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第1話

※1

 

『あはは、焦って先走っちゃったのが、たまたま、うまくいったけど……って感じ?』

『……ご想像なら、ご勝手に』

『ご想像以外もわたしの勝手にしちゃうよ、わたしじゃなきゃできないように、ね』

『あなたじゃなければ、って』

『途中で邪魔しないってんなら、ご勝手にご覧あそばせ?』

 

 

 

※2

 

「らしくなくワルぶってるねぇ、ドキドキさせられちゃう」

「ここでこうしてる時点で、誰がどう見ても極悪人なんだがな、俺は」

「ならわたしは、極悪人を好きになっちゃった悲劇のヒロインね♥」

 

 アイドル・伊吹翼は、担当プロデューサーに勝てると思っている。

 翼が少女で担当プロデューサーのほうが一回り年上であるとか、彼のほうが腕力では上回っているとか、そんなことなど枝葉だと軽視してしまえるほど自信満々である。

 

「……ま、プロデューサーさんが極悪人ならわたしがお似合いでしょ、ねーっ」

「翼はそんなに悪い子だったか?」

「悪い子なんだよーっ、いまだって学校サボっちゃってるし」

 

 事務所の談話スペースで向き合っていたはずの彼に、気づけば背後へと立たれている。みちみち張り詰めた胸元――公称トップ85センチ、Fカップを誇る――に彼の手が迫ってくる。

 自信がかえって深まる。

 

「ほかのヒトに知られちゃイケないことシてよ」

「シてやるとも、だがね、強がりはいけない」

「強がってなんかいません~っ、そう見えるとしたら……きっとあなたが弱くなっちゃってるから」

 

 正確に言えば、もう翼の勝ちが決まっていて最終的にどこまで勝つか、という段階だと思っている。

 

「ヒジ打ちの一発でもほしいもんだね、できれば翼にすっかり嫌われるよりも前に」

「シたけりゃシますよ」

 

 背中側に立つ彼に、ヒジを押しつけてぐりぐりしてやる。

 自分がひどいマネして翼に嫌われて拒まれればこの話が終わる、という甘ったれた彼の思惑がくすぐったい。彼が最低であればあるほど、彼から主導権を奪えていると強く感じられる。

 甘く見られているとしたら腹立たしい。もっと思い知らせてやりたくなる。

 

「でもね、このぐらいなら、かえってドキドキしちゃいますよ、わたしは」

 

 口元を抑えてきた彼の指に、前歯をぐいぐいと立ててやった。

 

 

 

「ふつうの日の昼間にプロデューサーさんと会えるって、新鮮な気分です」

「学業になるべく支障きたさないようにしているつもりなもんで」

「見たかったなぁ私服、いつものスーツ姿よりもっと新鮮な気分になれたのに」

「面白くないぞ、俺の私服なんて」

「ほかのみんなが見てない姿だから面白いんです」

 

 ふだんなら765プロのアイドルたちがくつろぐ談話スペースが、きょうは翼とプロデューサー以外に音も立てず姿も見せず、電灯も消えたまま薄暗い。

 翼は、閉じたブラインドの隙間を縫って差しこんでくる昼の陽光が壁と天井へ細切れになって投げかけられているようすを見た。事務所や劇場の外観を見れば、何食わぬ顔で扉を閉じているのだろう、と思った。

 平日の昼間、本来なら休業日の事務所――芸能事務所にとって土日祝日が仕事日であり、休みを平日にスライドしている――に、プロデューサーを呼び出してカギを開けさせた。

 

「プロデューサーさんは学校サボって遊びに行ったことあります?」

「……ちょっとは」

「女の子と?」

 

 プロデューサーの歯切れが悪くなって、手つきがこわばって、翼の機嫌はさらに浮つく。

 

「いいんです、プロデューサーさんが言いたくなければぁ」

 

 翼がプロデューサーを呼びつけ得た理由は、弱みを――『プロデューサーさんって志保と付きあいはじめたんですよね~彼氏彼女って意味で、それじゃわたしは二番目になっちゃうかぁ……あくまで、それはそれとして、こんど二人きりで会いたいんですけど?』――握っているからであった。

 芸能人の交際が表沙汰になるきっかけの多くは“関係者”のリークである。関係者という情報源ゆえマスコミが期待して、裏とりの労力をかけるので秘匿が難しくなる。アイドルの場合、関係者にありがちなのは同僚アイドルである。片方がスキャンダルで仕事を失えばそのぶんパイを奪えるかもという利害や、自分よりかわいがられている存在が気に食わないという私情が絡む。

 

「ただ、わたしが聞きたかっただけだもんっ」

 

 アイドルの仕事・レッスンをモテる手段として扱うポーズの伊吹翼が、匂わせているだけとしても――『わたしと、もっとヒトに知られちゃイケないこと、しましょうよ』――プロデューサーをじゅうぶんに動揺させる。

 

「もう志保にもこうしてあげました?」

「ない。ないよ、本当に」

「ホントかな~、おっぱい触るの手慣れてる気がするんですけど~」

 

 プロデューサーが翼の乳房を扱う手つきが、ほんの少し乱暴になる。彼からすればおどかしたつもりだろう。むしろうろたえている、と翼には感じられる。胸がますます浮つく。翼の足元がムズムズして位置を直すと、靴のかかとが彼の革靴の爪先にこつんとぶつかる。

 

「慣れてはいるよ。そう見えないだろうが」

「ヒトは見た目によらないですよね~♥」

 

 プロデューサーは、765プロという小規模な事務所から何人もの有名アイドルを若くして輩出させた立役者である。その辣腕と比べて、外見と物腰がよく言えば実直、悪く言えば青臭いとの評判である。

 自分より一回り年下の少女と交際したり、また別の少女と淫行に及んだりなど、彼を知る人間には妄想すら難しい。

 

「わたし、男のヒトと付きあったことないんです……こんなことされるの、初めてですよ」

「これから男と付きあうことがあったら、モテたいって気持ちが少し収まるかもな」

「なんでですか?」

 

 いっぽう評判といまの状況とのかけ離れっぷりでは、翼もいい勝負である。

 翼の評判は、気ままでマイペース、甘え上手、天才肌、少女にしてグラビアアイドルに比肩するスタイル――身長158センチに対して、スリーサイズが85、52、82――が主なところである。人からかわいがられること、注目を集めること、特にモテることが関係すると非常にやる気を出す。アイドルとして同世代で屈指の人気を誇る。プロデューサーをデートに誘ってべたべた甘えようとしたこともある。

 そんな彼をおどかして“ほかのヒトに知られちゃイケないこと”をさせようという所業も、彼女を知る人間には想像すら難しい。

 

「男にモテるって実は楽しくないらしいから」

「わたしの爆モテハッピーライフ全否定されちゃったっ」

 

 翼は頭や背中までも浮ついていく。彼女が想像していた性感よりもっと淡くふわふわしている。子どもがいたずらで大人を出し抜いて愉快な思いをしているようで、大人へ一歩ずつ近づいているようでもある。自分の肉体がプロデューサーから求められている。世間から許されないのに翼の手練手管で求めさせている。そうした万能感も心地よい。

 

「プロデューサーさんは、わたしぐらいのころからモテモテだった?」

「いまの翼と比べたらぜんぜんだ」

「ふぅん?」

 

 プロデューサーからの胸愛撫が、じっとり探るように柔らかくなる。肌がじんわり火照り、しとしと汗ばんでくる。彼の手が優しげにもみほぐそうとしているらしいので、彼の手の甲をつねる。

 

「うわわっ……どうした、痛かったか」

「ちょっと優しすぎませんか、極悪人のくせに」

「極悪人ほど最初は優しげだよ」

「プロデューサーさんいつも優しいけど、それも最初だけだったのかぁ~♥」

 

 プロデューサーの手が左右からむにむにと、乳房どうしを寄せるように刺激してくる。まだ気持ちいいと言うよりくすぐったい。成熟した女性にも似たボリュームと、少女らしいみっちりした弾力を味わうように、それでいて肌から翼の内心を尋問するように触れては離れる。

 

「ん、ふっ……それ、ちょっと、ぞわって、くるかも……ゃんっ、だめぇ」

「……いまの翼にだめって言われると、そうしたくなってしまう」

「んもー、プロデューサーもコドモっぽいところあるんだね」

 

 乳房のふもと、アンダーバストや腋下、鎖骨に近いところに刺激の焦点が移る。呼吸が浅く波打つ。なでられたところにくすぐったい余韻が残って、それをさらなる愛撫で上塗りされて、少しずつ肌が緊張していく。

 けれど心地よい。一瞬、ステージ前のそれを連想してしまう。

 

