※この作品はR-18です。

その男傲慢につき   作:アマチュアダックスフンド

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 追記 最後の一文抜けてました。申し訳ありません


第十八話 櫛田桔梗 中編 ♡

 

 神楽が退出してから10分が経過した。もしかしたらすぐに帰ってきてくれるかもしれない。そんな淡い期待を抱き、快楽に溺れないように必死に耐える。

 

 未だ絶頂には達していないが、櫛田の秘所からは多くの愛液が分泌されており、時間の問題であることは確かだ。一度でもイッてしまえば最後、電池が切れるまでこの玩具は止まることはない。

 

 密閉された空間に漂うイヤらしい雌の匂いに今にも気が狂いそうだった。

 

「うっ…うっ…んんっー!」

 

 神楽が退出してから30分が経過した。櫛田は既に3度絶頂している。体を思うように動かすことが出来ず、一定の間隔で痙攣し神楽のベッドを汚す。

 

 櫛田の顔面は見るに堪えない程に崩壊していた。瞼は赤く腫れ、化粧は崩れ、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになっている。

 

「あ゛…ぁぁっ…ゔっ」

 

 神楽が退出してから1時間が経過した。抱いていた淡い期待は儚く散り、次第に絶望が襲い掛かる。

 

 ここまで櫛田は12度の絶頂、そして初めての失禁を経験した。10度目のタイミングで膀胱に力が入らなくなり、尿を漏らした。他人の部屋で尿を漏らした羞恥心、見られていなかったことによる安心感、そして未だ残っていた神楽に対するほんの僅かな反抗心。

 

 たった一瞬で様々な感情に襲われるも、今こうしている間も神楽は堀北と楽しく食事をしていると考えると最も強く抱いた感情は怒りだった。

 

 学力や身体能力ならまだしも、女としての魅力もアイツに劣っているのだけは許せなかった。

 

 自分を差し置いてあの男に抱かれていることに腹が…

 

「…っっ!?」

 

 冷静になれと櫛田は自分を諭す。このままではあの男の言いなりだ。櫛田は時計を確認し、残りの2時間をどう過ごすか脳内で策を考える。

 

 まず最初に浮かんだのは拘束具を外すことだが..それは不可能に近い。思い切り力を入れてもびくともしなかった上、今の自分には体力が全くと言っていい程残っていない。

 

 唯一外れる可能性があるのは口に付けられたギャグホールだけ、櫛田はベッドに顔を擦り付けて必死に外そうと試みる。

 

 ただ櫛田は自分の身体から溢れた様々な液体で汚れたシーツに顔を埋めるのに抵抗があった。その為唯一汚れていなかった神楽の枕に顔を埋めた。それが間違いだった。

 

「んんっ…んん…ゔぅ」

 

 発情しきった櫛田にとって、神楽の匂いが染み付いた枕は凶器と言っても過言ではなかった。神楽の胸に顔を埋めた時の光景が鮮明に思い浮かぶ。

 

 整った顔立ち、女性ウケの良い香水の匂い、モデルの様な体型、高校1年生の少女にとって彼の存在は余りにも刺激が強過ぎた。

 

「うぐぅ…かはっ…ぃっぐ」

 

 櫛田は13度目の絶頂を達した。外れたギャグホールは首元に垂れ、口内から唾液が溢れ出す。もう目的は果たした、にも関わらず櫛田は枕から離れることが出来ない。

 

「クソっ…死っ!死ぬっ!うっ…んんっ、イくの止まんないっ…あ゛ぁぁあ」

 

 余韻に浸る間もなく次の快楽が襲い掛かる。1時間が経ち、櫛田は1つの結論に至る。絶対に残りの2時間は耐えられない。このまま失神するか、完全に壊れるかの2択。

 

「だ、助けてっ…あっ…あ゛ぁぁあっ!」

 

 どちらにせよ櫛田にとっては地獄でしかなかった。どれだけ喚こうとも隣の部屋から助けは来ないし、もし来てもこんな無様な姿を晒すことなどあってはならない。神楽本人に助けを求めるしかない。

 

 幸いにも携帯は没収されなかった。両の腕固定されてはいるが、スマホの操作くらいは出来る。だが、『助けて』そう一言告ただけで神楽は素直に応じてくれるだろうか。答えは否、間違いなく何かを要求される。

 

 そこで真っ先に上がるのは取り引きの破棄だろう。というかそれしかない。恐らく提案には乗ってくれるが…

 

「詰んでるじゃん…やだっ…嫌だぁ..ぁぁっ」

 

