※この作品はR-18です。

きゅーとあぐれっしょん   作:霧里

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終わらない悪夢(Hシーン

 

瞼の裏に朝日を感じた。

 

待って、もう少しだけ…。

 

夢を夢だと意識する。覚めてしまわないようにと強く瞼を閉じるほど、悲しいかな、夢はどんどんと霞んでいった。

 

朝。目を覚ましたリットリアは、知らないベッドの上に寝かされていた。

 

上等なシーツからは、柔らかい花の香りがする。まったく重さの感じない羽毛の布団に体を包まれ、寝起きのまどろみからは、中々抜け出せない。

 

天蓋付きのベッド。大きな窓から差し込む朝日。

まるで、どこかのお姫様にでもなった気分。一度はそういう体験にも憧れたものだが、今は慣れ親しんだ宿舎のベッドの方が恋しい。

 

そう…。

 

だったら、どれだけ良かったか。

 

今までの全部が、弱気な私が見せた悪い夢。負けて、犯されて、皆死んじゃった。

そんな全部が、夢であってくれたらと、そう願って何が悪いのか。

 

ひどい夢だった。

 

団長と、クライストと結ばれる夢。あんまりにも幸せすぎて泣けてくる。

私がもう少し勇気を出せていれば。あったかもしれない将来は、けれどもう、二度とは手が届かない。

 

「…っ。くらい、すと…。くらいすと…。ごめん、なさい…ごめんっ」

 

涙を拭ってくれる指先も。大丈夫だと励ましてくれる声もない。

溢れた涙は止まらずに、悔しさに握った拳をベッドに叩きつけた。

 

ぽふっ…。

 

落とした拳は吸い込まれるように。揺れるベッドに体が弾む。

ぽふっ、ぽふっ、ぽふっ…。何度も、何度も、そうやって、気が晴れるまでベッドを殴りつけた。

 

誰も傷つかない。殴りつけた私の拳ですら、柔らかく弾むだけ。

それが余計に辛い。心に澱んだ悔しさは、誰かを傷つけろ叫んでいる。誰でもいい。八つ当たりだ。その憤りが、一番近くにある自分に向いただけ。

 

「かなしい…。やめて、ホコリが舞ってしまうから」

「へ?」

 

静かな女(ひと)だった。

 

そう、声を掛けられるまで気づかないほどに、静かな女の人。

黒い髪と、白い顔。その無表情が見せるのは、どこか物憂げな雰囲気だ。

 

膝の上にクマのぬいぐるみ を抱えながらも、たおやかな指先が器用に動く。

針仕事に縁遠いに私には、それは魔法のようにも見えた。ちくちく、ちくちく…。糸が解れ、綿の飛び出ていたぬいぐるみは、見ている間にも、傷口が分からなくなってしまう。

 

「貴女…は?」

「ハンナドール。そういう女よ」

「そう、でしょうけど…」

 

そうと言われて、頷いてしまった。

けれど、私達は初対面だ。それで納得をするには、余りに情報が足りてない。

 

「それは?」

「あの子のよ? また、壊してしまったのね…」

 

あの子。そう言われて思い浮かぶ顔がある。

私より、二つか、三つも小さい女の子。白いドレスを着た女の子。無邪気に笑う女の子。あの小さな両手に抱えていたのが、生首ではなく、クマのぬいぐるみであったなら、それはとても似合っていたことだろう。

 

確信はない。けれど、そうだと思う。

 

ハンナドール。そう名乗った彼女からは、首のない騎士卿、ユーレリアと同じ感情が読み取れた。親から子へ、姉から妹へと向かう感情よりも重い。

依存か、執着か。それを愛情と呼ぶには躊躇われた。

 

「そんなもの…。どうせすぐ捨てられますよ」

 

嫌味か。自然と口を付いて出た言葉に、自分でも驚いてしまう。

ベッドを殴りつけても晴れなかった心の澱み。自分以外に見つけた八つ当たり先に、飛びついてしまった。

 

あの子の何が私に分かるのか。

 

でも、自分を守ってくれた騎士の首すら、ボール見たいに扱うくらいだ。

クマのぬいぐるみ一つ、大切にするとは思えない。

 

「そうね」

 

ハンナドールはその手を止めず、ただ静かに頷いただけだった。

私の嫌味に怒るでもなければ、気分を害した様子もない。

 

「虚しくは、ならないの?」

「ならないわ」

「嘘っ。そんなはずないっ。ハンナドールっ、貴女だっていつかはっ」

 

捨てられるはず。その ぬいぐるみ みたいに。

 

流石に、そこまでの言葉は出なかった。ほとんど言ってしまったような ものだとしても、人を傷つけることに慣れない私は、既の所で躊躇ってしまう。

 

「かなしい…。見返りが欲しいのね。愛したのだから、愛して欲しい?」

「それはっ、そんなのっ。誰だってそうっ。貴女は違うっていうのっ」

 

ぷちっと、糸が途切れた。

 

たおやかに動いていた指先が糸を結び、抱え上げた ぬいぐるみを口元へと寄せていく。ちょっとだけ、ドキッとしてしまった。まるでキスをするような。

私にはない女性の仕草に、思わず見惚れてしまう。

 

「可愛いのね、リットリア」

 

嘲るでも、微笑むでもない。変わらない無表情はそのままに、出来上がった ぬいぐるみが枕元に添えられるのを、見ている事しかできなかった。

 

リットリア。彼女は私をそう呼んだ。

 

そう言えばそうだ。意識を失う前、最後に私はどうしただろうか?