「ね、プロデューサーさん……直に、もんでみたいって、思いません……?」

「もっとぞわぞわくるだろうな」

「思ってるんですよね……そうでしょう、わたしにいじわるされたから、仕返ししたいって」

「シャツをめくってしまうよ」

「万歳とかしてあげたほうがいいですか、なんてっ」

 

 脇腹部分にプロデューサーの指と手のひらを察する。シャツのすそをかいくぐってきている。シャツごしより、ごわごわして熱っぽい触られ心地に鼻を鳴らす。じとじと汗ばんでいる気配が彼のせいか翼自身のせいか、わからなくても混ざってしまえばいいと笑う。

 

「んぅ、ぁ、ふっ……ブラも、とっちゃったら、どうです?」

「じれったいかな」

「……悪くはありませんよ」

 

 翼にとってプロデューサーの愛撫は、お化け屋敷やサスペンス、ホラーのドラマに似ている。日常で怖がらされたり驚かされたりすれば不愉快だが、いまは自分からそれを心待ちにしている。

 志保では知っていてもマネできまい、という優越感も翼の気分に彩りを添える。

 

「は……ぁ……っん、そこ……っ」

「だめかな」

 

 乳房のふもとから、ふんわりとなでられる。甘い熱が次第にブラジャーの内側へこもっていく。興奮するけどじれったい。まだブラジャーごしにも触れられていない乳首を意識してしまう。

 

「ん……ぅ……っ、だめ、なんてね……とっくに……んぁ……っ♥」

「そうだな」

 

 ついに、ぷっくりと熱く充血しはじめた乳首に彼の指先がかすめて、媚びるつもりがないのに媚びた声を漏らしてしまう。肩や腰がびくんと反応してしまう。

 頬が熱い。照れ笑いしかけて、大げさに口元を吊りあげてかき消す。

 

「ね、プロデューサーさん、いま、すりすりって……くふっ! んっ、ふ……ぁ……胸だけ、なのに……あちこち、動いちゃう……」

 

 まるで“誰か”に余裕ぶって見せるように、自分がされている愛撫と感覚を口に出す。すると彼の愛撫が誘われたように強くなる。一度とらえたあと、乳首が彼の指先に取り囲まれる。

 

「自分でいじることはあるかな」

 

 彼がブラジャーごしでも狙える、と言わんばかりにこする。翼が肩と胸を揺らすと、逃さないとばかりに3本指でとらえて挟む。翼があえて動きを抑えると、ぷくりとした弾力をわずかに歪ませるぐらいにねじってくる。

 

「……っ!? プロデューサーさん、そんなこと聞くなんて……んっ、んっ、んんぅ♥」

 

 巻きスカートごしのお尻を翼はプロデューサーの下腹部にどしどし押しつける。何か硬いもので押し返される。勃起したペニスなのだろうか、と妄想してしまう。知識だけで接触が未経験だった。

 

「……さいてーっ、ですっ♥」

「ごめんな」

 

 非難も謝罪も同じぐらいふわふわ火照って軽薄に響く。

 興奮が通じあっているようで恥ずかしい。彼も同じ感覚なら、と思えばまんざらでもない。

 

「ぁ、きゃんっ……!? あたま、なに……こ、こらぁっ、匂い、かいじゃ……」

「いい匂いだと思うんでさ」

「でさ……じゃ、ないよぉ……♥」

 

 彼に呆れられるのでは、というギリギリまで甘ったるく弱々しく振る舞う。自分が主導権を確保しているのにそうしていると、彼をからかっているようでますます楽しくなる。

 甘ったるいしびれが、胸の奥から湧いてくるのか、彼の手から呼び起こされるのか、混ざりあってあいまいになる。彼と自分の境目もそうなってしまうのか、と明晰夢のように思い浮かべる。

 

「んんっ……! んやぁ、くりくり、って……刺激的、だねっ……でも、もっと、しても……♥」

「まぁ、まぁ」

 

 ブラジャーのカップをずらされ、直に乳首を刺激される。指の腹と爪とそのあいださえわかるほど敏感になっているところを何度も引っかかれる。

 

「んっ……ふっ……! は、くぁ、うっ……!?」

 

 ひく、ひく、と腰が揺れてしまう。それならいっそ、とお尻を押しつけながら、ぎゅっと重心をかけて背中まで彼へ預ける。彼の内ヒジと腕がびくりとこわばった。

 

「……極悪人のくせにぃ♥」

「座るか?」

「プロデューサーさんのデスクがいいな~、ちゃんと片づいてる?」

 

 ぴょん、と跳ねるようにプロデューサーの腕を逃れて、ふだん彼が執務するデスク天板にどしんと乱暴に腰を寄りかけせる。小さな付箋の1枚か2枚下敷きにしてくしゃくしゃにした感触がかえって愉快で、爪先でオフィスチェアを軽く蹴ってくるくる回す。

 

「ここからは、顔を見ながらがいいですっ」

「……照れてしまうな」

「わぁ、ワルいのにかわいこぶるのは、わたしの役なのに~」

 

 片足の太ももをもたげて、まだゆっくりと回っていたオフィスチェアの座面にかかとをどんと乗せて止める。スカートから伸びる内ももに彼の視線を誘導しつつ、首を傾げて流し目を投げつける。

 

「……えっち♥」

「知ってた」

「あ、ごめんなさい。履いたままやっちゃった」

 

 もたげた脚を、残りの足のヒザ上まで移して組む。

 

「もう仮眠室に行っちゃいましょうよ」

 

 デスクが不満げにキシリと鳴るのさえ、無性に愉快だった。

 

 

 

※3

 

「こっちにも誰もいないハズですよね」

「冷や汗をかかせること言いやがる」

「物陰に志保とか隠れてませんよね、さすがに」

「気になるなら確かめておくか」

「いいえっぜんっぜんっ! ちょっと……いじわる言ってみたかっただけ……そう、いまになってちょっとでも志保のこと考えてたら蹴っ飛ばしてあげようかって思っただけです」

 

 翼は含み笑いしながらプロデューサーを仮眠室へ引っぱっていき、高笑いしながらベッドへ引き倒す。

 

「実はですね、わたしお着替えも用意してきてます」

「うわ、俺は用意してない……」

「うかつだなぁ~」

「二番目でもいい、なんて言うよりうかつかな」

 

 ベッドに寝転んで彼を見上げながら、そのワイシャツの胸ぐらをつかむ。

 

「これ以上しわになる前に脱いじゃいなよ」

 

 

 

 男と女として一つのベッドに並んで腕を絡めて、着衣を脱いで肌まで重ねる。そこまで彼に承諾させる。ゴリ押しだったが、翼は震えるほどの高揚感が湧いてくる。

 周りの気持ちや自分の体面を慮って彼への思いを抑えてきたきのうまでが、すっきり一掃されてしまった気分になる。ないつもりだった気兼ねがあってさっき消え失せた、と気づく。

 

「……男のヒトの体にこんな近いの、初めてかも」

「お父さんの背中とかは」

「ずいぶん昔の話かな」

 

 急き立てるように脱ぐ。脱がせる。少し悩んで選んだ勝負下着も、さっきブラジャーごしに胸愛撫されて、もうじゅうぶんだった。

 

「キスして」

 

 首を軽く傾げると、正面から向き合っているよりくちびるを重ねやすいな、と初めて実感する。

 

「んふっ……んぢゅっ、ちゅ……はぷっ、んんんぅ……!」

 

 キスでくちびるを触れあわせる。キスしながらでも触ればいい、と胸を突き出すが、彼の腕がそれを迂回するように翼の肩をなぞる。彼のほうに肩も胸もこすりつける。

 

「ふあ、ぁ……あっはは、キス、しちゃったぁ♥」

「ご感想をうかがっても?」

「じれったい~、もっとガツガツしましょうよ」

「俺も緊張してるんだよ」

 

 キスを再開する。プロデューサーのくちびるも舌もべたべたにしてしまえ、とばかりに味蕾をこすりつけ唾液を塗りつける。

 

「はぷっ、んはぁ、あんっ……ちゅるぢゅ、んふ、ふっ……」

 

 舌も唾液もずるずる絡める。彼へ快楽を与えるとか、挑発して緊張さえ吹き払ってやりたいとか、それらの意識が触れあっているところからぐずぐずしびれて、唾液と一緒に流れ落ちてしまう気がする。

 

「んぷ、ぱぁ……っぷ、プロデューサーさんったらぁ……」

「もっとしようか」

「もっとキスしてたいんですけど、おしゃべりできないのがさびしい、かな」

 

