※この作品はR-18です。

One More Time   作:ヒナまつり

5 / 10
5話 R18要素微量

 

 耳を劈く波が街を、人を呑み込んでいく。

 

 助けてと喚く人、僕達を殺そうと立ち向かう人。皆、皆呑み込まれた。

 

 その中には、僕の大切な人も、スカジだった彼女の大切な人も居たけれど…僕は助けることが出来なかった。

 

 もう、彼女ではないのだと分かっていてもIshar-mlaを止めることも、殺すことも…僕には出来なかったんだ。

 

 僕はただ…皆と生きたかった…ご飯を食べて、遊んで…困難を一緒に乗り越えて。そんな、平凡な人生を送りたかっただけなのに。

 

 その為にアビサルハンターとして生きて頑張ったのに…今、目の前に広がるのは何なの?

 

 こんなことなら、僕は転生なんて選ばなかった…もう一度の人生なんて望まなかった…。

 

 だけど、もう…戻ることなんて出来ない。後悔なんて山のようにあるけれど、もう戻れないんだ。

 

 だから、せめて…せめての償いを死ぬことも許されない貴方に…。

 

 


 

 鉄の錆びた匂いが充満する部屋で何かが滴る音と曇った声が聞こえる。

 

 ユーリも居ないしドクターも見えなかったから、私はそこへ足を運んだ。

 

 まだ、血族になることを拒否している可哀想な人が居るのだと思って。

 

 でも、そこにはユーリが、ドクターを殺し、腐り落ちた筈の私の刃で自らの身体を突き刺し倒れ伏せていた。

 

 「…ふふっ、死にたくないなぁ…みんな、こう…思ってたのかなぁ」

 

 「ユーリ…?」

 

 涙を流しながら、地面に倒れている彼を咄嗟に抱き寄せたが何が起こったのか、分からなかった。

 

 ユーリは…私の血族で…大切な人。なのに…なんで?自分を?このままじゃ死んでしまう…?

 

 上手く口が動かない…頭がまだ混乱しているのだ。そらでも、頑張って口に出せた言葉は、独りよがりの卑しい言葉だった。

 

 「嫌、嫌よ…私を、一人にしないで…」

 

 血が、流れていく。彼の命は、その灯火を費やすように紅き花を咲かせる。

 

 どれだけ、治れと祈っても、崩れ落ちていく剣が拒み続ける。

 

 「…スカジ、まだ…居たんだ…。ごめんね、全部…僕のせいだ…君に、そんな顔をさせるのも…こんな未来になったのも…僕が─」

 

 暖かな手が、私の頬を撫でる。慰めるように、優しく。

 

 「なら、私を…一人にしないで…。あなたが居ないと…私は…私を保っていられないの…だから─っ」

 

 その後の言葉を残すことは出来なかった。何故、彼は、私の口へ口づけをしたから。

 

 彼の血が、流れ込んでくる。彼の味は、罪のように美味で、離したくなかった。

 

 でも、長くは続かなかった。彼は無理矢理、私から離れたから。

 

 そして、歌を歌った。私にはそれが…理解できなかったけれど、悲しく…儚い、そんな歌だったわ。

 

 私は、その歌を共に歌った。もう、彼は助からなかったと分かってしまったもの。

 

 永遠にも感じられるそんな時は、彼の命が消えるその時まで続いたの。

 

 そして、暖かさが消えた彼の身体は、光の粒子となって空へ消えていく。咄嗟に伸ばした手からすり抜けるように。

 

 零れた涙は、懐かしい故郷と同じ味がした。彼の味を忘れ去らすように、上書きして。

 

 目を閉じた。彼との思い出はもう思い出せないけれど…この身体に残っている想いに身を馳せるために。

 

 闇の中に懐かしい潮の香りがした…。そこには血に染まった海の中で煌めく星空に照らされ…宝石のように輝く彼がいた。

 

 そして、目を開けたら…私は…これまでの記憶がない状態で彼のいない昔の世界にいたのよ。

 

 ずっと、心に穴がいたような痛みと何が足りないと感じる想いを抱えながら戦い続けた。

 

 皆を失って、それが怖くて陸に上がって…サメが拐われてあの地に戻った時、私は…彼に出会ったわ。

 

 月夜の明かりに照らされ海を見つめるその時の彼は美しかったけれど…エーギルでもなくサルカズで見た目も一人称すら変わっていた。

 

 私も、彼との記憶はなかったから…彼を突き放すような言動をしてしまったのよ。

 

 でも、彼は…私についてきた。何でも、私が強そうだからと。

 

 そして、夜を明かそうと小屋を選んで入った私にアニタを追い出してから、彼はこう頼んできたの。

 