 堀北と同じ、寧ろそれ以上に無様な姿を晒した自分は神楽にとって格好の獲物。この状況を写真に撮られて脅迫されるだけ、所詮延命処置でしかない。

 

 絶望の淵で櫛田はとある男の言葉を思い出す。神楽真央には関わるな、無機質な声で忠告していたのは綾小路だった。自分がクラスを裏切ったことは綾小路と堀北にはバレていた。その際に一言だけ警告を受けていた。

 

 Aクラスを目指す上での要注意人物であり、中途半端に関わると堀北のように痛い目を見る。櫛田の中では龍園と同等くらいの脅威を持つ生徒という認識だった。ただ実際には人を壊すことに躊躇いがない獣、今なら龍園の方が可愛く思える。

 

 櫛田は意を決して汚れたベッドに倒れ込んだ。どれだけ汚してもいい、どれだけ無様な姿を晒してもいい、とにかく『3日』耐え切る。心からそう決意した。

 

 


 

 

「帰ったぞーってんあーあ酷い有様だな」

 

 あれから3時間以上経ち時刻は0時を回ろうとしている。堀北の部屋で甘いひと時を過ごした後に自室に戻る。そこに待っていたのは、地べたに這いつくばり腰をビクビクと動かして失神している櫛田だった。

 

「ぁ゛ぁ…ぁ♡」

 

「今の内か」

 

 神楽はベルトを外してズボンを脱ぎ捨てた。そのまま失神している櫛田をベッドに運ぶ。潰れたカエルの様な呻き声を上げている櫛田の秘所は既にドロドロで準備万端だ。

 

 櫛田の秘所に神楽は己の肉棒を当てがい、一気に奥まで挿入した。3時間の間イき続けた櫛田の膣内は神楽のモノすらすんなりと飲み込む。

 

「…っあ゛ぁ…えっ」

 

 櫛田は身体をのけ反らせ、その衝撃と痛みで徐々に意識を覚醒させる。あの時の匂いに包み込まれて、冷え切った自分の体に人肌の温もりが伝わる。櫛田は無意識で神楽の背中に手を回していた。

 

「ぁぇ…?な、何で…」

 

 ぼんやりとした視界に映ったのは自分と密着している神楽の姿。恐る恐る視線を下腹部に移すと、既に自分と繋がっており、ぐちゅぐちゅと水音を立てている。

 

「意識が混濁してんな。まあ、あんま痛くなさそうだしいっか」

 

「ぇ…ゔぅ!あ゛ぁ、んんぁっ!」

 

 櫛田は破瓜の痛みを感じていない訳ではない。痛みよりも快感が勝ってしまっている。乳首や膣口、クリトリスといった外からの刺激で何度も絶頂した櫛田の身体は本能的に男性の生殖器を求めていた。身体は拒否反応を一切起こさず、寧ろ腰を動かせば動かす程に蜜壺から愛液が溢れてくる。

 

「優しくっ…お願いだからぁ…ゆっぐりぃぃ!」

 

「すげぇ顔だな。…撮っておくか」

 

「嫌ぁ!撮るなっ…んぁ!あぁ」

 

 櫛田の言葉を無視して抽送を早める。子宮口を突く度に舌を突き出して呻き声を漏らす。そんな姿をスマホに収めるべく、カメラを回す。撮られたくない櫛田は必死に顔を隠すが、その様子が俺の嗜虐心を大いに刺激する。

 

「分かったよ顔は撮らない、顔はな」

 

 ピストンを辞めて挿入していた肉棒を引き抜くと、互いの粘液が混ざり合い白い糸を引く。指で膣口を開くとヒクヒクと男を欲する様に動いている。

 

「そ、そんなとこ撮らないで!頭おかしいぃ!!んんぁっ!あ゛ぁあ!ご、ごめんなさっ…」

 

 口答えをする櫛田を黙らせる為にクリトリスを抓ると、野太い声を上げて腰をヘコヘコと動かす。余りの衝撃に櫛田はすぐさま態度を変えて謝罪する。

 

「撮っていいよな?」

 

「で、でも…」

 

「はぁ…お前まだ自分の立場分かってねぇのか?お前が壊れようと俺はどうでもいいんだよ」

 

 神楽はベッドから立ち上がり梱包された箱を取り出した。そのまま開封すると、中には歯ブラシのような謎の道具が入っていた。

 

「な、何それ…」

 

「シリコン電動ブラシだって…まあ、使えば分かるだろ」

 

「使うってぇぇ゛っ…あ、ぁぁっ…待っで…あ゛ぁぁあっ!!」

 