 彼の指先が近寄ってくる。まだ緊張しているのかと思うと、翼は作り笑いを少し柔らかく本物らしくできる。胸をなでられるのがキスされるのと同じぐらい甘酸っぱい。肋骨をさすられるとくすぐったくて身をよじってしまう。ブラジャーから解放されたFカップがゆさゆさと、彼女自身が大げさに感じるほど揺れる。

 

「やぁんっ、んんっ……プロデューサーさんは、わたしのおっぱい、好きですか?」

「そうだね、とても」

「えっちー、さいてーですっ♥ ひゃんっ、あ、あっ……はぁぅ……っ」

 

 色素の薄い乳輪をくすぐられて、翼の胸がぴりぴり甘くしびれる。翼も手を伸ばしてプロデューサーの胸板で指をごそごそ這いまわらせる。彼の胸筋の反応がぴくりと伝わって、反対に翼の口角がゆるむ。

 

「くすぐったいでしょ~、えいっ、えいっ」

「んんっ……くすぐったいのは、いいんだよ」

「楽しいとは思いますね」

「……それ以上は、おいおい」

 

 プロデューサーがめいっぱい指を広げて翼のバストを覆いかける。片手で片乳を収めようともぞもぞさせるも、どうしても乳肉があふれてしまう。

 

「ん……く、ふ……ちょっと、おっきすぎるかな……?」

「これ以上大きくなられたら、たいへんかもな」

「でも、プロデューサーさんにされちゃったら、おっきく……あずささんとか風花さんに相談しなくちゃ」

 

 彼が言葉で冷静ぶりつつ、手つきや息遣いの合間に興奮を吐露しているらしい。それらの気配を肌や耳で感じ取ると照れくさく切なくなる。

 

「んっ、ふぁぁっ……そ、そこっ……んっあっ、んんっ……♥」

「そこは、デリケートだろうな」

 

 いつのまにか乳輪がうっすらふくらんで、乳首も彼の指先でつまみ転がされほんのり勃ち上がっている。

 

「んっ、んっ、んんぅ……♥ まだ、じれったい、かなー……なんてっ」

「いつもと同じぐらい甘ったるい声だなぁ」

「んー……いけないんですかぁ?」

「どうしたらいいかなぁって考えてるんだよ、これでも」

 

 彼の指先が小さく動くだけで、翼はうずうず身もだえさせられる。もし鏡が見えていたら、肌が桜色になった自分の姿を見てしまっていただろうか、と想像でも気分が火照る。

 

「プロデューサーさんは、わたしのカラダ、どうしたいですか」

「……いろいろしたいかな」

 

 ふふっ、と笑ってぷるぷる揺れた翼の乳房を、また彼の手が覆いかぶさろうとする。

 

「んっ……ふっ……!」

 

 指が少し強引に迫ってきて、乳房がむにゅむにゅもみほぐされる。胸の奥までむにゅむにゅが波及したように荒い息をつく。いちばん敏感な乳首が手のひらに押し倒されて疼く。彼の手をつかんでずりずりこすりつけたくなる。

 

「は……あ、ぅ……っ♥」

 

 ベッドに押しつけっぱなしのヒップや、秘所を隠そうと閉じられた太ももまで、ぞくぞくと反応する。彼が気遣うように手を止める。快楽がほんの少しだけ退潮する。

 

「おっぱい、むにゅむにゅってシてもらってるだけなのに……あちこち、ヘンな感じになっちゃってますね……♥」

「言葉にしてくれると、こっちとしてはありがたいが」

「恥ずかしいですけどね、わたしだって……でも、口に出したほうが……ねっ」

 

 快楽が退いたぶんだけ冷静になって、けれどそれも羞恥心にひっくり返って、また翼を浮つかせる。

 

「翼は……声も、な」

 

 彼の指先を待って乳首が疼いている。指先で触れてもらえる気配に肌が先走って震える。

 

「んっ、うっ、あ、あっ……! さきっぽ、こりこり、ってぇ……♥」

 

 乳首をつままれ、すりすりとこすられ、そんな軽い刺激に不釣り合いな勢いの快楽が奔る。彼の視線から隠している太ももを、ついもじもじとすりあわせてしまう。

 

「わたし……もっとおっきい声、出しちゃってもいいですか……♥」

「聞かせてほしいな」

「ふふ、ノッてきたみたいですねぇ」

 

 視線も素肌も向かいあわせで交錯させ、二人のあいだにお互いかすかな動揺を見て取る。翼は快楽に、プロデューサーは感嘆に、と少しズレている。

 

「……目の毒だよなぁ」

「けなしながら褒めるなんて、回りくどいなぁ~っ」

 

 改めて翼を目前にする。職業柄、美少女を見慣れているはずの彼でさえ、息を呑まされる。愛嬌をあふれんばかりに詰めこんだ顔立ちと声、それに無邪気な色気を上乗せしているスタイル。さらに姿勢も所作もアイドル活動を重ねて洗練されてきている。この伊吹翼が学校に通ってほかの女子生徒に紛れこんでいる――20代から10代へありがちな余計なお世話が彼の頭をもたげる――男子にも女子にも気の毒な気がしてならない。掃き溜めに鶴ならまだいい、掃き溜めも鶴も自分とほかを比べやしない。嫉妬を免れている。

 思って、彼は目元がくしゃくしゃになるほどまぶたを閉じる。翼がいまここで素肌を許している理由は、志保と自分を比べたからであろう。

 

「ね、もっと触って。おっぱいも、ほかも、もっと……めちゃくちゃにして」

 

 翼への愛撫を再開させる。乳房のふくらみを手のひらに感じ、その重みと柔らかさを楽しみながらふよふよ揺らす。重心の移ろいでグラスワインのテイスティングを一瞬だけ思い出し、すぐ一笑に付す。手ざわりが心地よくて、つい強く握ってしまいそうになる。彼女の肌から立ちのぼる甘い体臭を吸いこみつつ首筋に顔を埋める。

 

「やぁんっ、匂い、かがれるのは……恥ずかしいんですけど……っ」

「匂いは……」

「匂いは……?」

「……いい匂いだよ」

「フェチなんですか?」

 

 匂いはアイドルとして切り売りできないから、と言いかけて押し殺す。彼は、そうしないように気をつけていたにもかかわらず、翼のことをただ自分に好意を抱いている少女として見なしはじめている。彼女は恋に恋する少女の顔を見せているが、少なくとも好意を持っている相手でなければ体を触らせたりしない。その好意が陶酔にまで達していなければ素肌をまさぐらせたりしない。

 そう思うと、翼の甘ったるい肌の匂いも体温も、柔らかい乳房も、細い首や肩やウエストも、彼をますます甘く誘う。

 

「恥ずかしいですけど……いいですよ、プロデューサーなら……あはは、媚びすぎですか?」

 

 翼も誘いながら楽しんでいる。

 乳房や乳首、脇腹から下腹部まで彼の手のひらがさわさわ這いまわると、その軌跡に翼は肌の奥まで、意識した経験のない大切なところまで震えるのを感じる。自分の体が彼を受け入れる準備をしている、と思うと、うれしくも恥ずかしくたまらない。

 腕をもぞもぞずらして、彼の下腹部から太ももに、それから初めて触れるひときわ熱いペニスを手のひらに感じる。熱でどこか溶けたらどうしよう、と照れ隠しじみた冗談がすり抜ける。

 

「む……っちゅっ……ん、んっ……♥」

 

 先走りを咎めるふうにキスを見舞われる。優しくいじわるなそれに、わざと歯をちくり立ててやる。なだめるようにくちびるで甘噛みする。

 舌でつつきあう。

 

「ちゅっ、ちゅう……んっ、ちゅぶ……ぷふ、あは……♥」

「……いまに、俺が食べられちゃいそうだ」

「じゃあ、その前にプロデューサーがわたしを食べちゃわないと」

「食うか食われるか、なんてただの洒落にしてほしいな」

 

 ファーストキスなのにいやらしすぎるでしょう、と自分に呆れるぐらいの冷静さが、ほんのり翼に残っている。誕生日のケーキで吹き消しそこねたろうそく一本ぶんの灯火に似ている。早く消えてほしいのに、消すのがほんの少し名残惜しい。

 

「んれぇぅ……んじゅるるる……っ♥ んふっ、キス、もっと、めちゃくちゃに……興奮しちゃう……!」

 

 べちゃべちゃ、にちゃにちゃ、口をふさがれ言葉が詰まった代わりのように唾液をうるさく鳴らす。翼も彼も、互いの口をむさぼる。はぁはぁと息を乱して切らして中断する。再開する。二度、三度。

 

「ぁ、きゃんっ……!? また、さわって……んんっ……ぷろ、でゅ……っ♥」

 

