なので、ヒロインのほとんどは非処女で、旦那・彼氏持ちになります。
基本は主人公とヒロインの視点ですが、寝取られた側の視点が入ります(主人公が寝取られる展開はありません)。
──平日のお昼過ぎ。
俺はマンションの最上階、1702号室のインターホンを鳴らした。
『……はぁい』
「お昼時にすみません。今日707号室に引越してきた
『あっ、はぁい、少々お待ちくださ~い』
インターホンに出たおっとりとした話し方の女性が来るのを待ちながら、廊下の窓の外を眺める。
都心部の高層マンションの最上階から眺める景色は最高だ。
廊下からでもここまでの絶景なら、最上階の部屋からの眺めはさらにいいのだろう。
「お待たせしました~!」
窓の外を眺めているとドアが開く。
黒一色のワンピースを着た女性が優しそうな笑顔を浮かべて出迎えてくれた。
「はじめまして、玄栖雄吾と申します。引っ越しの挨拶でお伺いしたのですが、これ良かったらどうぞ」
「まあ、わざわざすみません、ありがとうございます~」
挨拶の菓子折りを渡すと、彼女は嬉しそうに受け取る。
にっこりとした細目に、ぽってりとした色気のある唇。
決して太っているわけではなく丁度いい肉付きの体型。
溢れんばかりの豊満な胸に肉付きのいいお尻で、これまで多くの男たちを魅了してきたのだろう。
ふんわりとした茶色の長髪。
これぞ”母性溢れる女性”の代表といった感じの人だ。
「そうそう、自己紹介がまだでしたね~。私はこのマンションのオーナーをしている柏原源蔵の妻の
事前に見せてもらった顔写真や話に聞いていた情報では彼女は34才らしいが、そんな風にはまったく見えないな。
見た目や肌の艶といった部分は20代前半ぐらいで、大人の色気と若さを丁度よく兼ね備えた感じだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「でも、せっかく来ていただいたのにあの人お仕事で家を出ていて……」
困ったように頬に手を当てた佐夜子さん。
一瞬だが、彼女の視線が俺の胸板や腕に向けられたように感じた。
「そうだったんですね。夜の方がいいかなとも思ったのですが、仕事から帰られてからご挨拶するのは迷惑かなと思って」
「迷惑なんてとんでもない。旦那にも、玄栖さんが挨拶に来てくださったことは伝えておきますので」
「はい、ありがとうございます」
「ところで……」
また、俺の体──胸板と腕──に一瞬だけ視線を向けた。
「あの人から……玄栖さんは、ボクシングの日本代表の強化選手だと伺ったのですが」
「え、ああ、一応ですけど」
「まあ、凄いですね~! 日本を代表する選手だなんて!」
そういう設定にしたのか”あの男”。
というより設定があるなら先に教えてくれよ。
俺は心の中で舌打ちしながら表では笑顔を浮かべる。
「やっぱりスポーツ選手だから鍛えてるんですね~。ポロシャツの上からでも凄い筋肉なのわかります!」
「あはは、ありがとうございます。もしかして、筋肉フェチとかでした?」
「え、ど、どうして?」
「いえ、よく見てくださっているなあと思って」
「ご、ごめんなさい! 少し気になって、その……迷惑でしたよね」
「いえいえ、鍛えてる体を見られるのは好きなので全然。それに佐夜子さんみたいな綺麗な女性に見られて迷惑だなんて──」
そこで、わざとっぽくなく「すみません、嬉しくてつい本音が出てしまいました」と訂正すると、佐夜子さんはまんざらでもなく微かに頬を赤らめる。
「い、いえ、こちらこそ。こんなおばさんを綺麗だなんて言ってくださって、ありがとうございます……」
今日は挨拶程度にしておこうと思ったが、これはもう少し押しても問題ないかもな。
俺はそう思い、少し踏み込もうとした。
だが、
「──佐代子さん、何をしているの?」
だが、ふと声をかけられた。
聞き取りやすい声の大きさに濁りのない透き通った声。
腰まで伸ばした痛みのない黒髪に、切れ長な目。
ハイヒールを履いているが、それでも身長は170と女性にしては高い。
ピシッとした黒の女性用スーツが似合うモデルのような細身な体型だが、白のYシャツの開いた隙間から豊満な胸の谷間が見える。
手に持ったサングラスといい、これぞ”完璧なキャリアウーマン”といった雰囲気だ。
「あっ、麗子さん。こんにちは~」
「……どうも。それで、彼とはどういうご関係?」
「え? えっと、こちらは玄栖雄吾さんで、今日707号室にお引越しされてきたんです。それでご挨拶に来てくださって──」
「──ふうん、そう」
佐代子さんの言葉を最後まで聞かず、麗子さんはコツコツと音を鳴らしこちらに歩いてくる。
そして俺の前で立ち止まると、ムスッとした表情のまま俺に向けて警告する。
「今のご時世、男性が女性の……それも旦那さんのいる方の部屋に来るのは止めておきなさい」
「えっと、引っ越しの挨拶をするなということですか?」
「昔はそれが礼儀として正しかったのかもしれないけど、今は時代が違うの。あなただって、勘違いでもされて通報されたくないでしょ?」
初対面の女に上から説教されて、つい舌打ちしそうになった。
だがその前に佐代子さんが間に入って止めてくれた。
「もう麗子さん! 彼はただ引っ越しの挨拶に来てくれただけなんですから、そんなに高圧的な物言いをしなくてもいいじゃないですか~!」
「高圧的って、私は別に……」
明らかに動揺して俺と佐代子さんを交互に見る麗子さん。