 神楽は何の躊躇もなく、櫛田のクリトリスにブラシを当てがった。ボタンを押すと音を立てて微細な振動を放つ。歯ブラシの毛先がシリコン製に代わりクリトリスに強い刺激を与える。軽く触れただけでこの反応なら歯磨きの様に毛先を動かしたらいったいどうなるのだろう。

 

「あっあ…ぁぁ゛ゔっ!?ぅぁぁぁ゛」

 

 そこから先は地獄だった。神楽は知的好奇心を満たす為だけに櫛田の身体を実験と称して隅から隅まで堪能した。陰核を責めて膣から大量の液体を放出しても止めることはなく、部屋の中に櫛田の絶叫が響き渡る。

 

 ようやく手を離してくれたかと思えば、すぐに責める場所がもう一つの穴へと変わる。数時間ずっと入れっぱなしだったアナルビーズを一気に引き抜くと櫛田は白目を剥きながら気絶した。その間神楽は脈拍や心拍数を測り身体にどこまでの影響を与えていたのか、冷静に観察する。

 

 汚れた櫛田を抱えて浴室へと連れて行き、拘束を外す。気絶している櫛田にシャワーの水を浴びせて無理矢理意識を覚醒させる。

 

「もうやだ…許して…」

 

 櫛田には軽口を叩く体力すら残っていなかった。肩で息をして、産まれたての子鹿の様に足元に力が入らず立つこともままならない。懸命に床を這いつくばり神楽に縋る。彼女にプライドなど残っていなかった。

 

「お前俺を利用しようとしてただろ?性欲で動く猿か何かと勘違いして俺を堕とすとかほざいてたらしいな」

 

「ち、違うっ…ほ、堀北に嫌がらせのつもりで」

 

「あ、そう。でも約束は約束だろ?3日間は俺のモノ、終わったら堀北たちを好きにしていい。お前の理性が残ってたらだけど」

 

 3日もあれば櫛田は快楽を求め堕落する阿婆擦れに成り下がる。堀北たちとの違いはその過程に俺がいるか否か。今まで与えた快楽ならオナニーでも味わえる為、俺に依存しているアイツらとは似て非なる。

 

「条件反射の実験をしたくてさ。俺で発情するように仕向けるか、適当に捕まえた男で発情するようになるか…どっちがいい?」

 

 ロシアの生理学者が実施した実験で、犬にベルの音を鳴らしてエサを与えることを繰り返すと、ベルの音だけで唾液が分泌されるようになる。これは本来無関係だった刺激が繰り返されることで条件刺激となり、唾液分泌という反応を引き起こすようになる。パブロフの犬と呼ばれている比較的有名な実験。

 

 人間でも似たような現象があり、習慣的に風呂で用を足すと水の音で尿意が来るようになったりする。

 

 ならば誰かの匂いを嗅ぐだけで発情する雌に躾けることも可能ではないかと俺は考えた。現に一之瀬や堀北は俺と接しているだけで性的意欲が刺激され興奮する様になっている。

 

「最初は堀北の匂いで興奮する様に調教してやろうと思ったんだが、イマイチつまんねーし…あ、お前のクラスに煩わしいゴミ共が居たよな?そいつらでいいか」

 

 神楽が脳内で想像しているのは恐らく池や山内といった面子。特に特徴もなく、居なくなっても不利益にならない生徒。

 

「ちょっと待って…約束が違う、私はあんたに…」

 

「あ?別に輪姦させようって話じゃない。嗅覚を刺激するってことだ。クラスのモブの匂い嗅いだだけで興奮するビッチになれば自ずと肉体関係結ぶだろ」

 

 そんなモブキャラに股を開くビッチに櫛田を調教する。悪い話ではない。それが実現出来れば、今後邪魔な女を破滅させる手段の1つとして多用することも視野に入る。

 

「私がそんなこと…」

 

「しないって言い切れないだろ?何しろこのザマだからな」

 

 エロ漫画の見過ぎだと鼻で笑われるかもしれないが、この状況を見せたら一気に説得力が高まる筈だ。あの櫛田桔梗が全裸で床に這いつくばり、男に縋っているんだからな。

 

「さて少しは休憩出来たろ?再開といくか」

 

「え…やだっ…もうイきたくないっ!ああぁっ!」

 

 這いつくばる櫛田を無理矢理起立させる。脚をガクガクと震わせて1人の力ではまともに歩けない櫛田は神楽に体を委ねるしかなかった。

 

「やっぱやり過ぎたな…大人しくしとけよ」

 

「えっ…?」

 