 彼がキスと愛撫の同時攻撃に出てくる。翼がつい肩を身震いさせると、抱きとめられ押し倒され、逃れられなくされてしまう。

 男を知らない秘所が待ち焦がれるように潤んでくる。

 

「ふぁぁっ……そ、そこっ、わた、し……んっ、んくっ……」

「もう少し優しくするか」

「……ばかぁっ、えっちっ」

「わかってもらえてうれしい」

 

 むにゅっ、むにゅっと乳房をもみしだかれる。その指の一本いっぽんに性感帯を絡め取られたようにいちいちしびれさせられる。乳首がじんじんしてますます勃起する。キスされながら乳首をつままれると早くも降参しかけるように、軽くイってしまったかと思うぐらい恍惚となる。性感をあまりにやすやすと引っぱりあげられてかえって憤りが湧いてくる。彼からなだめられるように背中をさすられる。

 それが翼への追い打ちと察していても甘えてしまう。

 

「こ、声、出ちゃ……あうっ、うぅぅっ、あうぅー……っ」

「出してくれよ、出してくれるんだろう?」

「ひょっとして……昔のプロデューサーは、めちゃくちゃにしてもらえる側だった? いまのわたしみたいに……」

「……翼がぜんぜん子どものころの話だよ」

「そのころのプロデューサーともシたかったなぁ」

 

 ヒップや太もももなでられる。秘所が泣きだしそうなほど熱く疼く。ヒザ裏も足指もぎゅうっと縮こまる。

 

「そのころだったら……プロデューサーさん、もっとへたっぴで、優しくしてくれなかったんだろうなぁ」

「……“シたかった”ふうに聞こえないんだが」

「そうかもねっ」

 

 翼の挑発に応じてか、彼の手や腕がかき鳴らすように強引に迫ってくる。翼は押さえつけてもらえるぐらいに首を振ったり腕や足を閉じようとしてみせる。

 

「ぇふ、ぇう、あ、うっ……!」

 

 嬌声がだんだん甘酸っぱくなる。甘える以上に快楽が深まってくる。彼の呼吸が少し荒々しくなってきている。翼の性感帯を探り当てようと躍起になっているようで、そこを手でわざとらしく隠して挑発をやり返す。彼がそれを直接どけたり、キスで口をふさいでさらに攻めてくる。自分の女としての自信をますますくすぐられて、もっと彼を夢中にさせたくてたまらなくなってくる。

 

「んっ、んっうぁ……はぅ、んぅっ……ね、ねぇ……信じて、もらえないかも、だけど……わたし、気持ちよくなっちゃってるよ、初めてなのに……プロデューサーのこと、大好きだから……♥」

「……翼の体にじっくり聞かせてもらうよ」

 

 ついに愛撫が秘所へと及ぶ。彼の指の先がわずかに触れる。ぬちゅっ、という湿った音と感触に、さすがの翼も顔を俯けて本気で恥じらう。恥丘と陰毛をなだめるようにさすられ、かえってもっと照れくさくなって太ももをぎゅうと閉じる。

 

「濡れちゃうんだね、わたしも、じわぁーって」

「……ちなみに、男も濡れる」

「ぷふっ……!? いま、笑わせようとしたでしょーっ、そんなシーンじゃないのにっ」

「あんまり出来過ぎで、夢かなにかと思ってしまって」

 

 再びキス。舌先でちょいちょい探りあう。触らせてくれよ、という催促だと無言でも理解できる。触らせてあげたいのに、無限に催促してもらいたい。矛盾で翼の腹の底から頭まで張り詰めたり、快楽でほころびたりする。

 

「あ……ふぁ、あ、んんっ……! わたし、初めて、なの……優しく……これは、ホント、ですからね……♥」

「翼はすごいなぁ、何ねだられてもいい気がしてくる」

「……いまさらっ」

「誰かに何かねだられたらうざったいもんだぞ、ふつう」

「わたし以外の女の子に何かねだられたら?」

 

 続きをせがみたかったが、こじ開けるような秘所への愛撫で中断させられる。くちびるをとがらせて抗議しようとして、突き上げてくるような快楽と嬌声に割りこまれる。

 

「ぁ、きゃんっ……!? だ、めぇっ」

「優しくする……つもりではあるよ」

 

 くちゅっ、という水音が聞こえてしまう。彼の指がおそらく一本だけ、翼の膣へ入りこんでいる。浅いところだが、クリトリスの裏側をとらえている。さらなる快楽を予感させられ、早くも膣肉が身震いする。

 

「は、ひっ……あう、んっ……なか、はいっちゃ……えう、んんっ……♥」

 

 奔放な物腰と裏腹に、翼の膣口は小さく慎ましい。翼だけが知っていることだが、粘膜の色は淡いサーモンピンクである。それをもうすぐプロデューサーも知ることになる。自分がこれから彼とセックスに臨む、という状況をあらためて自覚して思考が飛ぶ――ぐちゅっ、にちゅ、くちゅっ――かき回されてようやく引き戻される。

 

「これが、気持ちいい、ってこと、ですか……?」

「……言い切るほどの自信はないぞ、さすがに、しょうじき」

「不思議な感じです。恥ずかしいし、ちょっぴり怖いのに……やめないで、もっとしてほしい、って」

 

 彼がごそごそ体重移動させるのをベッド伝いに察する。翼の両脚のあいだに、彼が肩を割り入れてくる。

 

「ちょ……んんっ、ぁ……まさか、あそこにも……や、やだ、鼻息、あたってますって……♥」

 

 彼がクンニリングスにかかる。そこに舌を這わされ、濡らしているところを唾液と混ぜられ、じゅるじゅると音を立てられる。

 

「んんっ、あ……っ♥ ん、くぅ……っ」

 

 クリトリスで味蕾のざらつきを、肌や粘膜で彼の鼻息や唾液のぬめりを感じる。味わっているのは彼のほうなのに、翼の口中までムズムズする。さっきのファーストキスと混ざってめちゃくちゃにされてしまう。もぞもぞ抵抗すると腰骨をがっしりつかまれ抑えられてしまう。翼の腰が勝手に跳ねて彼の鼻先をこすって、自らの不意打ちに翼は声もなく悶えてしまう。

 

「くひっ、ひんっ! はぁぁっ、んぅぅぅっ……!」

 

 にちゅっ、ずぷぷっ、と翼の秘裂が指で押し広げられる。翼のクリトリスを執拗になめながら指を入れようとする。彼のエスカレートを予想していたのに驚いてしまう。痛みこそないが、彼の指をつい押しだそうと力んでしまう。そうしているつもりが、むしろ膣肉が絡みついて引きこむ動きで、かえって彼を煽ってしまう。

 

「は、ひっ、あう、んっ……えう、んんっ……そんなの、いっぺんに……!」

「……もっと嫌がって見せたら止めてやるよ」

「あははっ、極悪人が言っても説得力ゼロ~っ♥」

「本当だって」

 

 彼の後頭部を、太ももと手でぎゅうぎゅう押さえつけて会話を打ち切らせる。

 

「ひどいことしてるのに気持ちよくしてもらうの……クセになっちゃったら怖いなぁ、とは思うよ」

 

 翼は“ひどいこと”をされている側では、との彼の違和感が、彼女の浴びせる媚態に覆い隠される。

 

「やぁんっ、もっと、シて、わたし、は……うぅぅっ、んぅぅっ、いいから、もっと……!」

 

 クリトリスをじゅるじゅるしゃぶられつつ膣口をかき乱される。その以上の認識がちらちら白飛びして、どうされているか味わう余裕を失う。とにかく何かの熱が翼を陶酔させている。太ももがびくびくと勝手に引きつる。胸だけで感じさせられたときより、ずっと慌ただしく否応なく上り詰めていく。びちゃびちゃ愛液を漏らしている自分をはっきり認識してしまう。

 知らないはずの絶頂感を予感している。

 

「んっ……まって、まっ……ぅくっ! わた、し……きもち、よす、ぎ、て……っ……♥」

 

 嬌声も水音も、肌がシーツをさする衣擦れも、絶頂でふっと消されたように静かになった。翼の湯気のように熱い吐息が、彼とのあいだをあふれて仮眠室にまで聞こえるほど静かだった。

 

 

 

「プロデューサーばっかりわたしにいじわるしてズルい~!」

「……ごめん」

「謝ってほしいとは言っていないよ」

 

 翼はとがらせていたくちびるをすぐにやりと緩めて、プロデューサーの下腹部をまさぐる。グロテスクなのに目を反らせない男性器へ、ネコがじゃれるように無造作に手を伸ばす。

 

「う、わ……っ!?」

「男のヒトも濡れる、ってこういうことなんだぁ~」

 

