ナイトレイドアジトの居間で
「タツミ・・・お前を呼んだのは他でも無い」
タツミは新政府新聞を読みながらソファーに腰掛け、アカメの話を聞いていた。
「・・・呼ばれたんじゃなくて、初めから俺はここに居て、後から来たのはアカメだろ」
「ふっ・・・、そんな口答えが出来るのも今のうちだぞ、タツミ!」
「あっそ・・・」
「革命も一段落し、タツミとの預けておいた勝負に決着を付ける時が来たぞ」
「いや、そんな話は今初めて聞いたんだが!」
「負けた後の言い訳はそれで済んだか?」
アカメはじーっとタツミを見る。
タツミは新聞を読んでいる。
アカメは更に近づいてくる。
「近い近い近い!うっとしいんだよ!」
アカメは尚、目で訴えかけてくる。
「あーもう、判った、勝負でも何でもしてやる、一体なんだ!」
とうとうタツミも新聞を置き、アカメにイラつき始める。
「タツミ、勝負はどちらかが降参するか、戦闘不能になったと認めた時点で終わりとする。良いか?」
「ああ、判った!」
「では行くぞ!」
「!!」
タツミも体は無構えでも心で身構え、アカメは顔前で手を交差させ・・・
「ムラサメ・アカメ 17才だぞ♪」きゃぴ♪・・・という文字が出てきそうな雰囲気を醸し出し、しかも敬礼した上で、顔を45度曲げ、ウインクしてきた・・・・。
「・・・?・・・?・・・・?」
タツミは激しく混乱していた。
(う~ん、今朝何を食べたか・・・、何も食べなかったか・・・昼飯は何にすべきか・・・)
余りの事に思考が追い付いていない。
「フッ・・・、まだまだだな、タツミは…思った通り私の勝ちだ!」
アカメは勝利宣言し、
(な、なんだ今のは?何が勝利条件だったんだ?・・・誰か教えてくれ!)
そこに、
「あら?あんたら何をやってんのよ?」
マインが声を掛けてきた。
「あ?ああ、マイン・・・」
「マイン、丁度良い所に来てくれた!タツミが負けを認めようとしなくて困っているんだ」
「はい?」
アカメはマインに事に経緯を話し始め、タツミは内心安堵していた、アカメの奇行を聞いてマインが「アカメ、あんた馬鹿じゃない?」と言ってくれるだろと。
「はぁ全く・・・タツミ、あんた馬鹿じゃない?」
「そうそう、そうだろ?マイン、アカメに言ってや・・・、なにィ!?」
「あんたねー、素直に負けを認めないなんて男らしくないわよ!」
「そうだタツミ、男の意地を張る所では無いぞ?」
(な、何がどうなっているんだ、さっぱりわからん・・・)
タツミは戦慄し始めた。
「アカメ・・・あんたもあんたよ、そのレベルで負けを認めさせるなんて、ちょっと実力不足よ!」
「むっ!?・・・なら、マインもやってみせろ!」
「ふっ・・・、あんたとあたしの実力の差を思い知らせてやるわ!良い?見てなさい!」
マインはくるっと一回転すると、
「みんな~、きょうもあつまってくれてありがと~~!きょうはね~みんなにおしらせがありま~す~。マインはきょうでぇ、じゅうななさいになりました~、でも~これいじょうはとしはとりませ~ん~やったね♪」
「なっ・・・、マイン・・・まさか、観客を造りだす(演出)とは・・・やるな!」
「ぐはっ!」
アカメは驚嘆し、・・・タツミは吐血した。
「ふっ、どうアカメ?あたしとの差は判ったかしら?タツミも完全に負けを認めたようね」
アカメは膝をついたタツミに駆け寄り、
「タツミー、しっかりしろぉ!」
「うっ・・・(いや、元々はアカメ、お前が事の発端だろうが!)」
「くっ・・・いたいけなタツミになんて事を、ここまでやるなんて・・・マイン、・・・私はお前を許さないぞ!」
アカメがタツミの為に・・・激昂したのに対し、不敵な笑みで受けるマイン。