あの子に名前を聞かれて、とうとうと、答えてしまったのだろうか?

 

「あの子に、聞いたんですか?」

「いいえ。彼からよ」

 

彼。彼。彼と言ったの? 彼女は、一体誰の事を言っている。

 

「かなしい…。ずっと、名前を呼んでいたわ。リットリア、リットリア、リットリア。館の前で、声すら届かないのに手を伸ばして。ずっと、ずっと、名前を叫んでいたわ」

 

反射的に飛びかかっていた。

 

考えることを放棄した。

 

目の前の女を引き裂けと、澱んだ感情が爆発する。

 

「貴女がっ! 貴女が殺したっ。彼を、クライストっ!!」

「逃げてと、そう言ったのよ? 私は…。そうしないから、こうなっただけ」

 

けれど、ダメ。

 

ハンナドールに掴みかかった私は、逆に押し返されてしまう。

両手を抑えられ、足をバタつかせて、どんなに埃を巻き上げても、彼女に力で敵わない。

 

ユーレリアに敵わないだけなら良い。

 

あの大柄な偉丈夫に、押さえつけられるのなら仕方がない。

でもこんな、鍛えてもなさそうな女の細腕さえ、跳ね除けることが出来ない自分がイヤになる。

 

「返せ…、ひくっ…んっ。はぁ、はぁ、返して、よ…お願い、だから」

「かなしい…。もう、何もないのねリットリア。貴女には、何も残ってない」

「奪ったんでしょうっ!! 貴女、達が…全部、私からっ」

「そう。だとして…。何だというの? 図々しい…」

「ずうずうしいっ!? 私がっ」

 

彼女の言葉に、頭が熱くなる。

私から、全部を取り上げておいて、その言い草は許せるものじゃない。

 

「奪いに来たのでしょう? 奪われもするわ。彼の命も、貴女の純血も、その涙のひと粒だって」

 

ズシリ…。

 

空気が重たくなった。

 

「かなしい…」と、呟く声。しくしくと、瞳から涙が溢れ出る。

泣きたいのはこっちだと、けれど口を挟める空気じゃない。

 

押し潰されそうな威圧感に、指先の一つも動かせなくなった。

 

呼吸をするのですら辛い。

 

知っている。この感情を。

ああ、馴染みのあるものだ。私の心の澱みをそのままに、もっともっと、長い時間を掛けて押し固めたもの。恨み辛み妬み嫉み怒りと…悲しいだ。

 

「んっ!?」

 

なにを。口にする暇もない。唐突な出来事に、頭が真っ白になる。

艷やかな彼女の唇が、私の唇に重なった。それはまるで、瑞々しい果実の様な。

当然、クライストの唇とも似つかない。あの子の薄い唇の方こそを思い出すが、それともまた違っていた。

 

女の性を感じさせる唇。

 

子どもの悪戯なんかじゃない。私が、背伸びしても届かない。

ぎゅっと、身体に力が入る。抵抗したいのはそう。けれど、それ以上に気持ちが良いと、思ってしまった。

 

悔しい…。

 

ユーレリアに負けた時とは違う悔しさだ。

 

あの時、聖女としての私は負けて。今この瞬間に、女としても負けていた。

夢の中で、彼にされるがまま、自分の気持ちを押し付けるままに、キスをしたのとはまるで違う。

 

贈る側と受け取る側、お互いの存在を確かめ合うような 口づけだった。

 

触れられて、戸惑う私の唇が優しく塞がれる。一つ、二つ、触れた唇は動かない。お互いの温もりが行き交って、目の前に彼女がいるのが分かる。

ふわり、包みこまれるようだった。花の香り思わせる甘い匂い、ハンナドールの香りにつつまれて、強張っていた心が解けていく。

 

気持ちが良い。触れて、触れられて。気持ち良い。

さっきまで、私のどこにも居なかったのに。するりと、寄り添うように、彼女の存在が、私の心へ入ってくる。

 

「はぁっ…はぁ…んっ」

 

寂しいと思ってしまった。行き交っていた体温が途切れ、ちゅっと、小さな水音がなった。慌てた私は、咄嗟に手の甲で唇を拭い、顔を逸らす。

照れ隠しだ。そう思われても仕方がない。瞳を潤ませ、頬を赤く染めて。「はぁ…」と、漏れる吐息は熱っぽかった。

 

「気持ち、よかったですか?」

「そんなわけっ…」

 

ないなんて事はない。もし彼女との出会いが違っていたなら。

例えば、同じ騎士団の仲間だったり。例えば、小さい頃、良く良く面倒見てくれた、少し年上のお姉さんだったり。多少の好意が彼女にあれば、そのまま身を任せてしまっていた気さえする。

 

「かなしい…。何もかもを忘れて、彼に抱かれる夢は、さぞや心地がよかったでしょう?」

「なっ…あっ…!」

 

言葉に詰まる。自分の思い違いに顔が熱くなった。

それと同時に許せなかったのは、あの夢を見せたのが、彼女であったこと。

自分の、もう叶うことすら無くなった、ささやかな夢物語でさえ奪われてしまったこと。

 

「…貴女が、見せたんですか。あんなものを…」

 

ギリっと、歯を食いしばって彼女を睨みつけた。

 

「いいえ、見たのは貴女。私は少し、手伝いをしただけ。意外と、スケベ、なんですね?」

「なっ、私がっ! なにがっ、どうしてっ…」

 

けれど、私の怒りは続かない。静かに首を振った彼女が、ぽつり、零れた言葉に顔を熱くさせられる。

 

「知らない夢は、見れませんもの」

「んくっ…」

 

