※この作品はR-18です。

きゅーとあぐれっしょん   作:霧里

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幸せな夢(Hシーン

 

 

「いやっ!」

 

心が冷たくなる。開いた扉を目の前に、私だけが遠ざかる。

赤い絨毯の毛先を毟り、なんとか抵抗しようとしても無駄だった。

 

あと少し、もう少しで、この館から逃げられる。

こんな化け物たちから、逃げられたのに。

 

私の足首を掴む手の力は強く、どれだけ暴れても振りほどけない。

赤い絨毯の上を滑りながら、どんどんと、館の扉が遠のいていく。

 

いや、いや、もういやだ。

 

怖い、怖い。

 

助けて、クライスト。

 

私はもう聖女でも、聖騎士でもなかった。

 

ううん。元からそうだ。皆が褒めて、煽てるから。そんな気にもなってしまっただけ。本当は、魔物と戦うなんて、怖くて、怖くて、しょうがなかったのに。

 

どうして、ただの少女でいられなかったのか。

 

恋に恋をするような。私はまだ、そうしていたかったのに。

 

「あっ…ぁぁ…っ」

 

涙で視界が滲む。ぼやけた視界に扉が歪んで見えた。

ゆっくりと、閉じていく。錯覚だったのかもしれないけれど。私の心にはもう、扉を開けるほどの強さは残っていなかった。

 

「リットリアっ!!」

「へ…」

 

ズルっと。体が引きずられた瞬間、私の手を彼が掴んでいた。

 

「あ、あ、あ…」

 

声が出ない。言葉にならない。

あんなに冷たかった涙が、急に温かく感じて、ドクンっと、心臓が息を吹き返す。

 

「リットリアは返してもらうぞっ!」

 

転がっていた聖剣を拾い上げたクライストは、首のない甲冑へと投げつけた。

当然、倒すには至らない。けれど、私の足首を掴んでいた手が弾け、怯んだように後ろへ下がる。

 

都合の良い夢だ。

 

まるで、おとぎ話のよう。

 

お姫様のピンチに駆けつける王子様。

憧れをそのまま形にしたような状況に、心臓のドキドキが収まらない。

手を引かれ、抱え上げられる。あれだけ遠くに感じた館の扉が、すぐに近づいて。ふわり、飛び出し、駆け抜けた。冷えた夜半の空気が私の頬を撫でる。

 

ー

 

「もう大丈夫だぞ、リットリア」

「あっ、あぁ、あぁぁぁぁ…っ」

 

その言葉が、どれだけ頼もしかったか。

 

私は彼に抱えられたまま、その胸に顔を埋めて泣いてしまっていた。

金属の鎧で覆われた胸は傷だらけで、肌触りは良くはない。

思い出せば、父親のヒゲの感触にも通じるものがある。ザラザラとしていた。硬い金属の感触は冷たくて、でも、温かい。

 

ああ、恥ずかしいな。

 

もう、聖女じゃいられない。もう、聖騎士でいたくない。

少し背伸びをしたいだけ。恋に恋するだけじゃいや。私は、もっと彼の事を好きでいたい。

 

こんな子どもみたいに泣いていたら、また子供扱いされてしまいそうだ。

ちゃんと見て欲しい。女として扱って欲しい。泣き止まないと、いけなのに。

 

「ひっ…く、ぇぅ…はぁ、ひぅ、んっ…はぁっ、はぁっ…ぐす…」

 

涙は止まらない。だって、ずるい。そんな事されたら、気を張っていられない。

ぐずぐずと、泣き続ける私の頭が、彼の手に包まれた。

下手くそ。不器用に、髪を掻き混ぜられて、子供扱いされるみたいで少し不満。

 

頭を振って、照れ隠し。抱きしめられているのか、抱きついているかも分からない。ただ、離れがたい。胸の内に顔を埋めて、しがみつく指に力が入る。

 

「悪かったな。一人にして…」

「ちがっ…ちがう、んです。わたし、勝手に、無理に…行くって、聞かなくて、だんちょっ…止めようとした、のに。してくれた、のに…私、悪くって、皆…まきこ、んだ…」

「良いんだよ、そんなの。みんな無事だ。誰もお前を恨んじゃない。結局は、俺も賛成したんだ。皆だって頷いたんだ。こうなったのは、俺達の責任だ。お前一人が背負うものじゃない」

「でもっ…でもっ…」

 

違和感はある。

 

都合の良い夢を見ているような。

 

こうであったら、どれだけ良かったか。

 

そうじゃない。そうはならなかった。頭の片隅でなり続ける警笛を、私は努めて無視をした。聞きたくない。目覚めたくない。都合の良い夢ならそれでもいい。

目をつむり、耳を塞いだ。大きく息を吸って、吐き出して。体と、心から力を抜くと、意識はすぅっと夢の中へと溶けていく。

 

ー

 

「あははっ。まさか、リットリアがあんなに泣くなんてなっ」

「やめて、ください。皆には…絶対」

「ああ、言わないさ。俺はしっかりが覚えてるがな」

「もうっ…しりませんっ」

 

