その後、カゲリも反省し自分の身の丈にあった事から、自分に出来る事を少しずつ行っていきたいと話し、実家に戻って行った。
その姿を見送っている時に、
「タツミ君は優しいですね、命狙われたのに何もせず見逃すなんて」
「なに、あのガキが不細工だったから何もしなかっただけだ」
「そうですか?」
ドサドサ・・・
その後ろで薬草の束を落とす音がした・・・その落とした主は・・・
タツミは顔面蒼白になり、今の今まで油断していた事を激しく後悔した、
「タ・・・ツ・・・ミ・・・?」
「あれ?隊長、今までどちらへ・・・どうしたんですか?」
セリューもエスデスの存在に気付いたが、どうやらいつにも増して様子がおかしい。
話は以前に遡る、エスデスが今まで姿を見せていなかったのは・・・。
「エスデス・・・お前を呼んだのは他でもない」
タツミは某所にエスデスを呼びだし待っていた。
「うむ、私達二人の愛の巣となる新居の相談だな♪任せろ、タツミも満足する家を探し出して見せるぞ!」
「・・・ああいや、そうじゃなくてだな・・・薬草や他にこれこれとこれを少し遠いが取りに行ってくれないか?」
「ああ判った・・・だが私一人でか?」
エスデスはじっとタツミを見るが
「ああ、これはお前にしか頼めない事なんだ、頼む!」
エスデスもタツミにじっと見られ悪い気がしなかったのか
「・・・仕方ないな、だが帰って来たら判っているな、タツミ?」
「ん?・・・んん・・・判っている・・・」
そう言ってエスデスは旅立って行った・・・
「これで厄介払いが出来た・・・当分の時間稼ぎは出来るな・・・」
ナイトレイドアジトでの一件もあり、エスデスが居るとまとまる話もややこしくなる可能性を憂慮しての事であった。
・・・そして、タツミの予想よりも早目に帰って来てしまった。
セリューとコロは二人の間に流れる只ならぬ雰囲気を察知し、少しずつ距離を取り始める。
「うふふふふ・・・ワタシノ夫、タツミ?・・・アノメスイヌハイッタイダレダ・・・?よくはきこえなかったが・・・タツミのナニヲネラッテイタンダ?ソレニ、ブサイクダカラテヲダサナカッタのは私が居るのだからトウゼンダガ、ソノホカニイミガアレバオシエテくれ?」
「あ・・・あれは、最近知り合っただけで全く何も無いぞ、うん」
「ソウカ、マッタクナニも無いんだな?それで安心したぞ♪・・・ナラバコロしてもカマワナイナ・・・?」
ドカン、バキン!
カゲリを標的に向かおうとするエスデスを止めるタツミの攻防が始まる。
離れた所で流れ行く雲を眺め、のんびりお茶を飲むセリューとコロは、
「この平和がいつもまでも続くと良いね、コロ?」
「きゅい!」
ズドン、べキン!
後日、
ナジェンダの部屋に呼び出されたタツミに、
「先程、会議があって今後の政府の方針について再度話をしていたのだが・・・今日のが一旦終わった後、コウカツ殿がタツミに“くれぐれもよろしくと伝えて欲しい”と言っていたのだが・・・はて?それに以前と比べ多少まともな法案に変わって来てたな・・・不思議だ・・・」
※ コウカツはタツミの報復を恐れ、抜き打ち訓練と称し…部下達に不問に付すように伝えた。
「・・・何も不思議な事なんか無いぞ?こないだコウカツさんに頼み事があって、山吹色のお菓子を献上したんだ、それで二つ返事で良い返答をくれた」
「何?まさか賄賂でも贈ったのか?何をやっているんだ!?」
「ああ、だから今後“ナジェンダだけ”酒煙草24時間全面禁止、それを皆にも強要するのは可哀想だから、自らの身を挺して・・・ううっ、自己犠牲の鑑だ。そして、ついでに“ナジェンダだけ”給与削減も提案したんだ。そのうち案が通ると思うぞ、やったぜ!」
ナジェンダは怒号を発し、その勢いにタツミはずっこけ、そして部屋中の窓も揺れ
た。
そしてまた後日、復興が少しずつ進み、活気が出てきた帝国の広場で
「タツミく~ん~~あの後、隊長をどう説得したんですか?まさに鬼女の如く荒れ狂ってましたよね?あれをどうやってお鎮めされたんですか?何かあったんですか?それとも、ナニかしましたか?・・・くすくすくす」
