――どびゅるっ、びゅるるっ、ぴゅっ、ぴゅるる……。
小田の性器が跳ねた最後の瞬間、重たく白濁した精が、汗と母乳にぬめる乳房を汚しながら、音を立てて飛び散った。
そのまま、全身から一気に力が抜ける。
(……出し切った……)
意識の端でそう思った瞬間には、もう手も足も指一本動かす気力はなかった。
精の通った後の肉体は、まるで抜け殻のように乳房に沈み込み、視界の縁が熱く霞んでいた。
額から滴る汗は、ナーシャの胸元にこぽ、と落ちる。
その一滴さえも、今の小田には拭うことができない。
ぐったりと、彼は――沈んでいた。
まるで、体液という熱い泉に全身を溺れさせられ、
そのまま深い泥に脚をとられたように。
だが――
そんな小田の唇に、ふわりと柔らかなものが触れる。
「ふふ……小田ぁ……♡」
甘くとろけた声とともに、ナーシャが顔を寄せていた。
その頬には飛び散った精液がまだ温かく残り、
口元には、恍惚とした微笑が貼りついている。
「ねぇ……もう動けないかにゃ……?」
指先で小田の頬を撫でながら、
乳房の谷間に沈んだ彼の顔を覗き込むようにして、唇がぴたりと触れた。
「じゃあ……アタシがしてあげるにゃ♡」
そして――
「……んちゅぅぅ……れろれろ……んちゅ♡……ちゅっ、れろん、んちゅるるるぅ……♡」
湿り気と甘い吐息が絡みつき、ぐったりとした小田の唇に、ナーシャの舌が深く、ねっとりと潜り込んでいった。
口の奥へ舌が差し込まれ、歯列を舐め上げ、上顎をくすぐる。
その隙間に、ナーシャの唾液がじわじわと流れ込み、舌同士がぬちゅりと絡み合いながら、濡れた音をたてて吸いつく。
「んん……っちゅ、んちゅ……小田の口、うまいにゃぁ……♡」
唾液と母乳の味、そして精液の残り香が、口内で一体となって混ざり合う。
快楽の名残が、まだ小田の喉奥にまでねっとりと貼りついていた。
そして――その最中。
「……っ……」
小田の後頭部に、ぴとりと、何かが当たった。
柔らかくも張り詰めた、あの感触。
ぬるく、ぴくぴくと震えている。
「……んふ……感じたにゃ?小田ぁ……♡」
甘えたような囁きが、髪の間を撫でるように落ちてくる。
「アタシの……ココ……もう、パンパンなのにゃ……♡」
後頭部に当たっているそれは――
ナーシャの勃起した性器だった。
びくっ、びくっ、と膨らみ、皮膚に脈を打つたび、そこからとろりとした先走りが滴り、小田の髪の根本を湿らせていく。
「小田……アンタを見てるだけで、こんなに…我慢できないにゃ……」
指が、小田の髪をかき分ける。
そして――ぐい、と。
その肉が、後頭部に沿ってねっとりと押し当てられた。
「小田の頭……すごく気持ちいいにゃ……♡」
ぬちゅ……ぬるり……ぬちゅっ……
勃起した性器が、髪と頭皮をゆっくりとなぞる。
そこから滴る体液が、耳の裏へ、首筋へと流れ落ち、
皮膚を這いながら、汗と混ざって艶を帯びていく。
「……んふ……アタシも……もう限界なのにゃぁ……♡」
小田の反応を待つこともなく、ナーシャの手が再び小田の腰へと回された。
「……また、シコシコでもいいけど……♡でも、小田の……中がほしいにゃ……♡」
耳元で囁かれる声が、舌を這わせるように淫らに響く。
その音だけで、再び小田の身体が熱を帯び始める。
ぐったりとしたままの肉体が、また――
もう一度、快楽の檻に引きずり込まれるのであった。
⸻
「小田ぁ……♡」
囁くような声だった。
だが、耳の奥へと染み込むように甘く――毒のように蕩けていた。
「どっちも、気持ちよくなるために……ちょっと、工夫しようかにゃぁ♡」
とろんととろけた声色と一緒に、ナーシャの手がするりと伸びる。
汗に濡れたシーツの上、ぐったりと仰向けになった小田の脚を、まるで獲物を扱う猫のように、丁寧に、だが強引に持ち上げる。
「お、おい……?」
小田が声を漏らす。だがその声音は弱く、抗えぬ熱に濡れていた。
「ん〜?小田って……膣、ないのかにゃぁ?」
不意にそう呟いたナーシャの声は、からかうような軽やかさと、獲物を前にした興味深げな観察者の響きを帯びていた。
両脚を持ち上げられた小田の体勢は、まるで産婦のようだった。
腰が浮かされ、腹が露わになり、肛門から性器までが湿った空気にさらされる。
息が詰まる。
羞恥と警戒が胸を締める。だが――身体は、もう抵抗できなかった。