どれだけ館から離れただろう。

 

雨風を凌げそうな洞窟を見つけた私達は、夜の深くなった森の中で、焚き火を囲んでいた。ボロボロになった鎧を脱ぎ捨ててようやく一息。「こんなものしかないが」と、彼のくれたチョコレートの甘さが身に沁みる。

 

ズキリ…。

 

動かした脇腹が痛む。蹴られた場所はすっかりと、青痣を作ってしまっていた。

 

「痛むか?」

「少し…は。でも、平気です」

「お前は我慢をしすぎるな、いつも」

「だって、皆頑張ってるのに。私だけ、弱音を吐くなんて、出来ません」

「お前以上に頑張ってる奴もいないんだよ」

「…珍しいですね。団長が私を褒めるなんて」

「そうだったか?」

「そうですよ…」

 

パチパチと、爆ぜる薪の音を聞きながら、私は自分の体を抱いていた。

なんだか落ち着かない。団長と二人きり、思えば、そんな機会はあんまりなかったか。あんなに泣いてしまった後では、どんな風に自分をみせても、背伸びをしている子どもみたいだ。

 

「体でも拭いてきたらどうだ? 向こうに川がある。少しは楽になるだろう」

「それは…」

 

タオルなんて上等なものはない。差し出されたのは、彼の着けていたシャツと、鎧から外したマントだった。正直、目のやり場に困る。初めて見たわけではない。男の人なんて上着くらいポンポン脱ぐし、男社会な騎士団の中では尚更だ。

 

ただ、私にとって彼の裸が少し特別だっただけ。

 

好きな人だってのはもちろんある。少し、思い出してしまったんだ。

脱衣所でかち合ってしまった時のこと。見てしまった裸と、見られてしまった裸と、その時の光景が頭に浮かんでしまった。

 

「見ないで…下さいね?」

「そういう事は、もう少し大人になってから言え」

「…っ」

 

ムッとした。また子供扱いしてって思う。「バカ」って、思わず呟きそうだった。

洞窟の外。夜の森は、焚き火から少し離れただけで暗くなる。

水の流れは、確かにすぐそこから聞こえてきた。目を凝らせば、月明かりにキラキラと揺れる川面も見える。10mも、あるかどうか。焚き火の灯りと、月明かりの間の暗がりが、やけに遠い。

 

見通せないほどじゃない。

 

普段なら別になんとも思わないのに。

 

ここから少しも離れたら、もう二度と彼には会えないような気がしてならない。

 

「あの、ここに…いて下さいね? 見える所に、その…」

「見ないでって言ったのはお前だろ?」

「…良いです。でも、あんまり見ないで…」

 

暗がりの中を振り返りながら歩く。木立の影に彼の体が隠れる度に、右に左にと顔を傾けた。まるで小動物だ。怯える私を見つけた彼は、手を振って応えてくれる。嬉しいような、はずかしいような。流れるせせらぎを前にして、気恥ずかしさを思い出す。

 

マントを羽織り、自分の服に手をかけた。

 

気のせいなんだろうけど。背中に視線を感じてならない。

揺れる焚き火に照らされる彼は、特にこっちを見ている様子はないのに。

私の願望がそれを見せたのか、自意識過剰にも程がある。

 

そうでしょう?

 

いつだって、子供扱いされていたし。

 

さっきだって。もう少し大人になれってさ。

 

もう少しって、どれくらい?

 

二つか三つか、歳を重ねれば彼も認めてくれるのかな。

多分違う。なんか言い訳をされてる気分だ。四つに五つと数えたって、多分彼は私のことを子供扱いするんだろう。きっと、団長としての立場が、それを言わせている。

 

「ばか…」

 

羽織っていたマントを肩から落とす。

月明かりに照らされる私の肌は、彼にはどう見えるんだろう?

分からない。貧相だって、言うのかな。少しでも、綺麗だと思ってくれれば良いな。

 

心臓がドキドキする。

 

あそこからじゃ、私が裸でいることくらいしか分からないだろうけど。

でも、やっぱり、見えてしまっていることには違いがない。

 

盗み見た彼の顔はどうだったろう?

 

焚き火に照らされる横顔は、こちらからでは伺いきれなかった。

 

水面にさらした彼のシャツを軽く洗う。お湯があればなんて贅沢は言わない。

体を拭けるだけでもありがたい。水の冷たさだって、熱を持った体には心地がいい。

 

肌を拭いて、汗を拭って。

 

ズキリ…。痛む脇腹に体が震えてしまう。

 

白い肌に浮かぶ青痣が痛々しい。蹴られた脇腹は、すっかり跡を作っていた。

残らないと良いけど。少しくらいなら薬で治る。多少の大事だって、魔法を使えば死にはしない。騎士の真似事をしていれば、生傷くらいは普通に出来るものだ。

 

このくらいの傷、気になんかしてられない。

 

