スラム街ではあるもののまだましな集合場所として選んだお店に入ると既にチェンとホシグマはいるようだった
でも、そこには何故か…いる予定ではなかった者がいた。
「何であんたがいるんだ?…ミュルジス」
「あら、あたしがついてきても作戦に不都合が生じることはないでしょ?…それとも、勝手についてくるのは迷惑だったかしら」
麗しいエルフの彼女はイタズラに成功した幼い子のように微笑んだ後、寂しそうな…悲しそうな顔でこちらを見つめる。
「まぁ…事前に知らせて欲しかったかな。一応、この作戦の隊長は俺だしね?それで、ついてきた理由は?」
「だって…ユーリ、あたしの所に来てくれないじゃない!寂しかったの!」
パタパタと俺の胸を叩きながら密着してくるミュルジスはそのまま、離さないと俺を抱き締める。
だが、クンクンと俺の匂いを嗅いだミュルジスは、嬉しそうに細めていた瞳を見開き、冷たい瞳で俺を見つめた。
「…ユーリ、もしかして…あたしが実験でいない間に…あの子達としてたわけじゃないわよね?」
「…あはは…そんなわけないじゃん…」
つい、背筋に走る悪寒からミュルジスから目をそらし嘘をついた。
だけれど…そんな嘘は通じないようでミュルジスは微笑みながら額にシワを寄せ強い語気で喋った。
「ねぇ、あたし…ユーリに嘘をつかれるのは嫌だって言ったわよね?…あたし以外にそんなこと求める上に…約束までも破るの?」
「…ごめん…うん、したよ」
「…そう、あたしなら何時でもそういうことしてもいいって言ってるのにしない癖に…他の子とはしてるのね」
怒りではなく妬みで少し悲しそうにフンと顔を背けてミュルジスは俺から離れ、席に着く。
逃げ道がなぁい!?更に怒ってる気がするんですけど!?
「あはは…ユーリは相変わらずですね?」
「はぁ…キミは節操というものがないのか?」
呆れたようにチェンとホシグマは俺を見つめる。
…しょうがないじゃん!今の俺はそういうことしないと死んじゃうんだから!
そんな嘆きを口に出すことはせずに心にしまい、顔に陰が残っているミュルジスへ声をかけようとした。
だが、運の悪いことにそのタイミングでエクシアとテキサスが入ってきた。
「おぉ、ユーリ久しぶり~!って、何かあったの?」
「ユーリ、またか?」
「あぁ…久しぶり。その、この話は終わりにしよう!今は作戦をだな?…一応、人が死ぬ可能性があるから!」
どうにか話の流れを変えながら今回の作戦について話す。
なんでも、この街でギャング同士の売買をするらしいという情報が入った。
そして、その売買をするものはというと、沢山の活性源石を用いた爆弾だというのだ。
それは、爆発すれば数多くの人々を鉱石病へ陥らせ都市の機能を損なうことになる。
だから、その取引の場面を襲い、爆弾の回収をする。
それが、今回の作戦の内容だ。
流石にギャングと言ってもやっていいことと悪いことがある。そんなもの爆発させれば自らも感染するだろうに、何がしたいのだろうか?
まぁ、そんなものは捕まえたら、誰かが吐くか。
とりあえず今は、誰かに被害が出る前に行動を起こすしかない。
「んで、ミュルジス…大人しく帰ってくれないか?…ロドスへ戻ったら直ぐに会いに行くからさ」
真剣な眼差しで彼女を見つめる。エルフは、たった少しの源石でも感染する。
それならば、こんな危ない物の近くには近づいて欲しくはない。例え、それが分身だとしても…気が気ではない。
「あら、心配してくれるのね。でも平気よ?ここにいるのは幻影だし…それよりも、ユーリが無茶や変なことをしないか見張る方があたしにとっては大事だしね?」
何を言ったって絶対に帰らないという意志がミュルジスのその瞳で分かった。
ミュルジス…こういう時は本当に、折れないからなぁ。どうしようもないか。
「はぁ…そっか、分かったよ。んじゃ…さっさと終わらせよっか。被害なんてない方がいいからね」
席を立ち雨の降る街へ足を運ぶ。
少し、浮き足立つ嫌な予感を感じつつ。
「ふざけるな、何で俺がこんな目に!」
雨が降っても淡く輝く街通りを尻目に路地裏を息を切らせながら走る男がいた。
彼は苦痛に満ちた表情を浮かべながら、滴る血液からもう長くはないと直感していた。
でも、それでも死にたくはなかった。明日を…愛する人と過ごす明日を諦めたくはなかったから。
でも、それは叶わないのだろう。
何故なら、彼は見てしまったのだ。運の悪いことに、悪逆非道と噂される有名なギャングの取引を。
そして、離れようとした時、足元の缶を蹴ってしまい見ていることがバレて、怒ったギャングの一人に肩を撃たれたのだ。
今も彼らは俺を追っている。
なのに、なのに…俺は雨に足を取られ転んでしまった。
必死に立とうと足に力を込めているのにしているのに、立ち上がることは出来ず、死の恐怖ともう彼女に会えないという恐怖から流れる涙は雨に紛れて、声にもならない嗚咽は路地裏に響く。
そして、その嗚咽は彼らを呼び寄せてしまい、薄ら笑いを浮かべた一人からキラリと鈍く輝く銃口が此方へ向けられる。
─何で、何でだよ…何で、俺が…死ななきゃ、いけないんだよ…!