「珍しい種族にゃぁ……ふつうは『産む穴』も、雄にはあるのににゃあ……」
そう呟きながら、ナーシャの目が小田の股のあいだを見つめる。
指先が、すっと――間へと下りていく。
「……なんの、話を……」
小田が掠れた声でそう呟いたときには、もう遅かった。
「でも……こっちには『穴』があるにゃあ♡」
――ぬぷっ。
小田の尻の谷間、割れ目の中央――
ほんのわずかに濡れた肛門のヒダへ、ナーシャの指が沈んでいった。
「んッ……ぐ、くあああ……あ゛っ……!」
喉の奥で引っかかったような声が漏れる。
意志とは関係なく、全身が跳ねた。
肛門の内側。
そこは、決して『侵入される』ための場所ではないはずだった。
だが、小田の肛門はナーシャの指を異物と認識する間もなく、ぬちゅりと吸い込んでいく。
「にゃふふ……♡ぬるぬる、してるにゃ……♡」
ぬちゅっ……ぬりゅ……くちゅり。
指が、肉の襞を撫でながらゆっくりと挿し込まれていくたび、粘膜の奥から濡れた音が湧き上がる。
汗と先ほどの愛液、そしてカザラに舌や尻尾で深く貫かれた名残――
それらがすべて混ざり合い、粘性を持って絡みついている。
「中が……開いてるにゃぁ……♡いっぱい使われた感じ……すっごいするにゃ♡」
指が、第二関節まで沈んだ。
その動きに合わせて、尻穴の縁がぐちゅりとひくつく。
「ほら、小田……アタシの指、締めてきてるにゃ♡ 気持ちよくなってきたのかにゃぁ?」
「ッ、く……ぅ……ッ」
小田は唇を噛む。
羞恥に耐えようとしていた。
だが、指の腹がゆっくりと内壁を撫でるたびに、その『否定』は、熱を持った喘ぎへと変わってしまう。
「……ココかにゃ?使われてるの。カザラ様、結構奥まで入れたんだにゃぁ……♡」
そう囁くと同時に、ナーシャの指が――
ぐにゅっと角度を変えて、内側の一点を押し上げた。
「――ッッあ゛……っうぁ、あああ……!!」
声が、咳のように喉から漏れた。
押されたその場所。
そこは明確に『快感』として、脳を電撃のように貫く。
「んふふ……見つけたにゃ♡」
ナーシャが囁く。
「小田の……一番、気持ちよくなる“所”♡」
指が、そこをなぞるようにゆっくりと――何度も、何度も擦る。
ぬちゅっ、くちゅっ、くちゅり……ぬるぅ……
粘膜を掻き混ぜる音とともに、肛門の奥が、蕩けた蜜壺のように反応を繰り返す。
「アタシの指、どうにゃ? もっと奥、もっと深く、ほしいかにゃぁ……♡」
小田の尻が震える。
額から汗が滴る。
指先が、すべての理性を解していく。
ぐちゅっ……じゅぷ……くちゅ、ぬちゅっ……
指がついに、根元近くまで沈み込んだ。
中で蠢き、粘膜を拡げ、腸壁をなぞりながら、奥を撫であげる。
「小田の“ここ”、すっごく柔らかいにゃ……♡アタシのでも受け止められるにゃ♡」
そう言った瞬間、尻穴の奥で指が止まり、そのまま――ゆっくりと抜き取られる。
ぬるっ、ぬちゃっ、ぬちゅぅ……
その指の先には、透明に光る粘液がまとわりつき、糸を引きながら小田の尻から滴り落ちる。
「……ああ……もう、濡れてるにゃ♡」
体液に濡れた指を見せつけながら、ナーシャがそれを舐める。
舐めながら出した声の奥には、じっとりとした熱と支配の意思が宿っていた。
「本番やる前に…尻穴をもっと解さないとにゃぁ♡」
「ちょ、ま――まっ……!」
小田が声を上げた瞬間には、もう遅かった。
ぐい――
腰を押さえられ、肛門を中心とした尻の割れ目が大きく開かれる。
冷たい空気が、ひりつくような湿り気を帯びて肌を撫でる。
だが、その一瞬の冷たさは、すぐに――
「にゃあ♡いただきまーす……♡」
――あたたかく、そしてざらざらした感触に塗り替えられた。
「あっ……あ、あ゛あああ……ッ!?」
ナーシャの舌が、にゅちゅり、と音を立てて肛門へと侵入する。
猫科特有の粗く、細かい突起を無数に帯びた舌――
それが、粘膜の繊細なヒダに擦りつき、ざらざらと、ねちねちと舐め回す。
「んちゅぅ…ふにゃぁ……♡やっぱり柔らかいにゃ……♡」
ざら……ざりっ……ぬちゅっ……ぬる……
肛門の皺が、舌の一本一本の突起に絡みつき、離れず、痙攣する。
粘膜が舌を拒絶しようとして収縮するたび、
ざらついた刺激が余計に食い込み、舌先がまるで生きているかのように暴れる。
「う、うぐ゛……くっぅ……ッ!!」
声にならない喘ぎが漏れた。
小田の全身が震える。