普段なら、そう言って歯を食いしばっては見せたけど。

今の私にはもう、そんな意地を張る気力もなかった。守らなきゃいけなかったのに。国にいる人達を、騎士団の仲間たちを。なのに、助けられた事にすっかりと安心してしまった。

 

青痣に触れる。

 

ズキリと痛む。

 

何度撫でてみた所で、傷跡が消える様子もない。

男の人なら、こんな傷跡も勲章だって言うんだろうか。戦って、ちゃんと生き残った証だと。

 

気持ちは分かるけど。

 

彼もそう。他の皆だって同じだ。経験を積むほどに傷跡も増える。

醜いだなんて思わない。最初は面食らってしまったけれど、誇って良いものだと今は思う。

 

「そんなの…」

 

出来ない。

 

少女としての自分が首を振るのは当然で。

聖女だった自分が首を振るのも当然だ。

 

だってこれは、戦った時の傷じゃない。

逃げ出した時に、横から蹴られただけ。

 

何一つ、誇れるものはない。

 

何やってるんだろう。

 

落としていたマントを拾い上げ、肌を隠す。

こんな体見せつけて、何をしようっていうんだ。

 

貧相な女の体でしかないのに。情けない傷跡まで作って。

そんなだから、子どもだなんて言われるんだ。ちょっと助けて貰っただけで、運命なんて感じてしまったの? だって彼は優しいから。仲間を助けるくらい、普通にするでしょう?

 

ズキリ…。

 

痛む脇腹を拭う水の冷たさが、イヤに身に染みた。

 

ー

 

パチパチと、爆ぜる薪の音を聞きながら、私は自分の体を抱いていた。

下着姿に、マント一枚を羽織ったまま。頼りない自分の格好に、湧き上がる恥ずかしさも今はない。

 

どうせ、子供扱いしかされてないし。

 

焚き火の向こうに座っている彼も、私のあられもない格好なんて気にしてる様子さえもない。両思いだと、なんとなく感じていたのだって、私の思い上がりだったんだ。

 

なんかもう、どうでもいいや…。

 

疲れのせいもきっとある。揺れる焚き火を眺めていると、だんだんと、瞼が重くなってきた。うつら、うつら…。船を漕ぐ。まぶたを閉じると、少し楽になった。

抱えた膝に頭を乗せると、肩から力が抜けていく。

 

「…」

 

なんだろう。視線を感じる。

焚き火の向こうからだ。なんて、また自意識過剰なんじゃないか。

彼はきっと、私になんか興味もない。すっかりと、自信を失くした私は、ある意味では大胆だった。

 

下着姿に、マント一枚羽織っただけのあられもない格好。

そんな状態で膝を抱えれば、浮き上がった太ももの隙間から何が見えるのか。

寝返りを打つような調子で体を揺らす。偶然を装って、少しだけ足を広げてみせた。

 

変化はない。パチパチと、薪の音が爆ぜただけ。

大袈裟に視線を反らすような事も無ければ、戸惑った吐息も聞こえては来なかった。

 

まぁ、そうだよね。

 

分かっていたことだ。

 

でも、彼の方から視線が途絶えた訳でもなかった。

私の肌を見た男の人の大体は、咄嗟に視線を逸らすか、大袈裟に囃し立てるかだ。どっちにしたって、照れ隠しなのは伝わってくる。

 

じゃあ、この視線は何なんだろう?

 

照れ隠しをするでもなければ、貧相だとからかわれるでもない。

ていうか、見られていることを意識するほどに、だんだんとくすぐったくもなってくる。

 

「なに、見てるんですか?」

 

頭を膝に乗せたまま、視線だけを持ち上げて彼を見る。

どうせ私の勘違いだろう。そう言ってくれるのを期待すらしてもいた。

 

「悪いか?」

「悪い、でしょ? そりゃ…盗み見なんて」

 

開き直ったような彼の態度に、言葉が詰まってしまう。

 

「まぁ、そうだな。悪かった…」

 

不貞腐れた。とも違うのか。

私から視線を外した彼は、焚き火を背にして横になってしまった。

 

ずるい人。私はもう、諦めるつもりだったのに。

私なんかが貴方と一緒にいる資格なんて無いと、そう思っていたのに。

なんで今更、そんな反応をするんだろう。

 

「みたい、ですか?」

 

スルリ…。羽織っていたマントを肩から落とす。

立ち上がった私は、焚き火を越えて、横になった彼の傍に立った。下着姿のまま、ほとんど裸見たいな格好だ。

 

洞窟に揺らいだ影が、彼に伸びると、見上げてくる視線とかちあった。

 

「馬鹿か、何をやってるんだ」

 

咄嗟に視線を逸らされる。貧相だと囃し立てる訳でもなければ、いつも見たいに子ども扱いされるでもない。それは、私の肌を見た男の人のそれ。よくある照れ隠し。横顔は赤く、耳まで染まって。焚き火にあてられているせいだけでは、きっとなかったはずだ。

 

