その4でセリュー編は終了予定です。
タツミの後ろから、同じく傘を差した女が手に火縄銃を片手に間合いを詰めている。そして、辻を曲がって同時に狙いを定めようとした時
・・・居ない。
「な・・・何処に!?」
その時、鎖分銅がうねりながらその女の右手に絡みつき、
ダァン!
虚しく銃声が鳴り響き、ぬかるんだ土の上を引きずられる。
「くっ・・・」
その女も応戦し鎖を手繰り寄せ、懐から小刀を出すが・・・後ろからコロが奪っていく。その隙に首に巻き付け、窒息させようとする。
「その辺にしておけ!」
タツミが現れ止めに入る。
セリューは手を止め、それでも歯向かうならいつでも殺せると無言の圧力を掛ける。タツミはその女が被っていた覆面を剥ぎ取る。
「カゲリさん!」
「やっぱりあんただったか・・・」
セリュー、タツミがそれぞれ驚きや予測を述べたに対し、
「くっ・・・殺さば殺せ!」
セリューがタツミにどうするか目で促すに対し、
「・・・とりあえず、その辺の廃屋にでも行くか」
鎖で縛られたカゲリを床に座らせ、二人は彼女を見下ろし、一匹は見上げる。
「この逆臣共が!・・・私の叔父上様だけでなく、陛下まで・・・帝国民として恥を知れ!」
タツミは立ち膝で、カゲリと同じ目線となり
「そういう話を誰かから吹き込まれたか?それとも、自分の足で調べたのか?」
「・・・聞いたぞ、タツミとやらが陛下を陥れ、叔父上も罠に嵌めた、と!・・・卑劣な奴め!」
「それは・・・」
セリューが庇おうとするのを制し、
「そうかい、自分で確かめず人の言う事をただ鵜呑みにしたんだな・・・」
タツミがそう言い終えた後一瞬間があり、セリューはその刹那戦慄を覚えた。
「甘ったれるな!!」
タツミは平手打ちにカゲリを、数メートル飛ばした。
「うぐっ・・・何を・・・」
「何をだと・・・?下衆女が、お前が俺を恨む・・・それはまぁ良いだろう、だがな、お前も良い年なら今の周りの状況を良く見てみろ!誰がどうして、こうなったのか、お前のその節穴な目でよく考えろ。・・・次会った時、俺の納得いく答えを持ってきたら大人しくお前に殺されてやる。だがな、そうでなかったらナマス斬りにギリギリまで死なねぇ範囲で何十回と刻んでやる、覚悟しろ!」
気丈に耐えようとするが震えを抑えれないカゲリを尻目に、タツミは立ち上がりその場から去って行く。
「タツミ君!」
「セリュー・・・どうやら、あの女に誰かがわざと嘘半分で吹き込んだ野郎がいる、どうも妙な奴らがつきまとってたからな、大体の見当はついてんだ、(コウカツの配下だろうな)俺はこれから片をつけにいく、その間あいつの面倒をみてやってくれ」
タツミが顔を晒して市中を回った理由の一つに、革命軍の上層部が自分にどういう行動を取るか、自らを囮に探る為だった。
「はい・・・気を付けて」
「・・・ああ、そうだ・・・悪いがコロを借してくれないか?」
「コロを?」
「きゅ?」
タツミはコロと共に雨の中の暗闇に消えて行った。
そして、
「・・・・・・」
セリューはカゲリの鎖をほどいた。
翌日
二人は安宿の個室で目を覚まし、セリューは窓を開ける。
「う~~ん、昨日の雨が嘘のように快晴ですね~」
押し黙っていたカゲリも口を開き、
「・・・何故だ・・・何故私を助けた」
「・・・・・・」
「あんたもタツミの一味だろ!」
セリューは苦く笑いながら話始める。
「・・・以前、帝都警備隊にある女性がいましてね、その人は父親を亡くした後、そこの警備隊の隊長が格闘の師匠になってくれました・・・小さい頃から正義は悪に屈してはならない、より強い悪に勝つには自分もより強くならなければならないと・・・そんな時、賊を追っていき、とうとう追い詰め何やら命乞いをしてましたが、容赦なく武器を使って殺したんです」
「・・・・・・」
「それにそこは街中で他にも人がいて、その賊を殺した余波で他の人も巻き添えにして、2人殺してしまったんです。」
「酷い巻き添えだな、それでその女はどうしたんだ?」
「ええ、その女は“悪人の側に居たお前らが悪い、ひょっとしたらその悪人を庇おうとした可能性もある。だから殺されても文句は言えない”と言ってその場を後にしたんです。・・・他の人達はその行為に相手が帝都警備隊と言う事で泣き寝入りしたんでしょうね、きっと・・・」
「許せない女だな・・・」
「はい・・・許せない女ですよね?その後も強くなる為になりふり構わずに人体を改造したり、脳にも小型爆弾を埋め込みました・・・」
「改造・・・?まさか・・・」
セリューの義手を見て、カゲリは気が付く。
「そんな時にタツミと会いました。初め、無茶苦茶してなんだこの人は?と思いました、けれど判ったんです・・・今まで私の身の周りに居た人は結局自分を利用してただけなんだって、どうしてそういう人しかいなかったんだろうと・・・でも、そんな酷い人間の私でしたからね、ひょっとしたら本当は私の事を思って言ってくれてた人も居たのかもしれません、ただそれが気が付かなかっただけで・・・それを多少強引でも気付かせてくれるきっかけをくれたのが彼なんですよ」
「・・・・・・」
「ですから私にように、曇った目で世の中を見て欲しく無いんです。自分の意見を持つのは勿論大事ですが、他人の話にも耳を傾ける心の余裕も持って下さいね」
それをカゲリは黙って聞くが、
「・・・そういう貴女だが、先の罪のない人を殺した件はどうするんだ?」
一瞬、杭で打たれた顔をするセリュー、だが
「私も怖いです・・・まだ正式に謝罪に行ってませんから・・・もしその関係者の人が怒って私を殺す・・・それでも構いません・・・構いませんが、怖い・・・」
溜息をつきながらカゲリは、
「それだけの人間を殺しておいて、怖いとは恐れ入る・・・」
その皮肉に対し
「ええ、・・・でも貴女はそうならないで下さいね、もし仮にタツミ君を殺せてたら、今度は貴女がいずれ悪夢にうなされる番ですから・・・」
「いや、それはちが!」
「違いません!」ピシャリと言い放ち「きっと貴女に都合のいい耳触りの良い話を誰かから吹き込まれたんですよね?・・・はっきり言いますが、ブドー大将軍と皇帝を助けたのは、間を省いて結論を言えばタツミ君ですよ」
「なっ・・・嘘だ!」
「嘘だ・・・と思うなら直接ご本人達に聞いたらどうですか?最も今の貴女がそのまま行っても簡単に面会出来ないと思います」
「なら無理だろうが!確かめようが・・・」
「じゃあ諦めるんですか!?貴女の真実を追い求める姿勢はそんなものですか!」
正論を言われ、何も言えないカゲリに
「貴女はひょっとしたら、自分の親しい人を助けた人を殺そうとした、恩を仇で返そうとしてた・・・いえ、したのかもしれませんよ・・・人を殺すって、そう言う事です・・・貴女がそれでも彼を殺そうとするなら私ももう何も言いません、ですが今度は私が本気で相手をします」
「くっ・・・」
カゲリが沈痛の表情に対し、
セリューは外を鳥達が群れで飛んでいくのを眺めながら、
「タツミ君、コロ連れて何処に行ったんでしょうね~?」
今のカゲリの想像力では判らなかった。