ぐったりと湯縁にもたれていた小田が、ゆっくりと身体を起こした。湯の熱がまだ肌にまとわりつき、全身は重く、深い満足感に包まれていた。指先から滴る湯が静かに水面を打ち、しっとりとした音を立てて消えていく。
腰に力を入れ立ち上がるが、足元は頼りなくふらつく。腹の奥底にはまだ情事の熱が鈍く疼き、関節の一つひとつにまで絡みつくような倦怠感が残っている。
浴室の扉を引くと、ひんやりとした空気が一瞬だけ熱に浮かされた肌を撫でる。薄い布を巻いただけの小田の姿に触れる空気は、まるで誰かの指先のように敏感な肌を刺激した。
着替えの間で待っていたのは、犬人のシズだった。伏し目がちに静かに佇んでいた彼女の耳が、小さくカタンと鳴った扉の音に反応し、ぴくりと震えた。
小田の姿を目にした瞬間、シズは息を呑むように瞳を大きく開いた。濡れた肌から立ち昇る湯気、微かに乱れを残した呼吸、そして心許ない布の下に隠しきれない「雄」の香り。彼女の胸が小さく上下し、その視線は戸惑いながらも確かに熱を帯びていた。
「……こちら、お召し替えです」
そう言って差し出した衣服は震える指先でぎこちなく畳まれ、小田に渡された。その手つきから伝わる戸惑いと緊張感が、かえって官能的な空気を強くする。
衣服を受け取る小田を、シズは遠慮がちに見つめていたが、その視線は次第に大胆になり、胸元、引き締まった腹部、そしてまだ熱の残る太腿へと、下へ下へと流れていく。
シズは何かを言いかけては口をつぐみ、ただ無言で視線を注ぐだけだった。その瞳には明らかな欲望が宿り、ふるふると震える耳や揺れる尻尾が彼女の内心を露わにしていた。
小田は静かに着替え始めたが、その視線の熱さが、肌を直接なぞるかのようにじりじりと彼を刺激し続ける。視線を浴びるたび、身体が再び微かに熱を帯びるのを小田自身も感じていた。
無言のまま、しかし互いを意識したままの空間で、熱を含んだ沈黙だけが静かに広がっていった。
⸻
着替えを終え、湯気の余韻をまとったままの身体で引き戸をくぐると、シズが静かに待っていた。
「……ご案内します」
小さく頭を下げると、シズはくるりと背を向け、廊下を歩き出す。
小田はその後ろに続いた。
歩き始めてすぐ、気づいた。
シズの腰から揺れる――ふさふさとした、長い尻尾。
その柔毛が、歩くたびにふわり、ふわりと空気を撫でるように揺れ、
まるで意図的にでもあるかのように、小田の腹や腰に、時折やさしく触れてきた。
(……いや、偶然か……?)
そう思いつつも、接触は一度や二度では済まなかった。
太腿にふわりと絡む。
下腹部を撫でるように掠める。
腰骨に沿ってしなるように押し当てられる感触も――確かにあった。
そのたびに、小田の肌にうっすらと鳥肌が立つ。
風呂で温められた感覚が、逆に敏感にさせているのかもしれない。
無言のまま進む道のり。
だが、小田の中では確実に、意識と熱が高まりつつあった。
そしてその後ろを歩く彼の存在を――
シズもまた、しっぽ越しに、しっかりと感じ取っていた。
⸻
角をひとつ曲がったその先、通路の脇に立つ影が見えた。
鎧を纏った長身――ドラゴニュートの女騎士だ。
鱗を思わせる紋様の刻まれた黒革の鎧、その下に覗くのは引き締まった太腿と、大きい尻の輪郭。
腰に剣を下げ、片手を壁にあずけるようにして立っていたその女が、小田とシズの姿を見るなり、にやりと口角を上げた。
「お、来たか……って、もう動けんのか?」
声は低く、どこか笑いを含んでいた。
そして、そのまま真正面から通路をふさぐように歩み寄ってくる。
「へぇ……カザラ様に結構搾られたって聞いたけどな……随分、元気そうだな」
その目が、舐めるように小田の身体を見ていた。
その瞳は軽装に着替えたばかりの服越しでも、肌に残る紅潮や、まだ収まりきらない体の火照りを見抜いていた。
「――なあ、小田とか言ったな」
女騎士が、鋭い目で小田を見下ろす。
鎧の隙間から覗く褐色の肌には鱗のような模様が走り、頬にはうっすらと熱が差していた。
「カザラ様とお食事する前にだ……ちょいと、隣の部屋で「検査」させてもらおうか?」