反射的に逃れようと腰が浮くが、ナーシャはそれすら読んでいたかのように、さらに強く尻を押さえ込み、顔をうずめてくる。
「んちゅ……ちゅっ……にゃむ、んふふ……♡こんなに反応して……♡」
鼻先が割れ目に埋まり、吐息が肛門の奥まで流れ込む。
ざらり……ざくっ……ぬちゅ……
舌が押し込まれるたびに、肛門はぶるぶると震え、蜜のような体液を滲ませる。
すでに肉穴はとろけ、緩み、ざらついた刺激を――快感へと変換し始めていた。
「まだまだ……奥、舐めてあげるにゃ……♡」
ぬぷっ……ぐちゅっ……じゅるるっ……
舌がさらに深く沈む。
肛門の中で蠢き、内側の柔肉を一つ一つなぞるように、ねっとりと味わい始める。
「うあ、ぃぃい……っ!」
声が千切れた。
――恥も理性も砕かれる。
指の時とは異なる、猫という異種の、動物的かつ執拗な愛撫。
それは、愛ではない。
だが、確かに悦を刻んでくる。
肌にねっとりとした粘膜の湿り気が伝い、口元から零れた粘液が淫らな糸を引いて尻の谷間を濡らしていく。
そしてーーー
ヌポンッ。
舌が、肛門の奥から一気に引き抜かれた。
「――ッあ゛あああぁっ!!!」
小田の背筋がびくんと跳ねた。
そしてその瞬間――
びゅっ、びゅるっ、ぴゅっ……
先端から、白い透明な液が空へと放たれる。
天井へ向かって出された我慢汁は、熱を持ったまま、小田の胸元、頬、腹にまで飛び散り、肌にぬるりと張りついた。
足元からは力が抜け、呼吸が荒くなる。
「これでアタシのおちんちん……受け止められるかにゃぁ……♡」
ナーシャは嬉しそうに小田の上に乗り、滴る粘液と精液の混ざり合った匂いを鼻先で楽しむようにくんくんと嗅いだ。
その顔は、快楽に耽る雌のそれでありながら――完全に、獲物を見下ろす捕食者の目をしていた。
「次は……小田のおちんちんを胸で包んで、そのまま……小田の穴に、アタシのを入れてあげるにゃぁ♡」
そう言いながら、むちりとした乳房を両手で持ち上げ、肉棒の根元に押し当てる。
「小田の尻穴……さっきアタシの舌で、たーっぷりほぐしたから……もう、すぐ挿れるにゃぁ♡」
にゅぷぅ……と乳肉が小田の肉棒をくるむ音が響く。
粘膜にまみれた乳房の谷間が肉棒を包み、ゆっくりと上下に擦れ始める。
「んっ……♡」
そのまま、先端が尻の割れ目へと導かれていく。
ピタリと肛門に当てがわれた肉棒が、ひくひくと跳ねるたび、小田の全身が震えた。
「ま、待てッ……落ち着いてくれ……ナーシャ……っ」
小田の声は切羽詰まっていた。
快感に溺れそうになる意識を必死に繋ぎ、懇願の言葉を絞り出す。
「ま、まだ……俺、身体が……ッ」
だが――
「落ち着いてるにゃ♡だからこそ、ゆっくり……たっぷり味わってもらうにゃ♡」
ナーシャの腰が微かに沈む。
その肉棒の先端は、わずかに開いた肛門の皺に触れ、ぬるぬると先走りを擦りつけながら、入り口を探り始めていた。
その動きは、じっくりと。
まるで、「もう逃げ場などない」ことを教え込むような、ねっとりとした『挿入の予告』だった。
ぴと……
ぬるりと音を立て、熱を持った先端が、小田の肛門へと静かに触れた。
触れた、というだけだった。
だが、その一点に込められた生々しい鼓動と、濁った体液のぬめり――
それらが小田の背筋を撫で、腰からぞわぞわと悪寒のような熱が這い上がってくる。
「ッ……!」
小田の喉が震える。
それはまるで、冷たい刃先が肌に触れたときのような緊張感と、同時に熱を孕んだ肉塊が内側を探ってくるような、ぞわりと這い上がる異物感だった。
「小田ぁ……♡」
ナーシャの甘く、とろけた声が落ちる。
「アタシの赤ちゃんになるなら……お尻の穴、ズボズボしてやんなくてもいいにゃよぉ♡」
その声はまるで、母が子に囁くような慈しみ…だがその奥に潜むのは、孕ませと支配の悦びに濡れた雄の本性だった。
「……ナーシャ……ッ」
小田の声が震える。
それは快感によるものではない。
言葉の意味が、深く胸を抉った。
その言葉に、喉の奥からこみ上げるものがあった。
反射的に両腕を突っ張って、腰を浮かそうとする。
だが、ナーシャはそれすらも計算済みとばかりに、尻の下に自分の足を滑り込ませ、彼の骨盤を固定していた。
「お前は……あの時……ッ」
顔を背け、呼吸を荒くしながら、小田は絞り出す。
「お前は悲劇を味わった身だろッ……!それが……今度は、自分が他人に……ぶつけるってのか……!」