言い訳が出来ない。あるいは、彼の裸を一度も見たことがなければ、もっと曖昧な夢になっていたかもしれない。ツギハギの知識と、目に焼き付いた記憶を混ぜて、私は、私の願望を叶えただけ。

 

「皆、貴女のせいで死んでしまったのに。皆の屍の上で、彼に跨るのは、そんなに心地が良かった?」

「ちがっ、忘れてたわけじゃ…忘れたかったわけじゃ…でもっ!」

 

ダメだ。聞いちゃダメだ。感情がゴチャゴチャにされる。

彼女に対する怒りと、自分に対する羞恥心。「でもっ」なんだ。皆に対する罪悪感を、一瞬でも忘れてしまったのは事実じゃないか。皆無事だと。彼の口から、私は。そうやって、頭の外に追いやって、私は…。

 

「かなしい…。皆、貴女の為に死んだのに。それなのに貴女は…。リットリア。貴女が呼んだのは、彼の名前だけ。貴女が求めたのは、彼の心だけ…。なんて、報われない」

 

しくしく、しくしく、しくしく…。

 

女の泣き声が、頭に響く。イライラする。金切り声のような煩わしさだ。

やめて、泣かないで、聞かせないで。気が狂ってしまいそうだから。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」

 

耳を塞いで、頭を振って。傍から見たらもう、私は狂っていたに違いない。

「ごめんなさい」を繰り返しながら、涙を流す。それでも、彼女は泣き止まない。

お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。ただの泣き声のはずなのに。涙の一粒一粒が、私に指を指す。

 

「うるさい…うるさいっ、黙ってっ! だってっ! 私はやったっ。精一杯やったのっ!! 皆だって良いって言ったじゃない。私のせいにばっかりしないでよっ! 私に押し付け…ないで。聖女…じゃ、ない。そんなの無理だって、言ったの、言ったもん…なのにっ」

 

ー

 

ぎぃ…。

 

ベッドの軋む音がした。

 

それは、安い寝台特有の居心地の悪さだ。

肌触りの悪いシーツと、安いだけが取り柄の薄い毛布は、湿気ったまま。

いつも訓練で へとへとに疲れた私は、布団を干すなんて事すら怠る有り様だった。

 

自分の部屋だ。

 

慣れ親しんだ自分の部屋。

 

閉じたカーテンの裏側から、僅かに陽の光の気配が漏れる。

ベッドと机と、それに物入れがあるだけの小さな部屋だ。

 

飛び起きた私は、荒い息を繰り返しながら周囲を見回した。

 

夢?

 

分からない。だとして、どこから?

 

そうだったら良い。

 

今までの全部が夢で、まだ私達は出陣すらしていない。

 

「ぬい、ぐるみ…?」

 

けれど、見慣れない物が一つだけあった。

クマの、ぬいぐるみ。それは、さっきまでハンナドールの手にあったもの。

そして、私の部屋には無かったものだ。縫い付けられて、もう傷跡も分からない。新品同様。枕元に置かれたぬいぐるみが、そのままそこにある。

 

手を伸ばし、触れようとして。

 

「あぐっ!?」

 

唐突に、頭が後ろに倒れた。

 

髪が後ろに引っ張られる。痛いと、思う間にも、視界が天井を映してしまう。

 

「ほら、逃げんなよ、リットリア!」

「にげ、なに…いたっ、やめ…はなしっ…」

 

野太い男の声だった。アルコールで灼けて、しわがれた声だった。

逃げる? 私が、なんで? 自分の部屋にいたはずなのに、これ以上何処に逃げるというの?

 

「ははっ。情けないもんだな。聖女様ったって、聖剣がなければこんなもんかよ」

「ぐっ…。一体、なん、なの…っ」

 

ぶちっと、後ろ髪の何本かを引きちぎりながらも、掴まれた髪を振りほどく。

やっと思いで前を向き、強引にでも立ち上がろうとして。けれど、気が付かなかった。部屋が暗かったから。いきなり上を向かされたから。目の前に立ってる男の人影に、今になって気づく。

 

同時にバシンっと、強い衝撃に、今度は顔が横を向かされる。

 

「なっ、えっ…」

 

頬を打たれた。頭が揺れる。突然の事に動揺して、思考が固まってしまった。

ダメだっ。考えるのをやめちゃ。戦場でそんな事をしたら、すぐに死んでしまう。

そう何度も、団長に言われてきたじゃないか。

 

揺れる頭を振って、なんとか意識を取り戻す。

 

けれど、これは、どうした事だ。

 

さっきまで私一人だと、そう思っていた。

思えば、目の前に立っている男も、後ろから私の髪を掴んだ男も、唐突に現れた様な気がする。

 

ハンナドールか、これも彼女の仕業なの?