「へぇ~どう許さないの?」
そこに、
「ふっふっふ、話は聞かせて貰ったわ!」
「なにやつ!?」
「だれだ?」
「・・・・・・」
マイン、アカメは呼びかけ、タツミはこの場から逃げたくなっていた。
壁にもたれながら腕組みし、不敵な笑みを浮かべたチェルシーが現れる。
「二人とも中々良い線いってるけど、経験が足りないね」キラン☆と挑発的に目を輝かせる…(うざい)
「ふっ、言うじゃない?じゃあ、あんたはタツミを瞬殺出来るの?」
「チェルシー、口だけならいくらでも言えるが・・・相当の自信があるみたいだな?」
(さぁ、俺よ、心を無にするんだ・・・このアホ空間から逃れるには、色即是空、空即是色、全ては無・・・気配も何もかも断ち、存在そのものも悟られないように・・・)
「ええ、見せてあげる!じゃあいくよ!・・・ふぅ・・・、“あ~しぃ~、もうじゅうななじゃん?まじやべぇっしょ!え?じゅうななだよ?じゅうなな?もうおばさんじゃん?もうすぐではたち?うぅわ!さいあく、もうばばあになるじゃん?そんなばばあになってまで生きるのむなしくね?あ~しぃ、ぜってぇそんまえにそっこうでしぬわ!”」
チェルシーが言い終えると・・・
「げふっ!」
「ぐはっ!」
「・・・・・・」
マインとアカメは吐血し、タツミはただ白けていた。
「くっ・・・、チェルシー・・・ここまで内角(?)を的確に抉ってくるとは・・・やるな・・・」
アカメが瀕死に対し、
「チェルシー・・・あんた、・・・ぜぇぜぇ・・・あたし達を攻撃してどうすんのよ!・・・あ、危なかったわ、自分にかけた魔法(?)が危うく解ける所だった・・・」
※ここに居るメンバー全員、二十歳未満は居ない!
「あ、あれ?タツミ・・・平気なの?」
チェルシーが信じられないと尋ねるに対し、
「うん?ああ、まぁ、別に・・・(実際、俺自身はチェルシー達の年に比べれば爺だしなぁ・・・)」
「くっ・・・私より年下でもほぼ変わりないタツミだ、何故ダメージを受けないんだ!」
「判ったわ!男は年齢以上に見られた方が貫録が有るとか、好意的に受け止める時期があるのよ、きっとその為よ!」
「成程・・・」
「え?タツミが変わってるだけじゃないの?」
「うるせぇな、チェルシー!」
一しきり言いあった後、
「う~ん、タツミには通じないか・・・じゃあ攻め手を変えよう!」
チェルシーが何やら作戦変更を考えたのに対し、一部・・・大部分から非難が続出。
「チェルシー、今度は狙いを外すんじゃないわよ!」
「全くだ!タツミにはかすりもしなかったぞ、寧ろ私達が大惨事だ!」
「う~ん・・・あたしはこれでもフルパワーでやったのに・・・」
「くっくっく・・・遊びはここまでだ、お望み通り・・・って違ぇよ!フルパワーって、なんだそれ!もう俺帰って良いだろ!」
そして、その時、
「ハーッハッハッハ!」
天井の梁の上から笑い声が聞こえ、
「なにやつ!」
「誰だ!」
「上?え?誰?あの変な人!?」
3人娘がそれぞれ喚くに対し、ふわりと降り立った仮面を付けた碧髪の女性。
「ふっ、ナイトレイドのメスカス虫共!そこの可愛い少年(?)をいたぶる所業は例え天が許しても、このエスティー仮面が許さんぞ!」
ビシッと指差し決めポーズに対し、
マインは頭痛を覚えながら、
「・・・あんた、頭大丈夫!?」
「誰だお前は、何者だ!?」
「・・・アカメちゃん?判ってて言ってるよね?判ってて言ってるんだよね?」
チェルシーがアカメに疑問を呈している中、タツミは少しずつ気付かないように遠くに離れようとしている。
「ふっふっふ、歩が三つで雑兵三人組共が!私が真の強さを見せてくれる!」
「歩を馬鹿にすんじゃないわよ!」
「ふ、とはなんだ?」