涙に濡れたような声だった。
その問いは、ナーシャの心の奥に触れたはずだった。
――だが、返ってきたのは、ねじれた快楽に染まった声だった。
「うるさいにゃぁ〜♡」
彼女は楽しそうに笑う。
尻の穴に押し当てた肉棒を、小刻みにぴくぴくと震わせながら、ゆっくりと圧をかける。
「それとこれは、別にゃぁ♡」
「……ッ」
「しかも小田ぁ♡……アンタ……全然、嫌がってないにゃぁ♡」
くちゅ……ぬりゅり……
ナーシャの先端が、ぬめった粘膜に沈み込みはじめる。
「ほら……見てにゃ?アンタの尻穴、きゅってして、アタシのこと……迎え入れてるにゃ♡」
その言葉と共に、小田の尻が微かに震えた。
否定したい――
だが、体は、すでに別の反応を示している。
「……やめ、ろ……」
「やめてほしいなら……ちゃんと言ってにゃ♡」
ナーシャの瞳が細まり、熱を宿す。
それは、快楽を与える者としての自信に満ちた瞳。
「『イヤだ』って、涙き叫べばやめるにゃ♡でも……小田は、そういう声……全然、出さないにゃ♡」
ぐぷっ……
先端が、ぐちゅりと肛門に半ば沈み込む。
反射的に、腸壁が押し戻そうと蠢くが、それすらもナーシャは感じ取り、頬を上気させながら囁く。
「ねえ……本当は、アタシの赤ちゃんになりたいにゃろ?♡」
その瞬間、肛門の筋がぬるりと緩む。
もう、逃げ場はなかった。
⸻
「赤ちゃんになるかにゃぁ〜小田ぁ?♡」
その声音は、蕩けた蜜のように甘くて熱かった。
耳の奥にまとわりつくような囁き声が、小田の脳をじわじわと溶かしていく。
「こ、断るッ……!」
かろうじて声にした拒絶は、震えていた。
尻の奥に触れている異物の温度、押し当てられる重量、ぬめり――
すべてが彼の理性を削っていた。
「じゃあ……ズボズボしなくちゃにゃぁ♡」
柔らかく、しかし容赦のないその言葉と同時に――
ぬぷっ……ぷぷぷっ……
粘液にまみれたナーシャの性器が、小田の肛門に押し込まれていく。
むき出しの肛門は、先ほどまで舌で解されたぬめりと熱をまだ残しており、
押し寄せてくる熱く硬い異物を拒絶しきれずに、ずぶずぶと奥へと吸い込んでいく。
「ぐぅう……ッ!」
喉から漏れる呻き。
それは痛みでもあり、快楽でもあった。
肛門の筋が押し広げられ、ぬるぬると蠢く腸壁が、侵入してきた肉棒をぴったりと包み、きゅううと締めつける。
「んぁ゛に゛ゃああ……♡ 気持ちいいにゃぁ♡」
背をしならせ、耳を伏せながら、ナーシャは腰を打ち出す動きを一際深く、激しく変えた。
ぱんっ、ぱちゅんっ……ぬちゅりっ、ぬぷんっ……
尻と尻が肉の音を立てて激しく打ち合い、そのたびに小田の肛門が、ぐちゅり、じゅぷり、と濡れた音を響かせる。
肉棒が腸内を暴れ回るように押し広げ、柔らかな内壁を無遠慮に擦り、襞をこすり上げながら押し込まれていく。
「くうぅぅ……ッ、ぐ……ッ!」
小田の喉が詰まり、声がうまく出せない。
全身が痙攣し、肛門がひくつくたびに、潤滑を担っていた粘液が、内から押し出されるようにあふれ、尻の谷間を伝い垂れていく。
「小田ぁッ……!♡」
ナーシャが低く甘く、だがどこか獰猛に叫ぶ。
「こっちも……隙、ありにゃあ♡」
舌足らずで甘えた声――けれどその奥にあるのは、
絶対に逃さないという本能の色だった。
獲物に爪を立てる前の猫科の雌が見せる、ねっとりとしたまなざし。
そのまなざしの先に、小田のすべてがあった。
そして――
むちりっ……むにゅん……
ナーシャの両腕がそっと動き、ふくらみを持った乳房が、左右から小田の性器を包み込むように持ち上げられる。
汗と愛液、我慢汁の名残に濡れた肉棒は、彼女のしっとりと温かな乳肉の谷間に包まれた瞬間――ぶるんと跳ねた。
「にゃぁ♡ こっちも……すっごく熱いにゃぁ……♡おちんちん、パンパンになってて……苦しそうにゃぁ♡」
むにゅぅ……むにゅっ、ずちゅっ……
じわり、じわりと乳肉が上下に動き始める。
粘液に濡れた谷間が、肉棒の皮膚をずるずると滑り、そして先端にむけてきゅっと締め上げるように、搾り出すように締まっていく。
「や……やめろ……そんな……ッ」
小田の口から、反射的に抗いの声が漏れる。
だがその声には、力がなかった。
尻の奥では、なおもナーシャの肉棒が腸壁をゆるやかに擦り続けていた。
ぬちゅ……じゅくっ、ぬりゅ……