 彼のペニスは、翼に触れられる前から先走りで亀頭を濡らしていた。勃起具合がまだ緩やかだったが、翼の手に弄ばれるだけで徐々に鎌首をもたげて、翼を無邪気なまでによろこばせた。

 

「わぁ、カチカチになるんですねっ」

「……硬くなってるから、入れられるんだよ」

「カチカチのほうが挟むのもやりやすいかも」

「挟む?」

 

 さっきの仕返しとばかりに、翼が彼の両もものあいだに上体をねじこんで、Fカップの谷間で先走りまみれのペニスを覆う。

 

「パイズリ、って言うんですよね? わたしみたいにおっきければ、ほらっ♥」

「どこで覚えたんだよ、それ……」

「そんなこと言っちゃって、本当はうれしいくせに~っ」

 

 パイズリなど知っていてはいけない年齢の翼が、自分から乳房をペニスへ擦りつけている。ずり、ずりっ、と肌がこすれる音に混じってにちゅっ、ぐちゅっと水音も立てる。

 

「う、ぉあっ……!」

「何が気持ちいいのかわからなかったから、練習ぜんぜんはかどらなかったんですけど……やっぱり、相手が必要だったんですね~。これステージと同じかもっ」

 

 翼のパイズリは耳学問と手探りの“練習”だったらしい。勢いあまって谷間からペニスが抜けたり、敏感な先端をみちみち圧迫しすぎて彼に痛みを覚えさせたりする。そんなまずい手管がかえって――アイドル・伊吹翼が自分とセックスするためにパイズリを調べてきた、と思い知らせて――彼の興奮と背徳感を盛り上げる。

 

「どういうのが気持ちいいのか、教えてください、プロデューサーっ♥」

「んっ、うっ、あ……! も、もう、こうされてるだけで……」

「本当ですか~? わたしみたいに、あんっあんって、かわいく鳴いてほしいのになぁ」

 

 翼が二の腕で乳房を横から押してペニスをみっちり圧迫する。谷間から半分だけ顔を出している亀頭の先走りと、翼が行儀悪く垂らすよだれとが混ざる。濡れた音がより大きく乱れていく。粘っこい液体が二人のあいだで糸を引くさまを見せつけてながらケラケラ笑う。

 

「パイズリは初めてだけど……プロデューサーのことは、よく見てきたつもりだよ、いままで、ずっと」

「……翼……ぁ……っ……!」

 

 彼の反応に自信を深めてか、翼がにちゅっ、ぐちゅっと無造作に執拗にこすりあげる。茹だったように熱くなっているペニスが、びくり、びくりとこらえかねたように跳ねて谷間でもがく。

 翼の嗜虐心が初めてのように燃え立つ。人を気持ちよくして自分が気持ちよくなる、二重の愉悦が信じがたいほどダイレクトに感じられる。

 

「もちろん、おっぱいも……風花さんとかあずささんほどじゃあないけど……ううん、まだまだ、これからっ♥」

 

 彼のペニスからツンとくる匂いを嗅ぎっぱなしで、もう意識せずともよだれがこぼれかけてしまう。ぬぢゅ、くちゅ、とパイズリを再開し、自分の乳房をもみしだいて見た目にも誘惑する。

 

「んあっ、う……んはぁあっ! 翼、つばさ……ま、待った、出る、でるからっ」

「何が?」

 

 彼のペニスがまた跳ねる。翼が乳房を押しつけなおし、からかうように笑って見上げる。

 

「がまんしてください……まぁ、だめなら出せばいいじゃないですか、そしたらプロデューサーの負けですけど♥」

「ぇふ、ぇう、あ、うっ……!」

「負けたら言うこと聞いてくださいね、約束ですっ」

「いきなり……あ、あ、く、ぅ……ううぅっ……!」

 

 射精寸前を見透かしたように、翼がいきなりパイズリを止めてしまう。ペニスがひとりでに脈動しているが、乳房でとらえたままニヤニヤ眺める。止めているが、逃すつもりはないらしい。

 

「知ってますよ、精液が出ちゃうんですよねー」

「じゃあ止めて……! あ、うっ、あ、くぁ、あっ!」

「出したくてたまらないんですよねー」

「く、ぁっ……! も、もう、本当に、限界……っ……ぅ……!」

「おちんちん初めて触る女の子に、てきとうにいじられただけで、びゅーって出しちゃいたくなっちゃうんですよね。ちょろいなぁ」

 

 翼が乳房をだぷんと持ち上げて、ぱちゅんっと降ろす。たぱん、ぱちゅっ、ぐぷっ、と繰り返すといっそう重々しく響く。

 

「パイズリでプロデューサーが精液を出しちゃったら……わたしの言うことを一つ聞いてもらっちゃいまーす」

「む、ぐ……ふぁ、あぅ……何、を……」

「一回目をおっぱいで出しちゃったなら……そうだっ、二回目をナカでお願いしちゃうっ」

「翼っお前意味わかって……はうぅっくぅっ!?」

 

 翼のパイズリがいよいよ彼を追いつめ、びゅくんっ、と精液がほとばしる。翼がとっさに亀頭を乳房の谷間で挟んだが、熱く粘っこい精液が彼女の鼻梁や頬へも飛び散る。

 

「あははっ……うわぁ、まずいなぁ~♥」

 

 彼の精液をぺろりとなめた翼は、本当にまずいと思ったのか苦笑いしていた。

 性感と戦慄で熱くなったり冷やされたりして彼の胸中は嵐のようだったが、いつしか翼の笑みに流されて笑い返していた。

 

 

 

※4

 

「入れてくれるんだね……わたしが無理やり言わせたのに」

「翼がエロすぎてたまらなくなって……それに、本当に無理やりだったかな」

 

 翼はベッドにあお向けとなって大きく太ももを開き、向かい合わせのプロデューサーを見上げる。正常位で挿入を待つ体勢がパイズリよりだいぶ恥ずかしく感じる。照れ隠しで茶化す。応じる彼の言葉も、どうにか軽々しく聞こえてくれ、との裏が透けている。

 

「ナマで入れてくれちゃうんだ」

「終わったら産婦人科に連れていくぞ」

「気が早いよ」

「別に妊婦限定じゃないんだってあそこは」

「それは……まぁ、そっか」

 

 処女喪失からかけ離れた会話のあいだで、膣口にペニスが近づけられていく。ねっとりと濡れそぼりつつ翼の膣口がわずかに開いている。亀頭が分け入ってこようとするが、やはり処女らしくきつくて、翼がびくりと眉を歪める。プロデューサーが苦心して腰を静かに進める。

 

「ぷろ、でゅ……ねぇ、もっと、奥まで、ぇ……」

「……翼っ」

 

 指や舌よりずっと硬く大きいペニスが、翼の膣肉を割って入ってくる。言葉で強がっても表情で強がれない痛みが、ついに処女喪失をはっきりさせる。

 

「ふ、ふふ……もっとかわいそうにエンエン泣けるつもりだったけど、拍子抜けかも……?」

「……痛くないほうがいいよ、俺も」

「運動してる女の子にありがちなんだって、レッスンのおかげかな」

「話には聞くが、どうかな……」

「……志保もそうかな、って思ったでしょ」

 

 彼の手が頭をなでてくる。その前腕をつねってやる。愛撫と違っていやらしくなくて、子ども相手みたいな扱いしちゃって、と怒ってみせる。

 目を閉じてくちびるを小さく開く。キスを誘い、二度三度ついばみあい、頬ずりされる。彼の剃りあとがわずかにざらりとしていた。

 

「ぇ、あっ、んくっ……おっきぃ、なぁ……」

「翼……」

「呼んでっ、わたしの名前、もっとっ」

 

 痛みと快感をないまぜにした刺激が、腹の底から脳天までひっきりなしに行き交う。空前絶後の中でも、彼が無心に翼の名前を呼んでくれるのを聞くと、それにすがりたくなる。膣が徐々に押し広げられて、ついにペニスの付け根が当たる。奥まで入りきったのがわかると、翼もようやく深く息をつく。

 

「あ、あきゅっ、ひ、うぐ……う……だめ、ぇ……抜かれるのは、ぁ……」

 

 プロデューサーのペニスが、彼女の胎内で心臓のようなリズムで脈打っている。そのリズムで腟内がひりつく。この痛みをいつまで引き延ばしたら彼を自分にすっかり縛りつけてやれるか、と考えてしまう。

 

「ねぇ、プロデューサー」

「翼……」

「気持ちいい?」

「……パイズリのほうが気持ちよかったかな」

「あはは、だろうね」

 

 翼も彼も引きつり笑いで見つめあう。彼が腰を引いてペニスを半ばまで抜くと、腕をつねって止める。

 

