※この作品はR-18です。

友人以上、セフレ未満   作:ナナナ

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#2

私は狡い。そして、醜い。

彼の……瑞樹の瞳には、きっと、私なんて映っていない。

透き通るような黒い瞳には。

でも、それでもいい。

それでも、瑞樹と交われているだけで、私は幸せだ。

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

目を覚ますと、私の部屋とは違う、白い天井だった。

 

「夢……」

 

嫌な夢を見た気がする。

ぼんやりとしている頭を振ると、髪留めが落ちてきた。

隣では、瑞樹が私に背を向けて規則正しい寝息を立てている。

 

「はぁ……」

 

私は音をたてないようにベッドから降りると、床でごちゃ混ぜになっている2人分の服の山から下着を手探りで探し出す。

ブラジャーを身に付けながらスマホで時間を確認すると、午前三時手前だった。

 

「もうこんな時間……」

 

今日は、一段と激しかった。

いつもなら二、三回で終わる流れになるのだが、今日は少なくとも五回戦までした。

うつ伏せでベッドに押し付けられた辺りから、あまり記憶がない。

 

「んぁ……?」

 

陰毛までドロドロに濡れた股間をティッシュで拭っていると、背後でもぞもぞと瑞樹が起き上がる。

短い髪をかき上げる仕草が、私の琴線に触れる。

 

「……おはよう」

 

「あぁ……今何時?」

 

「三時。もちろん午前の」

 

「ん……そうかい」

 

ペットボトルから飲み物を飲む仕草ですら、少しかっこいい。

全く、狡い人だ。

 

「……飲むか?」

 

「……飲む」

 

私は瑞樹からペットボトルを受け取ると、グイっと煽る。

中は紅茶だった。

 

「どうする?今から帰るのか?」

 

「そんなわけないでしょ……十時くらいに親には友達の家に泊るって連絡入れた」

 

「ふぅん。ま、今週いっぱいはうちも親父帰ってこないし、自由にしろよ」

 

瑞樹はそう言うと、裸のままベッドに寝転がった。

父子家庭の瑞樹の家は、時々酷く静かに感じられることがある。

そんな寂しさを紛らわせるように、私は瑞樹の隣に潜り込んだ。

 

「……俺、床で寝てもいいけど。狭いだろ」

 

「……身体痛くなってもいいなら」

 

「嫌だな、そりゃ……」

 

それっきり、私達の間に会話はなくなる。

蝉の声と扇風機の音だけが、部屋にこだまする。

 

「……お前、アイドルやるんだって?」

 

うとうとと微睡に落ちかけていた私を現実に引き戻したのは、瑞樹の声だった。

誰から聞いた。そんな疑問が、私の頭にぐるぐると渦巻く。

 

「昨日……透から聞いたよ」

 

「……で?」

 

「いや?スカウトされた透はまだしも、お前はわざわざオーディションまで受けに行ったのに、連絡のひとつもなしかよ」

 

咎めるような声色。

暗くて表情までは読めないが、恐らく、声と同じような顔をしているだろう。

 

「……別に。アイドルやる気ないから」

 

だから、言いたくなかったのだ。

ため息交じりに答えると、瑞樹は「はぁ?」と言いながら上半身を起こした。

 

「どういうことだよ」

 

「浅倉はあの性格でしょ。アイドルのスカウトを騙っておかしなことをされていないか、確認したかっただけ。オーディションで合格はもらったし、話もしたけど……断った」

 

「なるほど、ねぇ……」

 

頷く瑞樹。

何も考えていなさそうなその顔に、「あなたのせいでもあるんだけどね」の一言くらいかけてやろうかと、私の中のどす黒い私が顔を覗かせる。

どす黒い、私。

 

「……やる気ねぇのかよ」

 

爛れた肉体関係にある幼馴染ひとりさえ、私を見ていない。

日常生活であっても、行為中であっても。

そんな私がアイドルになって、誰が見るというのだろうか。

透と並んで、惨めな思いをするだけじゃないか。

 

「おーい。聞いてるか?」

 

「え……な、何?」

 

いつの間にか、瑞樹が私の顔を覗き込んでいた。

こんなに近くに顔がきても気づかない程、暗い思考回路に没頭していたらしい。

 

「珍しいな。ぼーっとしてたぞ」

 

「……そんなことくらい、誰でもあるでしょ」

 

「まぁ……そうか」

 

瑞樹は納得したように鼻を鳴らすと、腕を伸ばして私の上に覆い被さる。

 

「……あれだけしたのに?発情期の猿なの?」

 

「うるせぇ」

 

私の左手首が、瑞樹の右手でベッドに固定される。

動かさなくても分かる、力で勝てるわけなんてない。

向かい合った彼の、透き通るような黒い瞳。

ああ、どうせこの目は、私のことなんて見ていない。

 

「……するなら早くして」

 

私は、もう片方の腕で自分の目を覆った。

行為中の瑞樹の目をもう一度でも見たら、自分の中の何かが、壊れてしまうような気がしたから。

 

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