次話更新は2日後予定です。
生物型帝具・ヘカトンケイルことコロは術者であるマスターの影響を多少なりとも受ける。
基本は性格のみであるが、彼の手により能力の底上げもされ
「ぎしゃああああああ!!!」
巨体の犬でなく、狼へと変形したコロは新政府の拠点と化した宮殿入口で奥の手の狂振動を行い、数多の兵の三半規管を狂わせる・・・タツミが術者となっている今、耳をふさいだ程度で防げるものでは無くほとんどの兵が、
「だ、駄目だ・・・立てない。」
「気分が・・・ぐわあああ」
満足に武器も握れず、嘔吐するものも現れる。
何とか立ち向かってくる者もコロの敵では無く、腕をかまれ投げ飛ばされる。
タツミは中心部に向かって周りの者も気にせずただ歩いていく。
中には、銃を構える者や武器を手に向かおうとする者には
「・・・・・・」
ギラリと睨みつけると・・・竦んで何も出来ずに見過ごすしかなかった。
それでも将軍クラス数名がそれぞれ武器を手に立ち向かってくる。
タツミは先程奪っていた刀を引っ提げ、事もなげに・・・、前方から上段から斬り込んでくるのをギリギリまで待って胴を薙ぎ払い、次に諸刃になっている十文字槍で突かれるも寸でかわす・・・相手はニヤリとほくそ笑み、直ぐに縦から横に返してタツミの胴を後ろから斬ろうと思い描くが・・・、かわされた時点でタツミに斬られ、単なる妄想で終わる。
他の腕に覚えのある者達も次々に斬っていく・・・しかし斬る瞬間に峰を返している為、その実、斬られた側は気付かずに倒れていく・・・それだけ斬られたと思わせる殺気が有った為だった・・・つまり、全く死人を出さずに無力化していった。
そして、タツミが向かう先は・・・。
「オネストは愚かだったな・・・だが私はお前の失敗を生かし教訓にさせて貰うとしよう・・・ふふふ」
政務室で一人、コウカツは書類を作成している。
「成程な・・・、今後このような戦乱を起こさない為に、平和を維持し積極的に平和に貢献していく為には、皆の協力が必要であると・・・、その為情報は政府が判断したものは帝国民に開示はせず、政府への・・・否、平和への反乱分子を警戒する為、二人以上長い間集まる会合は監視の対象となる・・・これに異議を唱えし者は処罰とする・・・原則、公開処刑等は行わず刑罰は秘密裏に行い、表向き帝国民を安心させる事も忘れぬように配慮・・・時には道化なパフォーマンスも行い、帝国民の人気取りも怠らぬよう・・・国民に理解を得にくい発言等も、休暇を減らし仕事に忙殺させ、時が経てば忘れるであろうから、目くらましの政策も忘れずに、国民は生かさぬよう殺さぬよう・・・領土拡張の為の軍備も平和維持、自衛の為と訴え、強化・・・帝具が無き今、より強兵は必須である。
法律名もストレートなものではなく、治安(等)推進法にする等、言葉巧みに安心感を与えるものとし、いざ緊急事態の際は全権を時の総裁に委ねる事と・・・成程、他に
は・・・」
コウカツはぎょっとなり、机から振り返ると・・・暗がりでタツミが機密書類を斜め読みしていた。
「お・・・おま・・・き、君はひょっとすると、タツミ君か・・・?」
「・・・初めまして、コウカツさん」
コウカツは狼狽したが、必死に動揺を表に出さぬよう平静を努めた。
「君はここまで、どうやって・・・?」
「ええ、“皆さんお勤め御苦労さまです”と・・・言ってここまで通して頂きまし
た」
「くっ・・・」
ば、馬鹿な・・・先の革命戦を生き延びた屈強な猛者達だ、生き残った先の帝国兵の反逆も全く無いとは言えぬから、警護も強くしていたと言うのに・・・この男は、とコウカツは戦慄した。
「いや、しかし成程、帝国民を欺く為に色々策を弄されているようで、愚かな帝国
民・・・いや、人間達だ・・・貴方、ひょっとしたらオネストよりも上手く自分の都合の良いように統治出来るかもしれないな・・・本当、御立派だ・・・」
コウカツは話をしながら、机の中の拳銃を探った。
「私からも聞こう、君は帝具を全て回収してどうするつもりだ・・・まさか我々相手に反乱を起こすか、或いは他の国の王にでもなるつもりか・・・?」
「・・・・・・・」
「強大な力は平和を脅かす、だから我々が管理しようとしていたが、君は不穏な動きをしてい・・・ぐっ・・・」
取り出した拳銃の持つその手に、瞬時にタツミは隠し持っていた小柄を投げ、落ちた拳銃を通常の大きさになって隠れていたコロが口で掴み、タツミの手元に渡す。
タツミがコウカツに向け、拳銃を向ける。
「くっ・・・」
「あんな世間知らずな娘に色々吹き込んで利用し指図を出したのはお前だな・・・」
銃声が鳴り響き、相手の頭上すれすれを弾が飛ぶ。