「バカ…ですよ。どうせ私は…。団長だって、いつも子供扱いしてるじゃないですか」

「何を拗ねて…。悪かったよ。そんな気にしてたのか?」

「別に…。ただ、団長って、ロリコンだったんですね?」

「なっ…だれがっ。俺はなっ、もっとこう…っ」

「もっとこう…なんですか?」

 

逞しいな。手の平から伝わってくる胸板の感触に息を呑む。

撫でて、擦って。そのまま覆い被さるように、彼に顔を近づけていった。

 

「やめろ…バカ」

「バカですよ? ええ、バカなんです私。好きな人にも好きって言えないくらいには。だって、子どもだもんっ。分かんないんですよっ。団長が何考えているのか。教えて…教えて下さいっ。もっと、こうっ、何なんですか? おっぱいが大きければ良かったですか? お尻が大きい人が好きですか? ロリコンでもいいじゃないですかっ。私だったら…私、私じゃ、ダメなんですか?」

 

ぽたり、ぽたぽた。

 

私の頬を伝った涙が、彼の頬へと落ちていく。

 

何も言ってくれない。何か言って欲しい。

ダメならダメって言って。諦めるから。好きなら好きって言って、もう我慢出来ないから。

 

「バカ…」

「バカ、じゃない。そんな事、言って欲しい訳じゃ…」

「だから、もっとこう…。肌が白くて、目が青くて、金髪が似合ってて。いつも一生懸命で真っ直ぐで、誰にも優しい。笑顔を絶やさないような、そういうバカが…俺は」

「誰の…話、してるんですか?」

 

それを認めるには勇気がいる。一生懸命で真っ直ぐで? なんだか自画自賛をするようで面映ゆい。

 

「リットリア…」

「…クライ、スト」

 

彼の太い指が、私の頬を撫でた。不器用なままに動いた指が、私の涙を拭っていく。凸凹してて、節くれだってて、触り心地は全然良くは無いけれど。

でも、伝わってくる彼の温かさに、涙が溢れて止まらない。

 

「んっ…」

 

ああ、思ったとおりだ。

 

乾いた肌の感触がする。焚き火にあてられ続けていたせいか、少し煙たい感じもした。重なった太い唇に、私の薄い唇が包まれる。吸い込まれて、力強い。

ちゅっと、途切れた水音に、ちょっと恥ずかしくなった。

 

「触るぞ?」

「…うん」

 

彼の手が背中に伸びると、あっさりとブラのホックを外されてしまう。

それは、ちょっと面白くない。外し方が分からずに、もうちょっと戸惑っても欲しかった。

 

「慣れてるん、ですね?」

「拗ねるなよ。お前で最後だ…」

「…どうだか」

 

否定はされなかった。最後だと言われるくらいには、女の人と経験があるらしい。

私は初めてなのに、彼はそうじゃない。きっと、娼館に通ったのだって一度や二度じゃないのだろう。あるいは、寝耳に愛を囁いたことだってあるのかもしれない。

 

「信じないか?」

「分かりませんよ。どうせ、私は…子どもだし」

「お前は十分綺麗だよリットリア。俺が今まで見た誰よりもだ」

「っ!?」

 

ズルい人。急に綺麗だなんて言う。

 

心臓が跳ね上がる。顔が熱くて仕方がない。

こんな誰にでも当てはまりそうなセリフをさ。ちょっと言われただけで舞い上がってしまう自分は、確かに子どもなんだろう。

 

「信じないか?」

「だって、そんな、簡単に信じたら…ほんとに子どもみたいで」

「素直なのは、お前の良い所だよ、リットリア」

 

これで嘘だったら、彼には詐欺師の才能があるんだろう。

ううん、嘘でもいい。それならそれで、最後まで騙して欲しいだけ。

彼が良いと言ってくれる私。素直な私は、顔を赤くしたままに「…うん」と、小さく頷いてみせた。

 

「ぁっ…」

 

彼の指先が、私の胸をそっと撫でた。

頬を撫でた時とは大違い。その指使いは妙に手慣れていて、私の中から女を引き出すようだった。

 

「はぁっ、あっ、んっ…ふぅ、はぁ…ぁぁ…ぁっ、やっ…あ、はぁ…」

 

だんだんと体が熱くなる。

 

下から掬い上げるように、彼の手の平が胸の膨らみを包みこんだ。

固い手の平だ。凸凹して、節くれだっていて。普段は剣を握っているその手が、今は私の胸を包んでくれている。

 

広がる手の平。伸びる指先。

 

胸の膨らみは、はみ出す事もなく、大きな手の中に収まってしまった。

ちょっと恥ずかしい。もう少しだけ。贅沢は言わない。彼の手から余るくらいは欲しかった。窮屈そうに動く指を見ていると、なんだか申し訳なくて、無い物ねだりをしないでいられない。

 

「そんな顔するなって」

「そんな顔なんて…べつに。楽しいんですか? 男の人は…その、こんなの」

「お前はどうだ? 痛かったりはしないか?」

「ううん…。それは、大丈夫…です」

 

どっちかと言えばむず痒い。

 