憎しみの言葉は、震えた口から漏れることはなかった。
何故なら、救いの天使が来てくれたから。
彼は、白銀の髪を揺らしながら…俺に向けられた銃を切り捨て、神々しく光る銃を彼らに向けた。
そして、俺に麗しい声でこう告げてくれたのだ。
「よく頑張ったね。もう、安心していいよ、君のことは俺たち、ロドスが守るからさ」
その一言で、安心して…俺は瞳を閉じた。
何とか…間に合ったか。
まさか、取引場所を一般人が通りかかってしまうとは思ってもみなかった。
その上、取引をしている偉そうなギャングはそれを見て部下に始末を命令して取引場所を変えるなんて行動をしやがったせいで彼を助けるチームとその取引を強襲するチームに分けられてしまった。
ちなみに彼を助けるチームは俺とミュルジスで他の皆は強襲するチームだ。
「ほんと、無茶をするわね」
ため息をつきながらミュルジスは俺へ銃を向ける敵を水で覆う。
突然の事に驚きながらも苦しそうにもがき、逃げ出そうとしているが動くことすら許されずそのまま、気絶する。
その間に俺は、近くにいた敵の腹を蹴り飛ばしながら、運良くミュルジスの攻撃から逃れた敵へ銃を放つ。
飛んでいった弾は敵の銃と足へ当たり、苦痛の声が響く。
蹴りを受けた敵はガードをしたようだが、防具も着けていないから特に関係はなかった。
敵は勢いのまま吹き飛ばされ、ぐしゃりと骨の折れる音と共に壁へ打ち付けられた。
…むむっ、どうやら追っ手はこいつら5人しか居なかったらしい。
まぁ、一般人の始末ならこのぐらいの人数で良かったのだろう。
とりあえず、倒れている男性に癒しの手を発動させて死なないぐらいまで回復をさせる。
そして、近衛局へ通報して他の4人との合流を図るために走り出そうとした─のだが…嫌な予感は当たってしまったようだ。
ミュルジスと俺の間にある暗い路地裏から肉を引きずる音と酷く歪に赤く光る何がいた。
潮の匂いとサキュバスの特徴であるしっぽを含んだそれは、多分俺を追うために放たれた俺の因子を食べさせた子なのだろう。
つまりは、深海協会の歪さに嫌気が差した一部の狂人が俺というサキュバスの拡張性に目を付けて出来た…夢魔協会の差し金だ。
本当に…ついていない。まさか、ここまで俺のサンプルを取っているとは─。
てかあの場所は全て、焼き払った筈なんだけどなぁ?
「ミュルジス、先を急ごうか。とりあえずは皆との合流を最優先に動こう」
そう、口先で伝えながら…幻術を用いて自らと同じ分身を作り出しミュルジスの認識をずらす。
分身を俺と勘違いするように。
「分かったわ、それじゃエスコートを頼むわよ?」
微笑みながら手を取るミュルジスは、何の警戒もなくその言葉を信じて先を急ぐ俺の分身について行った。
それを尻目に、こちらを睨み付ける怪物を引き寄せるように彼女の反対、人がいない道へ走る。
奴は獣のような唸り声をあげながら、俺を喰い殺そうとよだれを滴しながらゴミを散らかしながら追ってくる。
「っ、相変わらず趣味の悪い研究するなぁ…。」
愚鈍なように見えてすばしっこい怪物は、俺を押し倒そうと身体で押し潰そうとする。
ぶつかる瞬間に足だけ血を暴れさせ、寸前で避ける。
それに気がついたものの怪物は、体勢を戻すことは出来ずにそのまま頭から地面に凄まじい勢いでぶつかる。
ドシャっと肉の潰れる音と飛び散る血肉で当たりは血の海に変わる。
致命傷だな…まさか、自滅するとは。はぁ、アイツも早く諦めてくれればいいんだけど…サキュバスなんてそんなに良いものじゃないんだけどねぇ…?
