コアに願いを 作:混沌迷宮
……呼ばれている。
……呼ばれている。
微睡みながら、疑問に思う。
誰に呼ばれているのだろう。微弱な同族のテレパス。
私の腹から……
腹から!?
私はガバッと起きて、生命探知のスキルを腹に向かって掛けた。
反応した。反応しちゃったよ。
どうしよう。伊織のお家の人に殺される……!
ことの起こりは、夜の学生寮。
私は、同級生を組み伏し、同級生に組み伏されていた。
じゅぷっ♡ じゅぷじゅぷじゅぷ♡
水音と共に、何度も貫き、貫かれる。猿のように腰を振った。
「麗奈……っ 伊織……っ あ♡ あっあっあっ♡」
必死で愛しい人達の名前を呼ぶ。もう気持ち良すぎて訳わかんない。
貫いている女性が麗奈、貫いてくる男性が伊織である。
「麗奈、混……。可愛い。どっちのが気持ちいい? 貫くのと貫かれるの」
「両方っ 両方気持ちいい、大好き……っ」
麗奈とキスをし、伊織に首筋にキスをされ、貫かれ、私は達すると同時に意識を飛ばした。
こんなの良くないってわかってる。
まだ学生なのに。
私は魔物で、いずれ敵対する関係なのに。
でも、やめられなかった。
「麗奈、卒業までには孕んでおけよ? 安心しろよ、責任は取るから。混が」
「クズがっ」
麗奈は吐き捨てる。吐き捨てはするけど、避妊はしなかったのは麗奈の意思でもある。麗奈だって私たちを離したくはないのだ。
たった3人の同級生。
二人纏めて口説いてきたのが伊織である。ただ、麗奈に伊織が種付けした事はない。伊織は政略結婚をしないといけないそうなのだ。その種は勇者になるかもしれない貴重なものので、無闇に撒けないということ。私と麗奈に手を出しておいて、勝手だと思う。
伊織は退魔師の御曹司である。
麗奈は一般出の天才退魔師で、私もそう。私が天才って呼ばれてるほど強いのは魔物だからなのだけれど。
3人とも天才なんて言われているから、3人揃って黄金世代、なんて言われている。
そして悔しい事に、私も麗奈も伊織が好きだ。伊織はとんでもなく顔が良くて、強くて、自信満々で、カリスマがあって、ちょっと逆らうのは難しい。
伊織は割と鮮明に将来のビジョンを持っていて、麗奈と私を結婚させて二人纏めてそばに置く計画も立てていて、学校を卒業する前に孕ませるのだとせっせと毎日頑張っていた。
そのせいで魔物である私も孕んじゃったのだが。
確か、伊織は勇者の血筋で、めちゃくちゃ管理されてるんだったか。
やばいよね。やばいよなぁ。
麗奈も孕んでる。やばい。
両親はとっくに異世界に旅立っていて、私の家族は兄が1人だけ。表向きはニートだしすごく太っているけれど、幾つものダンジョンを支配する自慢の兄である。太っていると戦えないのではと思うのだけれど、ダンジョンマスターのお膝元まで攻め込まれたらそれはその時点で負けだから、とのこと。潔い。なお、兄からは別れろと言われている。偉大なる一族が惨めな恋をする必要はないと。でも、理屈で考えられるものじゃないよね、恋って。
恐る恐る兄さんに報告したら、盛大に呆れられた。
そして、お正月に麗奈と共に呼び出しを受けた。
あと、伊織とは今生の別をしておけと。これはもうそういう事だよね。
肝心の伊織は正月は予定がギッチギチで動けない。
クリスマスに麗奈の妊娠を3人で祝った後、私と麗奈は兄に会いに行くのだった。
お正月。
ボロいアパートの前に私達は来ていた。
「ここに住んでるの、お兄さん?」
「そう。惑(まどい)って言うんだ」
呼び鈴を押すと、美少女が出迎える。
「ようこそおいでくださいました。混様、麗奈様」
「誰、このこ」
「兄の秘書でフィー」
中に入って、鍵を閉めて、押し入れを開ける。
それで布団を引っ張り出すと、押入れの床に発光する魔法陣があった。
「なにこれ」
「じゃあ、行こうか」
麗奈の背を押して、魔法陣の上に座る。
魔法陣が一層強く輝いた。
「なにこれ」
広い応接間。
そこで、美少女のリューが跪いていた。
「ようこそ、混様、麗奈様。私は惑様の護衛のリューと申します。惑様のもとにご案内します」
応接間から出て、魔法陣を経由し、てくてくと歩いてしばし。
幾つもの画面に囲まれ、ソファーでくつろぎお菓子を食べる兄のもとについた。
画面の中では、くつろいでいたり、戦っていたり、色々だ。
兄さんはさまざまなダンジョンを作っていて、リゾートダンジョンもあれば、戦いが主なダンジョンもあれば、鉱山に利用されるダンジョンなんかもある。それらの映像だ。
「初めまして。麗奈さん。そして混。さあ座って。お茶を出そう」
「は、初めまして。お構いなく」
混乱しながらも、緊張して挨拶をする麗奈。
ジロジロと私たちを見る兄さん。
