友人以上、セフレ未満 作:ナナナ
「じゃあ、帰るから」
朝まで交わったあの日から、早くも一週間が経っていた。
学校は夏休みに入り、いよいよアルバイトしかやることがなくなった。
それは円香も同じようで、俺達はこの一週間、ほぼ毎日身体を重ね合っていた。
どちらが誘うとかではなく、その場の雰囲気でどちらからともなく服を脱いで抱き合う。
だが、少し変わったことがある。
「……もう帰るのか?」
「……何?」
「いや……まぁいいけど。送っていこうか」
「いい。徒歩一分もかからないんだから」
円香の帰宅が、明らかに前よりも早くなった。
あの日より前までは行為後五分くらいスマホを見たりしていたのに、最近はすぐに着替えて帰宅。
余韻もへったくれもないのは前からだが、輪をかけて淡白だ。
何か、まずいことでもしただろうか。
そう考えると、ブラジャーのホックを留める背中がどこか怒っているようにも見えてくる。
しかし、俺の頭ではどれだけ考えても円香が怒っている理由が分からない。
「……なぁ。俺、何か悪いことしたか?」
ピタリ、と円香の手が止まる。
「……別に。何もされてないけど」
「手が止まったのが答えだろ……悪かったよ。何に怒ってるのかよく分かんねぇけど」
「……だから。別に怒ってない」
暗い部屋の中でパンツを探していた円香はその手を止め、くるりとこちらを向く。
そこには、一切の感情が抜け落ちた鉄仮面がのっぺりと貼りついていた。
「今まで通りじゃない?」
「……そうか?何か当てつけみたいにすぐ帰るじゃん最近」
「当てつけって……そんなつもりないけど」
「ま、ならいいんだけどさ……」
この関係になって、今年で三年目。
この一週間、いよいよ終わりかとも考えた。
だが、俺は何故か、円香を手放したくなかった。
元々、どちらかに恋人ができたら終わりの関係なのに、だ。
「……ゲームでもするか?」
モニターの電源を付け、無線コントローラーを円香に投げ渡す。
一瞬困惑したような表情を見せた円香だったが、様々な感情の籠っていそうな深い息を吐くと、ベッドに座っている俺の隣に腰を下ろした。
「……誘っておいてアレだけど、帰りが遅くなるって連絡は入れとけよ」
「……昨日も今日も、泊りになるかもとは伝えてある」
「ふぅん……」
年頃の娘が何日も外泊するのを許すなんて、円香の家って結構寛大なんだな、なんて考えながら格闘ゲームを起動する。
俺も円香も特段ゲームが上手ではないこともあり、勝ったり負けたりが続く。
「……いや。この間は何というか、悪かった。ちょっと、独りで盛り上がり過ぎた」
キャラ選択をしながら、重い口を開く。
「お前、昔言ってたよな。俺達の関係はセフレ未満だ、って」
「……言ったけど」
どこか後ろめたそうな円香の声色。
「……あの時、俺にも……まぁ……色々あってさ。ちょっと、舞い上がってたんだよ」
色々。便利な言葉だ。
『円香がアイドルをやらないと聞いて、テンションが上がった』などという最低最悪なことを、言わなくて済むのだから。
そんな俺は、最低な野郎である。
「……もういい。言わなくて。怒ってないし」
円香は大きなため息をついて、ベッドにコントローラーを置いた。
そして、画面に集中していた俺は、いつの間にか円香にベッドへと押し倒されていた。
「ルール追加。朝までしても、恋人ごっこはしない。これでどう?」
「……分かった」
俺の腹の上に馬乗りになった円香は、後ろ手で俺の肉棒を包む。
円香の身体に隠れていて肉棒を弄る手つきが見えないが、それもまた、良かったりする。
爪の先で裏筋をカリカリと掻いたと思えば、鈴口を指の腹で擦る。
見えないが、分かる。俺は今、凄まじい量のカウパーを出している。
「うあっ……それヤバい……!」
円香は人差し指と中指でリングを作り、竿をねっとりと扱く。
オナニーする時とは違う、こちらのリズムなんて一切無視の手コキ。
「で、射精る……!」
俺の弱点を知り尽くした技に、円香の手の中であっさりと果てた俺。
「はぁ……はぁ……ち、ちょっと待って……!」
射精してもなお、手を止めない円香。
扱くスピードが落ちないどころか、俺の精液で滑りが良くなりさらにテンポが上がる。
こちらがやめてと言っているのにサディスティックに笑いながら見下ろす円香。
その円香は肉棒を弄っている手とは反対の手で俺の手を取ると、指と指を絡め合う。
「やばい……!」
一発目よりも早く、俺は二発目を再び円香の手の中へ吐き出した。
二発で満足したのか円香は肉棒から手を離すと、手の中の精液をペロペロと舐め始めた。
そのあまりに煽情的な姿に、俺は、理性の糸がぷつりと切れた。