 

少しだけ、期待してしまった。また、クライストと一緒にって。

夢でも良い。そこにしか幸せが残っていないのなら、私はそれでも構わない。

 

そんな自分が許せなかった。

 

どれだけ弱いんだ。みんな私のせいで死んだのに。全部私が悪いのに。

都合の良い夢に逃げるだなんて、そんな事許されるわけがない。

私一人が幸せになるなんてこと。私はもっと不幸にならなきゃ釣り合わない。

 

その感情は、確かに私の中にあったんだ。

 

聖女でも、聖騎士でもなくなって、ただの少女としても終ること。言葉に出来るほど、大きくはなかった願望が膨れ上がっていく。

 

一人、二人、三人四人…。

 

一人で過ごすにさえ手狭に感じる部屋に、男の影がいくつも増えていた。

彼らの瞳は一様に血走り、ニヤニヤ、ニタニタ、下卑た笑みを隠しもしない。

獣のようにギラついた視線が肌に突き刺さる。

 

「ひっ…」

 

思わず、小さな悲鳴を漏らしてしまった。

欲を隠しもしない男達の視線に、自分がただの少女でしか無い事を思い出す。

 

剣の一振りでもあれば、こんな奴ら。

 

立ち上がろうとして肩を掴まれる。当然、力じゃ敵いもしない。ベッドに引き戻された私は、足をバタつかせ、暴れて見せる事しかできなかった。

 

「え…」

 

裸、だった。

 

その時になって、私はようやく気づく。自分の体が、下着の一つも着けていないことに。男たちの下卑た笑みの理由。裸の男たちの中に、裸の少女(わたし)が一人放り込まれている意味。

 

「くっ! やめっ、離してっ、はなせっ!!」

 

拳を握り、後ろから私を羽交い締めにしようとする男へ、肘を後ろへ打ち下ろす。

「ぐおっ」と、悲鳴が聞こえる中、足を伸ばして目の前の男を蹴り上げた。

 

大丈夫、体は動く。私はまだ大丈夫。

こんな奴らに、肌を許しはしない。だって、私は。この体は、彼の、クライストのものだから。

 

拘束が緩んだその隙に、立ち上がった私は、けれど、そこまでだった。

 

「くっ…。卑怯者…。丸腰の女一人に…剣を抜くなんて。貴方達…こんな事して、団長が…」

 

キラリ…。薄暗い部屋の中でも分かる。鋭く光る剣の切っ先が、私の喉元に突きつけられた。

 

「許すさ。今は俺が団長なんだからな」

「なっ…それはっ。団長、クライストはっ」

「お前が殺したんだろうがっ。クライストだけじゃねーな。エドも、ヴィックも、ライナーもお前について行ったバカは皆だ。そのくせ、なんでお前が一人が生きてるんだ?」

 

私を睨む顔には覚えがある。

 

好かれているとは思ってはいなかった。最初からだ。小娘なんて邪魔だって、公言して憚らなかったから。戦い方も覚えて、聖剣も上手に使えるようになって、私を擁護する声が大きくなると、それも無くなってはいたけれど。

 

バシンっ…。

 

また頬を殴られる。怯んでしまった。頬を殴られたことよりも、団長を、皆を殺したのだと、指を差される方が辛かった。私が「行く」なんて言わなければ。言い訳も出来ない。ごめんなさいと、謝ったって、死んだ彼らは戻ってこない。

 

「皆に守られて、チヤホヤされて、お姫様気分は気持ちよかったろ? でももうおしまいだ。お前は騎士じゃない。聖女でもない。騎士団を壊滅させた魔女として、処刑されるんだよ」

「なっ…うそ、私…なんで」

「なんでもあるかっ! 事実じゃねーかっ!」

 

バシンっ…。

 

また、頬を殴られて目が回る。魔女? 処刑? なんで、なんで。状況が飲み込めず、顔を上げることすらもう出来なかった。

 

「あ、いやっ…」

 

体が後ろに引っ張られる。気づいた所でもう遅い。

抵抗しようとして、けど、その理由が見つからなかった。責任を取って死ねと言われれば、私には拒みきれない。

 

「でも、俺は優しいからよ。王様に頼んだんだ。コイツが使えなくなるまで使わせてくれってな。生意気だけど、見てくれだけは良かったからな、お前は」

 

あぁ、でも、それは、それだけは…。

 

殺されるだけならまだいい。処刑台に掛けるならそうすれば良い。

夢見心地が、まだお腹に残っていた。クライストに抱かれた記憶。逃避の先に見た都合の良い夢だったとしても。私のお腹にはまだ、受け止めた彼の熱が残っている。

 

「ぁぁ…ぃゃ。やだっ…やめてっ…」

 

蹴り出した足が空を切る。力なんて入っちゃいない。

団長を、皆を、殺した。その事実を突きつけられた私は、抵抗の意思を挫かれる。

 

「ほら、暴れるんじゃねーよ。それとも、誘ってんのか? どうせ、クライストともやりまくってたんだろうしな? 今更だろ?」

「なっ!? 彼はっ、そんなことっ。貴方なんかと一緒にしないでっ!」

 

彼の事を揶揄されて、身体に少し力が戻る。

私のことは良い。どう詰られたってしょうがない。でも、彼を、クライストを悪く言われるのは我慢が出来なかった。

 

「なはははっ! 団長様は腰抜けだったわけか。ヤレル女が手元にあって、手もだしやがらねーとはな」

「くっ、この…はなせっ、はなし、てっ!」

 

立ち上がりたくても体を起こせない。

両脇から回された男の太い腕が、ガッチリと私を抑え込む。羽交い締めにされた私は、肘を落とす事すらできなくなった。蹴り出した足は軽々と掴まえられ、持ち上げられた腰が、ベッドから浮き上がってしまう。

 

「あ、いや、やめ…」

 

ぐっと、閉ざそうとした足に力が入る。

足首が痛む。引き剥がされそうになる太ももの内側を、必死に擦り合わせて、でも少しずつ、私に見せつけるように、足の間は広がっていった。

 

悔しい…。

 

こんな事…。

 

クライストを悪く言われて、でも、何も出来ない。

 

ユーレリアに、彼女たちに負けた時とは違う悔しさだ。

純粋に勝てなかった。敗者の末路としては、しょうがないと、納得出来る部分もある。

 