粘膜の内側に埋もれた感触。
異物が内壁を撫でてくるたび、肛門がきゅうとひくつく。
逃げたがる反応と、締めてしまう本能が噛み合わず、快楽だけが上乗せされていく。
「ぜーんぜん、嫌がってないにゃぁ♡」
ナーシャの笑みは、満ち足りていた。
なにせ――
「だって、こんなにぴくぴくして……先っぽから、また出そうになってるにゃ♡」
彼女の視線の先、乳房の谷間に挟まれた肉棒の先端。
赤く膨れ、すでに透明な雫を垂らしていた。
ぬりゅっ……ぬぷっ……むちゅりっ……
乳肉の擦過はさらにねっとりと、粘りつくように続く。
汗と体液が混ざり合い、滑りを増した谷間はまるで湿った粘膜そのもの。
摩擦と圧迫、そして舌のようなぬるつきが、小田の性器をきゅう、きゅう……と締めつけていく。
「小田ぁ……おちんちん、ぴゅってしたいかにゃぁ?……♡」
耳元で囁かれたその声は、快楽の導火線だった。
「ち、が……っ、うぉ……っ」
言葉が詰まる。
身体が跳ねる。
尻の奥、肛門がくちゅくちゅと濡れた音を響かせる。
そして――
「いーっぱい搾ってあげるにゃ♡」
むちゅっ、ずちゅっ、ぬりゅっ、ぬぷりゅぅ……
前と後ろ、同時に責め立てられ、小田の下腹部は限界を迎えようとしていた。
腰が反射的に浮き、谷間に包まれた性器が、ぶるぶると震え、先端からびゅくっとひとしずく飛ばす。
「ほらぁ♡もう出そうになってるにゃ♡」
ナーシャの乳房が、さらに圧を強める。
肉棒が、乳肉のなかでひくひくと震えながら、快楽に溶けていく。
「ぁあ゛ぁ、やばッ、うぅゔ……!」
出した声は、もはや嗚咽混じりだった。
だが、ナーシャはやめなかった。
むしろ、悦びに満ちた吐息とともに、さらに深く腰を沈め――
「変態騎士の奉仕で最悪だったけど、今日は最高の日にゃぁ♡」
「て……め……ッ」
「ねぇ、いつイくにゃ?お尻の中と、おちんちん、どっちが先にびゅってするかにゃ?♡」
ぬる、じゅぷ、くちゅ……
腸内と乳房の粘膜が、波のように攻め立てる。
そして――
「いっしょに、イこ♡中も、外も、いっぱい出して♡アタシの赤ちゃんじゃなくても、せめて……いっぱい中に注いでやるにゃぁ♡」
その瞬間、肛門の奥が、乳房にこねられた肉棒が、同時に限界へと達しようとしていた。
⸻
ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん……ッ!
ナーシャの腰が執拗に打ちつけられるたび、小田の尻とナーシャの尻が肉の音を響かせて揺れ、肛門の奥に突き込まれた肉棒が、腸壁をぐちゅぐちゅと掻き混ぜ続ける。
ぬちゅっ、ぐちゅっ、ずちゅっ……
肛門の奥――そこはもう、ぬるぬると溶け、拒むことをやめた粘膜が、ねっとりと締めつけながら、異物を吸い、歓迎し、内から搾り出そうと震えていた。
前面では――
むにゅ〜、むにゅっ、ぬりゅぅ……
小田の肉棒は、ナーシャの豊満な乳房の谷間に包まれていた。
粘液に濡れた柔肉が、上へ、下へ、きゅうと圧をかけながら擦り上げる。
「あは……♡ もう限界かにゃぁ、小田ぁ……アンタのおちんちんとアタシのおちんちん、どっちが先にイっちゃうか、勝負にゃぁ♡」
「っ……は、ぁ……や、やめ、ろ……ッ!」
小田の声はもう擦れていた。
汗と涙が混ざった顔。
胸は大きく上下し、腰は痙攣のように跳ねている。
――もう、持たない。
「に゛ゃあッ♡堪らないにゃぁっ」
ぱちゅん、ぱんっ、ぱちぃんッ!
むにゅっ、むにゅぅっ、ぬちゅっ……!
同時に与えられる刺激が、絶頂の頂点を引きずり上げる――
「や、やばいッ……ッ!はぁッ、はぁッ……だ、ダメだッ…出ちま……うッ!!」
その瞬間、腹部が跳ね上がった。
「ッ――ッ!!」
びゅるるっ、びゅっ、びゅっ、びゅるるるるっ!!
小田の肉棒が、谷間の中で大きく跳ねた。
乳肉に押しつけられたまま、抑えきれぬ精液が、熱とともに炸裂する。
白濁が乳房の間に叩きつけられ、皮膚に、粘膜に、
汗にまみれた肌を濡らしながら、幾筋も弧を描いて放たれた。
「はぁッ、はぁッ……あ、ああああッ……!」
そして同時に――
「に゛ゃぁあ゛ぁあッ♡♡でちゃうにゃぁッ!!」
ナーシャの尻が痙攣し、腰が深く沈む。
腸の奥深く、ぐちゅりと沈められた肉棒が、
限界まで脈打ちながら、根元から勢いよく、精を噴き上げた。
どぷっ、どくんっ、ぬるぅっ……ぬちゅううっ……!