「きゅきゅきゅ」
セリューとコロがイヤミな笑みでタツミをいじっていた。
「うるさい!丁寧に説明したら判ってくれた!」
「・・・どう丁寧に説明したんですか?じっくり教えてください・・・くくく」
「お前嫌な性格だな!?元々、そんな性格じゃ無かっただろ!」
「ふ~ん、誰かさんに似たからです!・・・ところでタツミのおやぶ~ん~、どうして首に包帯巻いているですか~」
タツミは冷や汗をかいたが素知らぬ顔で
「ちょっと怪我したんだ、別に大した事無い」
キラン☆
セリューの目が光り、いじりネタを見逃さない。
「ぷぷぷ、まさかエスデス隊長の唇で吸われた後が残っているとか・・・そんな事無いですよね?」
セリューは時間を掛けて攻めるのを止め、一気に本丸に攻撃を仕掛けた。
タツミは悟られぬよう、いつも以上に心を無に明鏡止水の境地で臨んだ。
「モチロン、ソンナコトハナイ・・・」
「あ~そうですか、ま、別に良いですけど・・・コロ、そろそろ可哀想だからこの辺でやめてあげよっか?」
「きゅ!」
タツミも汗をぬぐい、
「言っとくがこんな話をしに来て貰った訳じゃないぞ!」
「!?・・・まさか、タツミ君、私を愛人にしようと!だ、駄目ですよ!ああ見えて隊長、心広そうで狭いですから、殺されますよ!・・・で、でも二人だけの秘密も悪くないですね・・・」
セリューが顔を赤らめ、タツミも顔を赤くした・・・別の理由で。
「セリュー、お前の頭のネジ全部外すぞ!!」
「んも~冗談ですよ~」
「ったく・・・それだけ心の余裕が出て来れば良い方だ・・・話と言うのは、あんたまた新帝都の警察に戻る気はないか?」
「え?・・・」
セリューも先ほどまでの気分は吹っ飛んだ。
「新しい政府の奴らはまだどうにも信用出来ねェ、そして俺もそろそろこの国を出なきゃならない・・・正直ここまでこの国に世話焼くのも面倒だが、乗りかかった船だからな、だが俺がこの国に目を掛けるのはこれで最後だ・・・」
「え・・・えっと、タツミ君、帝国を出るんですか?」
「ああ・・・」
「どうしてです?」
「・・・俺はこの国の者じゃない」
「そうだったんですか・・・なるほど、言われてみれば確かに・・・ふ~む・・・また戻って来てくれますよね?」
「ああ・・・また戻って来る・・・」
タツミは敢えて嘘を言った。
「それならタツミ君が戻って来るまでに、この国を良い国にしてみますから!」
「へぇ~・・・本当に出来るのか?」
「言うだけは“ただ”ですから♪」
苦笑いしながらタツミは、
「じゃあさっきの件は引き受けてくれるな?」
セリューは一瞬息がつまり、
「・・・私にその資格はありません・・・」
タツミもそれを受け、真顔になり
「・・・・そういう自覚があるのは良い事だ。そして、その断る理由はなんだ?」
セリューは膝を降ろし、
「私の手には無実の人の血も染み込んでます・・・、それに私の頭には小型爆弾があります・・・誤作動はしないとドクターには言われてましたが・・・たまに夢に出るんです。今住んでいる小屋から近い村の親しい人達を巻き込んで壊滅するのを・・・、なんで私・・・こんなになっちゃったんだろ・・・、どうして、もっと早く気付かなかったんだろ・・・」
嗚咽を堪え、語る。
「セリュー・・・帝都警察は、建前は市民の平和と安全、正義の為に居ると言っているが・・・実際は現政府の安全と、現政府の掲げる正義を守る為に、居るだけだ・・・だから本当の意味では市民側の安全と正義を守る為じゃない・・・何も無い時は利害の一致で市民のそれを守りはするだろう・・・例えば、政府の要人でもなんでもない、ただの凶悪犯人なら政府にも市民にも害だから警察は捕らえるだろう・・・だがな、これが警察上部や政府要人なら話は別だ・・・見逃される事がある」
「・・・・・・」
「だが、確かに本来の意味は現政府の維持の為、現政府の都合のいい正義の為に居るだろう警察だが、結局は組織を造るのも人だからな・・・その政府の介入にも屈しないで、本当の正義を行える・・・弱い者の立場になって考えられる警察組織になっていって欲しい・・・」
