「ふんふ~ん」
「ご機嫌ですわね、のり子」
「そりゃもう、ファンレターもいっぱいだし」
ある日の会議室、俺と担当アイドルたちはテーブルの上に置かれたアイドルへの
ファンレターやプレゼントをチェックしていた
本来ならこういう作業は裏方である俺たちの仕事だ
ただ、アイドルを多く抱えている事務所と言う事もあり人手不足で
のり子たちにも手伝って貰っている
こう言った作業は「担当アイドルとのコミュニケーションに使える」とアドバイスを
先輩プロデューサーから受けて始め、のり子とのコミュニケーションにしっかりと役立った事もあり
千鶴さんや歩も加わった今でも続けている
皆で談笑しつつ、ファンから送られてきた手紙を見て嬉しそうな表情をする皆を見ていると
こういう取り組みも良いと思えた
「プロデューサー見て見て、下着のプレゼント~」
「えっと、何と言うか。すまん」
本来送られてきた物を選別するのはスタッフの仕事だ、それをアイドルにさせていれば
こういう事もある
「いいよいいよ。サイズも丁度だし、こういうちょっと大人っぽい下着も欲しかったし
こういう時3サイズを公表してると助かるね」
「ふふっ、そうですわね。私も下着をよく頂きますから分かりますわ」
「分かるんだな……」
見方によってはセクハラとも言えるプレゼントを見て、のり子と千鶴さんは楽しそうに雑談を
続けている中、会話に加わらない歩をちらりと見るとファンレターと睨めっこしているようだった
「歩、何か問題でもあったか?」
「へっ!?あ、いや、何でも無いっ!アタシちょっとトイレ行ってくる!」
話しを振ると、歩は慌てた様子で席を立ち会議室を出て行った
「……あやしい」
「ふぅ……そうですわね、分かりやすい」
「えっと、歩に何かあるのか?」
会議室を後にする歩をジト目で見送る二人を見て尋ねると、二人ともうんうんと言うように頷いた
「どうやら、歩はファンの方と『とっても』親しくしているようですわね」
「多分、二人きりで会ったりしてるんじゃない?」
「なるほど、そういう事か」
アイドルとファンの距離感と言うのは難しい、中にはファンと親密な関係になるアイドルだって
いるのは確かだ
「私としては、歩を支えてくれる方であればファンであっても良いと思いますわ
プロデューサーだから、ファンだから付き合えないとは思いません」
「アタシもアタシも、と言うよりアタシはプロデューサーと付き合ってるからだけど……えへへ」
「まぁ、それもあって歩もプロデューサーに頼りづらいんでしょうけれどね」
「も~千鶴さ~ん!」
会議室に響く二人の声を聞きながら、内心ほっとする。歩と親しい二人がそういう風に
考えているのであれば大丈夫だろうとも思えた
「歩の話は良いとして。のり子は色々と面白い物をプレゼントされてますわね」
「だねぇ、昔だったらプロデューサーっ!って慌ててたと思う」
そう言って笑うと、プレゼントの中から……いわゆる、大人のおもちゃを見せてくる
「バイブにローター、ゴム、ローション、こっちは筆下ろし希望のファンレター」
「ドラマ効果と言うやつですわね」
あまりにあからさまと言う事もあり、千鶴さんも少し困ったように笑う
ドラマは人気な反面、内容も内容だけにプレゼントもアダルトな方向性で
これは確かに事務所は受けたがらないと改めて思いつつ
それでもプレゼントを貰った当人であるのり子は楽しそうで
そう言ったセクハラを許容できるのり子にホッとした
「そう言えばSNSでも食事に誘われたよ。スポーツ選手に」
「うちの事務所はスポーツともコラボしていますものね」
「えっとのり子、そういうのは相手しなくて良いからな?」
「あはは、分かってるって。嫉妬しちゃった?」
こちらの心配をよそに、のり子はいたずらっぽくこちらをからかう
「前にも言いましたけど、そういう煽りは加減を間違えると愛想を尽かされるだけですわよ
まぁ、その時はプロデューサーは頂きますけれど?」
「も~千鶴さ~ん!」
「……あはは」
本当に仲の良い様子で、こちらも困りつつも笑ってしまう
「のり子をからかうのはこのくらいにしておいて、そろそろ行きましょうか」
「あ、女子会だもんね。ファンの皆ありがとう、おもちゃたちはプロデューサーとのエッチや
オナニーに使わせて貰うからね」
のり子はテーブルに並べたアダルトグッズにお礼を言うと、一つ一つ丁寧に紙袋へと入れて行く
「それじゃ、アタシたちはこれから女子会だから先に帰るね」
「ああ、気をつけてな」
『女子会の後は飲み会でしたわよね、持ち帰りなんてされないようになさいな?』
『あはは、分かってるって……多分』
雑談と共に会議室から出て行く二人を見送り部屋を片付けていると
二人と入れ替わるようにしてトイレから歩が戻って来た
「二人は先に行ったぞ」
「うん、さっきすれ違ったから知ってるよ。その、プロデューサー」
「ん?」
自分の紙袋を持ち会議室から出て行く際、歩は一度足を止め
「プロデューサーを頼りにしてない訳じゃないからね……?」
「……ああ、大丈夫だよ」
きっとのり子や千鶴さんに何か言われたんだろう
少し不安そうにこちらを見る歩に、俺はしっかりと頷いて返す
「それと……変な人と付き合ってる訳じゃないから!」
それだけ言うと、歩は今度こそ会議室を出て行く
あまりプライベートな事は聞かないでおこうと思った物の
千鶴さんの言うように、歩はこういう隠し事は苦手らしい……