「・・・とりあえず今は気にしなくて良いよ」
エスティー仮面・・・は仮面を外し、
「うふ♪ねぇタツミおにいちゃんいっしょにかえろ?」
謎過ぎる…その女性は自身の長身スタイルには似合わない、片足を曲げ柔らかく握った両手を自身の両頬につけ、上目づかいのウィンクでタツミを見る。
・・・当の彼はかなりの悪寒が走ったが、少しずつこの空間から逃れられるよう辛くも堪える。
「な!?」
「む?」
「ええ?」
瞬時に彼女は仮面を付けて、ドヤ顔で勝ち誇っていた。
3人は顔面蒼白で驚愕し
「う・・・うそ・・・、あ、あそこまで自分を捨てされるなんて・・・呆れを通り越して・・・ちょっとでも尊敬しそうになった・・・じ、自分が怖いわ・・・」
「・・・、な、何者かは知らないが・・・くっ・・・か、かなりの手練だ・・・」
「う・・・うん、まぁ・・・誰あんた?って、レベルではある事は間違いないね・・・、て、帝国最強の通り名は伊達じゃなかったんだね・・・くっ・・・」
「ふふふ・・・いい加減負けを認めろ、これ程の実力差を見せつけられてもまだ堪えてられるその気概だけは認めてやる・・・なぁタツミ・・・ん?」
(あと一歩・・・あと一歩だ・・・)
タツミはこの空間から逃れる為のドアに手を掛けたその時、
「ふふふ、何処に行くんだ夫?」
彼の背中に何やら二つの弾力が伝わり、甘い吐息が掛かる。
「の・が・さ・な・い・ぞ♪」
タツミは汗びっしょりになり、
「そうよ、タツミあんた何処に行こうとしてんのよ!?まだ勝負はついてないのよ!」
「そうだ・・・まだ私は負けを認めてないぞ・・・まだ奥の手がある!」
「言うねぇアカメちゃん?そうそう、タツミが判定してくれないとね?私もこのままじゃまだ終われない!」
お前ら好い加減にしろーー!
タツミの絶叫が木霊した・・・。
帝都某居酒屋
気心の知れた居酒屋であり、彼女達が安心して飲める所でもある。
「ああ~あいつら、人のアジトで何をやっているんだ・・・」
ナジェンダがビールを一気飲みし、愚痴る。
彼女達は、アジトの居間での出来事を見て、呆れて退散していた。
「おじさん、もう一杯!まぁまぁ良いじゃないですか、ボス?」
レオーネは注文し、ナジェンダにビールを渡す。
「あいつら若いよな・・・」
「え?・・・ええ~ボスだって十分若いですって・・・」
「いや・・・そういう若さではなく、ああいう・・・なんて言えば良いかな?」
「あ~、何となく言いたい事は判ります・・・」
「確かお前はチェルシーと・・・エスデスともほぼ同じ年だったか?」
「はい、そうです・・・ま、でもあんな事は出来ませんけどね~あはは」
「ふっ・・・そうだよな?私達“大人な女”はあんな事はしないよな?」
「全くです!大人の女は黙ってワイングラスを傾けるですよ!」
「ふふふ、その通りだな・・・どれ、ちょっと席を外す」
「はい、どうぞ!」
ナジェンダは化粧室の鏡の前へ行き、
「全くあいつら・・・もういい年なのだ・・・あんな事をして・・・」
そう言いながらナジェンダは上目づかいを試してみたり、
「きゅ?きゅきゅきゅきゅ~・・・うん、今のは我ながらうまく・・・はぅわ!」
鏡に後ろでレオーネがニタぁ~と笑っていたのが見えた・・・。
―――――――
「うっ・・・くっ・・・お、お前らもう好い加減に・・・はっ?・・・はぁはぁ、ゆ、夢か・・・なんて馬鹿な夢を・・・俺も疲れが溜まっていたか・・・?」
タツミはいつの間にか居間で新聞片手に寝ていたようだ。
その時、ドアが開き
「タツミ・・・お前を呼んだのは他でも無い」
アカメがそう言って入って来た・・・。
「!?」
・・・悪夢はまだ終わっていない・・・いない・・・。