ザラザラとした彼の肌に胸の膨らみが引っ掻かれる。

くすぐったいような、なんとも言えない異性の指の感触に、どんな顔をしたら良いのか分からないのはそうだ。

 

もう少し、激しくされるものだと思ってたんだけどな。

 

そのくらいの覚悟はしていた。

 

獣みたいに…は、流石に想像つかないけれど。もうちょっと乱暴にされるんじゃないか。イヤって逃げても、興奮した団長は、やめてはくれなくて。

だから、余計にどんな顔をして良いかわからない。なにかこう、気づいた時には終わってるようなイメージをしていたから。

 

彼の手の平に、胸の膨らみが包まれる

 

ふわっと持ち上げられて、ふっと力が抜けていく。

伸びた指先は、脇の下にまで届くと、膨らみの横から くすぐるような刺激を繰り返された。

 

くすぐったいな。

 

最初はそうだった。

 

ムズムズして、ちょっと体が逃げたくなる。

でも、少し体を反らした程度じゃ、彼は全然離してはくれなかった。

くすぐられて、ムズムズして、なんだか落ち着かない。ふわっとして、ふっとされて、鼓動のリズムが早くなる。

 

そんな時だった。

 

「んっ!?」

 

ビリっと痺れるような感じ。喉が詰まり、身体に力が入って、でもすぐに緊張が解けると、甘い何かが後に残る。包まれた膨らみの反対側。彼の指は乳首に触れて、ころりと、指の腹に転がされた。

 

「んぁっ、はっ…やっ、くらい、すと…なにして」

「ちょっとは感じてきたか?」

「感じて? わかんな…ああっ」

「気持ちいいかって、聞いてるんだ」

「わかんなっ、だって、びりって、きて…それ、乳首、だ、はぁぁ…」

 

乳首を転がされる度に、ビリビリした刺激が強くなる。

反射的に力が入り、肩を竦めて、背筋が伸びる。けれどだ。それも一瞬。緊張が解けると同時に、体から力が抜けていく。それは、甘い痺れを伴って、ふわり、ふわふわと、頭の中に綿を詰め込まれたような気分にさせられた。

 

「甘く痺れるだとか。ビリビリするだとか、ジンジンするって言う奴もいたな。くすぐったいのとも違うそうだが、どうだ?」

「どうって…」

 

ああ、そうだ。ビリビリして、ジンジンして。甘く痺れてくる。

くすぐったいのとは確かに違う。だんだんと、刺激にも慣れてくると、もっとして欲しくなる自分がいた。

 

「分かってて…きいてます、よね?」

「どうかな?」

 

ふっと、彼は微笑んだ。その笑みに、顔がかぁっと熱くなる。

感じている。気持ちよくなっている。瞳は潤んで、息は上がって、頬は熱い。

そんなの彼から見たら一目瞭然だっただろう。それを わざわざ聞いてきたのは、私への気遣いと言うよりも、ちょっとした意地悪の様に思えてしまう。

 

「ぃっ。こらこら、爪を立てるんじゃない」

「立ててませんっ。なんですかっ、このっ、こんなっ。鉄みたいな胸板してっ」

 

からかわれてる事に気づいた私は、言い返す代わりに力を込めた。

胸板に置いていた指先を立て、ことさら爪を押し付けてみたものの、少し食い込んだくらいで何にもなりはしない。

 

「ははっ。お前の胸は、白パン見たいに柔らかいな」

「褒めるんだったら、もうちょっと…。ケーキとか、の方が」

「ん? まぁ、そうだな。リンゴみたいに赤い顔はしているか」

「バカっ!」

 

ガキンと、音がなったみたい。

拳を作った手を振り下ろした良いものの、軽く弾かれてしまった。

 

「腕の力だけで殴るなと、教えたはずだぞ?」

「むぅぅぅっ…」

 

ガキン、ガキン、ガキン…。

 

なんだか悔しい。少しくらい悲鳴を上げさせたくて、何度も拳で叩いては見るものの、駄々をこねている子どものような塩梅にしかならなかった。

 

「ふくれっ面も可愛いがな、リットリア」

「あっ…」

 

振り上げた拳が途中で止まってしまう。

乳首を弄っていたはずの彼の手は、気づけば私の太ももへ。その内側を、そっと撫でてくる。膝から、上へと向かって、ゆっくりと。薄い下着の一枚が隠す私の秘所に、彼の指が触れた。

 

冷たくはない。

 

焚き火の火と、私の体温、それに指先から伝わる彼の熱。

ぬちゅっとした。下着が濡れているんだ。滲んだ水分を舐め取るように、彼の指が私の秘所を撫で上げる。

 

「意味は、分かるな?」

 

おもらしをしたんだ。

 

そう思うほど子どもじゃなかった。

 

男女の営みの途中。男性を受け容れるための体の準備。女性としての正常な反応だ。振り上げた拳の落とし所が分からない。私は、男性として彼を受け入れようとしている。私は、女性として彼を受け入れたがっている。

 