 「スカジさん、一回で良いから…俺と、その、せっ、セックスしてくれ!」

 

 「あなた…何処かで、頭でも打ったのかしら…?」

 

 顔を真っ赤にさせながら、頭を下げて。初めは、訳が分からなかったわ。

 

 だけれど、近づいてくる彼を押し退けることが何故か出来なかったの。そう、私の頭と身体が別の反応しているように、なにも出来なかった。

 

 そして、彼はそのまま私を壁に押し付けて、無理矢理キスをしてきたわ。

 

 その時、彼の匂いと彼の味が私の身体を巡って、私は思い出したの。

 

 最愛の人との記憶を…そして、彼を失ってしまう未来を追体験するように。

 

 「あなた…ユーリ?…嘘、嘘よ。私は…あんなこと!」

 

 深海よりも暗い闇を見たの。私が何をしたって、結局…大切な人も、場所も奪われてしまうって…その記憶から分かってしまったから。

 

 そんな私を、慰めるように頭を撫でながら彼は抱き締めてくれたわ。

 

 その身体は確かに、前世とは似てもつかなかったけれど…彼の温もりは、彼の香りは変わっていなかったから、私はそのまま彼に身を任せたの。

 

 愛おしいようにするキスも、弱いところも私を責める動きも彼のままなのに何時までたっても彼は記憶を取り戻さない。

 

 それが悲しくて…辛くて、私は彼を求め続けた。

 

 彼が生きているという実感とこの熱をもう離したくなかったから。

 

 けれど、朝になるとユーリは…残り香を残して居なくなっていたの。

 

 必死に探して、彼の匂いを辿ったけれど…霧のように彼は消えた。

 

 それから、幾つもの事件を追っていくと彼に顔を会わすことがあった。けれど、何時も私の顔を見ると隠れるように、姿を消すの。

 

 戦闘をしているときも、アビサルハンターの時のような無茶をして…死にかける癖に、私が援護しようと動くと直ぐに姿を眩ます。

 

 それを繰り返してやっと、会話できたのは彼がロドスに所属してからだった。

 

 ただ、何故か、サメとあの審問官の匂いを漂わせながら。

 

 「や、やぁ…久しぶりだね?ど、どうしてそんな怖い顔してるのかな…?…もしかして、あの時のこと怒ってる?」

 

 おずおずと聞いてくるユーリは、可愛らしいけれど…許せなかった。

 

 私を好き放題しておいて、何も言わずに捨てて…久しぶりにあったら別の女の匂いをベッタリとつけている彼のことを。

 

 「ねぇ、何故あなたから…サメと審問官の匂いがするのかしら?」

 

 彼の手を壁に押し付けながらそう聞くと彼は申し訳なさそうに事情を説明してくれたわ。

 

 「俺は…サキュバスなんだ。生きるためには精気が必要である程度とれないと暴走しちゃうんだけど…それでね、まぁ彼女達と。…いや、申し訳ないことをしたとは思うよ…ごめん」

 

 理解は出来るけれど…納得は出来なかった。それなら、私を捨てないで一緒にいれば良かったんだもの。

 

 確かに、こっちの初めては少し強引だったけれど…それでも、私は拒まなかった筈よ?

 

 それなのに、彼は勝手に消えて勝手に他の女に身体を許したの?それも、私の許可なく?…早く、血族にしてしまおうかしら

 

 「あの、スカジさん?な、なんか手から嫌な音するんですけど!?てか、痛いよ!?離して!?」

 

 喚く彼がさらに私を逆撫でする。それにしても、何で嫌がるのに力を込めないのかしら?本当は…無理矢理が好きなのかしら?

 

 「でも…そう言う割には抵抗しないわね?」

 

 「してるさ!でも、俺、か弱いんだよ!サキュバスだぞ!?くそっ…助けて、ローレンティーナ!」

 

 これで抵抗しているなら…組伏せることも、監禁することだって…。

 

 そんな危うい思考が過る。だが涙目になりながら叫ぶ彼の声に反応して、サメは私に飛び掛かってきた。

 

 「あら、スカジ?ユーリに何をしているのかしら…?」

 

 「危ないわね、サメ。別に、何でユーリから…あなたの匂いがするのか聞いただけよ」

 

 彼を巻き込まないように離し、逸らすように剣を当て弾く。

 

 体勢を立て直したサメは警戒しながら私とユーリの間に立ち塞がる。

 

 武器を構え直して、向き合う私達を尻目にユーリは後ろを向いて走り出した。

 

 「助かった…ごめん、俺…ケルシーさんに呼ばれてるから!じゃ!」

 

 …いい加減にしなさい。ユーリ、また私の前から姿を消すの…?

