日も行っている。
「タツミ君あれ、へぇ~傘も差さずによく頑張りますね、あれ?コロ?」
コロは駆けて行き、傘に代わりになる程大きな草の葉を渡しに行く。
「今こそ、悪しき平等主義等は排し、皇帝陛下の元で万民が・・・?」
コロからそれを受け取った女性は、
「お前、これを私にくれるのか?ありがとう、ふふふ」
「きゅきゅきゅ」
コロも頭を撫でられ鼻の下を伸ばしている。
「こら、コロ!あ~あ、全く誰に似たんですかね~可愛い娘みたら直ぐデレデレするんですから、ねぇ・・・?」
「なんで俺の方見んだよ!?」
「すみませーん、うちのコロがー!」
セリューも彼らの所へ駆けていき、
「そうか、貴女の犬だったか・・・頭も良いのに可愛いな」
「きゅきゅきゅ~」
その女性はコロをセリューに返し、
「コロ!そんなにこの人の所が良いならこの人に飼って貰うんだから!」
「ぎゅぎゅ!?」
その時、二人の新政府の兵士が来る。
「おい、お前!前にもこれ以上我々を非難する話をすれば、逮捕すると再三警告したはずだぞ!もう二度目は無いぞ」
セリューは身構えるが、
(そう言えばあたしも前に警備兵だった時、彼らと同じ事したっけ・・・)
「お前達は直ぐそうやって暴力に訴える、ただ権力の座が欲しかっただけだろう!この新政府の狗共が!」
「お前・・・前のオネストの政府がどれだけ我々を虐げてきたか知らんのか!取調室でみっちり教えてやる、来い!」
「離せ―」
揉み合う彼らに、セリューも止めるか考えていたが、
「・・・以前のあんただったら直ぐに行動に移ってたな、考えるようになっただけ上出来だ」
タツミが後ろから兵の肩を掴み、制した。
「何だお前は!?お前もこの娘の仲間か!?」
「俺は・・・ナジェンダ様直属、影の別働隊の者だ、こうして市井を巡回している。不穏分子は我々が引き取ろう・・・貴公らの上官・・・確かこの区域担当はカイカツ殿だったな?上官殿には僭越ながら自分から話をつけてさせて頂く、なのでこの場はお納め願いたい」
「うっ・・・、しかしそんな話は・・・」
もう一人の兵士が耳打ちする
「おい、あのナイトレイドの生き残りの方かもしれないぞ?」
「な?彼らは全員死んだと聞いたぞ、いや行方不明だったか・・・?」
「どちらにしてもそれは噂だ・・・本当は別任務が与えられたのかも・・・もしそれが本当なら俺達が敵う相手じゃ・・・それにこんな面倒な娘引き取ってくれるなら手間も省けるだろ?」
小声で話す二人に
「話合いは済みましたかな?」
「りょ、了解しました!ナジェンダ将軍には宜しくお伝えください!」
敬礼して去って行く兵士二人。
ほっと胸を撫で下ろすセリューに、
「ふん、やはり権力の狗だな!上の者の名前が出た途端これだ、正義の信念があるなら気にせず、任務遂行するべきだっただろうが!」
タツミがじっと睨み、セリュー、コロが呆れ・・・
「あのな、ねぇちゃん・・・」
「あ・・・すまない、私とした事がつい・・・、前にあの者達と論戦にもなって、その時にあらぬ嘘をいうものだからつい、いやそれよりも助けて頂いて申し訳ない。大変かたじけなく存じます!」
深々お辞儀し、タツミもとりあえず
「あ~、まぁとりあえず雨宿りしようぜ」
辛くも先の戦いで全壊は免れた居酒屋で飲み物を注文した、所々店には破損が見られ痛々しい。
タツミ達はそれぞれ名乗った後、
「改めて先程は助けて頂き感謝にたえない、申し遅れたが私はキンジホウブ・カゲリだ、以後宜しくお願いします」
(キンジ・・・どっかで聞いた事あるような)
タツミが頭を捻っていると
「カゲリさん?あなたは何故街頭でああいう事を?」
セリューが当然の事を聞いたのに対し
「何故?貴公は今の現状を何とも思わないのか!?」
「え?ええ?」
カゲリはすっと立ち上がり
「恐れ多くも偉大な皇帝陛下はインクルシオを纏う悪鬼共に討たれ、千年の歴史が無に帰されようとしている・・・ブドー叔父上さ…ううん、ブドー大将軍も卑劣な罠に嵌められ、捕らえられた・・・くっ、もっと私に力があれば、陛下も大将軍もお救い出せるのに・・・」
セリューとコロはタツミをちら見したが、何処吹く風で彼は甘酒を飲んでいる。
「・・・そうか、カゲリさん・・・あんたはブドーの姪か・・・?」
「ばれてしまった・・・つい先程は失言してしまったが、はい、私は本家のブドー叔父上様の分家の者です。・・・小さい頃はよく遊んで貰いました」
「成程」
「それが最近こちらにも顔を出す機会がめっきり減り、まさか今ここまで事が進んでいたとは・・・私がお傍に居たら少しでもお力に」
「・・・分家の人間は帝都におらず、地方で暮らしていたんだな」
「ええ、余り外の事には惑わされるなと、私もいずれ何処か殿方の元へ嫁ぐまではと、教育を施されてきました。ですが耳を塞いでも話は入ってきます・・・だから」
「だから、我慢出来ずに家を飛び出して帝都の現状を見たら、こうなったと」
セリューも幾分同情している。
「はい、だからあの憎き新政府の輩を排除し再びこの国の安寧の為、恐れ多くも陛下の手に天下の采配を御戻しせねば・・・今ならまだ御戻し出来ると思われます、だからタツミ殿、セリューさん是非とも力をお貸しいただきたい!」
「ぶほぉ!!」
タツミは飲んでた甘酒を盛大に噴いた。
(あ、やっぱり噴いたね・・・)
(きゅ)
セリューとコロは予感して少し離れており、念の為、周囲に注意を払ったが、周りはそれなりに談笑、酔っ払いの喧騒でこちらに気を留める者はいなかった。
「判っている・・・確かに敵は強大だ、しかし先程の応対ぶりでタツミ殿、貴殿も本当は今の政府に不満があるとお見受けしました。どうか、この非力な私にご尽力
を!」
と頭を下げるに対し、
(あ、やっぱりタツミ君、頭痛めている)
(きゅ!)