「タツミ君・・・前に正義は無いとか・・・言ってましたが?」
「時と場合による!以前のセリューには正義なんか無いと言った方が、効果があっただろうし、今なら敢えて正義の言葉を使っても判断を間違わないかもなと思ってな」
「ふふふ・・・他にも“セリューお前が命令すればこのほし、でしたか?・・・の人間だけ・・・或いは生物だけ皆殺しに出来るぞ?・・・生きている事そのものが悪だ・・・だから、お前の正義執行を、俺が叶えるぞ!”・・・とか言ってましたよね?」
「よく覚えてたな・・・」
「もしあの時、私が頼んでましたら・・・どうなってました?」
「さぁな・・・」
「きっと、私がまず一番初めにタツミ君に殺されてたと思います・・・タツミ君、貴方は私を試したんですよね?」
「・・・どう思おうが、あんたの自由だ・・・なぁセリュー、この星・・・ああいや
、この大地に取って人間は悪そのものかもしれないぞ?。」
「人間が?」
「土地は占めるわ、戦争をして森は燃やすわ・・・こんな生物居ない方が良いとは思わないか?」
「それは・・・」
タツミは何も言わず、セリューは黙考している間待った後、
「それでも私は、・・・私も貴方のおかげで変われましたから、人が変わっていける事を信じたい!・・・少しでも他の生きている動物・植物たちに迷惑が及ばないよう・・・食べるのは仕方ありませんが・・・闘う事もあるでしょうが出来うる限り共存していきたいです!・・・そして、いつか人々そのものが最期の時が来るかも知れませんが、その時は・・・良い生き方をされたねと、大地に言われるような、そんな生き方をしたいです!」
タツミは溜息をついた後、
「そうか・・・判った・・・」
セリューは冷静になり
「ええ、ああ・・・つい・・・タツミ君にこんな事、既に判ってますよね?」
「いや・・・」
そして、
「有難いお話ですが、村の子供に今、読み書き教えてるんですよ。それもありまし
て、警察のお仕事までは・・・」
「罪滅ぼしだと思って、二つ仕事こなせ」
「鬼ですね!」
「それに・・・さっきの話だが、もし子供たちに教えている時に脳の爆弾が誤爆したらどうする・・・?」
「そ、それは・・・、ドクターから私の意思で作動すると言われてますから・・・大丈夫です・・・たぶん・・・」
「あのスタイリッシュが言う事だからなぁ・・・前に俺が奴の研究資料を漁った時
に、例のそれを内蔵している者の生命活動停止時にも起爆する可能性ありと書いてたぞ?」
「え?それは聞いてません!・・・まぁ今更、ドクターの事で驚きませんが」
「で、どうするんだ?」
「・・・もし、死が近付いた時は、人里離れた所に行きます・・・」
「きゅ・・・」
コロもその時は一緒だ、という意思を示す。
「そうかい?判った・・・じゃあ先払いしておくか・・・」
「え?」
タツミは瞬時に手刀をセリューの首筋に当て、
「な・・・なにを・・・」
気絶した彼女を担ぎ、コロと共にその場を後にした、一瞬の出来事で周りの通行人達も特に気に留めなかった。
「うっ・・・ここは・・・」
セリューはタツミが改良も施したスタイリッシュの元・ラボで目を覚ました。
「きゅきゅきゅ!」
コロは目を覚ました主人に駆け寄り、手紙を渡した。
そこには、セリューの配属先と訪ねる場所が書かれていた。
そして、寝ていた直ぐ横には、本来脳に有ったであろう、小型爆弾が銀皿に上に置かれていた。
「タツミ君・・・私の手も・・・ありがとうございます・・・」
彼女の毛の中の身体情報を用い超技術で手等を複製し、体の機械部分を取り除き、全て生身の体へと変えたのだろう・・・セリューは涙を流し、喜びを噛みしめた・・・が、
手紙の続きには
“服の着せ方判らんかったから、自分で着てくれ”
とあり、
「え・・・・・?きゃあああああああ」
「きゅ!?」
セリューの雄叫びにコロも驚き、
「わああああ・・・男の人に裸見られた・・・タタタッタ、タツミ君責任取ってえええええ!!」
もう、そこに彼はいない。