「下手に腕の良い相手なら俺に感づかれる可能性があると踏んだんだろうが、生憎だったな・・・。俺はお前らが大人しく何もしなければ、このままここを離れるつもりだったが・・・余計な仕事増やしやがって、先に動いたお前らの負けだ・・・」
再び2発鳴り響き、両耳端すれすれを銃弾が飛び。
「な・・・何が望みだ・・・」
「何が望み?・・・だから初めからナジェンダから言わせているだろう?全ての帝具を寄越せとな、別にそれ以上何もしねぇ・・・それを変に勘繰りやがって・・・まぁ貴様らの思考パターンを考えれば何か下心が有ると思っても・・・仕方ねぇか、そこまでは配慮しなかったのは悪かったな、愚かな人間共!」
次第にタツミの形相が怒りで禍々しく変わる。そして、持っていた銃をコウカツの足元に投げる。それを見、まだ銃弾が残っていると判断したコウカツは震えながらも即座に拾い上げ、タツミに照準を向けるが・・・思うようには・・・、タツミの迫力に気圧され、引き金が引けない。
「・・・・・・」
それを3秒待っていたタツミは。
「ぐっ・・・が・・・・」
その後、顎下から斬り上げ、即座に首後ろから刀を当て、地面に叩き伏せる。ズン!と、背中に片足で踏みつけ、アバラ骨も数本折れたであろう、コウカツは呼吸困難に陥る。
「折角この俺が、貴様の言う“平和的”に帝具を譲渡して貰おうと革命に協力してやったのものを、その気になれば革命軍であろうが帝国軍であろうがこの国一体焦土に化して、死体から取るという簡単な選択もあったのだ、その事覚えておけ!」
コウカツは斬られたと思った、その自分が生きていると実感したのはこの後となるが、それよりも
「くっ・・・、ならば・・・そこにいる生物帝具はどうするつもりだ・・・話によれば全ての帝具は壊すはずではなかったのか・・・」
「約束違えるお前如きが、意見など甚だおこがましいが・・・良いだろう。そこにいるヘカトンケイルも俺に破壊される事は承知済みだ」
「な・・・馬鹿な・・・い、良いのかそれでお前は!」
とコウカツに呼びかけられるが、コロはあくびで応じる。
「く・・・狂った主従関係だ・・・」
「言い忘れたが、ナジェンダは俺の部下だ。そして、他にも俺の手の者がそこかしこに潜ませている・・・もし、そいつらに何かあったら・・・今度はこの程度の挨拶では済まんからな・・・貴様達のような輩に軍隊を作らせる訳にはいかないが、今だけ様子見しとてやる、いいな!」
タツミは更に踏みつけ、もう一本コウカツのアバラ骨を折った後、その場を後にした。
―――――
「エスデス将軍!?あの帝国最強と言われた?」
「ええ、そういえばあの時・・・、隊長が何か言うたんびに、タツミ君が怒ったりしてましたね~、確か・・・“お前少し黙ってろ”だとか“だからお前はエスデスなんだ”とか・・・」
「あ、あの将軍相手に・・・?」
「はい、他にも“俺がお前に抱く感情は悪・即・斬、以外は無い”とか“どう思っているか?そんなの知るかぁボケぇええ!”とか・・・なんだかんだ言ってあの二人仲良いんですよ、それをタツミ君に言ったら、物凄く嫌な顔してましたが、ふふふ」
「ふ~~~む・・・話に聞くあの将軍もそんなやり取りが出来る一面があったとは、意外だったな・・・以前巡回で私の居る地域に来た時に見かけたが、あの人は身のこなしもスタイルも良いからな、憧れる・・・」
「そうですよね、憧れますよね~私もあれだけスタイル良ければ・・・だからタツミ君も色々言いながら鼻の下伸ばしているんです・・・まったく・・・」
「そうなのか?・・・ふふふ」
セリューとカゲリはいつの間にか雑談で盛り上がっていた。
「・・・ところで、カゲリさんは何故あんな街頭で呼びかけていたんです?」
セリューは自分達が出会うきっかけとなった事にふと思いを巡らせた。
「・・・噂では聞いていた。帝都が今、大変な事になり闘いが初まっていると・・・家族は“お前は外の事を気にせず自分磨きに精進しろ”と言われたが・・・」
ご家族の方々は賢明かもしれないと、セリューは思った。
「ただ、私は居ても立ってもいられず、叔父上様の居る帝国軍に微力でも加勢しようと思ったが、そうこうしている内に戦は終わってしまった・・・」
「・・・・・・(寧ろ、来なくて良かったかと)」
「気が付けば体制は決してしまったが、それでも何かをしたい、そう思って街頭で呼びかけていたのだが、余り反応は無かった・・・くっ、私の国に対する思いは他人には理解されないのか・・・」
セリューは少し考え、別の角度から質問をしてみた。
「その年で帝国に付いて結構考えたり、私じゃ判らない事も知っているみたいで凄いですね。ですが、貴女がそこまで行動を起こそうとしたのはなんでです?ブドー将軍の影響ですか?」
「それもあるにはあるが・・・、私の住んでいる直ぐ隣の区域は為政者が別の者で、そいつも私の前では良い顔をしていたが、そこに住む者達の生活は良いとは言えるものでは無かった・・・」
