『主人公』冒険者リザリアと99のバッドエンド 作:AIRUNo(旧AIRU)
「きゃ、ごめんなさい!」
急いで周囲が見えてなかったばかりか、人に怪我させてしまうなんて最低だ。
寝ていた浮浪者は全身の毛がボサボサとして、リザリアは悲鳴を上げかけた。
(だ、だめ! 見た目で判断しちゃいけないって、さっきの竜人さんで学んだでしょ!)
恐る恐る浮浪者に近づき、その顔を覗き込む。
髪の毛の奥に瞳が隠れていて、こちらにどう反応しているかが分かりにくい。
「あ、あの~、大丈夫ですか?」
そう声をかけたとき、ガバッと浮浪者が抱きついてきた。
危ない、と判断して抵抗するよりも先に、やってきたのは強烈な異臭だった。
それは健全な少女ならば一生かがないであろう、ゴミ溜めに頭から突っ込んだような強烈なもの。
「ぁ……」
魔剣を使うなどという判断をする間もなく、リザリアは意識を失ってしまった。
その日、リザリアはギルドに姿を現さなかった。
心配した受付嬢は宿屋を当たったが、帰ってこないままだという。
「……んぅ、嫌だぁ……あぁぁあ」
街の地下にある、崩れかけた下水道。
古い時代の建築が残されたままの薄暗い場所は、表で暮らせなくなったものたちの根倉である。
その奥にある、崩れかかった石積みの廃屋の扉を開き、何枚ものつり下がった布カーテンを超えて、更に奥にある一室で、リザリアと浮浪者は互いに裸となり交わっていた。
周囲に散乱した服やゴミ、何の役に立つかも分からないガラクタで囲まれた狭いゴミ部屋は、二人の湿度で曇っていた。
魔剣は手の届かぬところに放り投げられ、逃げようにも心体もぐちゃぐちゃにされて上手く動かない。
リザリアは寝転んだ歯性で、右足を抱えられたまま5度目の射精で子宮を満たされる。
「もう帰してぇぇ……悪かったからぁぁ……ごめんなさいするからぁぁぁ……」
「声だすと……他の男もやってくる」
「……! ぅぅぅ」
乾いた喉から放たれる淀んだ声は、耳まで犯されたと錯覚するほど気持ち悪い。
悔しいが、声を押し殺すリザリア。
今はただ、見ず知らずの場所でおかされる恐怖で涙をこぼす。
その下には赤い首輪が巻かれ、奥の柱と鎖で繋がっている。
「大丈夫……お前、貴重なメス。性病もない、ガバガバでもない、良い穴持ってる……売るつもりない……」
「私は、売り物じゃないぃぃ……あぁ、いやぁ……もう動かないでぇぇ」
「そうだ……お前、俺のもの……こんな良い穴、誰にも渡さない……ずっと俺が入れとく……俺が死ぬとき、この穴に突っ込んだまま死ぬ」
「あぁ、うぅぅぅぅ……あっ……あぁぁ~~~~!」
6度目の射精。
涙を流しながら、リザリアは人生で初めてで絶頂するという感覚を味わっていた。
2年後。
リザリアは、相変わらず浮浪者とまぐわっていた。
薄暗い地下道の中、互いに垢まみれで不摂生な男女は、黄ばんだ体液で溢れる下腹部を擦り続ける。
ねちょねちょと動くたびに粘液の音がして、横で向かい合ったままつながった二人は、抱き合いながら、胸を擦らせ、腰を打ちつけ合う。
夜になれば毛布を被るが、通気性の悪い部屋は常に二人の体温で蒸し暑いから、裸で交じりあっても問題なかった。
あの路地裏を通ってい舞った日から数日後。
浮浪者は彼女の持ち物を、魔剣を含めて安値で売りさばいてしまい、その金で食料を買い込むと、何週間もここに篭るようになった。
偶に外へ出てはゴミを漁り、死にかけた同じ浮浪者から物を奪ったり、既に死んだ貧者の家を荒らすくらいで、それ以外は宣言通り、徹底してリザリアの体を味わい続けた。
かつて街を歩けば美少女として目に留まり、明るい性格で皆を元気にしただろう、その瞳は、どこまでも濁っている。
リザリアにとって現実とは絶望であり、それから逃れるには目の前の男と性交により少しでも快楽を得る行為しか存在しない。
声を上げる気力もなくなり、気づけばこの男との快感に心の逃げ場所を求めていた。
この浮浪者が性病にかかっていなくてよかった。
近くで暮らしていた娼婦崩れは、痒さを訴えて日夜叫んでから、全身に斑を作って死んだ。
けれど自分たちはまだ、世界の底にいても慰め合う行為が許される。
「あぁん……はぁ、ああぁぁ~~」
喘ぎ声を漏らすことも、ためらいがなくなった。
幼い少女が出すはずのない、性に狂った甘い響き。
他の男を呼び込んでしまい、日夜犯されるかもしれないという恐怖は消え去った。
確かに他のゴロツキや貧者は様子を見に来たが、二人の姿を見てそのまま軽蔑の眼差しをして立ち去ったからだ。
(あぁ、きっと今の私は、目の前の男と同じくらい、臭くて、ひどい見た目をしてるんだろうな)
この部屋に、鏡なんてなくてよかった。
あるのは神も髭も伸ばし放題な男の顔だけで、きっと自分も彼に寄ってきている。
それでもこの男の肉棒は、私の渇きを少しだけ満たしてくれる。
それは男も同じらしかった。
あばらの出たリザリアの背中を抱きかかえながら、ぴちゃぴちゃと音を立てて乳を吸うと、僅かに母乳が流れてくる。
確かに生理は来ないけど、妊娠するにしては栄養不足だから、この母乳もきっと体が壊れてしまったせいで出ているのだろうとリザリアは思っていた。
ただ、こんな液で男が少しでも長く生き延びてくれるのなら、それでいい。
かび臭く、人間らしさを殆ど失った自分を、まだ人として認識してくれるのはこの男しかいないのだから。
浮浪者はリザリアの乳首を口に含むと、コロコロと舌で弄繰り回した。
それは彼女にとって、最もイきやすい刺激だ。
「はぁ……ふぅ……あっ……んんん~!」
軽く絶頂すると、男はそっと唇を重ねてくる。
ぴちゃぴちゃと互いの舌を絡めあうのは愛撫というより、獣が傷を舐めあうのと似ている。
(あのとき、選択を間違ったのかな)
それから3年後。
浮浪者が飢えているにも限らず腰を振り続けて腹上死した直後、リザリアは生きる気力を失い、眠るように一緒に死んだ。
2人の死は、いつまでも誰にも気づかれなかった。
人物;浮浪者
・やせ型、全身の毛が伸ばし放題の男。
・年齢不詳。見た目からも判断不可。本人も数えるのをやめた。
・裏組織の下っ端をさせられたが、足切りに会い、そのまま地下で潜伏生活を送るようになる。
・薬、酒、女にだけは組織にいた経験から控えていた。そのため他の浮浪者よりは金を持っている。
・明日死ぬかもという絶望と諦めを抱える日々の中、間近で見たリザリアの顔に女神の光を見出し、気づけば攫っていた。
・もし落ちぶれた自分であっても女神との間に子供ができたら、孤児院にだすか、どんな手をつかってでも立派に育てようという希望を持っていたが、栄養不足でそれが叶わないと察すると、また絶望へと戻った。