 神楽は櫛田を抱えたまま湯船に浸かった。自分の前に櫛田を座らせて風呂の温度を調整する。

 

「飴と鞭だ。今だけ優しくしてやる」

 

「…」

 

 櫛田は何も言わなかった。何も言えなかったが正しい、神楽の機嫌を損ねてあの地獄が再び訪れることを危惧した。

 

 湯船に浸かっている間、人が変わったかのように神楽は優しくなった。背後から優しく抱きしめ、定期的に頭を撫でる。期限が良いのか鼻唄を歌い疲れを癒している。

 

「ゆ、湯船もいいけど…その…」

 

「ああ、洗いたいってか?好きにしろ。立てるか?」

 

 こいつの1番ムカつくところは人の心を読むことに長けているところ。心の隅々まで見透かされている様で話すだけで精神的に疲れる。今のような状況だと特に。

 

「…無理です。て、手伝って下さい」

 

 出来るだけ神楽を刺激しないように櫛田は下手に出る。自分から身体を動かすことが出来ない櫛田は神楽を頼るしかなかった。

 

 そこからは違う意味で地獄と言っても過言ではなかった。まともに動けない自分に優しく寄り添い、割れ物を扱うような柔らかな手付きで身体を洗う神楽。先程までとは真逆の対応、頭がおかしくなりそうだった。

 

「痛くないか?」

 

「…うん」

 

 ヘアブラシ、高級なシャンプーとトリートメントが数種類。浴槽や壁も綺麗に清掃されていて居心地が良い。美容師レベルの技術を持ち合わせており、あんなことをされた後なのに心からリラックス出来る。

 

 その後も神楽が櫛田を痛ぶることはなかった。体を洗う時も優しく、肌を傷つけないように丁寧にゆっくりと全身を包み込むように..首元から足の指まであらゆるところを触れられても、櫛田は不快な気持ちにならなかった。

 

「俺は先に出る。ベッドがお前の体液でぐちょぐちょだからな」

 

「なっ…!」

 

 1人浴室に残された櫛田は再度湯船に浸かった。そしてこのままではヤバいと直感する。自分が神楽に心を許しかけている、その事実がバレてはいけない。快楽で体が壊れようとも心だけは壊れてはいけない。そう言い聞かせた。

 

 


 

 

 朝の7時、眠い目を擦り櫛田は目を覚ます。アラームを止めて周囲を見渡すと見慣れない光景が広がる。櫛田は前日から神楽の部屋で寝泊まりしていた。あれだけ汚れたベッドのシーツは綺麗な物へと交換されており、匂いも気にならない。

 

「起きたか?健康的な生活してんな」

 

「…アンタもね」

 

 起きてすぐにトーストの良い匂いが櫛田の嗅覚を刺激する。櫛田はベッドから降りて洗面所に向かった。しっかり睡眠を取ったとはいえ、身体の節々が痛む。

 

「…はぁ」

 

 痛みを堪えて洗面所に辿り着くと見慣れない酷い顔の自分がいた。昨日あれだけ泣き喚いたのだから無理もない。勿論化粧もしていない、髪もボサボサで他人に見せていい姿ではない。こんな自分を見れるのは恋人くらいだ。

 

 だが現実は非常でここにいるのは恋人ではなく取引相手。しかも自分の弱味を握り、口答えすら出来ない相手。

 

「歯ブラシ何個あんのよ…化粧水も…」

 

 洗面所は1人暮らしの男子学生とは思えない程にとっ散らかっている。汚いという訳ではなく物が多すぎる。

 

「この服も…少し大きいし」

 

 就寝する際に女性用の服を借りた。サイズが少し大きい、恐らく一之瀬さんが普段使っている物だと考えられる。

 

「はは…今日もだよね」

 

 充分な睡眠は取った。朝食も用意してくれている。丸々3日間犯すと宣言した割にはそれなりに優遇してくれていると思う。それが不気味で仕方ない。

 

「飯食ったら俺の買い物に付き合えよ」

 

 テーブルを囲み2人で朝食を取る2人。部屋に響くのはテレビのニュース番組とコーヒーを啜る音だけで特に会話はなかった。そんな中、唐突にショッピングに行こうと神楽が提案する。

 

「買い物…?」

 

 神楽は櫛田と湯船に浸かってから妙に優しくなっている。油断させる為の策略、その可能性が最も高いが..