「・・・・・・」
「数年前から私の地域の奉仕活動を行っていたが、そこは特にそれほど酷い生活を送っていた者は居無かった・・・今思えば叔父上様の庇護があったからかもしれな
い・・・だが、その影響が及ばない区域は・・・。私も次第に活動範囲を広めていき、身寄りのない子供達もいて、勉強を教えたり一緒に遊んであげたりした・・・」
「うんうん、良い事ですね。子供達が真っすぐ育つようにサポートするのは・・・(今の私に出来るかどうか・・・以前出来ると思っていた私が恥ずかしい・・・それでも少しくらいは・・・)」
「私の活動も次第にそういう親が居ない子供の施設に向かうようになった・・・、セリューさん、貴女はどのような子供が施設に送られると思う?」
「え?え~・・・危険種に親が殺されたとか、戦争でですか?」
「確かに、そういう子もいるが、私の周辺はさほど戦闘は起こらなかった・・・だから一番の原因は親の虐待だ・・・しかも親は世間体を気にし、子供も親に余程まで追いつめられないと逆らえない為、ギリギリまでになってやっと施設に来る・・・目がすっかり死んだ状態で・・・」
「ろくでもない親が増えているって事ですか?」
「・・・そんな単純な話でも無い、子供たちから聞いたり、放棄した親を調べたら大体が貧しさだった、そこから弱い子供に八つ当たりして・・・」
「・・・・・・」
「エスデス将軍の軍隊は、兵に潤沢な給与を与えると聞くが、他の帝国軍では下の人間は雀の涙程度のものしか行きわたらないと聞く。それでは略奪するのも・・・人心が荒廃するのも仕方がない・・・。仕事も不安定、精神的にも経済面でも追い詰められた親がふとしたきっかけで虐待を行う・・・だから、私は悟った。帝国の富の分配は歪んでいる、オネスト一味やそれにおもねった者達がいるせいで・・・」
「結構考えている所は考えてたんですね、見直しました」
「だから、私はこのまま奉仕活動をしていても駄目だと、社会を変革し皇帝陛下を中心に根底から変えなくては駄目だと、そうでなくてはあの子達のような者達が増え続ける一方だ!」
「草の根の活動も大事だと思いますが、気持は判ります」
一しきり言い終えた時、
「虐待された子供は、今度は虐待する親になって負の連鎖は続くか・・・以前、帝都秘密警察の1人に親に虐待された奴がいてな、そいつは癒しを子供に求めて、そのうち性的対象も子供に移っただけじゃなく、殺して回った腐った奴がいたな」
カゲリは声の方へ振り返り、
「なっ!?そんな奴が居るのか?」
「人間も獣と変わらねぇ、どいつもこいつも獣の本性を抱えているんだ、それに気付くか気付くかないかの違いだ」
セリューも彼らに気付き、
「あ、タツミ君、コロお帰りなさい」
「ただいま」
「きゅい!」
「どうでした?」
セリューは心配そうに聞いたが、
「まぁ、後はなるようになるだろう?」
「そうでしたか」
その答えに安堵したが、タツミは
「ところでセリュー、お前他に余計な事話してたな!?」
「え~まさか、女二人の会話を盗み聞きしてたんですか?気持ち悪いですよ?」
「ああ、セリューさんから聞いたがあのエスデス将軍とタツミ殿は恋仲なのは本当
か!?」
カゲリの言葉に物凄い顔でタツミが睨むが、神の速さで顔を背けるセリュー。
「・・・あいつは利用できそうだから利用した、それだけだ。」
「な?・・・タツミ殿は悪い男だな!」
「悪いのはお互い様だ、あんたにはどういう風に伝わっているか知らんが、確かにエスデスは金銭欲がないからな、部下達にそれ相応の給金は払っているが強ければ何をしても良いと考えている奴だ、戦に勝利後、兵達に好きなように略奪行為等をさせてたぞ」
「うっ・・・」
「あんたはその人間が自分が見た面だけでなく、別の面も持っている可能性も考えるべきだな」
セリューは笑いを堪えながら
「ぷーくすくす・・・、風の噂で聞いてますよ?エスデス隊長は私がイェーガーズ抜けた後、結構まともな戦い方して、負けた側の領民の方々もそれほどエスデス軍恨んで無いって・・・タツミ君が隊長に何かしたんでしょう?」
「ほぉ・・・」
カゲリがタツミを感心の眼差しで見、タツミはセリューを見、
「セリューお前ちょっとこっち来い!」
「さ、触らないで下さい!きゃー!変態、痴漢!隊長に浮気だって言いますよ!本気にしちゃいますよ?(どちらが?)・・・いやー!」
タツミはセリューを引きづって外に出ていき、コロはハンカチを振って見送った。
カゲリもふっと笑いながら、
「むっ・・・そういえばもうこんな時間か・・・」
ぐ~・・・コロも大仕事を終えた後の為。
「きゅきゅ!」
そして、ついでに3人と一匹は遅い夕飯を取りに部屋を出た。