でも、こんな人達に。

 

私は、彼らに何一つ負けてない。

 

気位だって、剣の腕だって。

卑怯なだけの人たちに、負けてもない相手に、好きにされるのだけは。

 

「ほら、ご開帳だ。皆よく見ろよ、聖女様のマンコだぜ? キレイなもんだなおい。これに手を付けないとか。ありがとうよ、クライスト。あの世で見てな、お前の女の処女が散る所をよ。はははっ。悔しいだろなぁ。見抜きくらいはゆるしてやるぜ。オレは優しいからな」

 

いや、やめて、みないでっ。

 

否定の言葉は一つも届かない。仲間と思われてなかったのは元からか。

クライストの手前、大人しくしていただけ。彼らにとっての私は生意気な小娘でしかない。それを好きに出来るとなれば、躊躇なんてしないだろう。

 

秘所を隠そうとして手を伸ばす。

 

けれど、後ろから羽交い締めにされた私はどうする事も出来ない。

本当は、胸だって隠したいのに。今の私に出来たのは、精々が身を捩る程度。

男たちの視線から、少しでも肌を隠したかった。

 

「暴れないでよ、リットリアちゃん。僕だって、傷つけたくはないんだ。大人しくしてればすぐ終わるって」

 

優しげに、一見すれば。でも、それは、獲物の前で舌なめずりをするヘビの様な陰湿さがあった。ふぅっと、耳元に息を吹きかけられる。生暖かい。それに、タバコの匂い。近づいてきた男の顔は、私に頬ずりを繰り返すと、ぺろり、首筋を舐められた。

 

ゾクリとする。

 

気持ちが悪い。

 

振りほどこうと体を暴れさせても、力じゃ全然敵わない。私の裸は晒されたままだ。胸の膨らみも、恥ずべき場所の秘所ですら、周囲に立ち並ぶ視線に射抜かれる。目の前で、私を見下ろす男には、もっと良く見えただろう。

 

「さぁ、いくぜリットリア。愛しの団長様のチンポだぜ。ちゃんと咥えろよ?」

「くっ! 誰が、お前を団長だなんてっ。いや、やめて…こないで、くるなぁ…」

 

思い切りに、足が開かれた。

 

隠すことも、防ぐ事も出来やしない。

男の体が足の間に入るともう、閉じることさえ出来なくなった。

ビクンっ…。脈打つ陰茎がそこにある。先端から だらだらと、先走りが涎の様に滴り落ちる。まだ、触れてもないに熱気が伝わってくる気がした。

 

くちゅり…。

 

「あ…やだ…ぃゃ…」

 

ピタリと、閉じていた私の秘所。その割れ目に陰茎の先が食い込んだ。

まだ濡れてすらいない割れ目の隙間は、男の先走りに濡らされて、入口を広げていく。

 

「たすけ…クライスト…」

 

私は、弱かった。

 

もう、何処にもいない彼の名前をついと、呟いてしまう。

勇気なんて湧いてこない。私が殺したと、私のせいでと、事実が心を重たくするばかり。

 

「助けになんてこねーよっ。お前が殺したんだからなっ!」

「ちがっ…私はっ、だって…だって…んあっ!!」

 

男の腰が突き出された。

 

一気に開かれた割れ目の奥へと、陰茎が勢い着けて駆け上がってくる。

先端に、奥の奥を突き上げられて、体が少し持ち上がった。

息が詰まる。ぎゅっと、下腹に力が入り、腰が震えて、背筋が伸び上がってしまう。

 

快感なんてない。

 

あったのは、挿入の衝撃と、体を貫く痛みだけ。でも、それ以上に心が痛かった。また、クライスト以外のモノを受け入れてしまった。

 

「あ、なんだ? 処女じゃねーな…リットリア? クライストとはヤッてないって。他の誰だ?」

「そいや団長。この女どうして一人無事だったんですかね? 聖剣も失くしてさ。聞けば、裸で放り出されてたって話し、ホントなんすか?」

「ああ、そういう事か。リットリア、てめぇ。魔物の相手に股開いたな? 魔物に処女捧げて、命乞いでもしたのか?」

 

言葉の刃が、事実として胸に突き刺さる。

 

捧げてない。奪われただけ。命乞いすらもしていない。皆を助けるために、身代わりにもならなかったけど。でも、それを口にしてどうなるの? この男たちの中では、私はもう魔物に股を開いた女という事になってしまっている。

 

「聖女様が、魔物と姦通するなんてなぁ? もう、魔女だって言われても、言い訳できねーな? 魔物とヤッた女なんてクライストでもお断りだろうぜっ」

「やって、ない…。私は…そんなこと」

「一人だけキレイな顔して帰ってきて、なに言ってやがるっ!」

「っ!」

 

バシンっ…。

 

頬を叩かれた。

 

「あーあ、白けたぜ。せっかく、てめーの処女を頂けるって思ったのによ。魔物のチンポの後じゃ、人間様のじゃ満足できねーか。この淫乱め」

「ちがうっ、ちがうっ…」

「じゃーちったー喘いでみせろよ? 団長様のおちんぽ気持ちいいですってなぁっ!」

「あぐっ!!」

 

ぐっと、腰が引かれ、がんっと、一気に突き上げられる。

口を噤んで耐えれば、魔物と姦淫する魔女扱い。少しでも声を上げれば、淫乱な聖女様だと笑われる。

 

どっちだっていいんだ。

 

コイツらは、ただ私を笑い者にしたいだけ。欲望のはけ口としてしか見ていない。

 