まぁ、いいや…とりあえず、ミュルジス達と合流しよ。幻術使っているのバレると面倒だし…?!
突如、空気を切る音が背後から聞こえた。
それと共に、右手が燃えるような痛みを発する。見てみると血液で出来た鞭のような何が貫いていた。
─油断してた…まさか、再生できるなんてね?それに、こいつ…俺の血を、精気を吸ってやがる。
途端に力が抜けていく感覚に抗えず、膝をつく。
飛び散った肉片が意思を持つように集まりだし、潰れる前の形を作り出している怪物がいた。
血の鞭もそれに合わせて俺から抜かれて加わる。
すると、突然…怪物は絶叫し身を震わせる。
それは、苦痛に苦しんでいるようにも…俺の因子を更に吸収できて喜んでるようにも見えた。
そして、それは、気味の悪いことに爛れ形を作り出せていなかった肉から俺の姿へ変化する。
「ちっ。…ほんと、嫌になるね。死ねよ…ゴミが」
血を活性化させ、一息に近づき刃を振り抜く。
抵抗する様子もなくスルリと刃が通り、首を跳ねた…だが、怪物はその首を飛び散る血で回収して直ぐ様再生させる。
だが、再生され切る前に首を跳ね、胴体、足と次々と切り刻む。
血が霧のように飛び散りながらも、再生が間に合わないように切り刻む。
だが、ただ怪物もやられているのは気に召さなかったのか、霧になった血をかき集めて、巨大な銃弾のように圧縮し俺へ撃った。
咄嗟に剣で受け止めたものの、凄まじい勢いを押し殺せず吹き飛ばされる。
そして、勢いのまま背後にあった壁をぶち抜いた。
どうやら、机がクッションになってくれたみたいだ。まぁ、そのせいで食べ物か何かの汁で汚れたが。
「あぁ…くそっ、いってぇな。─あ、ごめんね、お食事中に…!」
砂ぼこりが晴れ、見えたのは見知った顔だった。銀色の髪、ネズミのような耳。
灰色のリンその人だ。
「あなた、相変わらず問題に巻き込まれているのね。まぁいいわ、手伝ってあげる」
リンは顔色一つ変えずに優雅に立ち上がり、剣を抜く。
「望んだことでは、ないんだけどねぇ…。リン、敵はほぼ不死身。ただ、殺せる方法が一つだけ思いついた。時間が必要なんだけど、任せれる?」
「分かったわ。あんな奴にはあなたには指一本も触れさせないから、任せなさい」
ライトに照らされたリンの顔は何だか人を殺しそうな、恐ろしい顔をしていた。
─重い、重いよぉ!うぅ、リンに借りを作ることになるの…恐ろしいけどまぁ、しょうがないよね…。
目の前で繰り広げられるリンのアーツと怪物の戦いに巻き込まれないように少し離れて、意識を集中させる。
あの怪物を倒すには、俺の精気…まぁ生きる糧を渡す必要がある。
何故なら、ああいう紛い物でもサキュバスであるから。
基本的に普通のサキュバスなら精気を上限以上まで貯めることはない。だって、ご飯を食べる時に満腹以上食べれないでしょ?それでも食べたら吐いちゃうよね。
サキュバスも一緒、ただそれが余りに多すぎる場合…限界まで膨らんだ風船みたいに…パァンって破裂する。まぁ、死ぬってこと。
だから、アイツに精気を無理やり過剰にぶっ込む!幸いにも俺には今ほぼ上限ぐらいに精気が貯まってるからね。
てことで…魔力で球体を作り…そこに精気を詰め込む。
その影響でくらくらと視界が揺れ、手足から力が抜けていく。
キッツ…まぁ、このぐらいで…殺せるでしょ…。
「リン…!これをアイツに!」
「…任せて」
何故かそれを受け取ったリンの顔が苦虫を噛み潰したようだった。
…あの顔、何処かで見たことあるような…?
そんな思考は、長く続くことはなかった。精気の多量な消費で、サキュバスとしての本能が疼いてしまったから。
そのせいで…目の前に写る彼女が、ガラスの反射された美しい華が、失いゆく意識のなか欲しいと手を伸ばしてしまった。
「ちょっと、ユーリ?いつまで黙ってるのよ…ねぇ、何か言ってちょうだい?」
珍しく手をあたしに伸ばしてくれた彼は、走ってから一言も話してくれなかった。
…何か、嫌な予感がするわ。…だって、あの時も…こんな?