ぬちゅ、ぬちゅ。繰り返される指の動きに、下腹が揺れ動く。

「はぁ…」と、吐き出した息は重さを増して、体が落ちていくような感覚に包まれた。

 

秘所の、割れ目の、その筋を。下着の上から舐めるように、彼の指が動く。

いやらしい。こんな事、何でもない顔で出来るくらいには女性との経験があるんだ。

気持ちよくなる。感じてしまう。期待はどんどんと膨らんで、強い興奮に心臓が早鐘を打った。

 

悔しいなぁ…。

 

彼にばっかり、してもらってる。私だって彼にしてあげたいのに、でも、どうして良いか分からない。触れば良い? 彼のその、おちんちん。股間にそっと視線が移る。ズボンを押し上げている膨らみは、きっとソレなんだと分かった。

 

振り上げた拳を下ろす先。

 

ズボンの上からそっと手で触れる。

 

彼の身体に跨った私の身体。その下で、窮屈そうに震えている膨らみを、手の平で包み込む。

 

「うぉっ…」

「あっ!? ごめんなさい、痛かった…ですか?」

「ああ、いや。急に触られたからな、少し驚いた」

「その、だって…。して貰ってばかりも悪いから…私、もって」

「ん? そうか…じゃあ、そうだな」

 

ガサゴソと、ズボンと下着をズラした彼は、その股間に屹立したものを際立たせる。男の人の、その、おちんちん。肉棒、男根、陰茎、男性器。頭の中でグルグルと、それを示す言葉が回っていく。

 

「こんな…だって、前は…こんなには、だって…」

 

大きい。余りに大きい。脱衣所でばったりとあった時は、もっとぶら下がっていたのに。今やその先端は、しっかりと私の方に向けられて、ビクンっと、力強く膨れ上がっていた。

 

「流石に、四六時中こうはしてないぞ」

「それは、分かります。だから、これは…そういう?」

「ああ そうだ、リットリア。お前に興奮しているんだ。抱きたいと、思っている」

「…っ!? そ、そう…ですか」

 

心臓が跳ねた。体が一段と熱くなる。

抱きたいと思われている。今からアレが、私の中に挿ってくるんだ。

本当に、挿るんだろうか? 分からない。自分で弄った事すらなかったから、感覚的にも追いつかなかった。

 

多少は広がるにしたって、でも、だって…。

 

「怖くなったか?」

「少し…」

「じゃあ…」

「ダメッ! 大丈夫っ、大丈夫ですから…多分」

「多分って…。まあ、正直、やめろと言われるのも辛いがな」

 

秘所から離れていく指先を引き止めるように、声を上げてしまった。

自信なんかない。頼みの綱は、生まれついての女性だけ。

 

「腰、下ろせるか?」

「…はい」

 

先端が、下着の上から私を舐めた。

とっぷりと、丸みを帯びた先っぽから溢れた汁が、下着に塗りたくられていく。

あれが、精液なんだろうか? 想像していたのとは随分違う。白濁としているとは聞いていたが、どうにも透明感が強い。

 

「クライスト…。その、もう、出ちゃったんですか?」

「おいおい。人を早漏みたいに言うな」

「あ、ごめんなさい。でもそれ、出てるの…精液じゃ?」

「違う違う。お前と同じさ。先走りってな、興奮すると出てくるんだよ」

「そう…なんだ。いえ、べつに…興奮してるとかじゃ、私…」

 

なんだか気恥ずかしい。勃起して、先端から汁を流して、男性として身体的な反応を目にすると、どうにも自分の女を意識してしまう。

ぬちゅり、ぬちゅり…。私に差し向けられた陰茎は、おちんちん なんて呼べるほど、可愛いものじゃなかった。つるっとした先端部分とはちがって、その途中は意外と不均一だ。浮き上がった血管も生々しければ、ビクビクと震える肉の棒は、何か別の生き物の様にも思えてしまう。

 

熱くて、固い。

 

下着越しに触れる彼の肉棒に、ムズムズとした。下腹が震えたかと思えば、秘所の隙間か溢れた愛液が流れ出る。ぬちゅり、ぬちゅり…。押し付けられた凸凹と、固い肉の感触が私の秘所を舐め上げた。

 

なんだろう?

 

頭がふわふわしている。

 

まるで、お酒を飲んだ後のように酩酊感が強くなる。

 

体から力が抜けて、ピタリと閉じていた秘所が緩むような。

陰茎が押し付けられて、割れ目が開いてしまう。でも、薄い下着に阻まれて、ソレ以上には挿ってこれない。

 

苛立ちが、伝わってくるようだ。

 

ビクビクと、下着の向こうで強く震えては、先端からとっぷりと、先走りを吐き出した。もう、私の股間はグチャグチャだった。自分の流した愛液と、彼の流した先走りが混ざり合う。滲んで、溢れて、ダラダラと。陰茎を伝い、跨った私の太ももからも零れて、彼の腰を汚していく。

 

「良い…よ? クライスト…私、うん」

 