 

 ギリギリと握った剣から嫌な音が走る。

 

 「…サメ、退いてくれないかしら?私は、ユーリと話があるの」

 

 「嫌よ?それに、こんな面白い状況楽しまなきゃ損じゃない。ねぇ、スカジはユーリのこと好きなのかしら?」

 

 「…うるさい」

 

 怒りに任せて振りかぶった剣はローレンティーナに受け止められて火花が散る。

 

 ニヤニヤと笑う彼女は相変わらず性格が悪い。

 

 「あら、図星なの?…へぇ珍しいこともあるものね?あの、スカジが恋を知ったなんてっ!」

 

 「っ!…そうよ、だから早く退きなさい。私は…あなたと戦いたい訳じゃないの」

 

 徐々に速くなるサメの攻撃を弾きながら踏み込み剣で押し退ける。だけどサメはそれを予測したかのように、柄で防ぎ、近づいてくる。

 

 「…残念だけど、それは出来ないわっ!それで?何でスカジはユーリを好きになったのかしら?」

 

 「…サメ、あなたには関係ない!…あなたこそ、ユーリを何のために守っているのかしら?」

 

 「あら、私の旦那様だからよ?彼は覚えていないみたいだけれど…それなら、思い出すまで離さなければいいもの」

 

 旦那様…?彼は覚えていない…?もしかして、彼女も?でも、それなら、私の記憶との誤差はなに…?

 

 「…サメ、もしかして…あなた、彼とシてなにかを思い出したりした?…例えば、未来のこととかね」

 

 「…もしかして、スカジ…貴方もなの?…なら、争う必要はないわね。スカジ、後で私の部屋に来なさい」

 

 「えっ?…ちょっと、どういう?」

 

 武器をしまったサメはそのまま部屋へ戻ろうと振り返る。するとそこにはいかにも怒っていますという雰囲気を隠そうともしないドクターがいた。

 

 「…残念だけど、そのまま帰ることは許可しないよ。君たちが暴れて壊した備品や扉の修理は君たちがするんだよ?ユーリが泣きついてきたから何かと思ったら…はぁ、スカジ?スペクター?今度から争うなら訓練室を使ってね?」

 

 …こんな生き生きしたドクターを見るのは久しぶりだわ。…開拓なんて…もしかしたらしない方が、良かったのかもしれないわね。…ユーリも死んでしまうし…なにも残らなかったもの。

 

 「…分かったわ」

 

 「…ドクター?私はユーリを襲うスカジから守っただけよ?…私は悪くないんじゃないかしら?」

 

 「だめ!ちゃんと直してね?そもそも、守るだけならこんな暴れなくてもいいでしょ!?」

 

 ドクターは、そう言って帰っていった。渋々修理を行い、気がついたら夜になっていた。

 

 「それで、サメは何を見たの?」

 

 部屋へついた私達は椅子へ座り顔を合わせる。

 

 サメは何時もより何処か嬉しそうな、惚れ込んだような顔で語り始めた。

 

 「私は、ユーリが私と同じ場所で捕まった世界よ。研究のために色々されて、苦しんでいる私を見かねたユーリは無理矢理混ぜ込まれた血を暴れさせて助けてくれたのよ」

 

 「混ぜ込まれた血?」

 

 「ええ、サルカズをアビサルハンターとして使えるかの実験で、因子を取り込んだエーギル人の血を混ぜられたのよ。でも副作用が激しくて、欠陥品扱いされていたわね。ただ、全力で暴れれば、私よりも強かったのよ?」

 

「そして、ユーリは私を助けて、逃げ込んだ私達の家のなかで副作用によって全身から血を垂れ流して私の胸で死んでいったの」

 

 だけど最後の方になる程、顔をしかめていき…つうっと、サメのの瞳から雫が落ちた。

 

 …サメも後悔しているのかしら、彼を守れなかったこと。

 

 「…やっぱり、ユーリは死ぬのね」

 

 「ええ、小鳥ちゃんの見た方でも死んでリセットよ。多分ユーリが何かの力を持っているんでしょうね」

 

 「そう、もしかして…色んな人が、ユーリとの記憶を持っているのかしら?」

 

 「それは分からないわ。ただ、ユーリは死ぬにつれてその力を持ってきているの。私の見た記憶の混血の力もこの世界で使っているから、確かな筈よ」

 

 「なら、彼は私の血族のままなのね。分かったわ、それでサメは何でこんな話を?」

 

 「私はもう…ユーリには死んで欲しくないわ。スカジ、貴方もそうよね?」

 

 彼の温もりが、その命が手の中から零れ落ちていくあの感覚は…もう味わいたくはないわ。それが、彼を悲しませる方法でも、絶対に。

 