「話には聞いていたが……面白いな。体質が変わっているようだね。覚醒といったほうがいいか。ともかく、今の混は守られている。縛られてもいるがね。それと麗奈さんも、ずいぶん面白い人のようだ」
パチンと兄が指を鳴らすと、フィーが小さなカップをたくさん乗せたお盆をもって現れた。
「力の反発もない以上、血を盗めて良かったとしておこう。さて、二人とも。少々栄養が足りていないようだから、薬を順番に飲んでもらう」
「その前に、お前の兄さんってなんなの?」
溜まりかねたように麗奈が聞く。
「麗奈。私の父はこの世界の人だけど、母は異世界のダンジョンマスターって種族なんだよ。まあ魔物かな」
「偉大なる魔物だ」
兄が訂正する。
「魔物……? 孕んだっていうのは」
「ダンジョンマスターっていうのは両性でね。できる確率はすごく少ないはずなんだけど、できちゃったらしくて」
「……勇者を孕んじゃった?」
「かも」
「やばいじゃん」
「そうだよ、ヤバいんだよ。あ、でもこの薬は毒じゃないから安心して。兄さんが言うなら、本当に単純に栄養が足りないんだと思う。何せ、魔物の子だからね」
「クソが」
麗奈と私は兄の用意してくれた薬を飲む。
杯を重ねるたび、体がぽかぽかして、楽になっていく。
麗奈に狐の耳尻尾が生えた。
そういえば、麗奈は妖魔の血が混じってるって言ってたっけ。本当だったんだ。
それから、退魔師の父が異世界に迷い込んだ事、母に出会って恋をしたこと、生まれた兄はダンジョンの勉強をして実際に経営もしている事を話す。兄は、私が母の血を覚醒させた事も告げた。子供に釣られるように、コアも孕んじゃったらしい。
「ダンジョンマスター……。ゲームみたいな?」
「そうだね。ゲームや漫画、小説はとても参考になるよ」
そうして、兄はダンマスについても説明した。
ダンマスには二種類いる。
コアに雇われているものと、コアを生み出すものだ。
どちらにせよ、パートナーとなってダンジョンを防衛する。
ダンジョンは、一種の世界構築みたいなもの。
ダンジョンに侵入するものの生命力を奪う代わりに、強くしたりもできる。
ダンジョンマスターはダンジョンにいる限り王様で、ダンジョンマスターは偉い。
「さて、麗奈さん。貴方と混の腹からは同族の気配がする。当然仲間は保護するつもりだ。だが俺達は日本へのダンジョン設置を考えている。麗奈さんは囚われの身となるか、仲間になるか選ぶ事ができる。どうする?」
「……それっていっぱい死ぬ?」
「配慮はするが、無茶をすれば当然死ぬね」
「わかった。スタンピードとか起こさないなら仲間になる」
「元から起こす予定はない。軍を本気にさせていい事はないからな」
「良かった」
「では、仲間の麗奈さんには望みのコアを贈呈しよう。どのようなダンジョンを望む?」
「強くておっきいの。あとあんまり人が死なない」
「いいだろう」
「私はリゾートダンジョンがいいな」
「お前には自前のコアが……まあ良いか。二人の事故死を偽装しておく。二人とも、子供が生まれるまでしっかり休んでしっかり食べるように。その合間にダンジョンをどこに設置するか考えるといい。来年の1月1日にダンジョンの設置をする。コアはおって届ける。12月になったらまた呼ぶから、それまで待機しているといい。下がれ」
「はい」
私達はフィーに案内されて、部屋へ向かう。
貴族の屋敷のような綺麗で立派な部屋を案内される。
お風呂、娯楽室、食堂と案内されて、最後に寝室。
眠かったので、二人ともお風呂に案内されて上がった後直ぐに寝てしまった。
翌朝から、二人で娯楽室でノンビリした。
戦ってばかりだったから、ゆったりした時間はなんだか罪悪感を覚える。
2月になって、コアが届けられた。
ゴツゴツした大きな黒いコアが麗奈のところに。
ツルツルしてピンクのコアが私のところに届けられた。
『初めまして、混様。まずは私とダンジョンに名前をいただきたく思います』
「そうだね。幸せな気分になれるダンジョンになって欲しいから、ハピネスと名付けるよ。ダンジョンはハピネスダンジョンでいいかな?」
『わかりました。私の名前はハピネスです。では私と、ダンジョンを設計していきましょう』
そうして、ダンジョンの資料を娯楽室で漁りつつ、ハピネスと相談しつつ、ダンジョンを設計する。
麗奈は麗奈でダンジョンを設計しており、12月のお楽しみらしい。
8月には、子供を出産した。
麗奈は彩人と、私は灯織と名付けた。両方男の子である。
12月には、第一回日本ダンマス会議に出席した。
兄がスカウトした人たちと一堂に会した。
そうして、1月1日。
日本の各地で、ダンジョンが出現した。