何がよかったんだろう? 初めてなのに、何も分からないのに。

でも、受け入れて上げたかった。受け入れたかった。こんなにも、私のせいで固くなった陰茎を。

 

緊張はある。胸がドキドキして張り裂けそう。

 

不安はもちろん大きい。けどそれ以上の興奮と期待の方が強い。

 

自分から腰を持ち上げた。もう、下着を脱ぐなんて頭にすらない。

指を股間に触れさせて、下着と肌の隙間に忍ばせる。ぬちゅっと、熱くて、粘ついていた。こんな自分の体を、自分の体がこんなになるなんて、思わなかったな。

 

彼のことを考えて、胸がドキドキした。

 

そういう時は少しだけ、濡れてしまった事もあった。今は違うからと、胸の内に押し込んだ感情を、もう隠すこともない。女としての私が、彼を求めて止まない。

彼が私を抱きたいように、私だって彼に抱かれたい。

 

「愛して? クライスト…」

「ああ、もちろんだ。リットリア」

 

ぬちゅり…。

 

抵抗はなかった。

 

陰茎の先端が沈み込み、下腹に広がる違和感が大きくなる。

まるで警鐘のようだ。違和感は痛みに変わって、本当に良いのかと、私に問いかけてくる。

 

「んっ!」

 

自分から腰を落とした。

 

彼に甘えたくなかった。気遣われて、ゆっくり してもらうなんてイヤ。

私がそう望んだんだから、最後の一線は自分で越えたい。

陰茎の先端が、奥に届くその手前、何かが千切れたような感じだ。ふつっと、伸ばしたパン生地が途切れたような感触にも思う。

 

お腹が熱い。じりっと、ヒリ付くような感じもある。

 

その熱は じわじわとお腹に広がり、膣を伝って割れ目から、つぅっと太ももへと零れ出す。

 

「大丈夫か?」

「っ…はい」

 

言われるほどの痛みはなかった。

 

これも騎士の真似事をしていたお陰かな。多少の傷みに怯むほど、乙女ではなくなっていたらしい。喜んで良いのか、悲しむべきなのか。まぁ、でも。彼を慌てさせることが無かったのは、良かったかもしれない。

 

「それもそうだが…」

 

気遣わしげに、彼が私の脇腹を撫でていた。

ズキリとした。あんまり見ないで欲しい。白い肌に浮かんだ青痣は、やはり、興奮を冷ます程には痛々しかった。

 

「ごめんなさい…。こんな、傷…イヤですよね」

「そうじゃない。俺はただ、お前が辛くはないかと…」

「痛い、ですよ? そりゃ…あはは…。でも、初めてはそういうものだって、思うことに、しますから…」

「なるべく、優しくするな?」

「…うん」

 

頬を撫でた彼の指が、再び胸の膨らみへと触れていた。

固い手の平に包まれる。ふわっとして、ふっとした。脇の下に伸びた指に、膨らみをくすぐれると、体が落ち着かなくなった。

 

くすぐったい。けど、気持ちがいい。

 

気遣わしげに脇腹を撫でていた彼の手が滑ると、下腹を優しく撫でられる。

伸びた指先が、開らいた割れ目の袂に触れた。乳首とよく似た膨らみ。

けれど、それよりも小さい膨らみ。普段は、もっと隠れているのに。いつの間にか、私の陰核は、ぱっとみて分かるほどに大きくなっている。

 

「ひぅっ…♥」

 

ビリッとした。強く体が痺れてしまう。

腰が震え、背筋が伸びて、ふわっと、体から力が抜けていく。

甘く痺れる。さざ波の様な快感が糸を引く中、またビリッと、強い刺激に襲われた。

 

「ああっ…♥ ま、クライスト…そこは、刺激、が…」

「ん? もう少し優しいほうが良いか?」

 

言いながらも、今度は乳首に刺激が移る。

陰核を刺激されるよりは弱い。けれど、そっちの方が余計に辛い。

おっぱいを横からくすぐられているだけで、何か、もやもやした感覚が強くなる。

時折、思い出したかのように乳首を弄られると、力の抜けた体が甘く痺れてしょうがない。

 

「だめ、だから…」

「何がだ?」

「こんなっ、こんなこと。あっ♥ 他の、ほかのぉ…ゃっ。女の子…に、したら…もう、ああぁ♥ ぜった、ぜったいに…だめ、なんだ、からっ」

 

ひどい人だ。

 

こんな手管を他の女の子にもしてたなんと思うと、やりきれない気持ちが溢れてくる。付き合っていたわけじゃない。情婦が相手の時もあっただろう。

分かってはいても、彼を欲しがった私の女は、嫉妬を隠しもしなかった。

 

「随分と嫉妬深かったんだな? リットリアは」

「いや? しっとする、おんなのこ、は? だめ? クライストは…私、だけじゃ、不満、なの?」

「イヤでもないし、ダメでもない。お前だけいれば満足だ」

「あはっ♥ よかった…んっ♥」

 

ゾクゾクとした。

 