「……騎士様、それは……!」
シズが小さな声で抗議の言葉を投げる。
その声音には緊張と焦燥が滲んでいた。
「この方は……カザラ様の、大事な「商品」です。勝手な接触は……」
だが女騎士は、鼻で笑った。
「うるせぇよ、劣等種。犬っころはそこで尻尾でも振ってろ」
そう言い捨てると、小田の肩にぐいと手をかけ、強引に隣の部屋の引き戸を開けた。
「ッおい!」
流石に小田が抗議の声を上げた。
しかし、騎士はそんな小田の抗議を無視して話を続ける。
「さ、こっちだ。形式上だよ。食前の軽い検査。安心させるためにな?」
そのまま有無を言わせぬ力で、小田の腕を引き、薄暗い部屋の中へと連れ込む。
扉が閉まりかける瞬間、シズの視線が小田に向けられていた。
揺れる瞳、わずかに開いた唇、声にできないまま凍りついた想い。
バタン――
戸が閉まる音が、薄暗い部屋に響いた。
その瞬間、空気が変わった。
女騎士は無言のまま数秒、小田を眺め――
にたり、と笑った。
「……さぁーて、検査しますかぁ♡」
その声音は先ほどまでの冷静さとは違っていた。
まるでずっと抑え込んでいた何かを、やっと解き放つかのように艶を帯び、甘く濁っていた。
小田が後ずさる間もなく、騎士の手がズボンに潜り込む。
指先は迷いなく睾丸を探し当て、こねるように揉まれる。
「っ……おい……!」
声を上げた小田は、そのまま言葉を紡ぐ。
「俺は……ここに来た時、持ってるもん全部、ひっぺがされたんだぞ……! 検査するような物なんて、何も――!」
その言葉に、女騎士の動きが一瞬止まる。
だが次の瞬間には、少し強く、指が肉袋を握りしめた。
「うぐッ」
おそらく加減して握ったであろうのだが、いきなりの刺激に声を漏らす小田。
それを見ながら騎士は続ける。
「……うるせえよ」
声は低く、唸るような響きを持っていた。
「俺が、怪しいって言ってんだぞ……?」
さらに睾丸を握りしめると、親指で肉を押し上げるように撫でる。
圧迫される内部。熱が生まれ、じわじわと神経を蝕んでいくような刺激が広がっていく。
「異物を隠してねぇとは限らねぇだろ? この中に……なあ?」
ねっとりと囁かれたその言葉は、意味深すぎて明らかに「検査」とは名ばかりのものだった。
「ちょっと出してみろよ。中身をな……「安心材料」にさせてくれよ、小田♡」
その言葉と共に、さらに深く、手が食い込む。
小田の腹筋がかすかに震える。
羞恥と屈辱、そして肉体に刻まれる快楽の輪郭が、じわじわと感覚を支配していく――
⸻
チュゥ……じゅぽ、じゅる……ぷちゅ――
むるり、と舌が巻きつき、くちゅ、と唾液が肉棒の根元に絡みつく。
部屋の中には、水音だけが淫靡に響いていた。
木の机に背中を預けるように座らされた小田の両脚は、肩幅以上に開かされ、ずり下ろされた衣服が床に落ちている。
その股間に顔を埋めるのは――例の、女騎士。
重厚な鎧を外し、しゃがみ込んだその姿は、まるで獣が獲物の血肉を味わうようだった。
「ちゅ……んッ、ぷぁ……ふふ、すげぇ……あ〜ほんとたまんねぇな……」
鼻を寄せ、深く吸い込むたびに目を細め、獲物にうっとりとした視線を向ける。
舌先がぬるりと睾丸を撫で、次に亀頭へと這い上がる。
先端の溝に沿って丁寧に舐め回し、とろりとした唾液が筋を描いて滴る。
「じゅ……ぷ、じゅる……んんッ、はぁ……♡」
その音は、ねっとりと絡みつく舌と、熱に濡れた肉が擦れ合う、生々しい接触の証。
啜り、吸い、包み込み――
時に唇で竿をくわえ込み、時に睾丸を一粒ずつ舐め上げ、口の中で転がす。
「む、くちゅ……むる……ッ、んふ♡……お?声我慢してんのか?」
見上げる瞳は妖しく、興奮に濡れていた。
舌先で亀頭の裏筋を執拗に擦りながら、騎士は言葉の代わりにさらに強く吸いつく。
「チュポ……ぷあ……ふふ……まったく、これじゃあ検査が終わらねえなぁ?♡」
男の肉棒が跳ねるたびに、水音が増し、女騎士の吐息が濃くなる。
彼女の喉が鳴る音すら、どこか甘く、狂気を帯びて響いていた。
「……ぁッ」