「はぁぁ~・・・え~とだな、カゲリ殿?う~ん、つまりだ・・・何というか・・・」
(あ、やっぱりタツミ君かなり悩んでる)
(きゅ!)
「会ったばかりの貴殿に突然かような申し出をするのも気が引けますが、事態は一刻を有するものです!このような大事今いきなり決めて欲しいとは言いません、どうか一晩だけでも考えて頂きたい・・・例え首を縦に振ってくれなくても助けて頂いた恩はお忘れしません」
(なんだろ?この人はあたしと方向性違うだけど、同じ匂いが・・・)
(きゅ・・・)
「・・・ところで、あんた何処に宿を取っているんだ?帝都とその地方じゃ離れているだろ」
「この辺りにも親の知り合いがいます。その人達の所に住まわせて貰っていますが・・・先のあの戦いで親戚の子が・・・」
唇を噛みしめるカゲリ。
「まぁ戦争はしないに越した事は無いんだが、安全な場所でそれで儲ける奴らもいりゃ、純粋に戦争したくて仕方ない奴もいるんだよな」
(・・・・・・・・)
「他国からの攻撃の防衛の為ならいざ知らず・・・そ、そのような下衆共がいるのですか!?」
カゲリはテーブルを叩き激昂するが、
「言っとくが、オネスト達は他民族が我々を攻めようと動いているから、”積極的防衛”の為、エスデス将軍に攻めて貰った、と言う話もあるからな?」
「な・・・それは・・・」
「まぁとりあえず、話は判った・・・明日この場所でこの時間に落ち合おう、その時に返答するでどうだろう、カゲリ殿?」
「はい、どうか熟慮の程、よろしくお願いいたします」
頭を下げ、彼女は店から出て行った。
「行きましたね・・・」
「ああ・・・」
「どうするんです?」
「セリューさん、あんたはどう思う?」
「私ですか?その、こういう時なんていうんですかね・・・え~と、ビジュアルですか?前にも似たような光景を見たような、誰かがそう思って先走ってたような・・・あはは」
自嘲気味に答えるセリューに
タツミは敢えて間違った語彙には触れず、
「箱入り娘なんだろうな」
「そうですね、世間知らずなお嬢さんなんですね・・・私も余り他人の事言えませんが・・・でも良いんですか?彼女、狙う相手は本当はタツミ君達でしょう?」
「・・・そういう事になるな」
「それに結構間違って伝わってますよね?一体誰にあんな話聞いたんだか・・・ふぅ」
「・・・自分にとって耳触りの良い話を選択したんだろ?同じ話でも受け取り方次第で見方も変わってくる、彼女にとっちゃそれが真実なんだろ」
「難しいんですね、物事を正確に見るって・・・私にはどうすれば良いか判りません」
タツミはそれについて何も言わず、
「ここの勘定、払っておくぜ・・・」
翌日も雨が激しく、タツミ達は指定の時間に例の居酒屋で待っていた。
「来ないですね、時間にきっちりしてそうな人でしたのに」
「そうだな」
タツミは甘酒もう三杯程のんでいる。コロは紙皿に入れたそれをチビチビ舐めている。
「セリューも何か頼んだらどうだ?おじさん、枝豆皿3つ、え~と他には」
「・・・大丈夫なんですか?あんな事・・・どうやって説得するんですか?」
「まぁ、なるようになるって?」
「だー、何も考えて無いんですか・・・もう良いですよ、私も熱燗一本!」
小一時間程待ったが、カゲリはまだ姿を現さない。
「はぁ~ああ・・・ふぐぐ、眠くなってきた、あんな若い女の子だ。自分の言った事に怖くなって逃げたんだろうな、その方が賢明だ・・・今日はものこの辺でお開きにしようぜ!」
「うふふふふ、もうこれ以上食べられませんって・・・ぐふふ・・・」
「おい、起きろセリュー!たくっ、大して呑めない癖に・・・ねえさん、感情!」
タツミはセリューを抱えて店を出、コロに泊まっている安宿に送り届けるように頼み、彼も傘をさして雨の中別れた。
そして、辺りに火縄の匂いが微かに立ちこめた・・・。