強い刺激に体が強張り、力が抜けていくと甘い痺れに包まれる。

陰核を、乳首を弄られて、横から胸をくすぐられているのですらたまらない。

快感が、快感を呼び込んで、刺激はだんだんと強くなる。それは一気に膨らんで、私の中でパチっと弾けると、背筋が反り返るくらいに力が入ってしまう。

 

「んんっ…! あ、あ、ぁぁぁ…はぁ…ひぃ、んっ…ふぅ…はぁ♥」

 

甘い痺れに包まれる。体から力が抜けて、気持ちがいい。

きゅんっと、下腹に力が入り、ふわっと、胸が浮ついた。

 

ズルっと、腰が落ちる。

 

まだ、奥があったんだ。

 

無意識に力でも入っていたのかもしれない。

 

純血を奪った陰茎が、更に奥へと入り込む。まだ、僅かにも残っていた陰茎の根本までが秘所に埋まって、お腹を少し持ち上げられた。

 

「あっ、はっ…ぁぁ♥」

 

恍惚とした吐息だ。

 

まだ男を知らなかった少女のものでは決してない。

愛されることの実感。異性と交わる快感を知った体は熱を上げ、せがむようにと吐息を零す。

 

「動くぞ、リットリア?」

「うん、うんっ…」

 

彼の呼びかけに、力強く、何度も頷いた。

頷きながら腰が浮き上がり、強い刺激に、ぎゅっと力が入ってしまう。

 

甘く、痺れ、力が抜けて…。

 

敏感になった秘所の中を、陰茎が外へと抜け出ていく。

ぬるっと、ぬるぬると…。抵抗なんて無い。すっかりと彼の形を覚えた私の中は、その動きに合わせて陰茎を締め付ける。

 

「あひっ♥ あっ、あぁっ♥ くらい、すとっ、くらいすとぉぉっ♥」

 

うわ言のように名前を叫んだ。彼の陰茎に突き上げられる度に、下腹に力が入って、快感が凝縮されていく。突き上げられ、キュッと締まる。引き抜かれて、ふわふわする。

 

全身を覆う甘い痺れに、訳が分からなくなった。

 

抽挿の感覚は次第に短くなり、体から力が抜けるヒマがない。

 

だめ、もう、むり…。

 

せめて、息継ぎをしたくって、逃げるように腰を浮かせた。

突き上げてくる刺激が遠のき、ふわっと、体から力が抜けて。

 

「あああっ!? だ、め、まって、クライストっ、はげしっ、少し、やすませ…んんっ、もっと、ゆっく、り…あひっ♥ ひぅっ、はっ、はっ、はっ…♥」

 

逃さない。

 

そうとでも言うように、逃がした腰が掴まれる。

 

ズキリ…。痛む脇腹の痛みに体が怯み、けれどそれすらもう、快感の一部に変わっていく。ああ、クライスト、クライスト。彼が必死になって私を求めてくれている。

 

覚悟をしていてよかった。

 

優しいままで終わったら、ちょっと拍子抜けをしてしまったかもしれない。

それが不満というわけでは決して無いけれど。気遣われるままに終わってしまうのがイヤだった。

 

ガクガクと腰が震え上がる。

 

もう限界だ。

 

下腹には力が入りっぱなしで、突き上げてくる陰茎を締め付ける。

ビクンッと、震える気配は大きくなった。ビクビクと、膨らんだ陰茎に秘所が大きく開かされる。

 

「リットリアっ。出すぞっ、全部…受け取ってくれ」

「はいっ。はひっ♥ クライストっ、どうぞっ、全部…私の、あはっ♥ 中、貴方の、でっ、やっ、はっ♥」

 

出して。

 

それを口に出来たかどうか。

 

ガツンっと、腹の中で強く響く。陰茎の先端が私の奥へと、突き刺さった様な気さえした。反射的に背筋が反り返り、下腹が強く、強く、陰茎を締め付ける。

 

ぞわり、ぞわぞわ…。

 

下から上に、誘うように蠢いて。

 

その瞬間、大きく跳ね上がった彼の陰茎から、私の中へと、大量の精が吐き出された。先端を濡らした先走りとはまるで違う。なるほど。それを一緒にしたら、男性としては不名誉極まりないだろう。

 

かぁっと、下腹が熱くなる。飛び出した精液は、私の子宮にすら届きそうな勢いだった。ドクンっと跳ねて、ドクドクと震えて。陰茎を伝って、熱く滾った精液が、何度も、何度も、私の中を満たしていく。

 

「あ…♥ あぁ…♥ あぁぁ…♥」

 

心が解けていくみたい。

 

お腹には、力が入っているのに、全身から力抜けていく。

陰核からも、乳首からも。あぁ、あぁ、もっとだ。指先から、つま先から、力が抜けていく。

 

全身が、甘く痺れて気持ちがいい。

 

ドクドクと、注がれる精の熱に気が遠くなる。

 

愛してます、クライスト。

 

たった一言、どうして言えなかったんだろう。

 

ああ。嫌だ。嫌だ。やめて。せめて。

 

その一言を伝えるまでは…。

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