無意識に漏れた声に、小田自身が反応するよりも早く、しゃがみ込んでいた女騎士の口元が、にたりと吊り上がった。
「……何、感じてんだ?おいおい、これは検査だぜ?」
そう言いながら彼女の行為はエスカレートする。
唇をすぼめ、睾丸を深く吸い上げる。
ぬちゅ、と粘着質な音を立てながら、舌先で裏側を擦り上げる。
「ちゅぅ……ッ、んふ♡」
同時に、手のひらが竿に巻きつき、根元から先端へといやらしく擦り上げる。
湿り気のある唾液が塗り広げられ、ぬるぬると音を立てながら、皮膚の上を這うように刺激が走る。
「くっ……てめえらは……こういうことしか、しねぇのかよ……ッ!」
怒りとも羞恥ともつかぬ声で、小田が吐き捨てる。
だがその言葉に、女騎士は満面の笑みを浮かべて返した。
「はッ……こんなスケベな雄、見せられて我慢できるわけねぇだろ?」
睾丸を手で転がしながら、挑発するように見上げる。
「なぁ?自分でもわかってんだろ?こんなにおったてて……先っぽから、もうじわじわ出してんじゃねぇか……♡」
言葉と同時に、親指がじゅぶりと濡れた先端を押し潰すように撫でる。
透明な雫が滲み、粘つく糸がぬち、と指に絡みつく。
「期待してんだろ?身体が言ってんぞ、なぁ?」
こくん、と喉を鳴らして笑った女騎士の口元には、獲物を逃すまいとする、狩人の狂気すら宿っていた。
⸻
「ッ……早く、終わらせろっ……!」
小田の声はかすれていた。
だがその吐息の奥に、否応なく滲み出る快感を――女騎士は見逃さなかった。
「へっ……急かすじゃねぇか。そんなにイきてぇのか?欲しがりめ♡」
低く笑いながら、女騎士は唇をすぼめて睾丸に吸いついた。
「ちゅぅっ……んぐ……はは、やっぱスゲェな、張り具合が違う……」
そのまま舌でぬるぬると亀頭をなぞり、ぬちゅ、ぬちゅ、と濃厚な音を響かせながら竿を擦り上げる。波のような快感に小田の声は段々無意識に大きく漏れてゆく。
「ッぁ」
「検査されて声漏らしてんじゃねぇよ、スケベ野郎が……おい、見てろよ、ここをな……こうだ!」
先端からにじんだ雫が、舌で撫でられながら拭われる。
そして――次の瞬間、女騎士の舌先が、ぬるりと尿道口にねじ込まれた。
「ぁあッ……!」
悲鳴のような声が、小田の喉から絞り出された。
ぐにぐにと蠢く舌が、尿道内をいやらしく擦り、敏感な神経を容赦なく刺激してくる。
その間も手は、睾丸をタプタプと揺らしながら弄ぶ。
指の腹で軽く叩き、掴み、潰さぬように押し込むような動き――
すべてが、搾り取るための“調教”じみた手つきだった。
唇が笑う。しかし舌は笑わない。
そのぬめった肉の筋は、なおも小田の尿道口の中を舐め回していた。
――ぬちゅっ、ぬりゅっ、ぐにゅ……
舌先が尿道内でわずかに捻れ、うねる。
まるで、意識の奥を直にくすぐるかのような、内側からの愛撫。
(だ、めだ……ッ)
全身が火照り、呼吸が荒くなる。
だが快感はすでに、身体の奥から込み上げていた。
睾丸を弄る手が一際強く握られた。
同時に、舌が奥からぬるりと引き、今度は尿道の内壁を舐め取るように蠢いた瞬間――
「――――ぁッ、ああああっ!!」
小田は、絶頂した。
びゅるるっ、びゅっ、びゅくっ……!
下腹部から迸る快楽の奔流。
だが奇妙だった。
放たれるはずの精液は――
出てこない。
ビクン、と腰が跳ねた直後、小田は自分の腹部に残る鈍い収縮感に違和感を覚えた。
(……出てない……?)
確かに達した。脳が焼けるような快感が、全身を駆け抜けた。
だが――放たれるべきものが、出てこない。
陰嚢には、既に何も残っていないかのような、重く、冷えた感覚。
「……な、んで……」
掠れた声を漏らしながら、視線を落とした。
そこには、まだ――
女騎士が舌を尿道口に差し込んだままの姿があった。
彼女の顔は静かに濡れ、唇からは透明な唾液が垂れていた。
そしてその口元が、ゆっくりと――にたり、と釣り上がる。
にんまり。
楽しげに。
舌は、彼の尿道口に深く沈み込んだまま。
そしてそのまま――女騎士の首が、わずかに後ろへ引かれた。
(ま、まさか……!)