「小田の中にッ……♡いっぱい、いっぱい……出してるにゃぁッ♡♡」
腸内に放たれた精液は、内壁に焼きつくような熱を与え、
さらに内から締めつけられ、射精のたびに押し戻される。
「ぐううッ……っは、ぁ……っ……!」
小田の身体が硬直する。
尻の奥が熱い。
前も後ろも、精を噴き出し、粘液と熱が入り乱れ、自分の意思とは関係なく、絶頂の渦に飲み込まれていた。
ナーシャの身体が、まだ痙攣の余韻を残したまま、
汗と体液に濡れた肌を、小田にぐっと押しつけてくる。
「小田ぁ……♡小田ぁ♡」
その名を呼ぶ声は、甘えた猫の鳴き声のように柔らかく、けれど、その奥底には――どろりとした熱と、支配欲に満ちた狂気が滲んでいた。
ナーシャの腕が、ずるりと伸びる。
汗と体液に濡れた肌が重なり、
小田の背中に添えられたその手が、ゆっくりと、粘るように滑り始める。
むちっ、むにゅぅ……
豊かな乳房が、小田の胸と肉棒を押しつぶすように密着する。
ぬるりとした粘膜と粘液のまじった熱が、肉と肉の間に溶けていく。
そのまま――顔が、重なる。
ちゅうぅ……んん……れろ……
ディープキスだった。
唇が吸いつき、舌が舌を絡め取る。
ナーシャの体重ごと押し当てられた小田は、背中を支えられることなく、寝台に沈められたまま、彼女のキスをただ受け止めるしかなかった。
「んっ……ちゅ、ふぅ……んん〜♡」
息ができない。
だが、それがたまらない。
熱い吐息が喉の奥から流れ込み、ナーシャの舌が、小田の歯列をなぞり、
さらに奥へ、奥へと侵入してくる。
同時に、肛門の奥では――
どぷっ……ぬちゅ、じゅるる……
完全に根元まで挿入されたままの肉棒が、軽くぴくんと震え、最後の余韻のように粘液を注ぎ込んでくる。
「ふぅぅっ……ちゅ……ん、ちゅぱっ♡」
舌と舌が絡み合い、混ざった唾液が、唇の端から音を立てて溢れ出す。
それを、さらにナーシャが吸い上げ、混ぜて、飲み干していった。
⸻
「……小田ぁ……♡小田ぁ……」
熱の名残を残したまま、爪先で小田の背を撫でながら、ナーシャは甘く名前を呼び続けていた。
だが、やがてその声音は次第に力を失い、抱きつく腕からも、ぬくもりを探るような焦燥が抜けていく。
彼女のまぶたがゆっくりと伏せられた。
「……アタシの……アタシの、赤ちゃん……」
それは、夢とも現ともつかぬ、消え入りそうな声だった。
彼女のまぶたはすでに閉じられていた。
ぐったりと、全身の力を抜いたまま、小田にしがみついたまま、
ナーシャは、その一言をぽつりと零した。
そして――
ぽろり、と涙が零れる。
それは快楽に溺れたあとの安堵ではなかった。
あまりに静かで、あまりに哀しい一滴だった。
小田は、それを肌に受けながら、動けずにいた。
彼女は言っていた。
かつて――自分の子を、目の前で、喰われたのだと。
焼けた地面の上で、助けもなく、ただ叫ぶことしかできず、赤子は、すでに肉片となっていたと。
爪も牙も持つこの世界で、力を持たないものは、愛すら奪われる。
あのときの彼女の笑い声は――本当は、もう崩れていたのかもしれない。
「……」
目を閉じたまま、寝息を立てるナーシャの表情は、まるで幼子のように無垢だった。
先ほどまで、自分を尻の奥で搾り尽くしていた女の顔とはまるで違う。
涙の痕が頬を伝い、枕に濡れた跡を残している。
それを、小田は――何も言わず、そっと、指先で拭った。
そして、彼女の耳の付け根にかかる銀色の髪を撫で、
そのまま――頭を、ゆっくりと撫でた。
美しく柔らかい毛並み。
複雑だった。
言葉にすれば、何かが壊れてしまいそうで、小田は何も言えなかった。
加害者だった。
だが、被害者でもあった。
あまりに矛盾した存在。
涙の痕を残した頬に、寝息が静かに満ちていく。
ぎゅっと小田の胸に頬を寄せたまま、しがみつくように、まるで何かを失わないように――あるいは、今度こそ守れるように。
小田は、何も言えなかった。
脳裏に蘇る、あの一言。
――『生きてるだけで、勝ちにゃ』
ナーシャがそう言ったときの笑顔は、ほんの少しだけ、震えていた気がした。
何を失っても、どれほど汚されても、それでも――『生きている』ことが、何よりの価値だと。
それが、この世界の現実であり、そして彼女の絶望の果てにすがる、唯一の真理だったのだろう。
小田は、喉の奥に重たいものを押し込めたまま、夜の天井を見上げ、ぽつりと呟いた。
「……生きてるだけで、勝ち……か……」
呟きは、自分に言い聞かせるようだった。
