※一人目のターゲット
元大人気AV女優。
当時は清純派AV女優として活躍していた彼女。
一緒に仕事をした男優が撮影を終えたあと、必ず「まだしたかった」と語るほど魅力的で、多くの年代から人気を得ていた。
けれど24才の頃に突如として引退。
その後、資産家であった柏原源蔵の愛人として生きてきた彼女は、40才も離れた源蔵と30才の頃に結婚した。
結婚したとはいえ愛人の延長線上のようなもので、源蔵とは別に若いセフレが数人いた。
だが結婚して数か月後、女性総理大臣の誕生によって生まれた法律によって浮気や不倫が厳しく禁止されたことで異性との性行為を禁止された。
彼女に魅了された男たちも法に触れることを恐れあっという間に離れていき、手元にあるのは裕福な生活と枯れて老いた夫だけ。
女の幸せを求めて離婚することも考えたが、歳を重ねるごとに女としての幸せを諦めて平穏な生活を送ることに。
子供はなし。
最後にした性行為は3、4年ほど前。
現在は清純派からおっとり系のエロい人妻となった。
現役時代の頃から彼女のフェラとパイズリは人気で、一度されたら最後の一滴まで搾り取られるんじゃないかと言われていた……。
細身の筋肉質な男性に弱く、Мっ気があり、若い男に強引に迫られることを好む。
性欲が強く、かなり欲求不満で、毎日欠かさずオナニーをして自分を慰めている。
♦
次の日の朝──。
お昼前、事前に渡された資料を見ながらコーヒーを飲む。
元AV女優か。
綺麗な女だとは思ったが、まったくそういうタイプだとは思わなかった。エロい本性を隠していたのだろうか。
現役時代の彼女の映像を見ることができないのが残念だ。
「AV女優を引退して、愛人からの玉の輿結婚。こんな世の中じゃなければ遊び放題だったろうな」
枯れた老人の面倒なんて見ずに。
そして俺は資料の最後のページを見て鼻で笑う。
──依頼主、柏原源蔵(夫)。
「夫が妻の寝取りを希望するとはな……」
このコンテンツ──寝取りビジネスとでも命名するか。
その寝取りビジネスには、レイジが言う大勢の視聴者である出資者の他に、寝取ってほしい相手を指名できる”指名権”を持った使命者というのがいる。
その指名者は他の出資者よりも多額の金を支払って「この女を堕としてほしい」と依頼する。
額は知らないが相当なものだろう。
で、その指名者には、柏原源蔵のように妻や彼女を指名する者もいるそうだ。
自分の妻を寝取ってほしいと依頼する奴の神経なんざ理解できないが、まあ、大方あのいい女を嫁に貰ったが、老いた自分では満足できないから代わりに誰か他の男に満足させてもらおうということだろう。
旦那が認めているんだから普通に妻と浮気男を含めた三人だけの秘密事みたいにすればいいのではないかとも思ったが、それだと意味がないらしい。
『妻の葛藤しながらも快楽で堕ちていく顔が見たいのだ』
それが、枯れた性欲の中でも辛うじて残っていた源蔵の願いであり、この寝取りビジネスを選んだ理由だろう。
そしてコンテンツという妻が堕ちた一部始終を残した作品を自分も楽しむと。
「やっぱりわからん」
俺はそう結論付けて、少し筋トレしてから家を出た。
向かった先はもちろん、ターゲットである佐代子の家だ。
『はぁい、あれ来栖さん?』
相変わらずのおっとりとした話し方の彼女は、ドアを開けるなり首を傾げる。
「おはようございます。あれ、もしかして旦那さんから聞いてませんか?」
「え、ええ。何かあったんですか……?」
「あれ、おかしいな。旦那さんから、マンションで住まわせてもらうときの契約のことでお話をさせていただく約束だったのですが」
「そうだったんですね。う~ん、あの人はなんも言ってなかったはずだけど~」
「そうなんですか。お昼に食事をしながら話がしたいから家に来てほしいってことだったのですが、どうしよう……」
わかりやすく困った感じでいると、彼女は申し訳なさそうにしていた。
「あの人がそんなことを……。ごめんなさい、呼びつけておいて仕事に行っちゃって」
「いえ、大丈夫です。ただ、美味しい食事をご馳走してくれるって言っていたので少し残念ですが……」
「あ……」
「わかりました。じゃあ、帰ってから連絡してみますね」
そう言って帰ろうとすると、
「あっ、ちょっと待って」
佐代子さんに止められた。
「せっかく来ていただいたのにこのまま帰すのも申し訳ないから、その……もし良かったら、家でお昼ご飯食べていきませんか?」
「え、ご飯ですか?」
「元々あの人と一緒にお昼ご飯をという約束だったならどうかなって。それに、ご飯を食べている間にあの人が帰ってくるかもしれないから。私の作ったものだから、お店の料理みたいに美味しくはないけど……」
「とんでもない! 佐代子さんの手料理を頂けるなんて嬉しいです。実は調理器材とかまだ買ってなくて、今日も近くのコンビニのお弁当かなって思っていたんです」
「そうだったの? じゃあ良かった……あっ、入って入って。また玄関で話していたら麗子さんに怒られちゃいますから」
くすくすと機嫌良さそうに笑う佐代子さん。
旦那と約束していたと言ったからガードが緩かったのか、それとも元から緩かったのか。
おそらくどちらともだろう。
それに今のご時世、こんな真昼間から人妻相手にアタックする愚か者なんていないから、俺が下心なんて持っていないと思い込んでいても仕方ない。
俺は佐代子さんに連れられて家の中に。
「さすが最上階、広いお部屋ですね……」
「ふふっ、ただ広いだけの部屋ですよ。それじゃあ料理を始めますから、玄栖さんは座って待っていてくださいね~」
広々としたリビングに煌びやかなシャンデリア。
目の前には大きな窓があって、そこから高層マンションでしか眺められない最高の景色が一望きる。
『見てるのか?』
念のためスマホでレイジに確認すると、すぐに、
『もちろん。いろんな角度から見てます』
と返事がきた。
まあ、ターゲットの夫が依頼人なんだから彼女の家にカメラが設置されていて当然か。
「佐代子さんの料理しているとこ見ててもいいですか?」
暇だし彼女と話すか。
そう思ってリビングに向かうと、エプロン姿の彼女は料理の真っ最中だった。
「え~、恥ずかしいからダメですよ!」
「そう言われると余計に見たくなりますね」
「もしかして玄栖さん、お母さんが料理している姿を思いだしたりしてますか~?」
「いえいえ、そんなわけないじゃないですか。それに俺の母親、小さい頃に家を出て顔も覚えてませんから」
「あっ、そ、そうなの? ごめんなさい、無神経なこと言って……」
「いえ、もう昔の話しですから。それに俺が佐代子さんの料理している姿を見たいのは、ただ、綺麗な人が料理している姿を眺めたかっただけです」
「え……」
佐代子さんは頬を赤らめながら顔を背け「も、もう、おばさんをからかわないの!」と笑いながら否定する。
おそらく彼女相手なら、これぐらい嘘くさいセリフを言っても問題ない。むしろこれぐらい強引に口説いている感じのセリフの方が好みのはずだ。
──女を忘れた、欲求不満の彼女には。