その男傲慢につき 作:アマチュアダックスフンド
天国の様だった夏休みも終わり、また退屈な日々がやってくる。神楽は眠たい目を擦りながら登校するも、既に1時間目の時間は過ぎていた。寮からの道に誰も居ないのは勿論のこと、不在着信が数十件届いている。
「体育館って何処だっけ」
まともに授業に参加しておらず、部活動にも縁がない神楽は体育館の場所すら把握していなかった。そんなこと有り得るのかと疑いたくもなるが、興味がない事を覚えるつもりがない神楽にとっては有り得てしまう。未だにクラスメイトの名前すら記憶していない。
数分彷徨ったところでようやく体育館に辿り着いた。
「話し合いするつもりはないってことかな?」
離れたところから馴染み深い声が聞こえる。男の性欲を刺激する様な甘ったるい声ではなかった為、一瞬誰だか気付かなかった。
声の主は一之瀬だった。皆の視線が集まり、その先にはクラスメイトの姿も見える。
「こっちは善意で去ろうとしてんだぜ?俺が協力を求めたところでお前らが信じるとは思えない。時間の無駄だ」
「なるほどー。私たちのことを考えて手間を省こうと..あ!ま..神楽くーん!」
明らか会話の途中だったが、俺の姿を見つけるや否や普段の甘ったるい声を出しながら近寄って来る一之瀬。
「何でこんな人居んの?」
「もー何も聞いてないの?『体育祭』だよ!体育祭!赤と白に分かれてワーって!」
『体育祭』か。てことはあのつまらねぇ授業が減るってことか。
「へー。お前は敵?」
「え?いやぁ、その…」
「テメェから話し掛けといて無視するとはいい度胸してんな一之瀬。まあ、それはもうどうでもいい…初めてましてって奴だな?神楽」
返事を遮ったのは先程まで一之瀬と話していた男。ポケットに手を突っ込みながら、舐め回す様な視線を送ってくる。
「…あのチビ何処?さっきからスマホがうるさくてよ」
「え?ち、チビ?…ああ、あそこだよ」
一瞬誰のことか分からなかった一之瀬だったがすぐに察してくれた。指が刺された方にはつまらなそうに椅子に座り、時折スマホを眺め、溜め息を吐く坂柳。目の前のチンピラを無視して坂柳の元へ向かう。
「おい!待てよ…挨拶くらいしてもいいんじゃねぇか?それとも眼中にねぇってか?」
男に肩を掴まれる。
「さっきからうるせえよ。雑魚が話しかけんな時間の無駄だ」
「女の前だからイキがってんじゃねぇよ。体育祭じゃなくてここでテメェをボコしてもいいんだぜ?」
何者かも分からない人間に喧嘩売られるなんて本当にあるんだな。漫画の中だけだと思ってた。
「こっちの台詞だ。火遊びしてぇだけなら別の日にしろ…ああ、安心してくれ。俺は優しいからな人前で恥かかせるようなマネはさせねぇ」
「クク…おもしれぇ」
小さく笑った男はクラスを束ねる長らしい。その証拠に男に続いてクラス全員が引き上げていった。続いて一之瀬も名残惜しそうに手を振りながらクラスを引き連れて出て行った。
「神楽、クラスを巻き込むのはだけは辞めてくれよ」
「俺に命令すんな。競技に出ねぇぞ」
カツラギから警告を受ける。どの立場で誰に言ってるんだ。
「ぐっ…」
Aクラスは客観的に見て優秀な生徒は多いがガリ勉のヒョロガリばかり。体育祭では頼りにはならない。
「遅いです」
こいつがその際たる例だ。
「…彼女は坂柳有栖。体が不自由な為に椅子を使用しているが理解してもらいたい」
カツラギがDクラスたちに坂柳の事情を説明する。男たちに視姦されるも当の本人は気に留める素振りはない。
「ああ、ワリぃ」
「そして彼が神楽真央…性格に難ありだが実力は保証しよう」
Dクラスの生徒にも神楽の噂は届いているのか、恐る恐る視線を移すだけで話し掛ける者はいない。
「人気ないですね。可哀想に」
「見る目がねぇ奴等だ。この俺に頭下げたら簡単に勝てるのによ」
自分に自信がないのか、発言する勇気がないのか、クラスの垣根を超えてカツラギと会話しているのは数人。団結力はないに等しい。
「傲慢ね貴方。先が思いやられるわ」
「誰だお前?」
長い髪、自信に満ちた目、俺に物怖じせずに発言出来る女は珍しい。名前を覚えてやってもいい。
「堀北鈴音…貴方が神楽くんね。悪いけど貴方の様な人間に構っている暇はないの」
「井の中の蛙の分際で随分と偉そうだな?Dクラスに配属された不良品が」
「その不良品に足元を掬われたのは貴方たちでしょう?」
「無人島は猿のホームグラウンドだからな、お前らにアドバンテージがある。負けても仕方ねぇ」
「あぁ!?んだとテメェ!!」
赤髪の猿とは珍しい。声を荒げた男は堀北を庇う様に前に出てくる。
「辞めなさい須藤くん。…神楽くん悪いけど貴方の力は不要よ、Aクラスは倒すべき敵であることに変わりないもの」
「へぇ…なら俺と勝負しないか?」
「勝負?」
「クラスの成績..個人の成績、どちらか片方でも俺に勝てたら毎月Dクラス全員に5万PP支払ってやる」