心の奥に刺さったままの、いくつもの問いの棘を、ほんのわずかに撫でるような、そんな言葉だった。
彼の体温がまだ、自分の胸にある。
そして、小田も――まだ、生きている。
それだけで。
「……負けてねえ、か……」
静かな夜のなかで、ただその言葉の重さを抱えたまま、小田はそっと、その言葉を呟いた。
「……ったく、人を好き勝手にしておいて……」
小田は、うつ伏せで眠るナーシャの額にかかった髪を、そっと指先で払った。
その寝顔は、あまりに穏やかだった。
まるで、すべてを吐き出した子どものように。
「……お前は、爆睡かよ……」
呆れとも、諦めともつかない声音で、小田は小さく吐き捨てた。
いまだに抱きつくように自分にしがみついている彼女の腕を、慎重に、ゆっくりと外していく。
乱れたシーツがざらりと肌に張りつき、汗と体液の匂いが鼻を掠めた。
「……起きんなよ……ったく……」
寝返り一つで起きてしまいそうなほど繊細な寝息。
だが、今の彼女は――本当に深く眠っていた。
小田は、重なるように密着していた腰を、そっと引いた。
ぬる……ぬちゅっ……
粘膜に包まれた異物が、腸壁を押し広げたまま、わずかに抵抗するように引き留める感触。
だが、小田の動きにあわせて、それは――
ぷちゅっ……ぬぽぅ……
と、湿った音を立てて抜けていった。
「うぅッ……」
喉の奥で堪えていた声が、漏れた。
情けない。
そう思っても、どうしようもなかった。
肛門から引き抜かれた直後の、ひりつくような虚脱感。
ぐちゅ、と残った粘液が外気に触れて冷たくなる感覚。
まるで自分の内側から何かを奪われたような、
そんな脱力と喪失の感触が、尾を引いていた。
「……ああ、クソ……」
汗に濡れた額を押さえながら、小田は静かに息を吐き、なおも深く眠るナーシャを、そっと横向きに寝かせてやった。
その尻のあいだから、濁った粘液が、ゆっくりと糸を引いて滴り落ちていた。
「……トイレに行くか。」
ナーシャを横に寝かせた小田は呟いた。
部屋にはまだ、行為の余韻が濃密に残っている。
シーツは皺だらけで、染みついた汗と体液の匂いがじっとりと漂い、彼――ナーシャの寝息が、静かに流れている。
小田は上半身を起こし、重たく感じる腰を持ち上げた。
その瞬間――
ずるっ……ぬちゅ……
肛門の奥で、音を立てて粘液が落ちる感覚。
「っ……」
自然と太腿の内側を伝っていくぬるついた感触に、思わず顔をしかめる。
尻の奥にはまだ、生々しい異物感がこびりついており、体内に残された体液が、自重に耐えきれずじわじわと漏れてきていたのだ。
白濁のしずくが、内腿をぬめりながら這い、足元にぽとりと落ちる。
「…はぁ」
小田は無言で息を吐いた。
そのまま立ち上がろうとして――視界の端に、黒いスーツが見えた。
ベッドの端に無造作に放られたそれは、フェロモン抑制スーツ。
体臭、とくに男性特有のフェロモンを外部に漏らさないための装備。
この世界の種族が、男性の『匂い』に過剰反応することが明らかになって以降、徐々に現場部隊での運用が始まりつつあった。
小田はそれを拾い上げ、重たそうに睨む。
「……その前に、これ、着とくか」
生乾きの汗がついたスーツを広げると、粘液で湿った自分の太腿に嫌でも触れる。
「……これ、本当に効果あんのか?」
唇の端を吊り上げて、半ば自嘲気味に呟いた。
高性能素材とか、特殊繊維とか、そういう能書きは聞かされていたが――
この異常な執着、本能的なまでの反応が、布一枚で抑えられるとは到底思えなかった。
(まあ……着ないよりはマシか)
ファスナーを下ろし、そろそろと脚を通す。
ぬめった粘液が内腿に張りつき、スーツの裏地がそれを押しつけてくる。
「うっ……」
思わず喉の奥から小さく呻きが漏れた。
気持ち悪さ。
不快感。
そして、逃れられない現実。
スーツを肩まで引き上げ、ジィ……とファスナーを閉じていくと、生地が肌に吸いつくように密着した。
匂いは封じられるが、体液も、熱も、全部内側に押し込まれたような気がした。
重たい呼吸をひとつ。
ぐっと腰を伸ばすと、肛門の奥がじんわりと疼いた。
(まだ……残ってやがる)
中からじわ、とこぼれ出す感覚に、足を少し開いて立つ。
だが、それでも、自然と垂れてきてしまう。
寝台を振り返る。
ナーシャはまだ、静かに眠っている。
まるで無垢な子供のような顔で、汗と涙に濡れた頬を緩ませ、「小田ぁ……♡」と寝言のように呟いていた。
小田は何も言わず、彼から目を逸らす。