「誰がっ、言うもんか…。おまえ、の、おまえなんかの…粗末なっ、んあっ!」

「粗チンで悪かったなっ、魔女様よ。でも、その粗末なもので喘がされてるお前はなんなんだっ!」

「くはっ! あえいで、なんかっ…はぁ、はぁっ。ぃぃっ、つ、はっ、勝手な事…ああっ!!」

「お、今のは中々いい声だったな。こうか、ええ? こうされると堪らないのか?」

 

男の陰茎が、私の中で暴れまわる。

愛情も、技巧ですらもない。好き勝手に暴れまわる獣の動きだ。

ただ痛い。柔肉が捲られ、傷跡を掘り返すような痛みに、下腹がヒリついた。

 

異物を追い出そうと下腹に力が入る。

 

痛みに反応した体は、鼓動の音を上げていった。

肌は染まり、柔肉は粘液に塗れ、吐き出した悲鳴はとうとうと、熱を孕むようになる。

 

それは、遅れて見せた女の反応だった。

 

悔しい…。

 

涙が出る…。

 

気持ちいいなんて、そんな事、ある訳がないのに。

それでも、自分の女の部分を止められない。繰り返される刺激に体は慣れて、だんだんと、下腹に感じる痛みですら薄れていく。

 

ぐちゅり、ぐちゅり…。

 

自分の中を掻き回す肉の感触。

 

熱くて、固くて、太くて…。

 

ああ、確かにそうだ。クライストのモノに比べれば、確かに粗末なモノかもしれない。けれど、不慣れな私の体には、それでも まだまだ大きかった。

ミチっと、広げられた入口が裂けてしまいそう。乱暴に動くだけの陰茎は、私の反応など構いもしない。

 

動いて、刺激を引き出すだけ。

 

ビクビクと、震えが強くなる。私の奥を狙うように、一突き、一突き事に、膨らんでいく射精の気配。繰り返される腰の動きは大きくなり、どんどんと、乱雑になっていく。

 

「ああっ! だ、めっ…やめ、なか、には…。せめて、外にっ、だしてっ! おねがっ…」

「あ? それが人にモノを頼む態度かよ? 出して欲しけりゃ、言ってみな? 団長様って」

 

そんなの、それは…。

 

私にとっての団長はクライストだけ。こんなやつを団長だなんて呼ばない、呼びたくない。けど、でも。そうじゃなければ、こんな奴の精を受け入れなきゃならない。

 

「ぐっ! あっ! っぃぃっ…」

 

突き上げられる度に腰が震えてしまう。

 

男の陰茎は、固く閉ざされた私の入口を見つけてしまっていた。

子宮の、その入口に陰茎の先が突き刺さる。いやだ、いやだ。体を引きつらせ、少しでも陰茎から遠ざかろうとする。

 

けれど、すぐ後ろにも男の体はあって、私の身体を掴んで離さない。

 

そそり立つ陰茎が、お尻に押し付けられている。

 

そんなつもりなんかない。秘所を突き上げてくる陰茎から、腰を逃がす。

その度に、お尻にこすりつけられた陰茎が震え、大量の先走りを零す。はぁ、はぁ…。荒い男の息が、頬に、首筋に、拭き掛かる。どろどろと、もう、射精されてしまったかのように、私のお尻は先走りでベタついてしまっていた。

 

生温かい、気持ちが悪い。

 

その内に我慢しきれなくなたのか、男は自分から腰をゆすり始め、先走りを塗りつけるように動き出す。右の胸、左の胸を、男の手に掴まれた。わしっと、握り潰すように。膨らみが形を変えられ、手垢を塗り込むように捏ね回される。

 

「いつっ! やめ、むね、乱暴に…ああっ」

 

一瞬、胸へと意識が逸れると、秘所を犯す陰茎が大きく動いた。お腹の奥を突き上げられ、腰が震えて、背筋が伸びる。繰り返される刺激に、縮こまってしまった乳首を指で摘まれた途端「あっ…」と、鋭い声を漏らしてしまう。

 

「気持ちいいのかい? リットリアちゃん。団長に犯されながら、乳首いじられて、ちょっと感じちゃったかな?」

「違うっ。感じて、なんか…いやっ、あっ、やめ、さわらなっ…ぃぃっ!」

 

だめだ。

 

口を開くと、声が上がってしまう。

 

でも、ずっと黙ってもいられない。

 

刻々と、近づいてくる射精の瞬間は、私に選択を強要する。

言うか、言わないか。団長様と、この男を認めるか、どうなのか。

 

「お願いです。お願いっ、します…。団長、さま。情けを…貴方にまだ、情けがあるなら。中は…中だけは、ゆる、して…」

 

悔しい…。

 

涙を流しながら、私は彼を団長と呼んでしまった。

呼びたくなかった、こんな人を団長だなんて。でも、こんなやつの精を受け容れるなんてもっとイヤ。

 

陰茎に突き上げられる度に、子宮が震えてしまう。

怖いんだ。出されたくない。万が一にも、こんな人のを身ごもってしまうなんて、考えるだけもイヤ。

 

「あははははっ!」

 

笑った。笑っていた。

 

男は、大層と愉快そうに笑っていた。

 

「あの小生意気なリットリアが、オレのことを団長様だなんてよ。いや、生きてて良かったぜ。報われねーよな、あいつらも。ヤれない女を持て囃して、魔王討伐なんてバカみたいな事に命掛けやがって。、まぁ、おかげで? 生きてる俺達はこうやって、おこぼれにありつけるってわけだ」

「なんで、貴方みたいのが、騎士なんて…」

 