――ぞわり。
粘膜の奥を這っていた舌が、ぬるり、と動いた。
引き抜かれようとしている。
だが、それは単なる後退ではなかった。
まるで舌で粘膜をすくい取りながら、
わずかにこそぐるように、巻き込むように、ゆっくりと這い戻ってくる。
「ッ……!や、やめっ――!」
反射的に小田は叫んだ。
言いようのない快感を感じながら、本能的な恐怖が口をついた。
女騎士は応じない。
代わりに、舌先の動きを一段とねっとりとさせながら、尿道の奥を舐めるように後退する。
音がする。
ぬちゅっ……くちゅ、くち……
生々しく、淫らに――
そして舌が、奥で蠢いた。
その動きは確信に満ちており――次の瞬間、女騎士は一気に、舌を“引き抜いた”。
ぬぢゅっ……!!
粘膜が擦れ、ぬめった音とともに、舌が口元に戻ってくる。
その瞬間、小田の身体が跳ねた。
「――――あ、あああアァッ!!」
びゅるるっ! びゅくっ、びゅくびゅるるるっ!!
抑圧されていたものが一気に解き放たれた。
腹の底から絞り上げるような強烈な収縮――
引き抜かれた刺激が、逆流するように快楽を膨れ上がらせ、
白濁が、咽び泣くように暴れ出す。
ドクッ、ドクンッ……びゅるっ……びゅるるっ……!
抑え込まれていた快楽が、小田の腹の底から噴き上がるように昇ってきた。
暴発するような勢いで、精液は熱く、濃く、迸り――ぶちまけられるはずだった。
だがそれは、空気に触れる間もなく。
「んっ、ちゅ……っ、ぢゅるるっ……♡」
女騎士の唇が、射出口を塞いでいた。
女騎士はまるでそれを待っていたかのように…
滴る前に、飛び散る前に、貪るように吸いついた。
「……んくっ、ちゅっ……ごく、んんっ……」
舌を巻きつけるように、先端を這い、吸い上げ、啜り上げる。
喉が鳴り、咽奥で精液を飲み込む音が、小田の腹にじかに伝わる。
じゅる、ぢゅっ、ぴちゃっ……くちゅっ……!
「ゔぁっぁぁ」
もはや情けない声しか上げるしかできない小田。
そうして逃げ場をなくした白濁は、
まるで導かれるように女騎士の口内へと収束していった。
「ン〜……ちゅぽんっ」
粘液が絡んだ音を立てて、唇が離れる。
女騎士は粘液を飲み込みながら、震えている肉棒を見下ろしていた。
「……マジでスゲぇな。こんなに出るもんなのか…」
吐息まじりの声が、静かに空気を濡らす。
喉の奥にまだ残る味を確かめるように、彼女は舌で唇の端をなぞった。
「まあ……最高には変わりねぇ。でもよ――おい、上向いて余韻に浸ってんじゃねえぞ、こっちはまだ満足してねえぞ♡」
小田は反応できなかった。
激しい絶頂の余韻で身体の芯がまだ震えていた。
そのときだった――
「騎士様ッ!」
扉の向こうから、シズの声が飛び込んできた。
緊張と焦りを帯びた、どこかせっぱ詰まった声音。
「ちぇ……しょうがねぇな。……ああ、そういや食事の準備か」
ため息をつきながら、女騎士は腰を上げる。
だがその表情は、どこか満ち足りず、物足りなげだった。
「そうだ、最後に」
女騎士は、小田の震える唇にそっと近づき、唇を深く重ねた。
ぬちゅ…くちゅっ……
柔らかに、だが逃さぬように。
湿った熱が、小田の口腔へと滑り込み、舌先がゆっくりと絡みつく。
「ん、く……んっ……」
小田の反応を愉しむように、彼女は舌の動きを少しだけ荒くした。
唾液が混ざり、糸を引き、二人の口から小さな音を立てて滴る。
やがて、唇を離し――そのまま、囁く。
「……今夜、ぜってえ俺のとこに来い♡」
吐息にまじる甘さと、支配の色。
名残惜しげに小田の顎を撫でた後、女騎士は立ち上がり、濡れた唇を指でぬぐった。
そして無造作に鎧を身につけると、くるりと背を向ける。
「……いいな。逃げたら、ただじゃおかねえぞ。」
最後にそう言い残し、女騎士は扉を開けて、ゆっくりとその場を後にした。
部屋に残されたのは、小田の荒い息と、口の中にまだ残る熱く、塩辛い余韻、そして濃密な性臭だけであった…