…あの時って何かしら?でも、何だか今のユーリは霧みたい。
目の前にあるのに掴んでいる気がしないというか、スルリと何処かに消えてしまいそうで…思わず、望んでしまったの
「ねぇ、ユーリ…一生のお願いよ、あたしの目を見てくれないかしら?何だか、怖いの…あなたが消えちゃいそうで」
でも、その声は…いえ、あたしが紡いでいた声は全てあなたには届いていなかったみたい。
だって…これは、ユーリの幻術だったんだから…。
「…嘘でしょ?…ユーリ、嘘だって言ってちょうだい!」
あなたの手の暖かさも、今、消えかけているあなたの姿も、あなたを失ったその日にそっくりだった。
なんで、あたしは忘れてたんだろう?ユーリが、あたしを守るために、あたしの研究所で死んだあの日のことを。
あたしを逃がすために死の寸前まで幻術であたしを遠ざけていたことを。
なんで、なんで…今、思い出すの?もう少し…あと少し早かったら…ユーリを守れたかもしれないのに。
また、あたしは失うの?ユーリを?
嫌よ、そんなの嫌!!行かなきゃ、まだ、生きてるかもしれないもの…。
えぇ、まだ希望はあるわよね…だってユーリは、あたしのこと…見捨てたりしないんだから、ずっと、ずっと一緒にいるってそう言ってくれたんだから…。
「んっ…♡あっ、入ったわ…♡ふふっ、ユーリ…やっと私を望んでくれたわね♡この時を待っていたの、これでもう、あなたは私から逃げれないわ♡」
ぱちゅぱちゅと淫らな水の音が、ある一室で奏でられる。
仄かに顔を朱で染めたネズミは、鎖に繋がれた彼へ馬乗りとなって犯していた。
意識がないのに快楽で漏れる彼の声が、更に彼女を興奮させる。
「ここ、好きなのね♡あっ♡ほら、早く起きないと…お父さんになっちゃうわよ♡」
激しく、打ち付ける肉の音が響く。けれど、彼は起きる気配がない。
ただ、なすがまま快楽へ身を任せる。
「私の中♡気持ちいいのね…嬉しいわ♡でも、退屈よ?あなたから、攻めて欲しいの♡私の中を♡乱暴に犯して欲しいの…♡」
耳元で、淫靡に呟く。彼の本能へ、伝えるために。
それは、効果的だったようだ。意識をほぼ保っていないが、目の前のメスを犯すためだけに、無理やりその身体を彼は動かし、彼女をベッドへ押し倒した。
そして、そのままその肉を味わうように打ち付ける。
「…あっ♡んんっ、いいわ…♡ふふっ、そのまま♡頑張りなさい♡…そうすれば、私を孕ませるかもしれないわよ♡」
誘うように彼の首へ彼女は腕を伸ばし顔を近づける。
メスの発情した匂い。それは、サキュバスにとっては麻薬のようで、彼は動きを加速させる。
「あっ…♡激し…っ♡そんなに…♡私を…孕ませたいの?いいわよ♡あなたなら…許すわ♡だから、このままっ♡」
彼の腰が離れないように彼女は脚で抱きつく。一滴も溢さないために。
「いけっ♡いけっ♡私の中に♡あなたの♡たくさん欲しいの♡」
「あぁ…!…ふふっ、いっぱい出たわね♡中…暖かいわ…♡」
パタッと彼女へ倒れる彼を抱き締めながら、舌を舐める。そして、再び耳元で囁く。
「でも…一回じゃ…満足できないわ♡あなたも…そうよね?」
「あっ♡大きくなったわね♡…ほら、あなたが求めるなら私は…いくらでも付き合うわ♡」
くねくねと誘惑するように彼の前で性器を開く。それは、彼の陰茎が離れたせいで寂しそうにくぱくぱと開いていた。
そして、そこから白いものが滴っていく。
彼がその誘惑に耐えれるわけなかった。貪るように、その穴を突き刺し、快楽を求める。
「…ずっと、ずっと。待っていたのよ♡あなたのこと…♡だから…めちゃくちゃにして♡この日を…忘れないでね♡」
淫靡な夜は終わらない。彼がその意識を戻すまで…。
遅くなりました…!でもそのお陰でいい感じな気がする!