その物言いが許せなかった。

 

皆、国のために死んでいったのに。それが私のせいだとしても。

生き残ったのは、こんな、自分のことしか考えない人だけだなんて。

 

生き残った彼らは、ある側面では正しかったのかもしれない。

 

でも、こんな人達が、国を守れるなんて思わない。

 

「あ? 団長様だろ、リットリア? もう忘れちまったのか?」

「くっ…。ごめん、なさい。団長…さま」

「あはははっ。まったく気分がいいな。このまま中に出すか」

「へ…。やだっ、ダメって、なんでっ! 団長様っ、団長様っ、お願いします、おねがいだから…っ」

「そんなに懐かれたら、尚更やる気になるぜ。ほら、情けが欲しいんだろ? くれてやるっての」

「ちがっ、貴方が言わせてっ…!」

 

逃げ出そうとして、足を動かした。

 

けど、それだけ。男に押さえつけられた私は、オオカミに襲われた子ウサギでしかない。足をバタつかせて、体を跳ねさせて、まったく無駄な抵抗だ。

お腹の中で膨らむ陰茎は、苛立ちを増して、射精の気配を強くする。ただの少女でしかない私に出来るのはもう。泣くか、叫ぶか。どっちにしたって、彼らを悦ばせる事にしかならないと分かっていても、目の前の現実から目を逸らしたかった。

 

「ああっ、リットリアちゃん。そんなに誘われると、僕、もう…」

「あ、いや、やだ…っ」

 

お尻に擦り付けられていた陰茎が爆ぜる。

 

揉まれていた胸が押しつぶされた。背中に、腰に、熱いものが降りかかり、ドロドロと背筋を伝い流れ落ちていく。部屋に広がる男の匂い。腐った欲望の匂いが鼻を付き、めまいがする。

 

今度はこれが、こんなのが…。

 

私の中で出されてしまう。

 

じわっと。涙が溢れてしまった。心の中で何かが折れる音がする。

想像した現実は、けど、夢では終わらない。男の動きは激しさを増して、ぐちゃり、ぐちゃぐちゃ…と、私の中でいやらしい水音が響く。溢れた先走りと、滲み出した愛液が、私の中で掻き混ぜられ、掻き出されてくる。膨らみきった茎は、今にも破裂してしまいそう。

 

「ほら、リットリア。こっちにもくれてやるぜっ!」

「いやっ! やだっ、やだやだやだっ!! 離してっ、おねがっ、お願いしますっ。団長様っ…。中は、中だけはっ…。やだっ、やめてっ。だんちょっ、クライストっ、クライストっ! たすけてっ!!」

「オレが変わってやるってんだよっ、そらっ!!」

「いひっ! ぃゃぁあああああっ!!」

 

お腹の奥に陰茎が突き刺さる。

 

膨らんで、爆ぜて、ドクンっと、強い波が襲ってきた。

 

いやだ、いやだ、いやだ いやだ いやだっ。

 

流れ込んでくる。熱が広がる。男の精。欲望の塊が下腹に広がり、蠢く陰茎に塗り込められた。腰が震える。お腹に力が入ってしまう。背筋が伸びて、一瞬意識が遠のいた。

 

気をやっている間にも、射精は止まらない。

 

勢いのまま陰茎の先端は子宮口を抉り、ゾワリとした。

ドクドクと、吐き出された精が中へも入ってくる。犯される。体も、心も、いちばん大事なお腹の中も。注がれる精を吐き出そうと、ゾクゾクと子宮が震え上がった。逃げようとする私の腰を押さえつけ、男の陰茎が更に深くと突き刺さる。

 

もう、やだ…。

 

止まって、とまってよ…。

 

ドクンっ、ドクンっ…。

 

ビクンっ、ビクンっ…。

 

気持ちよさそうな男の声が、前からも後ろからも、聞こえてくる。

腰を掴まれながら、胸を潰されながら。中にも、外にも、精が降り注ぎ、私の女を汚していった。

 

そこからは、酷いものだった。

 

入れ替わり、立ち替わり、犯される少女(わたし)の体。

ベッドの上に押し倒され、犬みたいに四つん這いにさせられた。

 

後ろから陰茎で突き刺された。「やだっ」と、開いた口にも、それは挿ってくる。

 

背中に降り注ぐ精の熱。下手くそと、笑い合う男たちの声。

悲鳴を上げることすら許されない。陰茎で塞がれた口は、うめき声を漏らすばかり。口の中を使われ、喉の奥まで突き挿れられて、ドクンっと、大量の精が胃の中へと流し込まれる。

 

「けほっ、あっ、かっ…はっ、はっ…かはっ、あ、あ、あ…」

 

ダバっと。咳き込んだ拍子に大量の精を吐き出してしまった。

生臭い。喉に絡みついて息が詰まる。口から零れた白濁液が胸元に落ちていった。

気持ちが悪い。もう、私の身体に汚れてない所なんかない。お尻に、背中に、髪にも、頬にも、降り注いだ白濁液が垂れてくる。涙ですら、精液に変わってしまったみたいだ。

 

「あ、やだ、まって…もう、むり…ゆるし、て…。ごめんなさい、ごめんなさいっ。団長、団長様…お願い、だから…やめさせ…」

「良いぜ、とりあえず全員終わったらな? ちゃんと奉仕してやれよ?」

「そんな…」

 

全員、全員って、後何人いるの?