「出して、って言ったでしょ」

 

 抜き差しはゆっくりだが、膣が内臓ごと裏返って出るかと思うほど痛みが波打つ。ついに目を閉じて彼の肩にしがみつく。彼が動いているばかりではなく、ヘソのあたりからずくずく痙攣しているとも気づく。痛みをこらえて彼の腰にも脚を回して絡めとる。奥の奥までペニスが食いこんでくる。

 痛みにも焦がれるような恍惚があると気づく。

 

「ん、ぅ、あっ……ねぇ、こうしたら、気持ちいい……?」

 

 射精を促して膣肉でにゅぐにゅぐと締めつけ、下腹部同士まで密着させる。処女の肉壷が、今しがたのパイズリよりひたすら勢いに任せて彼に射精を促す。

 彼の腰使いが荒くなる。

 

「翼、翼っ……ああ、もう……っ……!」

「えぅっ、ん、んんっ……! だし、ちゃえ……!」

 

 射精へ駆けあがる彼へ、拍車をかけるように手足でぺちぺち打ちかかる。膣肉を引き攣れんばかりに締めつけて、感じきれない感覚が突きあげてくる。胎内でペニスがひときわ大きく脈動する。パイズリで射精させる寸前のようすを思い出す。

 

「……いいからっ!」

 

 奥を目がけて、びゅぐっ、びゅるっ、と精液がほとばしる。彼が腰を押しつけて、限界まで翼の胎内へ注ぎこもうとしているらしく、膣肉がさらに追い立てられて痙攣する。神経が痛んで焼けて絶頂で燃えて別人に変えられてしまう。

 

「……翼っ」

「ふふっ」

 

 脂汗のないふりをしながら彼へ笑いかける。彼が表情をわずかに困惑させる。そんなに妙な笑い方をしてしまったか。

 しかし笑いが抑えきれない。笑いで腟内に妙な力が入って痛くても止まらない。

 

「いい手、ってのはこーゆーことっ、わかる? わかる? もーいいよっ」

 

 

 

 二人が交わっていたベッド下からもぞもぞ気配が漏れた。

 ややあって、頬を紅潮させた志保がのろのろと這い出てきた。私服のボーダーシャツのボートネックが少し乱れていた。

 

「二番目でもいい、黙っててあげる……それをタダで言うわけないよね♥」

 

 プロデューサーは頭を抱えた。

 

 

 

※5

 

「あぁ、本当に、翼は……プロデューサーさんと」

「“わたしの勝手”っていうのは……二番目でもいい、本気じゃなくて浮気でもいい、って言ってあげることっ♥」

「……俺は翼を甘く見ていたようだな」

「あの子にもしも飽きたら……そんなの待たなくったって、この手なら、あの子が飽きられる前でもいいの!」

 

 翼の告白は、パイズリ射精を達成したときよりさらに得意げで、彼女自身にも抑えきれない勢いらしかった――『プロデューサーはわたしの言うこと飲むしかないんだぁ……志保と付き合ってるの秘密にしなきゃならないけどわたしがそれを知ってる。黙っててもらわなきゃいけない……そこに二番目でもいい、って聞かされたら、すごく都合のいい落とし所でしょう? 落ちるよ』――プロデューサーが気力を振り絞って志保へ視線を向けた。

 志保の視線は彼より翼寄りにズレていた。

 

「いつのまにか闇桜アビーにかぶれてしまったのかしら……二番目でもいいと、口だけでも言えるなんて」

「言いたくはなかったけど、それよりえっちをいちばんにシたくて」

 

 言いたいことを言い切ったらしき翼が、プロデューサーの顔をのぞきこんだ。

 視線を浴びた彼が、何か言わんとしてくちびるを開け閉めするが絶句したきりだった。視線を投げ返すのがせいいっぱいらしかった。

 

「それとね……わたし、プロデューサーさんの予想を超えていきたいって思ってるんだっ」

 

 ウエットティッシュで処女血や愛液、汗をそそくさと拭うと、いまだ思考停止しているらしき二人を尻目に、さっさと着衣を整える。

 少しぎこちない足取りで部屋のドアを開ける。

 

「お風呂沸かしておいてくれたよね?」

「……ええ」

「じゃあ行ってくるからっ♥」

 

 それから志保にくちびるの動きだけで投げつけた――『ダシに使ったの、ここでチャラにしてもらうよ』――反応を置いてけぼりにして、翼の気配が遠ざかる。

 志保が彼に背を向けかけ、止まって首と肩だけで振り返る。

 

「ドア、閉めてきても?」

「あ、うん、頼む」

 

 プロデューサーは時間が経って射精後の虚脱感がますます膨れあがったように動けずにいて、翼が半開きにしてしまった仮眠室の扉を志保が後ろ手に閉めた。

 

「抜け駆けして、やり返されて、また……まるでチキンレースですね、あぁ怖い、怖い」

 

 それが志保の独り言なのかどうか、プロデューサーは判断しかねた。

 どうやって意味を聞こうか言葉を探し当てる前に、志保にベッドへ押し倒された。

 

「翼に焚きつけられたふうな流れに思うところもありますが」

「志保……!?」

「ご存じでしょうが、私、けっこうな意地っ張りですので」

 

 志保に手首をつかまれ、据わった目で視線を浴びせられ、敷物のように思い切り尻に体重をかけて腰掛けられ、彼はまたも絶句させられた。

 

 

 

「察してましたよ、翼のやることは……できるわけがない、最後までは、できるものなら……と甘く見ていたの、計算違いでしたが」

「志保、俺は……」

「私がいましゃべっているんです、それを差し置いても言いたいことが……ありませんよね、きっと」

 

 告白してそういう関係になったばかりのはずの彼を寝取られるがままにさせられて、しかし志保の頬は紅潮していた。

 

「私のせいで翼がここまでした、と言うと……自意識過剰かもしれませんが」

 

 彼の手をつかんで、彼女自身の胸にぐいと押しつける。

 

「……もちろん、私がそうしても、構いませんよね」

 

 北沢志保のスタイルは、伊吹翼と同年代にして向こうを張れる。プロフィールを引けば身長161センチにスリーサイズが83-56-84となっている。

 しかし、彼女らの年ごろは日ごとに体が成長する。その成長をより輝かしく導くことが仕事であるプロデューサーさえ驚くほど鮮やかに移り変わる。

 そのバストのふくらみに彼が触れたのは、服越しを含めてもそのときが初めてだった。

 

「興奮、してしまっているの……わかります?」

「……そんな気はするが」

「プロデューサーさんってああいうセックスするんですね」

 

 いつからベッド下で聞き知っていたのか。彼が翼に仮眠室へ引っぱりこまれる前からか。現実逃避して詮無き疑問が後頭部のすぐ裏を回る。

 

「私にもいじわるにしてみたくなります? 楽しそうにしてたじゃないですか、プロデューサーさんが」

 

 それでも促されて、志保の乳房を彼が手のひらで押し包む。ボートネックのシャツが汗を吸って湿っている気がする。ブラジャーが支えている以上に持ち上げようとすると一気にみっしりした重さと密度を伝えてくる。

 

「そういう顔、してたんですか。隙だらけ、です」

「意地が悪そうに見えないかな」

「さぁ」

 

 志保は自分の欲情に戸惑いつつ、彼の手を使って行き先を探っているらしい。しかめ気味だった眉が時おり悩ましく揺らぐ。

 彼女自身でシャツとブラジャーのカップをずり上げる。むき出しになった乳房がふっくら丸く、乳暈が淡くぷっくりとして彼の視界を占有しようとする。

 

「……ああ、プロデューサー」

 

 彼の頭をかき抱くようにしながらつぶやいたせいで、彼の相槌が志保の谷間に覆われはっきりしなかった。

 

「……一つ、提案があるのですが」

 

 

 

「ちょっとなんでこっち来てるの!?」

「残り香が鼻について……あと、私も翼に見せつけたいわ」

 

 翼が気持ちよく事後の汗を流している事務所の浴室に、志保がプロデューサーを引きずりこんでいた。

 

 

 

※6

 

「初めてはベッドにしといたほうがいいと思うけどなぁ……プロデューサーもそう思うでしょ」

「……そうなのか?」

「ええと……安定性とか?」

「いいでしょ、ゆっくり優しくしてもらうもの」

「志保ってホントに初めてなの? ……いや、いや、あんまりにも雰囲気が、ね」

「しないほうがマシな言い訳があるわよ、翼」

 

 芸能事務所にしては異例だが、765プロ事務所にはシャワー室併設の浴室がある。劇場にレッスンスペースがあるのでそこでかいた汗を流したいが、シャワー室で水回りを作るならいっそ入浴できる規模を、との要望を容れて造られた。