 

「何だ嫌か?じゃあ朝からヤるか」

 

「付き合うっ!荷物持ちでも何でもやるから!」

 

 断る理由はない。恐らく今日は昨日よりも更に激しくなると予想出来る。現に神楽は一度挿入して軽く動いただけであり、射精していない。昨日は完全に私の身体を慣らす為だけの時間と割り切っていたと思う。

 

 全てが神楽の思うがままに進んでいる。その事実に櫛田は怯えていた。取り返しのつかないところまで来てしまった..何度目の後悔かもう分からない。

 

 


 

 

 櫛田は一度自分の部屋に戻り服装を整える。そして午前10時、2人はケヤキモールへと足を運んだ。休日ということあって人混みで溢れている。そんな場所を2人で歩いていたらどんな関係だと揶揄されるか。言うまでもない。

 

「何が目的?」

 

 わざわざこんなまどろっこしいことをする意図が知りたい。癪に障るけど私を女として堕とすならあのまま同じ事を繰り返すだけで良かった。決して私がチョロいんじゃない、この男は人の心の蝕み方を誰よりも理解している。

 

「普通にショッピング。寄りたいとこある?」

 

 歩幅を合わせてくれている。脚が不自由な坂柳さんとよく一緒に過ごしているからかな。

 

「…冬服」

 

「へーいいね。俺をコーディネートしてよ」

 

 女性の趣味にも興味を示してくれる。アロマとか焚いてたし割と話が合うのかもしれない。

 

「何で私が…」

 

「少なくともこの敷地内で最も価値ある男だぞ?俺の隣を歩けることをまず誇りに思えよ」

 

「何それ」

 

 傲慢過ぎる考えに思わず笑ってしまう。ダメだ。このままだと彼の思惑通りになる。それだけは駄目、そもそもコイツはこんなことを他の女にもやってる。私が特別な訳じゃない、利用する為に優しくしてるだけ。

 

「お前何で猫被ってんの」

 

「こんな腹黒い女好かれる訳ないじゃん」

 

 言うまでもない。というか言わせるな、どうせ言わなくても分かるんでしょ?

 

「俺はそっちの方が好みだ。だから辞めろ」

 

 学校で普段ニコニコしてるのが表なら今の私は裏。でもコイツにとっては今の私が表で普段の私が裏。初めてかもしれない私の本性を見て尚好みだと言ってくれた人。...いやこれも罠だ。こうやって堀北たちを堕としたんだからこの色男は。

 

「何でアンタの好みに合わせないといけないのよ」

 

「有象無象の雑魚に嫌われるより俺に好かれた方がいいに決まってんだろ」

 

「うわ…」

 

 こいつには裏表が一切ない。本心で自分が誰よりも優れていて、大抵の人間を見下している。とんでもない自信家。

 

「そういうことだ。俺を利用しようなんて考えるな、昨日で理解したろ?今日合わせて2日もあればお前は俺に堕ちる。あの時みたいに実験サンプルとして扱われるか、今みたいに1人の女として扱われるか..選ばせてやる」

 

 選択肢があるようでない。前者を選べばあの時のような地獄が3年間続く。じゃあ後者を選べば優しくされる?そんな訳がない。都合の良い時に呼び出されて遊ばれるだけ。

 

「アンタは私を裏切る…」

 

 正直どっちでも良かった。堀北や一之瀬さんに好かれる理由も分かる。性格の悪ささえ除けば最高級の高スペ男子、実力主義であることを抜きにしてもこの学校で引くて数多だと思う。唯一気になるのは私の待遇、最初に敵対していた私を後々捨てることは充分に有り得る話。

 

「バカか?お前の過去がバレて破滅しようが、堀北のハメ撮りがバレて破滅しようが俺の玩具であることは変わらない」

 

「こんな閉鎖的な学校での出来事なんか外に漏れねぇよ。ここで嫌われても3年経てば自由の身、それにAクラスで卒業して就職や進学するよりも俺の女になる方が将来性あるに決まってんだろ」

 

「お前は俺の女になるんじゃなくて、なれるんだよ。誇りに思え」

 

 言葉が出なかった。これまで十数年生きてきたこんな人間は見たことがない。傲慢で怠惰で破天荒、こんな生き方出来るなら私もしてみたかった。

 

「もういい…好きにして」

 

 堀北のことや、自分の行動や言動、全てが馬鹿馬鹿しく思えた。こんな男がいるなら自分も素直になっていいのかもしれない。

 

「言質取ったからな。宜しくな桔梗」

 

「はあ…何でこうなったんだろ」

 

 燃え盛る火の中に季節外れの虫が飛び込んだ。櫛田はこの日を境に少しだけ他人に対して本音で向き合うようになった。そして神楽に対して特別な感情を抱き始める。

 

 想像を絶する地獄が待っていることを知らずに..

 

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