 

力なく、視線を持ち上げた。狭い部屋の中、続く扉にはまだ列が見える。

 

「あ、あ、やだ、やだぁ…」

 

体が持ち上げられる。もう抵抗する力も残ってない。

 

ベッドの上に男が横になった。子どもみたいに足を広げられた私は、添え物のようだ。そそり立つ陰茎へと、その穴を充てがわれる。時には腰を抱えられて、時には下から突き上げられて、男たちに使われる。空いた手には陰茎を掴まされた。ちゃんと扱けって、髪を引っ張られ、頬を叩かれた。

 

怖い、怖い…。

 

痛みに悶えてる暇なんかない。

 

悲鳴の一つも上げようとすれば、開いた口を陰茎に塞がれる。

 

 

注がれる精に、息が続かない。咳き込んで、飛び散った精液が、鼻の裏側を刺激した。つんっとする。その匂いはそのまま、鼻水見たいに流れでる。

 

「んんぅぅっ!? ん、ん、んっ!!」

 

焦れた男の一人が私を押し倒し、後ろの穴の中にまで陰茎が挿ってくる。

衝撃に目が回った。胸を掴まれ、お尻に陰茎を挿れられたまま、崩れた体を起こされる。前から、後ろから、陰茎に犯される私。口を塞がれ、両手も使われて、情婦よりもひどい扱いに、だんだんと、何にも考えられなくなっていく。

 

もう、何回目だ。

 

お腹に、お尻に、口の中に、精を注がれ、飲み込んだ。

扱いた手の中からも、精液が降り注ぎ、私の体を白く汚していく。

 

「ころし、てよ…もう。そんなに、私のことが嫌いなら…魔女でも、なんでも…もう、いいでしょ…」

 

ベッドの上に転がる私。肌触りの悪いシーツと、湿気った毛布の感触も、今や精にまみれて粘ついていた。

 

「良いのかよ、リットリア? 皆、お前を助けようって死んだんだぜ? クライストだってそうだ。そんなお前が殺してだ? 薄情な女だな、リットリア。みんな、無駄死にだってか? 流石は魔女様だぜ」

 

ゲラゲラと、意地悪い男たちの歓声が沸き上がる。

 

「良いか、リットリア。もう一度言うぞ? オレは優しいからな。お前が処刑されるかどうかは、俺達次第だ。使えるまでは、使ってやる。王様とはそういう約束だからな。分かるよな?」

「くっ…ぁっ、なんで、なんで…」

 

涙は、流れなかった。

 

頬を伝うのは、薄汚れた白濁だけ。口から漏れる嗚咽にさえも、粘ついた精が絡みつく。

 

「もう、好きにして下さい…」

「あ? 何を勘違いしてやがる。お前はな、使ってもらう立場なんだよ。女としては下の下だ。分かんねーか? 教えてやるよ、オレは優しいからな。ほら、股を開いて言うんだよ…」

「くっ…ぁぁっ」

 

屈辱、なんてものじゃない。

 

その瞬間に私は終わった。

 

「リットリアの…オマンコを、使って、ください…。ひっ、ぐっ…。どうか、おねがい、します…。あぁぁっ…。します、から。一生懸命、奉仕、しますから…。ぐずで、のろまな、リットリアのオマンコ…を、女に、して…。役立たずなリットリアを、どうか役に立ててください…」

 

ー

 

朝。目を覚ましたリットリアは、ベッドの上に寝かされていた。

 

上等なシーツからは、柔らかい華の香りがする。まったく重さの感じない羽毛の布団に体を包まれ、寝起きのまどろみからは、中々抜け出せなかった。

 

天蓋付きのベッド。大きな窓から差し込む朝日。

まるで、どこかのお姫様にでもなった気分。一度はそういう体験にも憧れたものだが、今は…。

 

夢、か…。

 

酷い悪夢だった。

 

犯され、使われて、最後は自分から、男のモノに奉仕をする。

 

気だるい体は、まだ熱を持っているようだ。ため息ですら生臭い。

股間の隙間もなんだか湿っぽく、少し動かしただけで濡れた何かが肌を伝ってくる。

 

見たくない。

 

もしそこに、白く濁った何かを見つけてしまったら。また、夢の中に立ち戻ってしまう。もう、私が私でいられる自信がない…。心の何処かで望んでいた身の破滅は、それですら甘えだった。酷い悪夢。その一端に触れた私の心は、完全に竦み上がってしまっていた。

 

「ハンナ、ドール?」

 

たおやかな指が動く。ふと、横を見れば夢に堕ちる前のまま。

解れたクマのぬいぐるみを、彼女が直している所だった。

 

嫌な予感がした。

 

枕元に置かれるクマのぬいぐるみ。

 

可愛いと、私の名前を呼ぶ彼女。

 

ぎぃ…と、ベッドの軋む音は、安い寝台特有の居心地の悪さを思い出させる。

 

「まっ、いやっ、待って下さいハンナドール! あんな夢っ、違うのっ、思ってないっ、望んでなんかっ。私はっ。見たくないのっ、もう見せないでっ、おねがっ…!」

 

夢だと分かっていても、耐えられるものじゃない。

ようやく目が覚めたのに。全部夢だと、やっと、終わってくれたのに。

 

「いいえ、見たのは貴女。それは、貴女が望んでみた夢だから。大勢の男に囲われて、気持ちが良かったですか? 可愛そうなリットリア。そんな自分を演じて、さぞや気分が良かったでしょう? 可愛い顔をして、スケベ、なんですね?」

 

逃げるなよ。男の怒声が響くと同時に、私はまた後ろ髪を引かれていた。

 

いやらしい…。

 

声が聞こえる。しくしく と。その声にはもう、涙の跡は残っていなかった。

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