 少なくともプロデューサーはそう聞いている。従業員、特に青羽美咲が――『おうちのお風呂より広いし、あがってすぐ寝られるし……水道代も少し浮きますし』――夜まで残業しがちな一因ともなっている。

 

「汗を流したら座ってください、体を洗ってあげます」

「……至れり尽くせりだな、怖いぐらいだ」

「いまのプロデューサーに怖いものなんてあったんですね」

 

 彼はシャワーのあとバスチェアに座らされる。半ば曇った鏡の向こうに志保の顔が映る。切れ長の瞳、通った鼻筋、薄めのくちびる。アップにまとめた髪にタオルを巻いて額を出している。

 

「な~んかヤラしい画ですね~」

「長湯してると肌がふやけちゃうかもしれないわよ」

「わたしは何もしないでいる、なんて約束してないもん、わたしはねっ」

 

 翼の茶々を止めようとするも、すぐ諦めたのか、志保が黙って泡を立てはじめる。

 アイドルの少女に浴室で体を洗ってもらう。しかも直前まで別のアイドルと交わっていた落索を拭わせる。それがどれだけ倒錯的な行為か、志保が自覚しているだろうか。

 

「手、横に出してください」

 

 言われるがままに彼は手を浮かせて志保に委ねる。白く細い志保の手が、彼の男性らしくごつごつした腕や手を包んで磨くように洗っていく。自分の肌をなでるかのように淡々としている。完全な無音でする耳鳴りのように、かえって彼の意識を波立たせる。

 彼の手と腕を泡まみれにしたあと、志保は彼の肩と背中にかかる。

 

「……っ! 志保、っ……」

「……どうかされましたか?」

 

 志保の両乳房が彼の体に触れる。最初は物の弾みのように、ついでようすをうかがいつつ、わざととしか思えないように。

 彼の意識が湯よりものぼせ上がる。

 

「なっ、な、なんかホントにヤラしいっ!?」

「……翼にも負けていないと思いますが、いかがでしょう」

「無理に張りあうもんじゃないぞ」

「煽ってますか?」

 

 志保は乳房にまとう泡をあえて薄くしているらしい。おかげで、滑らかで水さえ弾く肌も、それをぱんぱんに張り詰めさせるボリュームも、彼の神経を煽り立てる。きょう二度射精したペニスがじわりと力を取り戻す。

 

「私は……プロデューサーさんにしてあげるほうが、性にあってる気がします……興奮なら、もうしていますし」

「ねぇ、そろそろお湯で流してあげよっかー……ああ、はい、はい」

 

 志保がさらに彼の背中へ乳房や腹部を擦りつけている。そのまま翼をひと睨みでもしたのか、横で翼が浴槽から浮かせかけた腰をへりに乗せる。

 彼に乳房を密着させ、両腕も肩に回して抱きつく。彼の耳元へくちびるを近づける。

 

「興奮なら、もうしていますし」

「志保……」

 

 丸々とした弾力の中に、二つの突起らしき感触を彼は意識させられる。志保の吐息が追い打ちのように耳たぶにかかり、頭がかっと熱くなる。彼女は恋敵の少女を横目で牽制しながら、痴態を見せつける。いつもの冷静沈着な態度とかけ離れている。それほど興奮しているのか。

 つづいて志保が彼の前面に回り、胸板や腹部を洗う。さすがにここで乳房を押しつけるのを憚ったのか、あるいは勢いを取り戻しつつあるペニスが目に入って、これからのことを考えているのか。

 

「もう興奮されていますか」

「志保にも……してあげられたら、もっと興奮してしまいそうだ」

「私にもいじわるしてみますか、楽しそうにしていましたものね」

 

 言いつつ、志保は彼の体を洗いつづける。それでいてくすぐるような手つきを織り交ぜ、彼からのアプローチを誘う。泡まみれの彼の手が志保の肌をなでる。

 

「んっ……」

 

 無防備に愛撫をねだってきた翼と比べて、まだ澄ましたふうな志保に触れるといっそう背筋がざわつく。その気がなさそうに事務的な作業をこなす女を快楽でこじ開けて征服する、痴漢のような嗜虐欲をくすぐる。第三者たる翼の目がある、というのも痴漢を連想させる。

 志保の肌の曲線を指先でなぞる。乳房の先端に近づき、乳首へ指がかかると彼女がわずかに目を細めて洗う手を止めるが、すぐ再開する。

 

「ぇ、あっ、ん……そういう、手つき、で……」

「変えたほうが良いかな」

「プロデューサー、そういうとこだよ?」

 

 泡立ちに紛れそうなほど、志保の声が押し殺されてかすかになっている。そのくせ乳首がぷりぷりに感じられるほど発情して硬くしこっている。彼が繰り返しそこを指の腹で転がす。そのたびに彼女が肌を甘く浮き沈みさせて反応し、彼を昂ぶらせる。

 

「……そのまま、お願い、します」

 

 志保の声が控えめだが切々と響いて、彼ばかりか翼までしばし言葉を失う。手だけがエスカレートする。ねっとりと乳房をもみしだき、乳首をつまんで転がす。ついに志保が彼を洗う仕草が乱れる。

 

「いいのか、志保」

「……いいんですよ」

 

 このまま志保のくちびるを奪いたい。思うさま舌で吸い立ててくちびるを腫れ上がるほどむさぼりたい。迫りかけて、彼女のあごに泡が一欠片くっついているのがおかしくて思いとどまる。

 

「ん……くぅ……楽しい、ですか……?」

「楽しいとも」

 

 志保がちらちらと彼をうかがい、翼が大げさなため息をつく。

 乳房からお尻へ、秘所へ愛撫を広げる。

 

「ふ、ぁ……は、ぁはっ……♥」

 

 志保が恥じらいながら脚を開き、指に合わせて太ももや下腹部をそわそわと反応させる。ベッドに半ば横たわっていた翼に対し、浴室で中腰の志保はどこか不安定で、彼の目からすると快楽に大げさに揺れて見える。もとより温水やボディソープの泡で肌がぬるぬる濡れているが、志保の火照った汗も混じっているらしい。

 

「浅く、入れるぞ」

「ん、ぅ……お気遣い、どうも……っ……」

 

 彼が志保の割れ目へ指を挿しかけると、さすがに緊張が勝ってか、志保はくちびるを引き締める。彼の肩に自分の手をかけて支えとする。彼の指先でクリトリスをくすぐられ腰を引く。ゆっくり指が曲げられ、指の腹が彼女のひだを擦ってくる。

 

「ん、ぁ、はぁ……っ……」

「ここからだけでも、ベッドに寝てシたほうがいいと思うけどな……」

 

 志保がかぼそい嬌声と、翼の半分気遣わしげなつぶやきが交わる。志保が腰をくねらし、ヒザやふくらはぎまでふらふら震わせる。熱い吐息を長く伸ばしながら彼へもたれかかり、乳房が彼の胸板に柔らかく歪む。

 

「……ここで抱きたくてたまらなくなってしまうかも」

「ふ、ふ……釘を刺した、おつもり、で……?」

 

 彼の手が、こんどは志保の膣口とクリトリスに同時に刺激を与えてくる。指を曲げて浅く挿入しつつ手のひらでクリトリスを圧迫する。おぼろげな性感が志保の心身を行ったり来たり、ほんのり少しずつ降り積もって、奥から性感の種火を植えつける。志保の腰がくねり、乳房を彼の胸板に擦りつける。それも敏感な乳肉への刺激になってか、神経まで切なくしびれてしまう。

 

「んきゅっ、ふ……!? あ……わたし、こんな、に……」

「もっと体重かけて、いいから」

 

 クリトリスの包皮をずり上げられ、休み休み転がされ、こねられる。志保の背すじがぶるぶる震えて、翼にさえ見て取れるほど乳房がたぷたぷ揺れる。

 彼が要領をつかんできたのか、指で彼女の陰唇を押し開き、クリトリスを表裏からなぶる。たまらず志保が彼の腕へすがりついて、かかとを浮き沈みさせて床でも泡と愛液を鳴らす。

 

「ん、ぅ、あっ……は、あっ……」

「もっと、って言ってるのに」

 

 一言交わしたあとも、志保が彼にもたれかかっている。すべて彼に預けるというには遠慮がちで、内股でこらえているが、自重を支えるのも見るからに心もとない。

 

「んっ、ふぁぁっ……そ、そこっ……んっ、んくっ……!」

 

 彼だけが感知していることだが、志保の膣が彼の指を奥へ誘うようにうごめいている。志保自身の態度より積極的に、デリケートな粘膜が彼に淫行を促している。

 冷静ぶって一息入れて、彼はあえて指を引き抜く。志保が息をつき、彼へ寄りかかっていた姿勢を直す。とろりとした愛液が彼の指にまとわりついている。

 