 「ええ、当たり前よ。絶対に死なせない…ユーリのことは私が守るわ」

 

 「でも、ユーリは私達の監視を潜り抜けて無茶をするのよ。スカジも狂人号の時のこと覚えているわよね?だから、皆で協力して守るのよ、一人じゃ見逃すことも、人数が集まれば見落とさなくなるから」

 

 「…でも、私達は皆、ユーリの事が好きなんでしょ?彼を独占しようとする心配はないのかしら」

 

 それに、私はユーリが他の人とあんなことをしているのは耐えられないと思う。

 

 ユーリのあの姿は私のものだもの

 

 「それは、何ともいえないわ。私だって、ユーリの事を監禁でもしようかと思ったの。でも、ユーリはそんなことを望まないし、もし監禁しようと捕まえても…逃げられるだけよ。それだけの力は持っているもの」

 

 「そうね、確かに…彼が自殺したあの時も、見張っていたのに起きたものね…。分かったわ、それじゃ…サメ。ユーリが死なないように、お互い頑張りましょ…」

 

 「スカジ?あなたの話はしてくれないのかしら?せめて、どんな世界だったかは聞いておきたいわ」

 

 「…私が全てを呑み込んだ世界よ、ユーリはそれに心を病んでドクターと共に自殺した。…これでいいかしら?」

 

 「ふーん?分かったわ、スカジ…あなたにも何かあったら言うのよ?今のあなた、目を離すと何処かへ飛んでいってしまいそうよ」

 

 珍しく心配そうな顔で私の手を掴む。でも、私の心には何も浮かばなかった。

 

 もう、私の心は蝕まれているのよ…サメ。既に、貴方に対しての感情も皆に対する感情も薄れている。

 

 私の心は今はただ、ユーリへの愛だけがポツンとあるだけ。

 

 ただ、それだけな筈なのだから。

 

 


 

 「うぅ、朝か?俺、また気絶してたのかよ…これでスカジは二日連続俺をノックアウトしたことになるな…」

 

 眩い日光がカーテンの隙間から差し込む。

 

 それに照らされたスカジは神秘的で美しい。それに、着崩れして見える肌が少しセンシティブだ。良くない、本当に良くない!

 

 それにしても、あの記憶は何なのだろう?後悔と自身への怒りがまだ、俺の身に刻まれている。

 

 それに、スカジ…いやIshar-mlaのあの顔は…もう見たくはない。思い出すだけで胸が痛くなる。

 

 とりあえず、ここを離れよう。今日は確か、龍門に行く任務もあるし、彼女と一緒にいることは出来ないだろうから。

 

 薄暗い通路を通って自分の部屋へ戻る。

 

 そこで、俺は着替えるために立ち鏡を見た。そこには服を無理矢理引き裂かれた姿の美少女がいた。

 

 待って!?俺、アイリーニの服着てたよな!?くっそボロボロなんだけど!?

 

 どうしよう…バレたらめっちゃ怒られるだろこれ!…とりあえず隠しておこう。

 

 うん、俺は悪くない。この服がこうなったのは、不幸な事故だ!

 

 よし、俺は何も見なかった。ステータスの確認で忙しいからな…そう思おう。

 

 


 

 ネーム:ユーリ

 

 

  力:82->90

 

 敏捷:60->65

 

 耐久:35->38

 

 器用45->47

 

 魔力:18->20

 

 魅力:95->100

 

 

 スキル----

 

 魅了、誘惑、夢操作、媚薬生成、性技強化、幻術、癒しの手、射撃、剣術、深海の捕食者、エーギルの深奥、歌唱、跳躍、浄化の剣、身替り、太古の血族(New)

 


 

 …あの、その…俺、血族になってない!?待て待て…いや本当に、そもそも、スカジが濁心スカジ…Ishar-mlaになっている時点でバッドエンドルート確定なのに、俺が血族…?いや一先ず能力の確認をしよう。

 

 太古の血族:Ishar-mlaの血を授かった者。身体の一部を変化させ、特定の力を得る。濁心スカジと行動時、人形のシーボンへ変身できる。

 

 …アウトでは!?




なんと、R18日間ランキング7位になりました。
なんでぇ!?皆さんのお陰過ぎる…本当に評価及びお気に入りありがとうございます!

またまだ、精進途中の人間なので、もっともっと良い文章が書けるように書いて書いて読みまくります。

あとあと、設定集を後日書きます。ここで開示された能力が多すぎる気がしたので整理して書きます!もし、分かりにくいものがあれば教えていただけると嬉しいです!

また、感想などもろもろモチベーションになりますので良ければくださると嬉しいです。
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