堀北は目を見開き驚く。
「…バカ言わないで。単純計算で毎月150万P以上の出費、貴方1人ではどうにも」
「Aクラス全員のポケットマネーから払ってやるよ。少なくとも毎月10万弱は入るからな」
「おい!勝手に決めるなよ!許される訳無いだろ」
カツラギの取り巻きが騒ぎ出す。それに反して坂柳派は静観している。
「有栖、お前の信者を説得しとけ。可能なら取引してくれるのか?」
「…負けたら?」
「一度だけ俺の命令に従って貰う」
「貴方の唯一の欠点ですね。挑発に乗りやすいのは」
退屈な一日が終わり放課後。帰路に就く2人は側から見ても楽しそうだった。可愛らしいカップルに見えるかもしれないが、実際は獲物を見つけた2匹の獣。
「完璧な人間は面白くないだろ?取り巻きの説得は頼んだぞ」
「説得?するつもりはありません。貴方が負ける未来は想像出来ませんので」
「だろうな。今回は特に」
Aクラスは勿論のこと一之瀬率いるBクラス、そしてCクラスも恐らくDクラスを狙っている。完全なる袋小路、ほぼ結果が見えた出来レースだ。
「一之瀬さんは完全な例外です。堀北さんは手強いですよ」
「あいつが?口だけのカスだろ」
「やり方を間違えれば眠れる獅子を起こすことになります」
眠れる獅子ねぇ…
「アイツか?安心しろよ、アイツはお前が思っている程優しい男じゃない。使えないと思ったらクラスメイトだろうと簡単に捨てる冷徹な人間だ」
無人島試験や船上試験においてDクラスの躍進は凄まじい。ただ実際にこの目で見て分かったが、Dクラスの生徒たちは無能ばかり。アイツがどうにか上手いことやったとしか思えない。
「アイツが介入してくることはまずない。目立ちたくないだろうしな」
1ヶ月後に開催される体育祭に向けて本格的な準備が始まった。参加する種目や順番と決める事は本来盛り沢山の筈だが、Aクラスに限っては例外であった。
「俺が推薦と個人で勝つ。団体は適当にやっても最下位にはならねぇから好きにしろ」
神楽は会議が始まると同時にそう言い放った。珍しく会議に参加していることに驚く生徒も多い。ただ神楽が積極的に試験に臨んでくれるのは皆にとって本望でしかない。
「勝手が過ぎるぞ神楽。そもそもお前が堀北に提案した取引に俺は賛成していない」
ただカツラギ派はどうしても神楽の態度が気に食わない様だ。
「お前らはどうでもいいんだよ。おい、チビ。テメェの信者は賛成してくれるんだろ?」
「貴方の口の悪さには本当に呆れますね。まあ概ね同意は得ています」
「だってよ。黙って俺に投資しておけ、最高の結果をプレゼントしてやる」
9月半ば。体育祭まで早くも2週間を切った。Aクラスの面々は自分たちの面子を保つ為に黙々と練習を続けている。
他クラスからの偵察は日常茶飯事。クラスメイトの中には本調子を出さない者も多々存在したが、神楽にとっては自分の実力を遺憾なく披露する絶好のチャンスであった。
「…なあ健、ヤバくね?」
「…大丈夫だ。鈴音の為にも」
自分の身体能力に自信のある者達が、神楽の実力を目の当たりにして自信を喪失しかけている。
「まるで獣ですね。力をアピールし他者を威嚇するなんて」
「獣の世界は弱肉強者だからな。雑魚は淘汰されて当然なんだよ」
日傘を刺して椅子に座っている坂柳からスポーツドリンクを受け取る。一口で一気に飲み干し、タオルで汗を拭う。
「実力だけでも既に圧倒していますが..計画の準備の方は出来ているのですか?」
「ああ、クラスで同盟を結んでる一之瀬は既に俺の奴隷。Dクラスの中にも裏切り者がいる。おまけに龍園も堀北を狙っているならそこを利用する。申し訳ないが負ける未来は見えない」
一之瀬にはDクラスの生徒に勝った回数分セックスの回数を増やすと伝えた。そのお陰か僅か数週間で自己ベストを大きく更新していたらしい。
裏切り者とは利害関係が一致していたのか、相手から接触があった。どうやら堀北に相当な恨み..嫉妬と言うべきか?とにかく利用出来るものは利用する。
「慢心は人間の最大の敵。私が言いたい事お分かりで?」
油断はするな。そう言いたげな坂柳。
「人間のだろ?誰かさん視点では俺は獣らしいからな。敵ではない」
アリを1匹踏み潰す程度の事に油断もクソもない。俺に喧嘩売った身の程知らずのバカに屈辱的な敗北をプレゼントしてやろう。
特別試験も書いた方がいいですか?
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はい
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軽く触れる程度で
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いいえ エ口のみ希望