「志保、抱くぞ」

「……安心、しましたよ……このまま終わっちゃうんじゃないかと、なんて」

 

 彼のペニスが、きょう二人目の処女膣に期待してかすっかり充血して上を向いている。

 

「志保ーっ、いちおう聞くけどアレ飲んできてる? 私はだいじょうぶだけど」

「そりゃあ……じゃなきゃ、さすがに」

「口では素直じゃなかったけど、しっかりしてもらう準備してたのね」

「言っておくけど、本来アレは中に出させてあげるためのモノじゃないわよ」

「使えるモノは使うの」

 

 ざばり、と湯面を蹴飛ばす勢いで翼が立ち上がる。

 

「ここにいるとのぼせちゃいそう」

 

 翼がゴムなしペニスで処女喪失を要求して受け入れられた。志保もそうすると予想していた。そこまで確かめたら、もう用を済ませたとばかりに浴室をあとにする。

 そして志保とプロデューサーだけが残された。

 

「抱いて、ください……ああ、セックスって意味も、ですけど……こう、物理的に?」

「お姫様だっこがご希望かな」

「……え、ええ」

 

 彼が浴室床へ直で腰を下ろし、ヒザ上に志保を乗せる。“お姫様だっこ”から座位で交わるのは、安定感、密着感があるうえ志保のセミロングの髪が散らばりにくい。代わりに動きが制限されるが、処女相手にはむしろうってつけかもしれない。

 

「恥ずかしい、ですけど……でも、これが、いいですっ」

「志保……お、おぅ」

「素直になるって決めてるんです、二人きりのときぐらいは。なかなか……実行できてませんけど」

 

 志保が彼の首と肩に腕を絡めて、胸板に顔を埋めてくる。お互いの息をくすぐったがりつつくちびるをゆるめる。

 

「ふふ……翼を笑えませんね、のぼせちゃいそう」

「志保は、その……」

「いつでも、あなたがいちばんしたくなったときに……私がすっかりのぼせる前に」

 

 ゆっくりと膣口から押し広げられていく。志保が痛みを噛み殺しながら、それでも苦しげにうめく。

 

「志保、もう、すぐだから……」

「プロデューサーさん……っ……っうぅー……ぅ……!」

 

 痛みに顔をしかめながら悲鳴を押さえつける。血混じりの甘い蜜が彼の下肢まで垂れる。

 

「ふ、ぁ……は、ぁはっ……しちゃい、ました、ね……私、プロデューサーさん、と……っ……」

 

 彼から無言で背中をさすられ、志保が彼の胸板にまた頭を預ける。膣肉が彼の陰茎に、離れないでと命じるように締めつけてくる。しばらく沈黙して、ひそやかな息づかいと血の匂いが浴室で湯気と混じる。

 ついに彼のペニスが膣奥まですっかり収まる。

 

「れぅ、んぐっ、こく……はふ、む、んくっ……はうぅ、んぷっ……ちゅっ、ちゅう……」

 

 抱き合ったままくちびるを重ねる。舌が絡まって唾液が混ざり、志保のノドがこくんと鳴る。彼は志保のお尻をしっかり抱え、自分の下肢を使って腰を上下に揺さぶりはじめる。

 

「ん、ふ……ふぁっ、あ……なか、こすれ、て……っ……」

 

 キスの合間から、志保が切なげにあえぐ。乳房がゆさゆさと揺れ、膣肉が彼を離すまいと締めつける。彼の下腹や太ももとお尻とがぱつぱつとぶつかって音を立てる。

 

「は、ひっ、あう、んっ……えう、んんっ……うごい、て……ぷろ、でゅ……」

 

 ぱちゅっ、ぱちゅっ、と抜き差しの響きが粘っこくなっていく。幾度もそれを繰り返して、強張っていた志保の膣内がほぐれていくのを待つ。彼の胸板に乳房を押しつけ、志保が腰をくねらせてもだえる。

 

「あっ、ぅ、あ、んんっ……ひぁ……!」

 

 彼のペニスの反り返りやくびれが、志保の膣壁をごりゅごりゅとえぐってくる。苦痛と快楽と、幸福と恐怖が入り混じって志保を内側からも揺り動かす。

 

「志保……俺は……っ!」

 

 彼のうめきも、志保のあえぎも、二人きりの肌のあいだで跳ね返って、折り重なって混ざっていく。志保は彼の背中へ回した腕にいっそう力をこめ、ついに膣内が彼を締めつけ吸いつき搾り取ろうとする。ついさっき処女を失ったばかりなことが信じがたいほど、いやらしく貪欲にうごめく。彼が歯を食いしばり、ペニスが根元から脈打つ。絶頂が近いとどちらともなく悟り、膣肉がますます締めつける。

 

「あ、くっ、きゅ、ぅ……っ! だし、て、私の……っ……っん、ふ、あっ、あぅ、んんっ……!」

 

 奥に居座ったままのペニスを、志保が腰を揺すってさらに奥へと導く。半ば成熟した女性のように受け入れて、破瓜で傷つけられた女体が、傷ついた果実のように熟れだしているかのように、瞬く間に変わっていく。抜き差しでこぼれた蜜が、二人の結合部でじゅぷじゅぷとうるさいほど音を立てる。

 痛みと快楽をかき混ぜるようにしながら、彼は射精衝動を高める。応じてか、早くも彼女の膣肉が彼をきつく、一滴も残さないとばかりに締めつける。もうすぐ、と志保がうわごとめいて訴える。熱っぽく潤んだ瞳が彼を見上げて、きゅんとお腹の奥底まで締めつけてくる。

 

「あ、あぅ、んんっ! えう、んんっ……あ……あ、あっ、あ、ぷろでゅ……も、ぅ……くるっ……♥」

 

 奥の奥で、限界を踏み越えたペニスから子種が吐き出される。志保が背中を弓なりに反らし、膣肉が彼の陰茎を食いしめて締めつける。彼は彼女の体を抱きとめながら、もう一押しとばかりにどくどくと精液を注ぐ。

 

「……志保……?」

 

 長い射精が終わって、お互いの息を整ってきても、志保は彼にしがみついたままでいた。彼の胸板に、彼女の乳房がむにゅっと押しつけられ、その感触と温かさが心地良い。

 

「……のぼせちゃったら、運んでください」

「おい」

 

 彼が背中をぺたぺた叩いても、志保は彼の胸元に顔を埋めてくつくつ笑うばかりだった。

 

 

 

※7

 

「じゃあ、きれいさっぱり片づいたよね?」

「……ええ、まぁ」

「……ならいいけど」

 

 三人は手分けしてセックスの事後処理を進めていた。志保の奥歯に物が挟まったらしき含みを、翼は一瞬だけ気にして、一言だけで流した。

 志保が言い淀んだ原因は、処理作業中に精液をうっかりお湯で流しかけて洗い落とすのに手こずったせいだった。

 プロデューサーは知っていたが翼に合わせて流した。

 

「あー楽しかったー♥ いいお休みでした、これで三人の秘密になっちゃいましたねぇ」

「こりゃあ事務所にすっかり知れ渡るのも、時間の問題かな……」

「怖い冗談言わないでくださいよ~っ」

 

 いちばん素面に近いのは、セックスも入浴も先に終えていた翼だったが、勝手に事務所からコンビニへ出かけて、志保に説教されていた。

 その説教を、翼がちょうど買ってきていた生クリームたっぷりのロールケーキを口元に押しつけられて無理やり止めて、プロデューサーが仲裁するまで後片づけが中断する一幕もあった。

 つまり作業がなかなかはかどらなかった。

 仮眠室や浴室の始末をすっかり終えたころには、太陽が傾いて橙色になっていた。

 

「それじゃプロデューサーにも、お疲れ様ーっ」

「こら、食べ物で遊ぶんじゃないぞ」

「疲れたときには甘いものです~っ、あとわたしもプロデューサーに白くてふわふわしたものをこすりつけたくなっちゃって」

「……プロデューサーさん、私と産婦人科に行きましょう、これから、すぐに」

「志保っー!?」

「私……ただでベッド下に大人しくしてあげていたつもりは、ありませんから」

 

 彼の右腕に翼が、左腕に志保が腕を絡めて、ぐいぐい引っぱられる。

 

「うわー、モテモテって実はたいへんなんですね♥」

「両手に花、ですねぇ」

 

 無駄だと察しつつも、プロデューサーはこの状況を落着させてくれる大岡越前やソロモンの姿を探してしまった。

 

(おしまい)

 


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