すると、首を左右に振って大きくため息をつく。
「ごめんなさい、少し言い方が悪かったわね。ただ今の時代、些細なことでも問題になるんだから……佐代子さんもあなたも気を付けなさい。それじゃ」
麗子さんはそう言って歩き始めると、1705号室の部屋のカギを開け部屋に入って行った。
「ごめんなさいね、麗子さん悪い人じゃないんだけど……ご家庭で色々とあるみたいで」
佐代子さんは苦笑いを浮かべながら言葉を濁した。
「いえ、大丈夫です。それに自分も配慮に欠けてました。今日は挨拶だけなので、これで失礼しますね」
俺は一歩後ろに下がり、ドアから離れる。
「もし困ったことがあったらなんでも相談してくださいね」
「はい、ありがとうございます」
佐代子さんも忠告されたからか引き留めることはなかった。
ドアが閉められ、エレベーターに乗り、引っ越したばかりの自室のカギを開ける。
「さて」
めちゃくちゃ家賃が高そうな高層マンションということもあって全部で三つの部屋があるが、自室にあるのは寝る為だけに用意した真新しいベッドと簡単な筋トレ道具のみ。
真っ白な壁紙が殺風景さをより際立たせる。
「ちっ」
少し寝るかと思ったら、スマホが音を鳴らす。
画面に表示された登録者の名前を見てつい舌打ちしてしまった。
「もしもし」
『もう、玄栖さん。名前を見ただけで舌打ちするなんて酷いじゃないですかあ』
相変わらずの胡散臭い声だ。
だが引っかかったのはそこじゃない。
俺は慌てて振り返り、周囲を確認した。
けれど俺を監視するモノは何もない。
『あー、探しても無駄です。絶対にわかりませんから』
「……監視か。それとも、これも仕事の一環か?」
『まあ、そういうことです。あなたがその部屋に引越しを済ませ、ターゲットの二人に接触したのも全て監視しています。ああ、いや──既にコンテンツとして撮影している、といった方が正しいですね』
「趣味が悪い」
監視されていることなんて言われるまで全く気付かなかった。
こいつと電話しながら壁や窓の外を見ているが、監視している奴も監視カメラも見つからない。
『来栖さんは何も気にせず仕事をこなしてください。ところで、ターゲットの二人と接触してみていかがでした? ──堕とせそうです?』
「ああ、問題ない」
どうやって監視しているのかわからないので諦めベッドに座る。
すると、電話の向こうから『おお!』と感心する声が聞こえてくる。
『来栖さんが接触したやり取りを見るかぎり、ターゲットの一人である柏原佐代子は警戒心も薄く、情報通り筋肉質な男性が好みということもあって簡単に堕とせそうでしたね。それに来栖さんがわざと視線を離したときのあなたの身体を見る彼女の目、随分と欲求不満のようでした』
「面倒なしがらみが無ければあの場で犯れそうなほど簡単な女だ」
『まあ、チュートリアルのような女性ですからねえ』
まるでゲームをプレイしているかのように楽し気に話してくる。
まあ、画面からこっちの様子を見ている連中からしたら、俺がこれからしようとすることなんてただの寝取りゲーのようなものなのかもしれない。
『ですが、二番目のターゲットでもある
「いや、ああいう女の方が簡単に堕とせるはずだ」
『ほお、そうなんですね! それは楽しみだ……』
そう言いながらキーボードを叩く音がスマホから聞こえた。
『ちなみになのですが、ついさっき、ターゲットの二人のコンテンツを出資者様たちに告知をいたしましたが──お陰様で多数の出資者様から視聴希望の連絡が届いてますよ!』
通話していたスマホの画面を確認すると、SNSや掲示板のようなコメントが沢山表示されていた。
『お二人とも極上の女性ですね』
『この女性たちが品が無く喘ぐのを早く見せていただきたい』
『私は二人目の気の強そうな女性が調教されるのを希望します』
金持ちばかりだからか、匿名だというのに言葉遣いが丁寧なのが笑えてくる。
「どうせ心の中では汚い言葉を使って欲望丸出しにしているくせに、何を上品に気取っているんだか」
『ここを社交場と思っているのか、それとも見栄を張っているのか。ですが彼らも玄栖さんの作り出すコンテンツが進めば本性を現してくるでしょう。そこも、お楽しみに』
「こいつらの喜ぶ姿なんて興味ない」
『でしょうね。ではお疲れのようですから、最後に忠告だけ──』
さっきまでへらへらした話し方だったこいつの雰囲気が一瞬にして変わった。
『玄栖さんが、ターゲットである”多くの男性が快楽に堕ちる姿を見たいと思っている女性たち”を攻略するこのコンテンツは予定通りにスタートしました。お住まいのマンションの購入から始まり、至る所に監視カメラを設置する為の改修工事、大勢への口封じの賄賂などなど──先行投資は既に進み、その見返りとして大勢の出資者から何十、何百億という前金を頂いております。わかっているとは思いますが、失敗は許されませんからね……?』
「ああ、わかってる」
『そうですかそうですか、それなら良かった。……では、最高のコンテンツの提供、よろしくお願いしまーす!』
またへらへらした口調に戻った男との電話が終わると、ベッドに横になる。
「あいつらのビジネスに加担するのは癪だが、刑務所暮らしから抜け出せて、いい女を好きなだけ抱いていいっていうならそうさせてもらうか」
目を閉じる。
思い出されたのは、あの胡散臭い男──七鮫レイジと出会った数日前のことだった。
『被告人、玄栖雄吾を──無期懲役に処す!』