そして、静かに歩き出した。
⸻
――ギィ……
静かな扉の音が、夜の空気を切り裂いた。
フェロモン抑制スーツを着込み、まだ下腹部に違和感を残したまま、小田は、溜め息とともに洗面へ続く通路の扉をそっと開いた。
廊下にはまだ、夕刻の橙色の光が差し込んでいる。
日が傾き始めた時間。完全に夜ではない。だが、空気は静かで、湿っていた。
そんなほとんど音のない空間に、ただひとつだけ――『気配』があった
そして。
そこにいた。
「……ッ!?」
小田は、言葉を失った。
薄暗い廊下の突き当たり、壁にもたれるように座っていたのは――シズだった。
犬人の少女。
従順で、控えめで、いつも冷静な眼差しを崩さないあの彼女が――
今、この瞬間、
壁にもたれかかり、脚をわずかに開いたまま、片手を自らの股間に当てていた。
呼吸は浅く、乱れている。
頬は上気し、目は潤み、その瞳が――扉の向こうに立つ小田を、しっかりと捉えた。
「ッ……?!」
彼女の耳がピクリと跳ねた。
「お、小田様……ッ?!」
声が裏返り、明らかに狼狽していた。
その声はいつものように整った敬語ではあったが、震えを含み、どこか粘りを帯びていた。
彼女の手は咄嗟に股から離されたが、その指先はかすかに濡れており、何よりも、体温の乱れた吐息と甘い匂いが、微かに空気に漂っていた。
「……シズ……?」
小田は思わず名前を口にしたが、その声音には戸惑いと、かすかな予感がにじんでいた。
――まさか。
「い、いえっ……ッ、これは……違……っ」
シズは言葉を詰まらせ、顔を伏せようとする。
だが犬人の耳は、逆に感情を露わにするかのように強く跳ねていた。
赤らんだ頬。荒い呼吸。濡れた瞳。
壁にかけた片手が、震えている。
彼女の匂いが、わずかに鼻を掠める。
――獣の、熱と湿度を帯びた、発情の匂い。
そんな彼女に小田は警戒も困惑も入り混じったまま、言葉を発せず見返す。
しばしの沈黙ののち、シズは苦しげに口を開いた。
「……その、お食事を……お持ちしようかと思いまして……」
それは言い訳にも似ていたが、どこか本気でそうしようとしていた気配もあった。
だが彼女の視線は泳ぎ、頬は赤いままだった。
「……そうか。」
小田は短く返す。
深入りするのも憚られる空気のまま、視線を逸らすようにして一歩踏み出した。
すると、問いかけてくる。
「……どちらに、行くのですか?」
その声音は控えめで、いつもどおりの敬語だったが――
先ほどまでの動揺の尾が、言葉の端に色濃く残っていた。
小田は一瞬、返答に詰まり、そしてわずかに顔を伏せて、苦笑に近い息を吐く。
「……その、少し。トイレにな。」
小田がそう告げた途端、目の前のシズの身体に、明らかな変化が現れた。
彼女の耳がピンと立ち、そして――
尻尾が、ぶわっと勢いよく持ち上がる。
ぱさっ……と空気を割る音すら聞こえたかと思うほどの速度で、
長く柔らかい尻尾が左右に凄まじい勢いで揺れはじめる。
ぶんっ、ぶんっ、ぶんっ……
あまりに激しく揺れるその様子は、普段のシズとは明らかに違っていた。
制服の裾を煽り、脚の間にまで毛先が触れるほど大きく弧を描いて揺れている。
そして――
彼女は鼻を、鳴らした。
「……くん、くん……くんくん……」
その小さな嗅ぐ音が、静まり返った廊下に不気味に響く。
鼻先がわずかに持ち上がり、小田の足元――とくに腰のあたりを中心に、熱を帯びた視線が注がれていた。
(……なんだ?)
小田の背筋に、じわりと嫌な汗が滲む。
そして、静かに声が落ちてくる。
「……ご案内、いたしましょうか?」
声そのものは、いつもどおり――冷静で丁寧な言葉遣いだった。
だが、そこには何かが混じっていた。
粘度のある甘さ。
息の絡むような声の湿り。
言葉の奥に、意識的に押し殺された熱。
小田はすぐに、拒絶の言葉を返した。
「いや……トイレの場所くらい、わかる」
たしかに、施設内の構造は把握している。
案内など必要ないはずだ。
だが――
「……左様、ですか♡」
その返事の最後に添えられた、わずかに跳ねるような語尾。
それは本来、彼女が使わないはずの、
あまりに女らしすぎる抑揚だった。
ぞくり、と。
小田の背を、生温い違和感が這った。
――何か、おかしい。
言葉遣いは正しい。
表情も、いつものように控えめだ。
けれど、尻尾はまだ揺れている。
小さく、小刻みに、興奮を隠すように。
「……」
小田は何も言わずにその場を離れたが、背後から感じる、鼻を鳴らす微かな音が、しつこく、耳の奥に残っていた。